シャバはつらいよ (ポプラ文庫 日本文学 295)

  • ポプラ社 (2016年2月4日発売)
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本 ・本 (220ページ) / ISBN・EAN: 9784591148266

感想・レビュー・書評

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  • 一昨年、ふとした時に「そう言えば、大野更紗さん、未だ生きているんだろうか」と思い、検索したら、亡くなった、という情報は出て来ず、医療社会学の研究者として数年前にも「論文」を書いていた痕跡があったので、とっても安心したという事があった。これは決して大袈裟な記述ではない。前著を読んだ方は分かると思う。

    前著「困ってるひと」を読んだのは2012年9月。13年前だ。2011年8月に発行されたばかりの時に、ウェブを賑わしていたので登録したのだった。超珍しい難病患者で、未だ20代と若いのに、死の淵をなん度も彷徨いながら、それでもポップに綴られたサバイバル体験記が世に衝撃を与えた。免疫系なので、薬の飲み方間違ったり、紫外線の下に行っても、少し怪我しても生命に関わる。障害者認定がなかなか降りなかったりして、当時叔母の介護認定なかなか降りない問題があったので共感しながら読んだのである。

    その続編があることは知っていたけど、単行本発行より10年経っていたし忘れかけていた。ホントふと思い出したのだ。ブクログレビュアーの中にも闘病中の方は数人居られるからだろうか。それで2年前6月に取り寄せた。いやあ、見事に積読になっていた(^^;)。読み出すと置く能わず直ぐに読了。

    今回は、病状そのままに、退院して一人暮らしを始める自分をレポートしている。決意した理由のひとつは生活資金の問題だろうと思える。彼女は特定疾患の難病なので治療自体は2万円ちょっとで済むけど、入院費はいろいろ重なり月12万円ちょっとかかる。自立している彼女は、親に多くを頼ろうとしていない。病院の直ぐそばにマンションを借りて、ヘルパーに洗濯や掃除や買い物をしてもらった方が安くつくのだろう。難病の彼女には、コンビニにちょっと買い物行くにも、直ぐそばの病院に週2度通うのも大変なのだけど、それを明るく描写する。障害者は電動車椅子を「買う」為だけにでも、何度も手続きに出向き、待つこと半年以上なのだ。そして少しづつ「社会」が広がってゆく。

    そんな時に、東日本大震災が起こる。両親も親族も福島だ。東京とは言え、彼女の部屋は本棚が倒れるところだった。わたしはいろいろ心配する。たとえ助かっても生きていけるのか?

    しかし、彼女は生き延びる。
    ツイッターの見も知らぬサラリーマンが彼女の呟きだけで、一度だけ助けてくれたりする。彼女は、元ミャンマー難民支援の研究者だった。かなりクレバーに自分の状況を「分析」する。
    こんな「非常時の時」、例えば大野さんも大変なのに「障害者にしかわからない必要なことリスト」をSNS 発信していた。「不幸のどん底にありながら、人は困っている人に手を差し伸べる」(『災害ユートピア』)。ユートピアの特徴は、一時的なもので、しばらくするともとに戻ってしまうことなのだそうだ。

    それでも「震災」は彼女を社会に結びつけた。彼女はもともとポジティブだから、「恒常的にシステムを変える」方向に自分を生かす道を見つける。具体的には大学院の研究生になった。現在地道に研究を続けていると思う。続編は未だ出ていない。

  • 難病を持つ大野さんが一人暮らしを始めました
    最初の鍵が2この段階から大変そうだったのに、一人暮らしだなんて!!

    さらに震災でピンチになります

    日本は難病や車椅子の方たちにとって、優しい国ではないんだなと思いました。

    難病を抱えながらも、誰かの役に立ちたい!と思える大野さんがすごいと思いました!!

  • ダヴィンチプラチナ本から。希少な難病に罹患した当事者からのルポ。ちょうど震災と時期が重なったこともあり、有事における対応にも言及される。当たり前のことが不自由になった立場に思いを馳せることが出来る、なかなかに得難い読書体験。

  • 以前から気になっていた本だった。
    ようやく読むことができた。

    書かれている内容は重い。
    まずもって筆者の抱える病の症状の大変さ。
    治療を続ける心身の負担。
    そのうえ医療費の負担、制度の複雑さが重なる。
    でも、軽い文体で書かれ、ページをめくる手が止まらなくなる。
    自分を客観視して、時にユーモラスにさえ描き出す。

    一番興味深かったのは、SNSでつながった人が、「ほんの通りすがり」のように、突然助けにやってくること。
    これは、もちろん筆者の人柄が魅力的であるからもあるのだろうけれど…。
    助けることに見返りもない代わりに、期待もされない。
    そんな形なら、むしろ人に親切にしやすいことがある。
    目からうろこが落ちた気分もする。
    でも、少し後になって考えてみると、自分もそうかもしれないと思えてくる。
    これがもし、普遍的な人間の発想にあるなら、うまく生かして社会につなぐ方法ができるといいな、と思う。

  • 1.目的
    難病女子が、どのようなきっかけで、今の活躍に至ったのか知りたかった

    2.得られたこと
    ひとは辛いことを乗り越えた時に、何か天命に気づく。
    彼女は自身の難病と闘いながら、東日本大震災を経験し、当時ツイッターで、同じように病気で動けないひとの状況を発信し、助けをつなげた。それが今の仕事につながっている。

    3.アイデア
    なんの前ぶれもなく、同じ状況に立たされた今、これを乗り越えた先を想像していきたい。私たちに何ができるだろうか?強みを掛け合わせたら大きな社会貢献ができるような気がする。

  • 所蔵無し (※現在発注中です!)
    「コミカルで笑えるけど難病について考えさせられる本でした。」

    コメントをありがとうございました! 
    (黒板書架「当事者の心を知る」特集コメント ”あなたのおススメ本を教えてください”より)

  • 『困ってるひと』『さらさらさん』の続編。難病に苦しみながらも退院を果たし、シャバに出た著者を待ち受けていたのは…

    『困ってるひと』を読んだ時には感じなかったのに、読んでいて気が重くなった。

  • 916(闘病記文庫・疾病49)

  • 大野更紗

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