ピンザの島 (一般書)

  • ポプラ社
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本棚登録 : 97
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591137765

感想・レビュー・書評

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  • 『あん』を読んでドリアン助川の作品の良さを感じたので新刊も読んだ。いろいろな事情を抱える男女3人が見知らぬ島で働き、命の大切さなどを学び、それぞれが成長していく姿を描いている。途中、残酷なシーンがあり泣いてしまったが私たち人間が生きていくためには命をいただく事は必要なので、受け止めるべきだと自分自身に言い聞かせた。ピンザを通して主人公や読者も成長をする作品だと感じた。

  • 芯に迫る言葉はいくつも出てきたけれど、物語じたいはあまり目新しさはなかったように感じた。ラストで何か変わるかな、と期待しながら読み進めたけれどわりと予定通りだった気がする。チーズはたべたくなった。前の読んだ本でも感じたがこの作者は食べ物を書くのが上手い気がする。言葉の使い方が上手だからかなぁ。

  • ピンザとは宮古島の言葉でヤギの事を指すようです。でも本作は創作なので宮古島とは無関係です。
    わざわざそういう書き方をするという事は、この本がその島を題材にしていたら著しくマイナスになるという事です。外部から新しい血を入れたいという心と、それに反して島の秩序を乱す方向になる可能性のある風はいらないという相反する感情。前回読んだ額賀さんの本と妙に方向性が似ているので偶然ってすごいなと思いましたが、こちらは沈み込むように重い澱を底から掻き混ぜているような感じです。
    ドリアンさんが、島の人々をやたらとがさつに描いているのと、風習の描き方が陰惨でそこに引っ掛かりを憶えました。自分が離島の出身だったら読んでいて嫌な気持ちになったかもしれないなと思った次第です。

  • 登場人物たちも、生い立ちや機会の不遇や不運で、虚しさや劣等感にもがき苦しんでいる。その様子がひしひしと伝わってきます。離島という狭いコミュニティの因習のなかで、過酷な自然に向き合い、山羊をと殺し、生きるという日常の厳しさを通じて、自分と、また周囲とどう折り合いをつけ、日々を重ねるかを指南してくれた気がします。

  • とある島で暮らすことを決めた若者の話。
    自身の弱さを知っているだけに、生きづらい人生を送ってきた主人公。島は閉鎖的な空間にありがちな住む人たちだけのしきたりがあり、人間関係があり、余程のことがない限りよそ者を歓迎することはないと思える。
    そこで、死んだ父親の夢であったチーズを、かつての父の親友と完成させようと奔走する。そして、自身の欠落した部分を埋めていく。
    島の自然やピンザ(ヤギ)などは生命力があふれていますが、島に突き出す急峻な山岳、山道の別れ道、断壁、森の原生林、海につながる洞窟など、位置関係や映像がうまくイメージできず。自分自身の想像力が足りないのか、疲れているのか・・・。
    最後をあえて書かないことの選択は想像力の足りない私でも余韻を楽しめた。

  • 「ピンザの島」ドリアン助川
    大人の夢の物語。苔色。

    サラリーマンの夢といったら脱サラで、脱サラといったら田舎で有機農業、みたいなひとつのパターンがありますが、
    それを題材にしつつ”田舎でやってこうなんて簡単に考えると人生挫折するぜ”と釘を刺すようなストーリーです。
    読ませ方がうまくてさらっと読み切っちゃいました。

    結局全体的に話が中途半端に終わってしまった感があって残念です。
    離島っていまだにこんな感じのコミュニティなのかしらん。(3)

  • 2014/8/21-8/23
    これは面白いのか?驚愕のラストか?この作家であるならばもっと生きる力を表現できると思う。

  • 3人の若者が、工事現場のアルバイトをするために離島に向かう。そこには、コンビニはおろか1軒のお店も無く、携帯電話は通じない。そして、そこにはピンザ(やぎ)が住んでいる。
    離島でパラダイスのような自然のなか、自由に生きるイカレタ生活。そんな小説になっていくのかと思っていたら、そうではなかった。
    若者たちは、島の生活に受け入れられたわけではなかった。
    不自由な生活の上に、島の住民とのトラブル。
    しかし、その生活の中、生きる目的を持っていなかった若者たちは、何かを掴み始める。
    そして、ひとりの青年は、ひとつの大事なタネをみつけ、それともに島の暮らしを続けることを選択する。
    命を感じる小説だった。そして、舞台に登場してくるピンザの姿、また、つねに底にある自然の描写に、作者の細やかな愛情を感じた。

  • 一気読みした。

    最近、軽めの本が多かったから、しっかり読んだという満足感。
    ただ、最後が物足りなかった。台風後の島の様子を書いてほしかった。書かれていないのが良さなのかもしれないけれど、手紙の内容とか先生のこととかいろいろ気になって……。

    「命あれば」とよく言われえるけど、ほんと生きてさえいれば、やり直せるんだろうね。
    「敗北は大事ですよ」というハシさんの言葉は重みがあった。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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