- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591137727
作品紹介・あらすじ
サナは、亡くなった母の願いを叶えるため、かつて彼女が過ごしたという卵町を訪れる。卵町は、とても静かで、とてもやさしい、特別な場所だった。サナは、そこで彫刻家のエイキ、妻を亡くしたクウさん、元看護師のタマキさん、そして母にとって特別な存在であったシイナと出会う。そして、想像もしなかった、母の秘密を知ることになり――。心温まる感動作が、いきなり文庫で登場です!
感想・レビュー・書評
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不思議なお話だった。
母が亡くなり、その最後の願いとして自分の死を告げて欲しい人の名前を娘に託す。
彼女が向かった先、卵町は、まるで町が死を待っているかのような無に包まれている。
そして、死を待つ人も多いその町では、人に関する情報を無闇に話してはいけない決まりもある。
逆境に次ぐ逆境で、なかなか卵町に馴染めない。
なのに、その静けさと佇んだ装いが、次第に愛おしく感じられてくる。
結局のところ、スッキリとはいかないけれど、母と娘のわだかまりはきっと溶けようとしている。
悲しいことの方が、癒やされる。
まるで、反対だと私は思ってしまうのだけど、世の中にはこの言葉がしっくりと納まる人がいるのだろうと思う。
そんな人の手に、触れるといいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あっさりしていて読みやすかった。
主人公が亡くなった母親の遺言を頼りに、母の若かりし頃の思い出の詰まった街、「卵町」を訪れます。
この卵町が、とても不思議な異空間的な街で、
人のいない、卵の膜の中のような静かなところ。
この設定はとても好きでした。
ただ、個人的な感想を言うと、登場人物にあまり感情移入できなかったのが残念。
あたたかいというよりは、ぬるま湯につかったような、そんな歯がゆい気持ちになりました。
サナの涙の理由が読めなかった。 -
不思議な卵町なんだけど、引き込まれちゃう。
この空気感が好きだな。
余韻を残すような終わり方にも好感が持てた。 -
栗田有起の文庫が久しぶりに出ていたので早速読んだのですが、うーん、なんというか、栗田有起自身のテイストより、「ポプラ社」のテイストが勝ってしまっていた印象。同じ作家でも、出版社や掲載雑誌の傾向によって求められるものが違えば合わせるものだとは思いますが、偏見かもしれないけれど、「食堂かたつむり」のヒット以来、ポプラ社から出る作品はどの作家にもあのテイスト(なにかしら心に傷を追った女性が、ちょっと特殊な状況で癒される、食べ物の描写があればなお可)を求めているかのような。
結果、読書中になんとはなしに既視感につきまとわれるというか、展開やオチの予想がついてしまうというか、オリジナリティがないわけではないのに新しさを感じられず退屈でした。誰でも感動できるように、バカでもわかるように、という、作家ではなく出版社の本心が透けてみえてくるようで。ヒット作のフォーマットにのっとって量産されたポップミュージックみたい。ひねくれた読者でごめんなさい。
「卵町」という設定には心引かれるものがありましたが、浮世離れしたこういう町で、結局でも携帯電話がないと他者とは繋がれないんだなあという現実にもちょっと違和感を覚えます。 -
最後の一行まで、抜かりなく素敵。
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良い…静かに語られる物語、静かに変わっていく気持ち。
母への想いに気付くとき、頭で考えることと、感じることは別の存在だと感じた。私が苦手なことを、サナがしてくれた。それでいいのだと。
卵町という名前、単純だけどなかなか思いつかない。設定も、現実にありそうでなさそうな、不思議な町。
卵の殻という表現が何度か出てきたと思うけど、サナの心が動き出してから、卵の薄い殻を破る瞬間がいくつもある。それは希望を与えてくれる。
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町全体がホスピスのような静かな町。
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なんだか腑に落ちないまま読み終えてしまいました。
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栗田さんの作る世界は、現実的にみえる非現実だ。異空間の中にあるかわいさ、のようなものを感じる。大事な部分を言葉に出さず、けれど全員が感じている、というのを見て、してやられた、と感動。