- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591149645
作品紹介・あらすじ
現代の教養として、コーランを読むこと――。
イスラーム教と、その信仰者と
どのように関係を取り結んでいくか、
これは国際社会の重要な課題である。
コーランを通して西欧におけるイスラーム思想がどのように解釈されてきたかを探る本書は、
日本に生きる私たちが世界情勢の本質を掴むための手がかりとなるだろう。
読むものの知的好奇心を刺激する、現代人必読の書。
感想・レビュー・書評
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【相見の歴史】世界史に多大な影響を与えた「徴の書」である『コーラン』。「神の書」である『コーラン』がどのように人間によって読まれ、そして誦まれてきたかを紹介していく作品です。著者は、イスラームのみならず、ヒンドゥー教や仏教などについても深い見識を有するブルース・ローレンス。訳者は、自らも中東情勢に関する著作を世に送り出している池内恵。原題は、『The Qur'an』。
訳者がまえがきで記しているように、イスラームを形作るものを個々に切り出して解説するのではなく、イスラームの体型を丸ごと映し出し、総体として理解するのに適した一冊だと思います。イスラームについて知りたい方が最初に手に取る本としては少し難解かと思いますが、いくつかの概説書の後に本書を目にすると、一つ深い視点を獲得することができるかと。
〜「神の言葉」に込められた真実の地平は、いつになっても手に届く範囲の彼方にある。いかなる解釈者もこの運命を免れない。しかしコーランをめぐる論議に一つの視点を示すことはできる。時代を超えて行われてきたのはこの営為である。〜
訳者による解説もこれまたお見事☆5つ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
流し読みは無理。信仰心の薄い自分にとっては前提となる概念から理解しないと進めないので、読むのに時間がかかった。でも不親切な書というつもりはない。むしろ逆で、文化的に重なりがない人にも理解ができるよう構成の工夫がある。
自分には骨のある本だったけれど専門家に言わせたら超入門なのだと思う。今もある問題の根源は何か、読んで取っ掛かりはわかった。読んでよかった。
コーランから英語に訳すのも大変。信仰に関わる微妙なニュアンスや表現の(やむを得ない)取捨選択がある。この本はさらに日本語に訳されている。訳出作業はめちゃくちゃ気を遣っただろうなあ。 -
真っ当な学術書で割と軽め。
イスラム教のユニークさが体系的にようやくピンと来た。 -
ブルース・ローレンス『コーランの読み方』(池内恵訳、ポプラ新書、2016)
米デューク大イスラーム学教授がコーラン成立の背景、思想発展を平たく説いたもの。
ムハンマド本来のイスラーム、分派の形成、テロ思想の構造など興味深い切り口で『コーラン』の背景に迫っています。
著者の幅広い知識から、イスラームにおける啓典の民の位置付け、中世のムスリム詩人の参加など、豊富な例が引かれ大変興味深いところです。
ムハンマドの没後、数世代を経て『コーラン』は韻律を重視した「詠まれるべきもの」として整理されていきますが、現代のラップ的なおもしろいもの、カッコいいものとして語り継がれたかのようにも思われます。
【本文より】
◯太陽を見つめられるものは多くはない。しかしより平凡な探求者でさえ、言葉による信仰と知への探求には限界があると認められるし、認められなければならない。
◯どの解釈者も、選ばなければならない。誰もが解釈の原則に従わなければならない。解釈する者が誰であろうと、いつどこでコーランに取り組むにせよ、選択されるテーマや問題、重点の置き所は似通っている。最大の相違は、イスラーム的な世界観の規範を主張する際に、コーランのテキストを狭く取るか広く取るかの違いである。
〈『コーラン自身』による言及〉
◯あらゆる書物を超越する「書物」から、聖コーランは啓示された。
◯憐れみ溢れ、情け深い神の名において
アッラー以外に神はなし 神は一にして、並ぶものなし
「彼こそ統べたもう
彼こそ栄光を一身に集め」
(第64章「騙し合い」第一節)
〈サー・サイイドによる「婦人」章の解釈 → ムスリムの結婚は「愛」ではなく「正義」に基礎を置く〉
◯とても孤児たちに公平にできはしないと怖れるのであれば、お前たちを喜ばせる女たちから二人、三人、四人と結婚してやれ。しかし平等に扱ってやれないなら、一人にしておけ。
〈訳者解説〉
◯イスラーム教はあくまでも、人間の側がどのように感じるかどうかとは無関係に、絶対の力を持つ神が人間に命令するものだ。人間はそれを信じて生きていく以外に選択肢はない。