- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591136720
感想・レビュー・書評
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是枝監督の最新刊を読みたいと思っているが、まだ読めないでいる。その代わりに?図書館の本棚から手にとってみた。
吉野弘の「生命は」が引用されている箇所。
"生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
(略)
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ"
この部分を引用したあと。
"人は自らの欠点を努力で埋めようとする。その努力は現実でも映画の中でも美徳として語られてきた。ずっと昔から。しかし果たして人は一人の力だけでそのような克服を成し得るのか?成し得たとしてそれは本当に美しいのか?この詩はそんなふうに私たちの価値観を問い直しているように思った。
(略)
ヒーローが存在しない等身大の人間だけが暮らす薄汚れた世界が、ふと美しく見える瞬間を描きたい。そのために必要なのは歯をくいしばることではなく、つい他者を求めてしまう弱さなのではないか。欠如は欠点ではない。可能性なのだ。そう考えると世界は不完全なまま、不完全であるからこそ豊かだと、そう思えてくるはずだ。"55ページ
「見えないものと見えているもの」というメディアについて書かれているところも、初出は2007年なのだが、今ますます書かれていることが切実になっていて、日本のメディアは10年前から下り坂を下り続けているのだなあと実感して悲しくなった。
新聞の連載が中心なので短くて読みやすいのだが、いろいろ考えさせられた。
全作品を見ているわけではないが、是枝監督の映画が好きな理由がわかった。 -
読みやすいし共感できるところも多い。イーストウッドのインタビューを思い出した。映画も観たくなる。
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是枝映画は7本以上は観ていて、すごくファンというわけではないけれど割と好きで、面白いか面白くないかはちょっとよくわからなくて、でも目が離せなくて、毎回わかるようなわからないような気持ちになって、それが微妙にクセになるのです。
初期の映画は確かに「残された人たちの世界」という確固としたテーマがあったように思います。最近の作品はよくわからない。
このエッセイ発売のきっかけになった「奇跡」という映画は、観たことがありませんでした。痛恨のミス。映画を観たあとならもう少し理解できたのでしょうか。
映像でははっきりとはわからない監督の考えのようなものが、文字になっていれば少しは理解できるかしらと思ったら、文字で読んでもよくわかりませんでした。頭に入ってくるのは断片的なシーンばかり。とても不思議な体験ができました。 -
欠如は欠点では無い、可能性なのだ
あと味の苦かったあの旅も無駄にはならなかった
「絶交だからね」と笑った時の夏川さんの美しかったこと
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感情はその外部との出会いや衝突によって生まれる
知っていて何もしない人間は、無知で何もしない人間より罪が重い
昭和の記憶を呼び覚ます駄菓子の感じがたまらない
今思えばそんなことも懐かしい母の思い出のひとつである
今でも台風が来ると僕はあのカナヅチの音を思い出す
僕が人生の中で最も“男の子”だった時代である
故郷と呼べる場所は、この世に存在しないという寂しさ
イチゴはイチゴの甘さだけでそのまま食べた方が美味しい
こどもたちの動きと対をなす、この秘められた動
話す力は、まずこの聞く力があって生まれる
主役とは画面に映っていない時にも、その映画を支配している人のこと
これが最高に気持ち良かった
作り手が原則にこだわるあまり・・・
メディアには定住者に対して警告を発し続け、覚醒を促し続けること
目立たない地道な積み重ねが・・・今回の結果には反映された
多様性を背景にしながら、その差異を越境し・・・繋がれるという豊かさ
自分の力の及ばなさや、どうしようもない現実・・・だから唄います
美味しいものを、いや、本当にあちこちの美味しいものを・・・
たとえどんな極悪人だとしても誰かが殺されても喜ぶのは慎むべき
忘却を強要するのは、人間に動物になれと言うに等しい -
【いちぶん】
僕は主人公が弱点を克服して家族を守り、世界を救うといった話が好きではない。むしろそんなヒーローが存在しない等身大の人間だけが暮らす薄汚れた世界が、ふと美しく見える瞬間を描きたい。その為に必要なのは歯を食いしばることではなく、つい他者を求めてしまう弱さなのではないか。欠如は欠点ではない。可能性なのだ。
(p.55) -
思慮深さ
考え方の方向性 -
是枝さんの作品は見たり見ていなかったり。
なんとなく遠ざけていた作品もあるが
見てみようかなという気持ちになる。
映画の中のリアルな空気感が生まれる感じがすこし分かった。 -
久しぶりに読み終えたくなかった本だった。どっちか言い切れないような曖昧な思いやありきたりな日常にある密かな輝きみたいに、一見分かりづらいものにピントを合わせていくような視線に魅かれました