([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)

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本棚登録 : 1978
レビュー : 246
  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591150412

感想・レビュー・書評

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  • 全編通して温かい気持ちになる。
    祖父から受け継いだ活版印刷の『三日月堂』を再開させた店主の弓子さんと、三日月堂との関わりで少しだけ人生への前向きさを取り戻す人々のお話。

    消えゆく技術、消えゆく文化、その流れは止められないであろう活版印刷。昔は新聞も、人の手で一文字一文字並べていて、その道のプロがものすごい速さでそれをこなしていたと聞いたことはあったけれど、実際のところほとんど何も知らなかった。
    7500文字という日本語の活字を拾い、組み、刷るという気が遠くなるような作業。職人技の集大成だ。その活版印刷しか出せない深みや味わいがある。
    昔はムラや凹みがない、今の印刷のようなきれいな活版を刷るのがプロの仕事とされていたけれど、今はむしろ活版ならではの手作り感が求められているとか。なるほどそうだなと思ったり。

    探してみたらいくつか見つかり、活版印刷にとても興味がわいた。
    普段意識していない一文字一文字が、重みをもった『活字』として見えてくる。日本語がとても素敵に感じられる。

    『世界は森』
    一人息子が北海道の大学に進学し、もうすぐ引越しをする。そのお祝いを悩んでいるとき、学生時代の憧れだった三日月堂のレターセットを思い出す。

    初っ端から泣けた。まだちっこく手のかかる息子達に、早く大きくなぁれと魔法をかけたいくらい、大きくなるのを心待ちにしている私なのだけど、いつか手を離れて独り立ちする日にはきっとこんな気持ちになる…めっちゃ寂しいやん…と未来先取りして泣けた。
    こんな手紙書いてくれる息子になってくれたら最高。

    『八月のコースター』

    伯父から継いだ珈琲店『桐一葉』。しかし伯父の代理という気持ちが抜けず、新しい一歩を踏み出せないでいる。

    透けるショップカードもだけど、毎月の俳句の載ったコースター、素敵だなぁ…。持って帰る人が続出してしまいそう(笑)

    『星たちの栞』、『ひとつだけの活字』もそれぞれに面白かった。続きも楽しみ。

  • 「世界は森」「八月のコースター」「星たちの涙」「ひとつだけの活字」。ツボに入ってしまったのか、1章読むごとにうるうるきてしまって、うわぁ…どうしよう…と収集がつきませんでした。読み終わってからも、余韻が残って心地がいいのです。ほんと手にしてみてよかった…。正直ポプラ文庫だからYAで中高生のよみもの的にしか思っていなかった自分をグーで殴りたい。

    読書が好き、本が好き、活字が好きな人にはたまらないんじゃないかな。活字を拾うという作業。一冊の本にどれだけの活字が使われているのか…考えると、それはもう宇宙に散らばる星の数並みで、どの作品も書き手の想いがつまっていているんだなぁ…と、当たり前なことを改めて思った。うまくいえないけど感謝の気持ちで胸がいっぱい。この本が手元にあるうちに続きが読みたいです。

  • 実は本屋さんで平積みになっていたシリーズ6作目の活版印刷三日月堂を買ってしまい、シリーズ気づいて、ならば最初から読まなければと買った本。

    この本は4編からなっていて、シリーズ最初と言うことで活版印刷についても随所に紹介されている。
    やっぱり最初から読んで正解だと思いました。
    それぞれの深い人間像が描かれていて、大きなイベントはないけれど、ほっこりとする本でした。
    このシリーズをとりあえず読んでしまわなければ次に進めないと思いました。
    サクッと読めるので、順番に読んでいく予定です。

  • 活版印刷、と聞いてすぐに思い描いたのは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。
    ジョバンニが活版印刷所で働いていたシーンが浮かんできた。
    必要な活字を一つ一つ探しあて、丁寧に並べて紙に刷る。
    それら全てがアナログの手作業。
    独特の濃いインクの香りが読んでいる私の周りにまとわりつく。

    亡き祖父の活版印刷所「三日月堂」を引き継いだ28歳の弓子は、印刷所を訪れる悩み深き人達にそっと寄り添う。
    紙に刻み込まれる選ばれし文字達。
    けれど刻み込まれるのは文字だけではない。
    文字を選んだ人達の思いも刻み込まれ、大切なあの人へと伝えられる。
    僅かな凹みが与える心地よい紙の手触りから生まれる温もり。
    文字一つ一つの息遣いまでもが聴こえてくるようだった。
    活版印刷の持つ味わい深さと柔らかさがじわりじわり心に染み入る。
    みんなの優しさに何度も泣けた。
    〈桐一葉〉のコースターは私も欲しい。

    「人生は道、世界は森、結婚は橋」
    「自分で自分の道を決めて、そこで人の役に立つ仕事ができるのが大人」
    「素敵であり続けるには、ちょっとずつ更新しなくちゃいけない」
    ハッとする文章も多かった。
    このシリーズはぜひ読破しなくては。

    • いるかさん
      mofuさん

      はじめまして。
      私もこの本を読んで感動しました。
      そして活版印刷にもすごく興味をひかれました。
      結局シリーズ全部 ...
      mofuさん

      はじめまして。
      私もこの本を読んで感動しました。
      そして活版印刷にもすごく興味をひかれました。
      結局シリーズ全部 一気に読みました。
      続きにレビューも楽しみにしていますね。
      よろしくお願いいたします。
      2020/03/07
    • mofuさん
      dolphin43さん、はじめまして。

      私もとても感動しました。
      全ての章で泣きました。
      活版印刷の丁寧さ、とてもいいですね。
      このシリー...
      dolphin43さん、はじめまして。

      私もとても感動しました。
      全ての章で泣きました。
      活版印刷の丁寧さ、とてもいいですね。
      このシリーズは図書館で4冊一緒に借りれたので、続けて読みたいと思います。
      三日月堂の柔らかな余韻に暫く浸りたいと思います(*^^*)

      コメントをありがとうございました!
      2020/03/07
  • 最近、『月』づいている。「平場の月」「月まで三キロ」そして
    この「活版印刷三日月堂」

    とても優しく心地良い空気感の物語だった
    一度、娘と行ったことがある川越の江戸情緒が残る街並みを思い出しながら読んだ

    川越鴉山神社のはす向かいの白い建物。昭和初期からあった印刷所の三日月堂。月が直接ててくるわけではないけれど、この三日月堂のマークは三日月にカラスが止まっているという

    祖父が残したお店を継ぎ、活版印刷を始めた弓子さん
    この第1巻では、
    封筒と便せんの一枚ずつ自分の名前が印刷されたレターセット
    「世界は森」

    『桐一葉』の店名、桐の葉が透けて見えるショップカードと高浜虚子の俳句のコースター 「八月のコースター」

    宮沢賢治の銀河鉄道の夜の一節、一節が書かれた栞
    「星たちの栞」

    平仮名がダブっていない結婚式の招待状
    「ひとつだけの活字」

    どれも弓子さんが依頼主に寄り添い、その思いを汲み取り、練りに練って、依頼主と一緒になって作り上げたものだ
    自信をなくしかけていたり、内向きになっていた依頼主が、いつの間にか元気と自信を取り戻している

    どれもこれもステキ!
    私も欲しい、レターセット。大好きな夕焼け色のインキで印刷して欲しい
    月替わりのコースター。毎月せっせと桐一葉にコーヒーを飲みに通うだろう
    栞も欲しい。愛読書に挟みたい

    ひとりの人が紡いできたものが印刷することによって、あとの人たちの心に何かを残す。文字が刻印されることで、その紙に人の言葉が吹き込まれる。言葉を綴った人がいなくなっても、その影が紙の上に焼き付いている

    そのおかげで、私たちもたくさんの素晴らしい書物に出会えることができている

    新聞部だった高校生の時、入稿や校正の時、訪れた印刷所の油とインキの匂い、ここそこにいっぱいあった活字や古めかしい印刷機を思い出した

    このシリーズは、4巻まであるそうな
    次々といろんな印刷された作品が誕生するんだろうな
    楽しみだ

  • 子供の頃どこだか忘れたが、活版印刷所(?)に行ったことがある。
    活字がいっぱいあり「すごい!」と圧倒された記憶があるが、それで何か印刷してもらったかどうかは覚えていない。

    「八月のコースター」で作る透けるショップカード、少し前に内田也哉子さんの「ブローチ」を読んだばかりだったのでイメージが重なった。

    レトロな印刷機と言えば、(家庭で使える画期的な印刷機だった)プリントゴッコで年賀状を作っていた。
    もう少し昔だと、学校のプリントにはガリ版印刷が使われていたんですね。

    活版印刷を調べていたら、勤務先のそばに印刷博物館があるではないか!
    そして、記念に活版印刷の体験もできるらしい。いつか行ってこよう。

    • Kazuさん
      仕事帰りに印刷博物館に行って、活版印刷機を見てきました。想像以上に大きく重厚!
      実際の活版印刷体験は、15:00からなので終わってました。...
      仕事帰りに印刷博物館に行って、活版印刷機を見てきました。想像以上に大きく重厚!
      実際の活版印刷体験は、15:00からなので終わってました。
      ミュージアムショップに、活版印刷で作った「星の栞」と「桐一葉のコースター」があったので記念に購入しちゃいました。
      本の綴じ方などの展示もあって面白かったです。
      2019/05/16
  • ブクログ談話室で知った本
    以前『「本をつくる」という仕事』という本を読んで、本を作るためのいろいろな側面を知り(とても面白かった♪)、
    その中で知った「活版印刷」という言葉に惹かれて手に取りました
    ほしおさなえさんも『三日月堂』もはじめて知り、2017年12月5日に新版のシリーズ3冊目が発売されてシリーズものなのだとも知り、3冊目は図書館予約済
    3冊目が発売されたからか2冊目の図書館予約数が結構あったので2冊目は古本で見つけたので購入しました^^*

    気のせいかな?
    こちらの文庫本、紙質がとてもしっかりしていて、字の感じもひとつひとつの字間(?)かな?
    何か他の本とは違う感じがしたのですが・・・
    思い込み過ぎ?(笑)

    4つのお話しがあって
    ひとつひとつのお話しのはじめの頁の活版印刷に関わる写真が凄いっ!!中でも活字の写真!!!
    活版印刷三日月堂のある街(町?)川越で生活する人たちと活版印刷
    活版印刷に関するいろいろな細やかな説明と人と人との関わり方、つながりに
    胸にじぃ~んとくるポロリと涙が出るお話しばかりでした
    2冊目、3冊目を読むのも楽しみです

  • H30.9.18 読了。

    ・三日月堂という活版印刷所を訪れるお客様ひとりひとりが主人公なる連作短編小説。しみじみと読後感に酔いしれたくなるような物語が4編。その中で「世界は森」と「ひとつだけの活字」が特に好きです。続編も楽しみ。

    ・「印刷とはあとを残す行為。活字が実体で、印刷された文字が影。ふつうならそうだけど、印刷ではちがう。実体のほうが影なんだ。」
    ・「ふつうの印刷だと紙に文字が「張りついている」感じだが、これは凹んでいるわけではないのに「刻まれている」。文字ひとつひとつが息づいているみたいに見える。」
    ・「生きているものはみなあとを残す。それも影のような頼りないものだけど。人と人もそうだ。かかわりあえば必ずあとが残る。」
    ・「みんな失ったものを抱えて生きている。」

  • 古びた印刷所「三日月堂」が営むのは、昔ながらの活版印刷。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。そんな三日月堂にはいろんな悩みを抱えたお客が訪れ、活字と言葉の温かみによって心を解きほぐされていくが、店主の弓子も何かを抱えているようで…。

  • 本好きにはとっても興味深い内容だった。
    派手さはないけど、それぞれのエピソードにとっても温かみがあって、じんわりとステキだった。
    このシリーズ、追いかけよう。

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著者プロフィール

ほしお さなえ
1964年東京都生まれ。作家・詩人。父に翻訳家・評論家の小鷹信光、夫に作家・思想家の東浩紀。
東京学芸大学卒業後、理工系出版社、大学研究補佐員をへて、作家活動へ。
95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞して詩人としてデビュー。2002年には長編小説『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年に刊行された『活版印刷三日月堂 星たちの栞』が話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気シリーズとなる。

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