i(アイ)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153093

感想・レビュー・書評

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  • 良き

  • アイデンティティとは?と考えさせられる作品でしょうか。。。
    どこかしらサラバに繋がるところがあるのかなと個人的には思います。

  • 2020/1/28 読了

  • シリア生まれでアメリカ人の父と日本人の母の養子となったアイ。

    世界中で起こる災害や戦争で亡くなる人たちがいる中で
    その中の1人になるはずだった自分が
    裕福な生活を送っていることに疑問を持って、ずっと苦しんでいたけれど、それすらも傲慢だと二重に苦しんでいたアイ。

    この世界にアイは存在しませんと、数学教師が言っていた言葉をずっと胸の内に秘め続け、
    数学にのめり込み、世界中で起きた事件事故で亡くなった人たちの数をノートに書き続けたアイ。

    高校でできた親友でレズビアンのミナ。

    東日本大震災が起きて、それでも犠牲者の1人になれなかったアイ。
    デモ活動で知り合ったユウとの結婚、不妊治療で授かった命の流産。

    この世界にアイは、
    苦しい状況の中で生きなければならない人たちのことを
    想像して、非力な自分であることに苦しむ。

    この世界にアイは、存在する。

    祈ることしかできないこともあって。
    流産のところ悲しくてつらかった。
    西さんの話は力強い。

  • 今年の年明けにアメリカとイランで戦争が起こりそうな気配がしたとき、不安で怖くて、イラン生まれの西さんはどんな気持ちなんだろうって思って、救いを求めるような気持ちでこの本を手に取った。
    読んでよかった。

    私はアイと同じように、東日本の震災の時に、無事で安全な場所で変わらず笑って生活している自分を後ろめたく感じたこともあった。
    また、アイのノートみたいに、2003年のイラク戦争の時、戦地で泣き叫ぶ親子が写った新聞記事を取っておいたこともあった。

    でも日々生活していると、その時は胸を痛めたニュースもいつのまにか忘れ、それよりも自分自身の悩みだけにとらわれてばかりいる。
    アイがそうだったように、そちらの方が自分にとっては切実だからだ。

    実際に今回のアメリカとイランのことも、うっかりするともう忘れていて、結局は全て他人事なんだなと思う。
    でも、自分にできることがなかったとしても、もし忘れてしまったとしても、その時に感じた悲しみや怒り、胸の痛みを大事にするべきだとこの本から教えてもらえた。
    西さんは優しい。


    以下、「忘れたくない」文章を書き留めておく。

    ・パレスチナで、アフガニスタンで、そしてシリアで死んでいる者たちの、その名を刻む場所はあるのだろうか。墓地さえ与えられない死者たちは、どこで眠るのだろうか。

    ・誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを、大切にすべきだって、

    ・渦中にいなくても、その人たちのことを思って苦しんでいいと思う。その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う。渦中の苦しみを。それがどういうことなのか、想像でしかないけれど、それに実際の力はないかもしれないけど、想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。


    西さんがいつしかどこかで、ジョンレノンの「イマジン」が最強の言葉って言ってたけど、まさにそれだ。

  • アイの波に引き込まれて、溺れた

  • 考えさせられた。非常に良かった。
    この世界に起こっている事に目をつむり、平和ボケしている僕らは、考えなければならない。
    このアイの誠実で真摯な生き方、考え方を、心にとめて、生きていかなければならない。

  • 泣いてしまった。すごく良かった。アイとユウとミナと。『テヘランでロリータを読む』も出てきて嬉しかった。

  • 私は私、ということだ。
    読んだ私も自分を意識できた。

  • 「私は養子なのに恵まれすぎている。他の苦しんでいる人に申し訳ない」常にアイは悩む。生きづらいほどの感受性を抱えるアイ。メインテーマはアイデンティティの話なのだが、メッセージ性が非常に強く、哲学的である。『サラバ!』に若干似ているが、もっと直球。強く、ヘビーであり、個人的には訴えかけるものが多すぎて若干疲弊した。なので私は主人公アイと親友ミナの友情物語として読むことにした。それでも涙こぼれるほど感動した。私は脱線気味の『サラバ!』の方が好きだが、この本が傑作だというのに異論はありません。

  • 実際の災害や事件と同じ現実に存在し、様々な境遇の人間のことを思い苛まれる主人公。

    虚数”i" と名前の”アイ”が呼応し、
    アイデンティティについて悩む。
    ニューヨークの恵まれた養子として過ごす少女期。
    日本ではLGBTの友人ミナと出会い、裕福に生き残っていることへの罪悪感から免れるように数学の道へ歩んでいく。
    東日本大震災後日本に残り恋人ユウとの出会い結婚、流産、そしてミナの妊娠。

    「アイは存在しません」という高校数学で出てきた虚数の定義を反芻し、自らを虚ろな存在と苦しんできたアイ。
    恋人のユウ、友人のミナといるときには聞こえないその言葉。
    認められることで「アイ」が虚数から実数へとなる喜びが滲むように伝わり、余韻に長く浸ることができる。

    細かく分類され、マイノリティーの割合が増える中、相手への接し方の指針になる作品。

    *メモ*
    「ありがとう」という感謝でも「ごめんなさい」とう謝罪でもなく、「大好き」という言葉で角を立たせず相手の気持ちを包み込むシーンが個人的に一番好きだ。恋人やパートナーには「愛している」でも良いか。
    *メモ2*
    妊娠に対してのアイの気持ちは八日目の蝉を思わされる。

  • 湾岸諸国(オマーン、ヨルダン、イスラエル)旅行中に読了。

    愛、に関する話。
    そして、みんな生きてて良いんだよ、という感覚をもつ。
    この後、遠藤周作の「死海のほとり」を読み、愛、という点で、つながりを感じた。
    ただ、居るだけで、良いんだよ、という感覚も、似ている。

    後半、自分が存在することを許されるようになっていく過程を読みながら、涙が止まらない。
    解説も、ぜひ。

    世界情勢について、しっかり考えようよ、ということと、生きていて良いんだ、そして、恵まれている自分の中で、何ができるか考えよう。
    恵まれてるからって、他人の苦しみを悲しんじゃいけないわけじゃない。ということを、思わされます。


    解説も必読。
    そう、世界についても、ちゃんと考えよう。
    繰り返さないためにも。
    解説にもあるように、もっと普通に世界の課題について、日常で話がされても良い。1人でも多くの人が考えることで、少しでも、ジワジワと、世界は変わるかもしれない。
    だから、私から。


  • 9.11や東日本大震災と言った現代の出来事と物語が絡み合って描かれている。だからこそ、現代を生きている私たちが、今、読むべき物語。

    日本に住んでいることくらいしか主人公との共通点がないのに、その気持ち、複雑な想いが余すとこなく伝わってくる文章が素晴らしい。

    個人的には直木賞のサラバ!を超えた一冊。

  • 自分のルーツというか、血縁のない不安、世界の不均衡や、戦争や、殺戮、自然災害、すべてに敏感なアイの物語。

  • 養子のアイ。LGBTのミナ。優しく包んでくれるユウ。アイデンティティとは何か、これからの社会において考えるべきテーマを投げかけてくれた作品。

    高校入学時にアイが同級生に感じた、距離を置いた優しさ、のところが胸に刺さった。身近にアイがいたら自分が取る行動はミナのそれではなく、その他大勢の同級生のものだろうと思う。自分自身がアイの存在であったとき、どのようなコンタクトが嬉しいのか、実際にその行動が取れるのか、考えさせられた。誰かの心に寄り添える声掛けができればと思う。

  • 西加奈子さんのコトバってすごく好きです。
    わかりやすい文章の中に、他国の情勢がわかりやすく入っていて、マイノリティとして育っていくアイの、孤独な気持ちがすごく伝わってきました。
    西加奈子さんの小説は、小説のプロットそのものというよりも、西さんの綴る言語がとても素敵で、そこに魅了されます。

  • 西加奈子は極めてまっとうなことを書く。愛、友情の素晴らしさ。そんなのイマドキ、児童書だってストレートに書かないのに。
    しかし、この小説を読んで感動するのは、二人の友情の後ろに、世界中で命を奪われたり、家族をなくしたりした人たちの姿がちゃんと見えるからだと思う。どんな美しい愛情や友情を描いても、この世にはなんの落ち度もないのに命を奪われる人がいて、その人たちの苦しみを考えたら、何が愛情だ、友情だ、恵まれた社会に生きてる人は呑気でいいね、と思ってしまう。あるいは、後ろめたさを感じてしまう。そこを、きちんと書いて、なおかつそれでも愛は大事だと言える。それは厭世的であったり冷笑的であったりするより、ずっと勇気がいることだし、様々な背景を持ち、考えも違う読者に納得させるのは、とても難しいことだけれども、西加奈子にはそういう才能がある。それは本当に稀有な才能なのだ。
    何よりいいのは、西加奈子の本が売れてること。読みやすくて、わかりやすい。それでいて世界の抱える問題にちゃんと向き合っている。この本でアイが記したたくさんの死者たち。そんなの関係ないし興味ない、って層の人にも読んでもらえそうなところがいい。読んでほしい。

    「誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを大切にすべきだって」(p157,270)

  • これは、、西加奈子さんのなかでも大作なのではと思った。練り込められてる。なんだかすごいものが。孤独。深さ。突き詰める尊さ。みたいなものを思った。それと同時に愛も感じた。i = 愛。
    いまの自分が読むべき本だったとも感じる。
    冒頭読んだとき、これは重い話だ、と感じてくじけそうやったけど(いまは特にライトなものを読みたい気分やったし)読んでよかった。

  • なんだか、ふーん、という読後感でした。帯の言葉は持ち上げ過ぎのような感じを受けました。

    私とあなたと皆というありきたりな設定をここまでの物語にするのは作家の力量だな、と感じましたがだからと言って引き込まれるでもなく、読み終わって何か残っているかというとそうでもなかったです。

    虚数iと絡めた設定も上手く使われるわけでもなかったし、期待過多でしたね。

  • アメリカ人父、日本人母の元に養子としてきたシリア人のアイ。1988年生まれで幼少期をアメリカ、思春期以後を日本で過ごす。世界中の人の死に悲しみ、恵まれた自分の境遇を受け付けない、繊細すぎる女性。彼女の”成長物語”を描いたものだろうか。

    本当ならシリアで死んでいたかもしれないのに、恵まれた環境で生きることになった自分。自分の存在・幸せを受け入れられない→受け入れられるようになる(アイデンティティをもつ)という流れ。

    正直面白さが皆目わからぬ本だった。繊細な女性の人生として読めばいいのか?あえて感情移入をさせない為か携帯小説を読んでいる軽さ。主人公は私と同い年で、そこだけが読むモチベだった。
    ところがこの課題本の読書会に参加し“女性もののヒーローズジャーニー”という見解をもった。低→高を目指すそれにおいて、女主人公は難しい。女を痛め付ける内容に読者が耐えられないから。そこをiでは、主人公を太らせることで描いている。死者の数をノートに書かせるキャラクタライズも凄い。

    読者としては面白くなかったが、作り手目線では凄い本のようだ。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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