- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591144893
感想・レビュー・書評
-
ドリアン助川さん初読み。
著者の名前がふざけてるので、軽く楽しめる内容の小説かと思っていましたが、良い意味で裏切られました。
前半は無気力な中年店長と指の変形した老女のどら焼き屋再生物語。後半は老女の生涯を交えながらのハンセン病患者や元患者の苦難の歴史を振り返る内容です。
約30年前にハンセン病の方々が自由を勝ち取った頃に、医療職についたばかりだった私はそのニュースを新聞で食い入るように読んだことを思い出しました。
いろんな差別や偏見もそうですが、塀の外に一生出られない絶望感は想像を超えるものでした。
ハッピーエンドとは言わないまでも店長と老女の心の交流がじんわり心に沁みる良書です♪ -
R1.5.4 読了。
タイトルと表紙で衝動買いした本。人生に希望が見いだせないどら焼き屋の雇われ店長の千太郎と元ハンセン病患者の老女の徳江がどら焼き屋での仕事を通して交流していく物語。
ハンセン病療養所なる施設がこの国に存在し、まるで社会から隔絶された世界が存在したこと、ハンセン病によって後遺症の残る身体や四肢などが、周囲の人たちから非難めいた眼で見られるつらさ、病気よる身体の痛みや苦しみなどをこの本を通して知ることができた。
また、現代では有効な治療薬があること、元ハンセン病患者は完治していて他者へは感染しないことなども記されているのに、仮に自分が元ハンセン病の患者に出会ったらと考えた時に、自分の中にも一般的な人並みの偏見や差別の心があることを気付かされて恥ずかしく思った。
読み進めていくうちに、これまでたくさんのつらい体験をしてきたであろう徳江さんの優しさや他者への慈しみに、癒されているんだなあと気づかされました。自分も周りの人もありのままで受け止められる自分になりたいです。
また、映画「あん」も観てみたい。徳江役は樹木希林さんということなので。きっとハマリ役のような気がします。
・「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、教師になれずとも勤め人になれずとも、この世に生まれてきた意味はある。」
・「患者を一般社会から隔離することを定めた「らい予防法」が廃止されたのはほんの20年ほど前、1996年のこと。病気じたいは過去のものとなっても、それぞれの元患者たちに流れた時間の重みが取り払われるわけではない。かつてこの国で何が行われていたのか、偏見をなくすには何が必要なのか。読者一人ひとり、この国に暮らすすべての人が、知らなければならない、考えなければならないことだ。私自身、この小説を読むまでは、療養施設で暮らす元患者らが、どんなふうにその長い時間を生きたか、どうやって自分自身の中にすらある偏見と向き合い、どうやって心の豊かさと尊厳を保って暮らしたかをまるで知らなかった。(解説より)」
R2.4.25 映画「あん」をみました。樹木希林さんの演じた徳江さんは、とても無垢できれいで温かい女性でした。やはり素晴らしい作品ですね。 -
初めての作家さん。
「21カ国で翻訳されたベストセラー」という帯につられて。読みやすく、途中で飽きることなく一気に読めました。
序盤は無性にあんこを炊きたくなりました。想像していたよりも重いテーマを織り混ぜた内容でした。昔はほんとうに大変な時代だったんだなと、考えさせられました。とても良い作品だと思います。 -
何も知らないできてしまっていた。
ハンセン病という病気と共に生きてきた人々のこと。
感染源がわからないということで、
家族と離され、療養所の外の世界と隔離されて
長い長い間出られなかったこと。
親から付けてもらった名前まで、取り上げられたこと。
この本は職場の読書友から薦められて読みました。
目的を持てずに生きているどら焼き屋の店長千太郎と
あん作りを教えることになる徳江さんの物語。
想像力に乏しい私から見ても、
時に過酷だと思う人生を、ひたむきに生きる人たちに出会います。
さらりと書かれていますが、徳江さんの人生もまた
どうしてそこまで…と思わずにはいられません。
徳江さんが千太郎さんに出す手紙が沁みます。
苦しんで苦しんで、死の恐怖や痛みや
世間の偏見に傷つけられ
崖っぷちの切羽詰まったところをみた人ではないと
感じられない生きる意味。
こんな自由にどこへでも行けて何でもできるのに
心が狭く腹黒くてどうしようもない私でも
生きる意味があるんだよと包まれる一冊です。
なぜ自分とは違う他者が受け入れられないのか。
心が狭い私のテーマの一つでもあるのですが…。
この物語は力まず、自然で正直な感覚で描かれています。
千太郎さんが、自分の中の偏見を感じつつも
療養所を訪ね、人間としての徳江さんに
どんどん心を寄せていくところがとても好きです。
最後の終わり方も、とても好きです。
きれいごとだけで終わらせてない所が、
とっても素敵だと思いました。
無知な私はまだまだ知らなければいけないことが
沢山あるなと感じます。
知ったからといって、何ができるわけではないですが
知ると知らないのとでは大きな差があることが
まだまだ沢山後ろに控えてますね。
もうすぐ映画が公開されるとか。
活字が苦手な人にも、「知ること」が広まっていく。
いい映画になる気がします。
私もそんな一つを知れたこと。読書友に感謝です。 -
小さな店先でどら焼きを作っている千太郎のところへ70も半ばを過ぎた徳江が、雇ってほしいと言う。
そこから物語は始まるのだが…。
何故、その年齢で働きたいと思ったのか…
読み進めていくうちにとても深い話で、ハンセン病についても詳しくは知らなかったので、良い意味でとても勉強になった。
胸に残るものは、いったい何だろうか。
哀しみとか、刹那さとかでもない気がする。
表すことのできないものが、胸中押し寄せてくる。 -
映画は観てないのですが、徳江さんのセリフは樹木希林さんの声で読んでしまいます。
偏見は無知や恐怖から生まれるのかもしれません。
私も知らなかったら怖いと思うし、関わらない方が良いかもと思ってしまいます。
生きる意味とはと考える作品を、桜が咲く季節に読めて良かったです。 -
小さなどら焼き店に高齢の女性がここで働きたいとやってきた……という始まりの物語。どら焼きのあんが丁寧に炊き上げられる様は読んでいるだけでも食欲が刺激されます。病を抱えて生きてきた高齢の女性の心の内を知っていくたびに胸がギュウッと締め付けられます。世界的ロングセラーというだけあってとても心に残るお話でした。おすすめします。
-
一気読みしてしまった。
どら焼屋の店長 千太郎
ハンセン病の元患者 徳江さん
2人の人生がどら焼を通じて描かれている
偏見の中で生きてきた徳江さんの辛さは計り知れない
そんな中でも前を向いている彼女に敬意を払いたい
千太郎と徳江さんが作ったどら焼が食べたくなった
-
シャッターの目立つ商店街にある小さなどら焼店。そこに高齢の女性が、働かせてほしいと現れる。
その女性の名は、元ハンセン病患者の徳江。
私は、ハンセン病のことを何も知らなかった。
病名だけは訴訟問題などで見聞きした程度である。
こんなにも悲しい法律が、つい近年まであったこと。今でも辛い思いをしている人がいること。
徳江は14歳で隔離された。まだ子供なのに、家族とはもう会えない。
千太郎を通して、徳江の辛い過去、ハンセン病にまつわる現実を感じ取ることができた。
物語は、店の前の桜が満開の季節から始まり、桜と共に進んでいく。
自信を持って生きていけない千太郎は、徳江から「あん」の作り方を教えてもらい、それを受け継ごうと決意する。
色々なメッセージが込められた作品だと思うが、生きると言うこと、生きる意味を考えさせられる物語。
映画もあるのですね!ご紹介ありがとうございます♪
映画もあるのですね!ご紹介ありがとうございます♪
私も映画、オススメです!
私は映画→原作でした。
私も映画、オススメです!
私は映画→原作でした。
こっとんさんも映画推しなんですね!
ますます観たくなってきました^_^
こっとんさんも映画推しなんですね!
ますます観たくなってきました^_^