i(アイ)

著者 :
  • ポプラ社
3.65
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本棚登録 : 4280
レビュー : 478
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153093

感想・レビュー・書評

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  • R2.7.11 読了。

     最後まで楽しめなかった。
     自分は存在する、そこに確かに居る。愛されているから、そこに存在している訳ではないことを教えられた。

    ・「感謝とか幸せって、努力して思うことではないんだよ。自然にそう思うことなんだから。」

  • アイとは“i(私)”であり“identity"なんだろうなと勝手に解釈する。
    西さんの本を読むのは「サラバ」に続いてまだ2冊目だけれど、世界観というか自己肯定感というか共通するテーマが根底に感じられた。他の作品もそうなのだろうか。

    この本を読んで、以前にNYで知り合ったネパール系アメリカ人の女性から聞いた話を思い出した。
    彼女の妹も、もちろん生まれも育ちもアメリカ。医師の資格を持ち、NYで揺るぎない生活を送る未来があった。しかし自分の中にぽっかりと空いた穴(彼女はemptinessと表現した)を埋められずネパールに渡ったと。

    おそらく、多民族国家や、大陸においては養子にかぎらずとも自分の出自、アイデンティティについて考える人は多いのだろう。
    日本が特殊なだけで。

    そう言った意味で、このようなテーマをストレートに投げかける西さんは今までにない新しい作家という気がしてならない。
    ぜひ若い人に読んでほしい。
    自分を見つめることは世界に目を向けること。
    いい作品でした。

  • 幼い頃から自分の存在意義に対する呪縛に悩まされてきたアイ。
    養子という現実から常にまとわりつく疎外感と、恵まれた家庭に貰われた、というプレッシャーに押し潰されそうになる。
    そんなアイは家族や親友からどんなに深い愛情を注がれても、なかなか素直に受けることができない。
    そんな彼女も大人になり、様々な試練を乗り越えた先に辿り着いた彼女なりの答えとは。
    ラスト、彼女の屈託のない真の笑顔が目に浮かんだ。
    国や家族、友情そして愛。
    西さんらしいこだわりが込められた物語だった。

  • 読み終えた直後だからか、うまく言葉を紡げない
    気持ちだけが昂っている、そんな感覚だ

    サラバ!を思い出した人も多いのではないだろうか
    ある一人の人間の「生」を描いた物語
    西さんの、人間の成長、特にこころの成長の描き方はほんとうに素晴らしい
    的確に捉え、掴み、ぐんぐん引き込まれていく

    大量に付けられた付箋が、この物語がどれほどわたしの胸を打ったのかを、教えてくれる

    この人にはわかってもらえない、と、歳を重ねるごとに思うことが増えた
    生きていく中で、変わらないと思っていた人が変わってしまったり、もしくは自分自身の変化に戸惑ったり、見ないようにしてしまったり、逆に変化を受け入れたからこそ変わってしまった自分を誰かに卑下されるのが怖くなったり
    変化は怖い、でも。

    みんな意外と普通の家で育ったんだな、と思った時に感じる軽い失望、この人はとても苦労して生きてきたんだな、と思った時に感じる、いつくしみ
    それらはとても醜い感情
    みんなそれぞれ、苦しい思いをして、生きている、のに。
    早くに友人を亡くした時に思った「どうしてわたしじゃなかったんだろう」
    離婚を選択した母に思う「わたしは産まれてこない方がよかったんじゃないだろうか」
    育ててくれたばあちゃんに思う「感謝すべき」
    人から見たら恵まれた環境にいる自分
    では、この満たされない想いはなんなのだ
    正論で包まれたわたしの日常は、負の感情を押し込めた
    西加奈子は、いつもそんなわたしの心を、解き放ってくれる

    「こんなことを思ってはいけない」そんな風に思うわたしを「そう思ってもいいんだよ」と、そっと、だけど強く、訴えかけてくれる
    アイの想いと、ミナの言葉が、わたしのこころを抉るように、ぐわんぐわん、ごうんごうんと、唸りながら、わたしの中に、入ってくる

  • ワイルド曽田アイ。
    アイはシリアで生まれ、ハイハイを始める前にアメリカ人の父と、
    日本人の母の養子となった。
    小学校卒業まで住んで居たのはニューヨークの高級住宅街。
    「この世界にアイは存在しません。」高校の入学式の翌日、数学教師は言った。
    その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続ける事になる。
    ある「奇跡」が起こるまではーー。

    アイはシリアからの養子で、裕福なアメリカ人と日本人の夫婦の元で育ち、
    その恵まれた環境にいる自分と世界で起こる事故や事件や天災や紛争の犠牲者の
    ニュースを見聞きしながら、安全な場所に居て自分の身には何も起こらない
    ことへの罪悪感に負い目を感じている。
    「何故私が選ばれずに、彼らが選ばれたの…」どこか後ろめたく思って成長していくアイ。

    子供を子供扱いしないこと、一人の人間として接する事。
    アイを深く深く慈しみ愛してくれる両親なのに自分の意見を言えないアイ…。
    シリアで生まれて、養子という複雑な心境が理解出来ず、
    繊細で聡明なアイの事を何て暗く欝々としてるのだろうかと、最初は反感すら抱いてしまった。
    しかし、何だろう読み進めていくうちに、現実に起こった
    紛争や天災や事件や戦争が沢山登場する。
    その時、自分が何を想い感じたのか…。
    遠い異国で日々起こっているそれらがニュースで報じられると可哀相…痛ましい…。
    それが自分自身に起こったらと考えもせず深く想いを馳せる事も無く忘れていってた。
    日本で起こった東日本大震災を始め、天災の数々は身近に感じられる分
    自身に置き換え、苦しくなって報道や映像を観る事すら出来ず、逃げてしまっていた。
    最初反感すら抱いていたのに、読み進めるにつれ物語に引き込まれていった。

    アイの考え続ける事、想い続けることの凄さ!
    今、世界で起きていることに目を背けないで出来る事はなくても、
    考え続け、想像する事をやめてはいけない。
    自分の存在に感謝しながら生きていきたいって思った。
    誰かを想う事、誰かに想われる事の尊さが詰まっていました。

  • 想像することの大切さを学んだ。
    本は想像するということを教えてくれる。

  • 2017年59冊目。

    非当事者は、当事者のことをどう想い、想像し、考えるべきなのか。
    そんなテーマを考えさせられた。

    罪悪感を持つと、罪悪感を持ってしまっていること自体にまた罪悪感を持ってしまう、というメタな苦しみ。
    世界のあらゆる痛みに対して、「それらに対して心を痛めていないといけない」という脅迫感。
    だから幸せを心から享受することに躊躇ってしまう。
    (読みながら天童荒太さんの『悼む人』を思い返した)
    「自分も苦しい立場にいないと」、というのはとてもわかる気持ちでありつつ、同時に、それは自分を納得・安堵させたいだけの手段になっていないか、という疑念も起こる。
    大きな世界の中であれ、身近な人間関係の中であれ、様々な痛みと、どう共存していくべきなのか。

    西加奈子さんの作品はこれが初めてだったが、文体がすごくシンプルで、読みやすさに驚いた(最近昔だったり海外の作家さんの本を読む機会が多かったのもあるかもしれない)。
    仕草含めた心情描写もよくて、肌感覚で伝わってきた。
    あと、数々のセリフの、優しくもありつつの、「潔さ」がよかった。

  • 西加奈子は極めてまっとうなことを書く。愛、友情の素晴らしさ。そんなのイマドキ、児童書だってストレートに書かないのに。
    しかし、この小説を読んで感動するのは、二人の友情の後ろに、世界中で命を奪われたり、家族をなくしたりした人たちの姿がちゃんと見えるからだと思う。どんな美しい愛情や友情を描いても、この世にはなんの落ち度もないのに命を奪われる人がいて、その人たちの苦しみを考えたら、何が愛情だ、友情だ、恵まれた社会に生きてる人は呑気でいいね、と思ってしまう。あるいは、後ろめたさを感じてしまう。そこを、きちんと書いて、なおかつそれでも愛は大事だと言える。それは厭世的であったり冷笑的であったりするより、ずっと勇気がいることだし、様々な背景を持ち、考えも違う読者に納得させるのは、とても難しいことだけれども、西加奈子にはそういう才能がある。それは本当に稀有な才能なのだ。
    何よりいいのは、西加奈子の本が売れてること。読みやすくて、わかりやすい。それでいて世界の抱える問題にちゃんと向き合っている。この本でアイが記したたくさんの死者たち。そんなの関係ないし興味ない、って層の人にも読んでもらえそうなところがいい。読んでほしい。

    「誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを大切にすべきだって」(p157,270)

  • 「この世界にアイは存在しません」
    冒頭の一文から始まるこの本にすっかり飲まれ、一気読みしてしまった

    シリアに生まれ、日本人の母とアメリカ人の父に養子に貰われたアイ
    シリアに生まれたのに、恵まれた環境で育ち恵まれた家庭に選ばれた自分の存在がいつもどこか否定的に捉えてしまう

    しかしレズビアンであるも、自分をしっかりと持つミナとの出会いや、東日本大震災での被災、またデモで出会った伴侶との出会いの中で、自分の存在意義を見出していく

    大きな災害や内乱、戦争など時事問題を織り交ぜて主人公であるアイが落ち込んだり、深く考える場面が多く出てくるため、すごく当事者意識の持てる本だった

    自分が恵まれた環境におり、本当の苦しみを味わったことがなくても、その人のくるしみを想像するだけでも意味のあること

    内面的でとても繊細な本だと感じた

  •  半年以上かけて、ようやっと読了。
     一言で言うならば、苦しかった。あまりにも苦しくて、途中で断念しようかとも思った。でも「この世界にアイは存在しません」の幻影(?!)はずっと付きまとって離れず、進んでは止まり、進んでは止まりを繰り返しながら、ようやっとここまでこれた。しかも読み始めたのが新型コロナウイルスという病気が中国で流行しているらしい?と騒ぎ始めた頃でもあったので、新型コロナウイルスへの不安と同時並行していたと言っても過言ではない。
     
     シリア人の養子としてアメリカ人の男性と日本人の女性との夫婦の元へ来た、アイの人生。アイデンティティの確立と言えば話は簡単になるけれど、自分のルーツや生きている意味を考え、確かなものにしていくのに、いろんな事象に向きあっていく。生まれた環境も、変化していく自分の身体のことも、自分の知らないところで起こっている悲しい出来事の事も。
     最後の海の光景は救いのように美しかった。苦しかったけど、読み終えてよかった。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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