定職をもたない息子への手紙

  • ポプラ社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591143094

感想・レビュー・書評

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  • イートン校を中途で退学し、以後定職につかない息子に対し、第二次世界大戦のベテランでのちに競馬解説者として活躍した筆者が、二十五年間に亘って送り続けた私信をまとめたもの。

    内容は全くの私信。
    その内容はイギリス人らしいシニカルさに溢れており、真面目で偏屈、ちゃんと仕事をしている父親から、どう打てども響かない息子に対し、歯がゆい苛立ちと鬱憤をぶつけつつも、連絡を絶やすわけにもいかない愛情で包み込んだ手紙。
    1967年から最後の手紙1991年まで、結局息子は定職につかない。
    どうしようもない息子が行った仕事は、父親の手紙の合間に短くその時の自分の状況をコメントしただけ。それも、アルコール中毒で体を壊していたとか、麻薬で捕まっていたとか....

    本書はタイトルに惹かれて勝った。
    読みつつ気が滅入る状況は深まるばかり。
    そして、将来に向けて、同じような生涯を送りそうな自分と息子の行く末に絶望する。
    面白く、気が滅入る本だった。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • すごく面白かった!!
    文体は本当に普通のお父さんなのに、ユーモアが最高で、何度も吹き出して笑ってしまった。でもとても愛情深くて、読んでてこのお父さんが大好きになった。(リハビリ施設に入った息子に理由を尋ねたくだり、ちょっと泣けてしまったのだよな。考えすぎかな...)

  • 父親からの書簡集なんだけど期待したほどではなかった。
    序盤の説教臭い内容の方が読みがいがあった。

  •  イギリス人の競馬解説者で著書や雑誌への寄稿も多い「父」が、名門イートン校に通うもとことん落ちこぼれ、父親の心配やアドバイスも空しく奔放に生きていく「息子」に対して、1967年(父58歳、息子15歳)から1991年(父82歳、息子39歳)まで書き続けた手紙を集め、息子のごく簡単なコメントを挟んだもの。
     確か雑誌「英語教育」で紹介された本で、ずっと読もうと思っていたものをやっと読んだ。本当は英語で読もうと思ったが、Dear Lupinという洋書らしいが、Amazonでは中古でしか手に入らず、結局日本語で読んだ。でも普段読まない感じのごく日常の私信で、聞きなれない固有名詞に満ちた独特の感じがあり、英語で全部読むのは難しかったかもしれない。この翻訳は不自然なところもなく、父親の口調も雰囲気たっぷりで、とても分かりやすいと思った。
     まずイギリス人らしい、というのか、悲観的、皮肉、ブラックユーモア、みたいなものが各ページに溢れていて、それだけで楽しい。「昨夜、お前がバブラーを玄関にぴったり寄せて停めていたせいで、夕食にやってきた年輩の客人たちは、家に入ることすらできないような有様だった」(p.35)、「母さんが、ネズミの死骸を食卓の上に置いて私に嫌がらせをしてきた。」(p.145)、「死んだ烏に群がるウジ虫よりも大量のゴミで、お前の部屋はいっぱいだ。」(p.195)など、日常のネガティブな話題や愚痴が必ず出てくる。楽しいという訳ではないけど、必ず誰かしらの訃報が出てくる。ほとんどゴシップ的な感じにもなっているが、例えば「パーシー・サミュエル・ウッドという運転手が、水たまりに顔を突っ込んで自殺した。何もそんな苦しい方法で死ななくてもいいと思うのだが!」(p.179)とか、そういう話題にも溢れている。
     けれどもこの本の本質は、親の息子への愛情、老いとともに訪れる人生の受容(諦観?)、そしてなんだかんだ言って手紙をずっと保管し続けている息子の、親への感謝、みたいなことだと思う。(あとは日本人とは違うイギリス人性?みたいなもの。)始めは本当に息子を案じる内容、説教だったものが、次第に変化していく様子というのが、ノンフィクションの記録だけにしみじみと感じることができる。、「いわば言葉のスナップ写真」(p.8)と息子は言っているが、まさにそんな感じで、知らない家族だけれどもずっとそのスナップ写真を見ている、という感じだった。
     ちょうど父の晩年の息子が、おれの歳に相当しているのも、面白く読めた理由の1つかもしれない。父のアドバイスや人生訓のようなものが、もしかしたら自分に刺さることもあるのではないかと思いつつ読んでいた節もある。一つあったのは、「お前はおそらく三十代に突入るはずだ。あまり愉快な年齢とは言いがたい。生え際は後退し、息が続かなくなり、態度は大きくなるばかりか、何だか自分が報われぬ人生を送っているかのような気持ちになってくる。だが、くじけるな!四十代になるといろいろなことが気にならなくなり、派手なことなどなくても静かに暮らせていればいいかと、人生を受け入れられるようになってくる。(略)理想に燃える人びとは理想を持たぬ人びとに比べ、同世代で成功している人びとを見て嫉妬心を抱いたりして不幸なものだ。」(p.154)というのが、まさに今は色々気にし過ぎて憂鬱な時間が多いおれにとっては、いくらか励ましの言葉になった気がする。あと面白いのは、「私がコールドストリー連隊にいた頃、非常に為になる『必死にやってくたびれるくらいなら、多少怒鳴られた方がまし』という格言があったのだが、お前は知らないだろうか?(略)『夜が暗いときほど、天気が悪いときほど、頑張って訓練せよ』との格言もあったが、こちらは不人気だった」(p.166)というのも、そういうものかもしれない。
     最後に、この本の登場人物の名前が整理されているが、多すぎて結局よく分からない。奥さんの愛称ニドノッド、兄妹の名前、ペットの犬の名前くらいは分かっておくと読みやすいかもしれない。(20/06/25)

  • 出来の悪い息子に父親(競馬解説者)が
    送り続けた手紙が載っています。
    ほぼ手紙だけ。でもこれがとっても面白い!!
    ベストセラーになったのも頷けます。
    (amazon.ukではレビューが553ついています)

    「これがイギリス人というものか…」と
    思わずにいられないフレーズのオンパレード。
    家族の近況も書いているものの、頻繁に誰それ
    (近所の人?)が亡くなったということや、
    誰それの家の食事はまずかった(!)ことなども
    書かれている。

    印象に残ったフレーズをいくつか抜粋。
    「お前に深刻な手紙を書くのは、寝室用のスリッパを
    履いて重さ三十トンのコンクリートの塊を
    蹴っ飛ばすことと同じくらい無駄なことだと、
    私には分かっている」(p63)
    「ここ七年、お前は来る日も来る日も自分の
    ゴールに向けてボールを蹴り続け、今
    チームをくびになりかけているところだ。」(p69)
    「翌朝夫人はささやかな二日酔いに見舞われ、
    ジステンバーから回復中のパグみたいな顔をして
    現れた。」(p101)
    「私の最新刊がフィナンシャル・タイムズ紙で
    べた褒めされた。たぶん三冊くらいは余計に
    売れるだろう。」(p119)
    「サーティースが新しい車を買った。やたらと
    車体の長いボルボで、霊柩車にはぴったりだ」(p122)
    「彼女のご家族は、まるでサーカスから逃げ出した
    怪物を見るような目で、私をじっと見つめたまま
    立ち尽くしていた。」(p124)
    「今夜はこれからサーティース家で夕食だ。
    納屋に二十人が詰め込まれる!」(p138)

  • 2018/11/6読了


    本当にどうしようもない息子を見限らずに
    ずっと息子と付き合ってきた、立派な父親からの私信。
    ・・・というか本当によくこの息子を見放さなかったなと思う。
    実の子であっても、たとえ愛していても
    ここまで犯罪的なクズ息子を息子として扱えるだろうか
    私なら・・・つきあってられぬ


    けど、どんな子どもだろうと
    見守り続けるのが親としての責務であるのだろう。

  • かくも悲観的に
    こんなにも許せる
    父って・・・
    息子よ!しっかりせい!!

  • 新聞の書評を読んで購入。が、期待が大きかった分、ハズレ感も大きい。子を思う親の気持ちの込められた25年もの間、息子に送り続けられた手紙。しかし、人間関係や親族関係、近所づきあい等々、分からないなかでの手紙なので、読者には読みづらい・・・。結局、途中断念の1冊に。。

  • レビューで面白そうだと思って手に取った。確かにイギリス人らしいシニカルな手紙は面白いが…期待しすぎてしまったかも。
    それにしても親って優しいものだ。

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