i(アイ)

著者 :
  • ポプラ社
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レビュー : 364
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153093

感想・レビュー・書評

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  • 十代に私もアイのように苦しんだ。
    大して生きていたくもないくせに生きていることが恥ずかしくて仕方なかった。
    どうして自分ではなく幸せになるべき人が不幸に選ばれてしまうのだろうと本気で考えていた。
    「自意識過剰」
    そんな言葉で揶揄されるのは百も承知だけれど思わずにいられなかったのは、きっと素直に自分を認めることができなかったからだと今になって分かった。
    アイの物語はこんな私も認めてくれた。
    西さんありがとう。

  • シリアで生まれ、アメリカ人の父と
    日本人の母のもとに養子として引き取られた、
    ワイルド曽田アイは、幼いころから常に自分が
    「愛されること」について葛藤の中にいた。

    「世の中の恵まれない子供を思えば、
     あなたは何て幸せでぜいたくな暮らしをしている」
    と子供の頃から繰り返し教え込まれた子どもは、
    何かを欲したり、ねだることなどできやしない。
    それは呪いの言葉だ。

    そんな罪悪感に囚われた彼女は、
    なぜ両親に選ばれたのか、
    自分だけが幸せになっていいのかという
    葛藤に苛まれ、幸せを享受することに悩み続け、
    ずっと自問自答する日々を送る。

    日本は何かに「所属する」ことが大切で、
    それは一種のアイデンティーだと思う。
    自分は何者かという問いに用意された簡単な解答例の一つだ。

    「和を以て貴しとなす」が尊ばれる社会。
    没個性ほど肯定される世界において、
    「個性的だね」が悪口になる社会。
    異質なものを排除する社会。同質性、同一性。

    タイトルの『i』は愛でも私でもなく
    『identity(自己同一性)』のことだったのか。

  • 哲学的で、とてもシンプルだけどすごく難しい
    世界情勢や自治問題も比較的記憶に新しいからこそ「平成」の終わらない内に読んでおいて良かったと思える
    人生に迷って自己啓発本に頼るよりもよほど為になると感じました。

  • 想像することはできるの意味がようやくわかった気がする。みんなが思う気持ちを拾ってくれた。高校の時のクリスマスカードを思い出した。西加奈子の本で一番好き。

  • すごいなぁ。言葉が見つからない。ただただ、感動に浸ってしまう。私自身が現実世界の色んな場面で感じたたくさんの感情を代弁してもらえたような、そんな小説だった。

  • 僕が読みとったこの本のテーマを、あけすけに言うなら、感受性の自己肯定だと思う。愛に満ちた幸福な自分と比べて、不幸な人に思いをよせるときの、中途半端な思いやりの偽善性を、自分で糾弾することによって自分を赦す、自己欺瞞を感じることの深い落とし穴について。鏡に映る自分をさらに写す鏡を写す鏡・・・というような、自意識の無限反射の牢獄を描いた上で、そうした不幸の発端とも言える感受性を、いかに自己肯定できるようになるか、というストーリーなんだと思う。それは、ニーチェのルサンチマン批判のような、不幸自慢の断罪とは異なり、庄司薫の「あかずきんちゃん気をつけて」が描いたような、愛への共感に似た、ストレートな生の肯定に近い。主人公は、一般の日本人からするととても特別な境遇に生まれ(ニューヨークに住むアメリカ人と日本人の、裕福な家庭に引き取られた、シリアからの養子)、上記に示したような繊細な感受性を持っているのだが、作者はその感受性のあり方を、決してその子に特別なものではない、私達にも同じように感じ得る普遍的なものとして共感させてくれる。でもその一方で、それは彼女のアイデンティティにもつながっている(つまり特別なもので)、そのあたりのバランスの取り方は、とても巧みだ。彼女が育む、親友との友情も、やはりとても特別で魅力にあふれているけれど、でもそれでいて、私達にとって決して手の届かないものでもない。そんな普遍的なストーリーをつくりあげることに、彼女は成功していると感じた。

  • この人の本は、読む前にちょっと気合が必要だ。
    いいんだけど。

  • 複雑な生い立ちから迷う主人公の、自分探しの物語。
    養子であること。異質な存在であること。自分について問いかけ続けるアイ。自分とは共通する部分がほとんどないのに、ふしぎとその心理描写に引き込まれる。
    折々に挟まれるニュースにもハッとさせられる。これほど多くの悲劇があったのに、忘れていたものもあった。

  • 最近は新書や脳科学の本ばかり読んでいたので久々に小説を手に取ってみた。前から読みたいなと思っていた西加奈子のi。西加奈子を読むのは、サラバ!、舞台に続いて3作目。面白くて二日で読んだ。

    主人公のアイはシリア生まれで、アメリカ人と日本人夫婦に引き取ってもらった養子だ。そんな彼女の半生が一冊の本に凝縮されている。自分の出自、他者との違い、格差、世界の死、なぜそれぞれの人に不幸が訪れたのか、なぜ不幸は彼らを選んだのか、思慮深い主人公は自分の人生と世界の流れを相対化してそれが遠いことに苦しみ、また近いことにも苦しむ。

    話の舞台は現代でアイの人生28年(1988〜2015)までの様々な出来事が描写される。特に世界で起きた悔やまれる「死」については詳細で、911テロ、311震災、この数年日本で起きたデモ、ヨーロッパのテロ、そして未だに続くシリア内戦とISとの戦いなどは自分もああこんなことあったなあ。あの時こんなことしてたわ〜。と読みながら自分の人生も重ねてしまった。筆者は人の長い長い人生をよくこんなに滑らかに、あたかも濃密にかけるなと驚かされる。サラバ!もたしかこんな感じだったような…。

  • 「この世界にアイは存在しません。」
    から始まる、アイの存在意義を探るはなし。
    アメリカ人の父と日本人の母をもつ、シリア人養子のアイ。
    両親には愛されて不自由なく育ってきたが、自分が裕福で、愛されていい存在なのか、という考えを心底に抱えながら大人になっていく。

    東日本大震災のとき、自分が東京を離れなかったのは、悲劇を被ったものとして、悲劇を語る権利を得たかったからだ。というのが、なるほどと思い、納得がいった。
    自分を含め、無意識にそうなっている人は多いのではないか。
    想像力が乏しく、平和ボケしている私には、ノンフィクションっぽい作品でありながら、完全にフィクションでしか入ってこない話ではあったが、西さんの作品は文章が豪快で臨場感があるので、本当に好き。
    優しくも強い小説。
    自分の考えを改めて見直すことができる小説。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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