([と]1-2)あん (ポプラ文庫 と 1-2)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591144893

感想・レビュー・書評

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  • ドリアン助川さん初読み。
    著者の名前がふざけてるので、軽く楽しめる内容の小説かと思っていましたが、良い意味で裏切られました。

    前半は無気力な中年店長と指の変形した老女のどら焼き屋再生物語。後半は老女の生涯を交えながらのハンセン病患者や元患者の苦難の歴史を振り返る内容です。

    約30年前にハンセン病の方々が自由を勝ち取った頃に、医療職についたばかりだった私はそのニュースを新聞で食い入るように読んだことを思い出しました。

    いろんな差別や偏見もそうですが、塀の外に一生出られない絶望感は想像を超えるものでした。

    ハッピーエンドとは言わないまでも店長と老女の心の交流がじんわり心に沁みる良書です♪

    • hibuさん
      scentさん、こんばんは!
      映画もあるのですね!ご紹介ありがとうございます♪
      scentさん、こんばんは!
      映画もあるのですね!ご紹介ありがとうございます♪
      2024/01/23
    • こっとんさん
      hibuさん、こんばんは♪
      私も映画、オススメです!
      私は映画→原作でした。
      hibuさん、こんばんは♪
      私も映画、オススメです!
      私は映画→原作でした。
      2024/01/23
    • hibuさん
      こっとんさん、こんばんは!
      こっとんさんも映画推しなんですね!
      ますます観たくなってきました^_^
      こっとんさん、こんばんは!
      こっとんさんも映画推しなんですね!
      ますます観たくなってきました^_^
      2024/01/23
  • R1.5.4 読了。

     タイトルと表紙で衝動買いした本。人生に希望が見いだせないどら焼き屋の雇われ店長の千太郎と元ハンセン病患者の老女の徳江がどら焼き屋での仕事を通して交流していく物語。
     ハンセン病療養所なる施設がこの国に存在し、まるで社会から隔絶された世界が存在したこと、ハンセン病によって後遺症の残る身体や四肢などが、周囲の人たちから非難めいた眼で見られるつらさ、病気よる身体の痛みや苦しみなどをこの本を通して知ることができた。
    また、現代では有効な治療薬があること、元ハンセン病患者は完治していて他者へは感染しないことなども記されているのに、仮に自分が元ハンセン病の患者に出会ったらと考えた時に、自分の中にも一般的な人並みの偏見や差別の心があることを気付かされて恥ずかしく思った。

     読み進めていくうちに、これまでたくさんのつらい体験をしてきたであろう徳江さんの優しさや他者への慈しみに、癒されているんだなあと気づかされました。自分も周りの人もありのままで受け止められる自分になりたいです。
     また、映画「あん」も観てみたい。徳江役は樹木希林さんということなので。きっとハマリ役のような気がします。

    ・「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、教師になれずとも勤め人になれずとも、この世に生まれてきた意味はある。」
    ・「患者を一般社会から隔離することを定めた「らい予防法」が廃止されたのはほんの20年ほど前、1996年のこと。病気じたいは過去のものとなっても、それぞれの元患者たちに流れた時間の重みが取り払われるわけではない。かつてこの国で何が行われていたのか、偏見をなくすには何が必要なのか。読者一人ひとり、この国に暮らすすべての人が、知らなければならない、考えなければならないことだ。私自身、この小説を読むまでは、療養施設で暮らす元患者らが、どんなふうにその長い時間を生きたか、どうやって自分自身の中にすらある偏見と向き合い、どうやって心の豊かさと尊厳を保って暮らしたかをまるで知らなかった。(解説より)」

    R2.4.25 映画「あん」をみました。樹木希林さんの演じた徳江さんは、とても無垢できれいで温かい女性でした。やはり素晴らしい作品ですね。

    • ikkeiさん
      映画とても良かったです。
      映画とても良かったです。
      2019/05/15
  • 初めての作家さん。
    「21カ国で翻訳されたベストセラー」という帯につられて。読みやすく、途中で飽きることなく一気に読めました。
    序盤は無性にあんこを炊きたくなりました。想像していたよりも重いテーマを織り混ぜた内容でした。昔はほんとうに大変な時代だったんだなと、考えさせられました。とても良い作品だと思います。

  • 何も知らないできてしまっていた。

    ハンセン病という病気と共に生きてきた人々のこと。

    感染源がわからないということで、
    家族と離され、療養所の外の世界と隔離されて
    長い長い間出られなかったこと。

    親から付けてもらった名前まで、取り上げられたこと。

    この本は職場の読書友から薦められて読みました。

    目的を持てずに生きているどら焼き屋の店長千太郎と
    あん作りを教えることになる徳江さんの物語。

    想像力に乏しい私から見ても、
    時に過酷だと思う人生を、ひたむきに生きる人たちに出会います。

    さらりと書かれていますが、徳江さんの人生もまた
    どうしてそこまで…と思わずにはいられません。

    徳江さんが千太郎さんに出す手紙が沁みます。
    苦しんで苦しんで、死の恐怖や痛みや
    世間の偏見に傷つけられ
    崖っぷちの切羽詰まったところをみた人ではないと
    感じられない生きる意味。

    こんな自由にどこへでも行けて何でもできるのに
    心が狭く腹黒くてどうしようもない私でも
    生きる意味があるんだよと包まれる一冊です。

    なぜ自分とは違う他者が受け入れられないのか。

    心が狭い私のテーマの一つでもあるのですが…。
    この物語は力まず、自然で正直な感覚で描かれています。

    千太郎さんが、自分の中の偏見を感じつつも
    療養所を訪ね、人間としての徳江さんに
    どんどん心を寄せていくところがとても好きです。

    最後の終わり方も、とても好きです。
    きれいごとだけで終わらせてない所が、
    とっても素敵だと思いました。

    無知な私はまだまだ知らなければいけないことが
    沢山あるなと感じます。

    知ったからといって、何ができるわけではないですが
    知ると知らないのとでは大きな差があることが
    まだまだ沢山後ろに控えてますね。

    もうすぐ映画が公開されるとか。
    活字が苦手な人にも、「知ること」が広まっていく。
    いい映画になる気がします。

    私もそんな一つを知れたこと。読書友に感謝です。

  • 小さな店先でどら焼きを作っている千太郎のところへ70も半ばを過ぎた徳江が、雇ってほしいと言う。
    そこから物語は始まるのだが…。

    何故、その年齢で働きたいと思ったのか…

    読み進めていくうちにとても深い話で、ハンセン病についても詳しくは知らなかったので、良い意味でとても勉強になった。

    胸に残るものは、いったい何だろうか。
    哀しみとか、刹那さとかでもない気がする。
    表すことのできないものが、胸中押し寄せてくる。

  • 映画は観てないのですが、徳江さんのセリフは樹木希林さんの声で読んでしまいます。
    偏見は無知や恐怖から生まれるのかもしれません。
    私も知らなかったら怖いと思うし、関わらない方が良いかもと思ってしまいます。
    生きる意味とはと考える作品を、桜が咲く季節に読めて良かったです。

  • 小さなどら焼き店に高齢の女性がここで働きたいとやってきた……という始まりの物語。どら焼きのあんが丁寧に炊き上げられる様は読んでいるだけでも食欲が刺激されます。病を抱えて生きてきた高齢の女性の心の内を知っていくたびに胸がギュウッと締め付けられます。世界的ロングセラーというだけあってとても心に残るお話でした。おすすめします。 

  • 千太郎は、訳あってさびれた商店街のどら焼き屋の店主を務めている。あまり真面目にお店をやっていなかったが、ふとしたことから、徳江という名の70歳代半ばの老女にお店で働いてもらうことになる。徳江はあん作りの名人で、お店の売り上げは随分と盛り返す。
    徳江は手指が不自由であり、また、顔にひきつったような跡がある。彼女は若い頃にハンセン病を病んだことがあり、どら焼き屋から遠くはない距離のハンセン病療養所に住んでいる。

    ハンセン病はらい菌が主に皮膚と神経を侵す慢性の感染症であるが、現代では治療法が確立し完治する病気である。1981年にはWHOが治療法を勧告している。
    日本を含む世界中でハンセン病患者は差別を受けてきた。基本的に生涯にわたって強制隔離の措置を受けてきた。
    ハンセン病はらい病とも呼ばれるが、らい予防法違憲国家賠償請求訴訟と呼ばれるものがある。ハンセン病にり患した患者を伝染のおそれがあるとして強制隔離することを定めたらい予防法が、日本国憲法に対して違憲であるとして提起された国家賠償訴訟だ。最初の訴訟は1998年に熊本地裁に対して行われ、その後、訴訟は全国に拡大していく。熊本の訴訟は2001年に原告勝訴の判決がくだる。その後、東京・岡山での訴訟で原告団と国との和解が成立、この合意書をベースに、2001年12月に統一交渉団と厚労省の間で「確認事項」が決定された。

    小説の話に戻ると、徳江は14歳の時にハンセン病の診断を受け、そこから強制隔離が始まる。60年間にわたっての苦しみの始まりである。
    そのような年齢で、ある日突然、肉親とも友人とも強制的に切り離され、一生を囲いの中での生活を強いられることを宣言されたとしたら、自分であればほとんど絶望しか感じないであろう。
    おそらく上記の訴訟との関係であろうが、途中から療養所からの外出が療養所居住者に認められることとなる。徳江がどら焼き屋で働くことが出来たのはそのためである。

    小説として心を動かされるものであったが、小説を読んだ後でハンセン病の歴史を少し調べてみて、何とも言えない気持ちになった。

  • 一気読みしてしまった。

    どら焼屋の店長 千太郎
    ハンセン病の元患者 徳江さん

    2人の人生がどら焼を通じて描かれている

    偏見の中で生きてきた徳江さんの辛さは計り知れない

    そんな中でも前を向いている彼女に敬意を払いたい

    千太郎と徳江さんが作ったどら焼が食べたくなった


  • シャッターの目立つ商店街にある小さなどら焼店。そこに高齢の女性が、働かせてほしいと現れる。
    その女性の名は、元ハンセン病患者の徳江。
    私は、ハンセン病のことを何も知らなかった。
    病名だけは訴訟問題などで見聞きした程度である。
    こんなにも悲しい法律が、つい近年まであったこと。今でも辛い思いをしている人がいること。
    徳江は14歳で隔離された。まだ子供なのに、家族とはもう会えない。
    千太郎を通して、徳江の辛い過去、ハンセン病にまつわる現実を感じ取ることができた。

    物語は、店の前の桜が満開の季節から始まり、桜と共に進んでいく。
    自信を持って生きていけない千太郎は、徳江から「あん」の作り方を教えてもらい、それを受け継ごうと決意する。
    色々なメッセージが込められた作品だと思うが、生きると言うこと、生きる意味を考えさせられる物語。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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