- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591134245
作品紹介・あらすじ
宝物は、一緒に過ごした時間のすべて。
ある日、なかよしのおばあさんと少女が小さな鳥の卵を見つけ、ふたりで大切にあたためはじめる。
少女のてのひらの上で生まれたのは、一羽のオカメインコ。
黄色い小鳥は、羽ばたきとともに人々をやさしく結びつけていくのだった。
懸命に生きる人々の再生を描く物語。
この作品から生まれた小さな物語『つばさのおくりもの』も同時刊行。
小川糸(おがわ いと)
1973年生まれ。著書に『食堂かたつむり』『ファミリーツリー』『つるかめ助産院』『あつあつを召し上がれ』『さようなら、私』など。
他、食や旅のエッセイや絵本の翻訳など、精力的な執筆活動を続けている。
ホームページ「糸通信」http://www.ogawa-ito.com/
感想・レビュー・書評
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鳥が大好きなおばあちゃんが、ある日小鳥の卵を見つけて温め始める。それも髪の毛の中で!孫娘も一緒に卵を見守る生活が始まる。
仲良しの二人はお互いを「すみれちゃん」「ひばりさん」と呼び合っている。
ちなみに、おばあちゃんが「すみれ」、孫が「ひばり」‥‥ややこしい笑
前に読んだ『お探し物は図書室まで』の小町さゆりさんは『銭天堂』の紅子さんにそっくり!と思ったけれど、こちらのすみれさんは、子どもの頃に読んだ『ふしぎなかぎばあさん』ですよね???出来たてのおまんじゅうのようなほっぺに真っ白なお団子ヘア。もう私の脳内ではずーっとかぎばあさんでした笑
卵から孵った小鳥に“リボン“と名付けて大切に育てるのですが、その後リボンは様々な人の手に渡り、それぞれの人を癒します。
このあたりは馳星周さんの『少年と犬』のようです。
童話のように始まったこの物語も終盤は大人の話になってきます。
人と人との繋がり、自分の核となる魂、生きるのは怖くなんかないよ、ということを教えてくれる温かな物語でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひとりっ子で、しかもひ弱で、あまり外で遊べなかったので
犬や猫から小鳥・栗鼠・亀まで、いろんな動物に寄り添ってもらって生きてきました。
その中にはオカメインコもいて、まるで私のひ弱さが伝染したかのように弱弱しい子で
ほんの短い間しか一緒にいられませんでした。
そんなわけで、表紙の中からこちらをきょとんと見つめる
オカメインコのつぶらな瞳に、いきなり胸がきゅんとしてしまって。
小学生のひばりは、おばあちゃんでもあり、大親友でもあるすみれちゃんと一緒に
何の鳥のものかもわからない小さな卵をみっつ、見つけるのですが。。。
壊さないようそうっと☆と〇と〒のしるしをつけてもらい、
すみれちゃんの髪の毛の中で、大事に大事に卵たちは温められるのです。
昔の少女小説の住人のように、可愛らしい秘密を共有して卵を孵し
生まれてきたオカメインコのりぼんを慈しみ育てるふたりの日々の
なんと甘やかで、やさしい光に満ちていることか。
やがてりぼんは飛び立って、さまざまな人の人生に関わりながら旅をする。
その間、歳月はすみれちゃんやひばりにも、病や喪失や諦めや
あの幸福な日々には兆しさえ見えなかった、いろんなものを連れてくる。
でも、すみれちゃんの髪の毛という温かい巣を離れ、つらい目にあって
「鳥のいえ」に保護されたりぼんを、隣の鳥籠からやさしく語りかけてくれた
ヨウムのおばさんの言葉がその後もずっと支えてくれたように
大切なひとや大切なものと一緒に過ごした光あふれる日々、
自分を慈しんでくれた人の記憶、誰かを何かをまっすぐに愛した記憶は
「こわくないよ」と、大人になったひばりの背中を押すのです。
人は誰も、遅かれ早かれ温かな巣を飛び立つ日を迎えます。
幸福感に包まれたいくつかの瞬間を抱きしめながら精いっぱい生きて
やがては誰かにそんな瞬間をお裾分けできるようになったらいいなぁ。
ちいさな幸福を、細く長く、リボンのようにつなげていけたら素敵だなぁ。
表紙のりぼんにもう一度見つめられながら、そんなふうに思いました。 -
リボンというなんとも愛らしいタイトルの本。表紙の鳥の絵が可愛く、読んでいくと表紙の鳥がリボンという名前のオカメインコであることがすぐにわかった。
少女・ひばりと祖母・すみれは、「ひばりさん」と「すみれちゃん」と呼び合う仲良し。ふたりは、大切に一羽のオカメインコを孵化させ(しかも頭の中で)、リボンと名付ける。かわいがって育てていたある日、リボンは空に飛び去ってしまう。リボンが居なくなって虚しさが増すふたり。しかし、一方でリボンはいろいろなところで、たくさんの人と出会い(飼われ)、そこで出会った人たちの内に秘めた魂を大切な人に伝え、人と人との絆を深める存在となっていた。
登場するそれぞれの人がそれぞれに考え方や生き方がある。そして、彼らの生き方には魂や心がある。本作で「魂は心に守られ、心は更に体に守られている。」の名言がある。
リボンは、それぞれの人の人生という歴史の一場面に名前を変えて登場し、人を素直な気持ちさせ、想いの方向に導いているように思える。それが人の魂であり心として、本作では表現されている気がする。
私も小学生の頃に黄色のセキセイインコを飼っていた。まだ、毛も生えていない小さい時に知り合いからいただいた。2時間おき餌をヘラであげるのだが、首が異常に伸びて、その姿は到底、可愛い鳥という姿ではない。小さい頃から世話をしていたので、私には手乗りインコ以上の関係で、家族だった。私の顔を見るとすぐ肩に乗ろうと、飛んでくる。庭に出ても逃げることもなかったので、肩に乗っているという意識もなく、その日も肩に乗せたまま庭に出たところ、ボールがたまたま飛んできて、そのボールにびっくりして、飛び去ってしまった。一度、羽ばたいた鳥は、私が名前を呼ぼうとも、戻っておいでと叫ぼうとも振り向きもせず、大空に嬉しそうに羽ばたいたて去ってしまった。しばらくは、私もすみれちゃんやひばりさんのように落ち込み、猫に食べられはしないか、誰かに捕まえられて殺されはしないかと、ネガティブ思考で悲しみに打ちひしがれていた。そんな時、母が、「家の中でパタパタと飛び回るのではなく、大空に羽ばたいていくことができてよかったのではない?思いっきり飛べるんだよ。それに、疲れたらきっと親切な人を見つけて、その人の肩にとまり行くから心配しなくても大丈夫よ。幸せを祈ろうね。」と、言った。
その1年後に今度は、庭にいた母の肩に水色のセキセイインコがとまりにきた。何た不思議なことがあるんだろうと、幼い私は、あの時の母の言葉を思い出して、逃げた黄色のインコも無事に生きているんだと思った。
そんな幼い時の思い出が本作と被り、別れが全ての関係を切ってしまうわけではなく、別れがあるから、また別のところで出会いがある。
そして、共有した想い出や言葉は自分の心の中に残る。またその想いや言葉を一緒に感じたり、聞いている人がいればその人の想い出が、私の想い出を補完する形で残っていく。
別れの定義が変わるような物語だった。
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風変わりな祖母すみれちゃんの頭の中で温められ、主人公ひばりの手の中で生まれたオカメインコのリボンちゃん。リボンちゃんはまさに幸せの青い鳥ならぬ幸せの黄色い鳥。心に傷を負った人に光を射すように癒やしていく。そして最後には…。
最初はほのぼの小説かと思ったが、少しディープな展開も待っていたりする。小さな生き物だけれど、人と人の心を繋ぐ力があるという感覚は非常によく理解できる。小さな生き物だからこそ、不器用な人間にない力を持っているよね。
最初の子供の頃が無邪気に幸せだからこそ、最後の方の展開は少し泣けた。 -
小川糸さんの作品が好きで、ようやく新作を読みました。
ほんわか包んでくれる優しさ。大好きです。
原色のような
ばちっとした強いメッセージはないけれど
読み終えて、しばらくしても、心の深いところに優しく居続けてくれるような作風だなあといつも思います。
リボン
自分にとって
生きるとは何か
生きがいとは何か
何をしたいのか
何がしたかったのか
リボンが何かをしてくれるわけではないし
むしろたまたまそこにリボンがいただけなんだけれど
そういう偶然に人は意味を見つけたくなるし、偶然なんだと理解していても前に進むきっかけになるなら、それはそれで、いいじゃない?
正解なんて、どこにもないんだから。
そんな
世の中にあるたくさんの割り切れないことを
ありのままに、並べてくれた感じ。 -
最近読んだ「犬がいた季節」「少年と犬」の鳥バージョン。
数日開けたら誰が誰だったか忘れてしまい、少し読み直し。というほどインパクトのない話かと思ったら、最後に向けてぐんぐんひきこまれた。
後半はコインランドリーで乾燥を待ちながら読んだのだけれど、そこにいながらにして、時空を越えて旅をしてきたような気になれた。
ベルリンの壁、鉄条網、逃げ出す人々、音楽を愛する人々。家族の死を見つめざるをえない人々。
リボンを育み、愛した人々。リボンによって育まれた人々。
コインランドリーの入口を入る前と出た後で、空の見え方がちょっと違った。ような気がした。ベルリンの森を歩いてきたからね。
読めてよかった。 -
すみれおばあちゃんとひばりちゃん、2人をつなぐオカメインコのリボン。
おばあちゃんの白髪を巣にして孵化したリボンとの別れ、行く先々を小さな幸せで満たすオカメインコの旅…。
表紙のオカメインコの可愛らしさにきゅん。小川糸さんらしく、スーラー麺やチャイ、小豆サンド等食べ物の描写が丁寧で美味しそう。
ただ、最後のひばりちゃんの婦人科系の病気やら流産してしまう妊婦さんの話やら、あえてそっちに持っていかなくても…と思うのは私が甘ちゃんだからでしょうか。 -
章やタイトルで分けられてはないものの、
いくつかの話に分かれている。
鳥を巡る人々の暖かい話。 -
表紙から受ける印象は
完全にわたしだけのものだと知りながら
その印象を無意識にストーリーに期待をかけることがある。
それはもちろん叶ったり叶わなかったりする。
そして逆の結果だからこそ
読み応えが何倍になったりもする。
リボンがすみれちゃんの元を離れてからのストーリーが
独立しすぎていて残念。
ひばりさん再登場が突然で
背負っているもののせいか
別人感が漂っている。
ただ最後の最後は心に響いた。
美しい再会だった。-
macamiさん、こんにちは!おひさしぶりです♪
『リボン』、読まれたんですね。
そうそう、オカメインコのリボンが、巡り会ったいろんな人た...macamiさん、こんにちは!おひさしぶりです♪
『リボン』、読まれたんですね。
そうそう、オカメインコのリボンが、巡り会ったいろんな人たちを
リボンのように繋げていく、というテーマのもとに書かれているのだ、というのは承知の上でも
やっぱり最初の、すみれちゃんとひばりとリボンという
楽園に作られた小さな巣のような、温かい世界に
もっとたっぷり浸りたい!と、私も思いました。
あの二人と一羽の日々があまりに甘やかで美しいので
成長したひばりの変貌ぶりに、悲しくなっちゃうんですよね。。。
とはいえ、救いのある結末でほっとしました(*^_^*)2013/08/31 -
☆まろんさん
わお、まろんさん!ほんとお久しぶりです♪
>『リボン』、読まれたんですね。
小川糸さんはわたしにとって
なぜか読んでし...☆まろんさん
わお、まろんさん!ほんとお久しぶりです♪
>『リボン』、読まれたんですね。
小川糸さんはわたしにとって
なぜか読んでしまう作家さんのひとりなのです。
好きな作品は「喋々喃々」ぐらいなのですが
なぜか読んでしまいます。(笑)
なのでみなさんのレビューで小川糸さんのを見かけても
そのうち読むだろうなという思いがあって
読むまで見ないようにします。
そうだ、読んだからまろんさんのレビューが読める!^^
出版社のお姉さんが一番好きでした。
「こんなに歩くならヒールのブーツで来なかったのに」
というところ、
あるある!と思いながら
とても自分に近い感じがしました。
わたしは鳥は好きですが
部屋のなかで飛んでいたら
おなじように「キャーこないでこないで!」と
心のなかで叫んだと思いますし。(苦笑)
リボンが無事でなによりでした。
それにあのラストだけは本当によかったです。2013/08/31
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