(017)母という病 (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591137772

作品紹介・あらすじ

母親という十字架に苦しんでいる人へ――。
15万部突破!大反響! 現役精神科医による、感動的かつ衝撃的な提言。

あなたの「生きづらさ」の根源には、母親との関係が影響しているかもしれません。
母親との関係は、単に母親一人との関係だけではなく、恋愛、子育てなどの人間関係にも影響を与えるといいます。
また、うつや依存症など、精神的な問題の要因にもなると言われています。
「母という病」を知って、それに向き合い、克服することが実り多い人生を手に入れる近道になります。

感想・レビュー・書評

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  • 動物、人は、母から産まれてくる。
    母が子を育てることは、当然、本能とされている。
    「母だから」「母なのに」・・・
    その言葉に傷つく女性=母たちが大勢いる。

    母なる大地、母は太陽、母なる海・・・などと、
    母は偉大な存在なんかではない。
    土砂崩れを起こしたり、雲に隠れたり、津波になったり、決して平穏な存在ではない。

    なぜなら、母も一人の人間。
    完璧な人間がいないように、完璧な母はいない。

    「母という病」によって、
    ヘッセのような文学がうまれたり、
    ジョン・レノンのように素晴らしい音楽がうまれたり、
    岡本太郎のように、芸術品ができたり、
    全てがマイナスばかりではなく、
    本人の資質が大きくかかわっていると思う。

    子供の時には気づかなかった、母の姿が、
    成長することで、客観的にみることができ、
    状況や理由を理解し、許すことができたら、
    きっと、その時が、親離れ、大人に成長した証かもしれない。
    傷ついたまま、成長できない子供たちには、
    しっかりと大人のサポートが得られたら、
    どんなにいいか。
    そして、この本は心の傷に、暖かい手でそっと包んでくれる。

  • 岡田先生の本を読むと過去の経験がまるっと受け入れられるような感覚になる

    「過去の傷や渇きはそのままにしておいても絶対に消えることはない。だからこそ正面から向き合わなくてはならない」という旨のことが本書で述べられていた
    これはなかなかに難しく、大変なことだ

    "信じること"がどういうことなのか最近わかってきたけど、"許すこと"がどういうことなのかはまだよくわからない
    藤井風の帰ろうにその本質があるような気がしていて、とすると許すこととは"忘れること"なのではないかと思う
    必ずしも痛みと正面から向き合う必要はないのかもしれない

    ✏自分は大丈夫だという安心感は、自分の力に対する自信からだけではなく、困ったときはきっと誰かが助けてくれるという周囲に対する信頼感(=基本的信頼感)からもきている

    ✏母親が自己愛的になるということは、母性を失うということに等しい

    ✏自分自身が自立していない母親は、自分の人生を主体的に生きるということができないため、思い通りになる子どもを、際限なく甘やかすことで、ある種の代理的満足を得ようとするのだ

    ✏オキシトシン・リッチな人では、寛容で、とらわれない性格を示しやすいのだが、オキシトシン・プアな人では、厳格で、ルールに縛られ、潔癖になりやすい

    ✏そもそも自立という関門は、ある意味、母親に見切りをつけるプロセスだと言える。(中略)たっぷり甘えて、愛情をもらった人のほうが、この関門を容易に通過できるのだが、母親に愛されなかった人ほど、未練が強くなる

    ✏完璧を求めるのは、思春期までで十分だ。そろそろ終わりにしよう。大人として円熟するということは、完璧へのこだわりを卒業するということなのかもしれない

    ✏母親から愛情をもらえず、母という病を抱えた人は、しばしば自分が誰かの親代わりの存在になることで、自分に得られなかったものを他人に与え、それによって自分の抱えた傷を乗り越えようとする

    ✏苦しみの九割はら自分自身の傷つきやすさと人を信じられない気持ちが作り出している

    ✏思い込みは、傷ついた気持ちが映し出された幻だ。幻にとらわれて、過剰反応してしまうことで、余計に事態をまずくしてしまう

    ✏親のことを許すことができたとき、子どもは自分に対しても、誰に対しても、大きな肯定を手に入れることができる。人生に対して、これで良かったと思うことができる。

    ✏そしてある日、まるで自分を蝕んでいた害毒がら透明な結晶となって固まり、取り出されるように、心から剥がれ落ちる

  • 乳幼児期には絶対に母親が必要。
    それ以降も母親の存在は生物学的にも必要。
    著者の患者の例や著名人の具体例があるためわかりやすい。
    問題なのは母親が子供と関わる時間が取れなくなってしまった現代社会。
    子供のことを考えて行き方を変えていかなければならない。

  • 母親の存在の大きさに驚いた。それぞれの人の価値観や考え方は過去に起因することは分かっていたが、経験を受け止める皿として母親の存在があるため、それが重要。乳幼児期の母親の存在がオキシトシンの受容体の数に影響することが衝撃的だった。
    人のどんな行動も愛着を求めてゆえだと思えると対処しやすくなる感じがした。
    過干渉、母親の自己愛、兄弟との比較など客観的に見れば問題があってもいざやろうとするとバランスが難しいんだろうなぁととても思う。
    自分は母親という病を乗り越えて今は安定しているのかな。幼少期の癇癪、悪戯、乱暴、悪い行為もそうだし、中高生の時期に頑張って完璧を求めていた部分もそうなのだろう。あとは最近まであった、楽しいとか幸せだと感じても一瞬後には全てがダメになってしまうような不安感。
    けど今は家庭の中の問題に気づいて混乱とか衝撃は大きかったが人との会話も繰り返しながら事実を捉えて向き合えるようになった。早い段階で気づいて対処できて良かったし、受け止めてもらえる環境だったのが非常にありがたい。
    自分の大切な人からの愛情を、信じられずに跳ね飛ばしてしまうことはとても悲しい。現にそうしかけている自分がいる。不安になった時は相手の考えを聞いてそのまま受け止めるようにしたい。自信のなさでバイアスがかかることもあると思うが。
    「100点でなく50点で満足できると、人生はずっと楽になる。60点だったら、上出来だと思おう。100点なんて、不自然だ。」という箇所が印象的だった。
    日本人は真面目だと言われるが、慎重派だったり頑張りすぎてしまう部分がずっと母親から子へと受け継がれた結果だとしたなら悲しいなと感じる。

  • 2023年6月13日読了。母親に愛されないなど満足いく関係を持てなかった子どもがまた母親になり、不完全な関係を再創出してしまう連鎖を「病」と表現しその症例を色々紹介する本。愛情をコントロールできず自傷などに走る悲しい状態を「病だったんだ」と自己認識できることで快方に向かう、ということはあるかもしれない。興味深くはあるが、なんでもかんでも「それは母子関係のせいなのだ」と言われ、著者の断言を裏付けるデータも示されないため「ふーん、本当にそうなんかな?」という疑問が読んでいてどうも拭えない。しかし、「母という病」がこれだけ複雑でしかもいろんな形で発生しうるものであるなら、そりゃあ結婚して親になるという選択肢を選ばない人間が増えるはずだよな。

  • 母の存在、そして愛の関係性がどんなに重要かということを改めて思い巡らしながら読み進めた。紹介されるケースに自分自身の身を置きながら、私と母との関わり、私と娘との関わりを考察してみるきっかけとなった。

    そもそも、「完璧な自分」「理想の自分」って、そんなに良いものだろうか?それは、本当に自分が望むものだろうか。(p278)
    「悪い子」の自分も、また大切な自分だということ。「悪い子」の自分を受け入れたとき、人は一人前に一歩近づく。(p279)

    失敗をし、迷いながらでも、なんとか毎日過ごしている自分に、それでいいんだよと言ってもらえてる気がした。

  • 子育てをする中で
    自分と母親との関係が歪んでいたのではないかと思うようになった。
    いわゆる毒親というものにピンと来た。
    それと同時に自分の子育てが不安になった。

    子ども時代の、
    そして今現在の答え合わせをするみたいに読んだ。

    読み急ぎるほど関心の深い本だった。

    こわいから、少し読んでいないところもある。

  • 愛着障害についての理解が深まる本。

    私自身、母に対して抱えていた想いは心理療法(箱庭療法、アートセラピーなど)を受けたり、学んでいることで、ほとんど癒され、今は仲も良いけれど、人との関係性を結ぶこと、深い愛着を築くことがあまり得意じゃないので読んでみた。

    私の母の場合、父がうつ病で仕事に行けなくなってしまったことで、家庭の中で父的な役割を背負わなきゃいけないというプレッシャーが、母から母性的な要素を奪ったのではないかと思った。母はすごく大きなストレスを抱えていたと思うし、私の記憶の中に笑顔で幸せそうな母はどこにもいない。それと、生まれて間もない頃に母がすぐ仕事に復帰したことで、母との愛着が結べないままに保育所に預けられてしまったことも、関係しているんだなぁと、本を読んで思った。

    以下、本を読んで色々と感じたことのメモ。

    未知なる感情に次々と出会っていく幼い子どもにとって、その感情に母親がどのように寄り添ってくれるか、というのはとても大切だし、それがそのまま、その子にとって人生における感情のつながり方に反映されるのはよく分かる。怖い、悲しい、辛い、不安、孤独…それとどれだけ深く繋がり、向き合えるかが、その人がどれだけその人自身を生きられるか、自己創造していけるかにも関わっていると思う。繋がることを避けている感情があるほどに、その人は自己を深めるということを避けてしまうし、偽りの部分をどこかでつくってしまう。他者との深い愛着を築くことも、他者の感情を理解することも難しくなる。

    繋がれる感情が多いほど、それはその人に表現の幅を与えてもくれるのだと思う。ちゃんと愛着を築いてあげることって、本当に子育てにおいて何より大切なことで、子どもの創造性を引き出すことにも繋がっていくのだと思う。

    幼い頃に愛に飢えてそのままになっている人は、悲しみや不安という感情と素直に繋がれないために、攻撃的な自分をつくることでこの世をサバイブしようとしている人も多いだろうし、色々と問題を抱えた人も多いと思う。

    根本的にそうした問題を解決しようと思うとき、こうした愛着の問題に目を向けるのは必須だと思う。

  • 本の中に自分を発見しました。(p.232)
    母との関係が今の自分を作っているなんて思いもよらず、ただなんとなく、最近母とうまくいかないなあと思い手に取った本。
    冒頭から虐待にあった子ども、ネグレクトにあった子ども、捨てられた子ども、本当に想像を絶するありとあらゆる不幸な子どもの半生が書かれていた。

    ああ、自分のことではないと読み進めていたが、232ページ目に自分を発見してしまった。幼い頃に母にされた厳し目の躾、弟ばかり可愛がる母の眼差し、わたしのことを豚呼ばわりする両親の嘲る笑い声、ヒステリーみたいに叫ぶ母と物を投げまくる父、私には全く無関心で弟の野球の話に明け暮れる夕飯の時間。
    ありとあらゆる嫌な場面が走馬灯のように襲ってきた。ああ、こんなにも私は内側に黒々とした思いを閉じ込めてきたのか、と、

    昨日、久しぶりに実家に帰ってわかった。私があの家でどれだけのストレスを抱えていたのか。聞かないように注意していても耳に入ってきてしまう両親の罵声。母親が酷いことを言われていないか、気づかぬうちにそば耳を立てていた。ご飯を食べる時のぎくしゃくした雰囲気。父が怒り狂うのが怖くてだまったまま俯いて食べる夕飯。

    やはり、うちは、おかしいのだ。
    そう、おかしいのだ。

    そんなことを思ってはいけないとずっと思い込んでいた。父も母も一生懸命働いていたし、何より、私に愛情がないわけではないことはうすうす気づいていたから。

    でも、いま、はっきりと思う。やっぱりおかしいのだ。私はあの二人に育てられ、何かが欠落した状態で大きくなってしまった。

    手がかからないように、いい子でいるように振舞ってきた。でも爆発した。それが高校生のときのわたしなのだろう。

    きっとこれからもこの想いは伝えられないかもしれない。でも良い。気づけただけでも1つの句切れ目だ。

  • ●子どもは、明るく優しい、困ったときに、そっと寄り添ってくれるお母さんでいてほしいだけではないのか。

    とても重い内容ではあったけれど、結局はシンプルに、子どもに大好きとありがとうの気持ちで向き合うことが大切なのかな、と感じた。そして、本当の意味で子どもにとって一番の幸せを考えること。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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