- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591137765
感想・レビュー・書評
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ピンザとは宮古島の言葉でヤギの事を指すようです。でも本作は創作なので宮古島とは無関係です。
わざわざそういう書き方をするという事は、この本がその島を題材にしていたら著しくマイナスになるという事です。外部から新しい血を入れたいという心と、それに反して島の秩序を乱す方向になる可能性のある風はいらないという相反する感情。前回読んだ額賀さんの本と妙に方向性が似ているので偶然ってすごいなと思いましたが、こちらは沈み込むように重い澱を底から掻き混ぜているような感じです。
ドリアンさんが、島の人々をやたらとがさつに描いているのと、風習の描き方が陰惨でそこに引っ掛かりを憶えました。自分が離島の出身だったら読んでいて嫌な気持ちになったかもしれないなと思った次第です。 -
登場人物たちも、生い立ちや機会の不遇や不運で、虚しさや劣等感にもがき苦しんでいる。その様子がひしひしと伝わってきます。離島という狭いコミュニティの因習のなかで、過酷な自然に向き合い、山羊をと殺し、生きるという日常の厳しさを通じて、自分と、また周囲とどう折り合いをつけ、日々を重ねるかを指南してくれた気がします。
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「ピンザの島」ドリアン助川
大人の夢の物語。苔色。
サラリーマンの夢といったら脱サラで、脱サラといったら田舎で有機農業、みたいなひとつのパターンがありますが、
それを題材にしつつ”田舎でやってこうなんて簡単に考えると人生挫折するぜ”と釘を刺すようなストーリーです。
読ませ方がうまくてさらっと読み切っちゃいました。
結局全体的に話が中途半端に終わってしまった感があって残念です。
離島っていまだにこんな感じのコミュニティなのかしらん。(3) -
2014/8/21-8/23
これは面白いのか?驚愕のラストか?この作家であるならばもっと生きる力を表現できると思う。 -
3人の若者が、工事現場のアルバイトをするために離島に向かう。そこには、コンビニはおろか1軒のお店も無く、携帯電話は通じない。そして、そこにはピンザ(やぎ)が住んでいる。
離島でパラダイスのような自然のなか、自由に生きるイカレタ生活。そんな小説になっていくのかと思っていたら、そうではなかった。
若者たちは、島の生活に受け入れられたわけではなかった。
不自由な生活の上に、島の住民とのトラブル。
しかし、その生活の中、生きる目的を持っていなかった若者たちは、何かを掴み始める。
そして、ひとりの青年は、ひとつの大事なタネをみつけ、それともに島の暮らしを続けることを選択する。
命を感じる小説だった。そして、舞台に登場してくるピンザの姿、また、つねに底にある自然の描写に、作者の細やかな愛情を感じた。