i(アイ)

著者 :
  • ポプラ社
3.65
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本棚登録 : 3321
レビュー : 372
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153093

感想・レビュー・書評

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  • 戦争、震災、LGTB、家族、貧困、友情、そして、愛。多くの要素が詰まった作品。にも関わらず。いやらしさも違和感もなくすんなり読めるところが、さすが西加奈子さん。登場人物たちがそれぞれに抱える苦悩や憂鬱が少しずつ出てくるのも、秀逸。素直に感動できました。

  • 日本人の母とアメリカ人の父、そしてシリア人の養子として迎えられたアイ。本書は、「なぜ、自分が紛争国のシリアで養子として生き残ってしまったのか」、「自分が生き延びていることで死んでしまった人がいるのではいか」と、生きていることへの罪悪感を強く感じるアイが主人公である。

    想うことの強さを描いた小説で、ものすごく心に残ったフレーズがある。
    「自分に起こったことではなくでも、それを慮って、一緒に苦しむことはできる」
    このフレーズを読んだ時、思わず涙が溢れそうになった。
    それは、このフレーズが私の職場の同僚を想起させたからだ。
    彼女は、上司との関係性がうまくいかず、仕事へのストレスを抱えていた。上司は階級も高く誰も文句を言えず、かといって、自分が人事異動をする予定はないため、現状を変えられないため、苦しんでいた。そんな彼女の話を聞くと、胸が張り裂けそうになると同時に、ただ彼女の窮状を憂うことしかできない自分が傲慢だと思っていた。
    しかし、本書のフレーズに出会い、「想うことで何かが変わるわけではないけれど、それ自体に価値はあるのではないか」と思えるようになった。自分1人の力で変えられないことがあまりにも多くて落胆することも多いが、まずは、相手に共感することが大切ではないだろうか、本書は教えてくれたような気がする。

  • サラバに引き続き良かった。「被災地」を思う時なんとなく座りの悪い感じを抱いていたのだけれど、こういう事だったのかもしれない。そして、被災地を思う事を申し訳ない、嘘っぽいと思わなくてもいいのかもしれない。そう思った。

  • 「ヤイコ シラム スイエ」アイヌ語で
    「私の心をあなたの心に寄り添わせてください」
    という意味になるそうです。

    この作品の中に、何度も出てくる
    「この世界にアイは存在しません」
    この言葉の重低音に導かれて、
    そこにまとわりついてくる
    さまざまな人、
    さまざまな考え、
    さまざまな思い、
    その それぞれが物語を紡ぎだしていく

    読んでいる途中で
    「ヤイコ シラム スイエ」を何度も想いました
    世界を変え始めるのは、
    一人から始めるしかない。
    そんな強い自己肯定感を感じました。

  • アイ(I)はユウ(you)から人を愛することを学び、ミナ(all)からどんな自分でも受け入れることを学んだのかな、と思う。

    それにしても本筋とは違うけど、親が子どもに「○○と比べてあなたは幸せ」と言いすぎるのはよくないのかもしれない。
    親の方は、世界の中には戦争や貧困に苦しんでいる国も少なくなく、日々の生活を平和に営むことができている自分の置かれた状況をありがたく思いなさい、というつもりで子どもに説明しているのだと思うけど、子どもはそうは受け取らないということか。
    自己肯定感を下げてしまうのかもしれない。

  • シリア生まれ、日本人とアメリカ人の夫婦のもとに養子としてもらわれるアイ。

    自分のアイデンティティに悩むアイに
    「この世にiは存在しません」という数学教師の言葉が付いて回る。

    いろんな意味の「アイ」がアイを苦しめる。

    自分は恵まれている、そんな恵まれた自分をどこか恥じながら生きていくアイ。

    私は別に、養子でも外国生まれでもないし、悲劇も苦難もそんなに体験していない。
    割と恵まれた生活を今までしてきて
    そうじゃない大変な思いをしている人たちに対して
    なぜか引け目を感じることがよくあるので
    わからなくもない感覚。
    それを偽善と感じる人もたくさんいるんだということを
    レビューを見て知った。
    偽善ってなんだろうな・・・

    自分を受け入れてくれる友ができ、恋人ができ
    自分で自分を肯定できるようになっていくも
    どうにもあらがえない血筋という呪縛。

    自由になればいいのに~
    日本に住んでるからそうなるのかな
    ミナのように自由に生きればよかったのに
    でも日本にいながらそれができなければ
    きっと一生そのままなんだろう

    ミナが妊娠するくだりはちょっと引いたけど
    まあでもわからなくもないな、と思うくらいには
    私もオトナになったな

  • 自分の存在意義。 日本人とアメリカ人の家庭に育つシリア人の養子の女の子、アイ。 もし自分が養子の両親だったら愛する事は出来ただろうか。もし自分が養子だったら、産みの親と義理の親、どちらが本物なのか。

    世界各地で起きている悲惨な事件や出来事をアイは日記に書いている。 なぜ自分はシリアで行われているテロがあるのに、裕福に過ごしているのだろう。 なぜ自分ではなかったのだろう。 アイってなに。i ってなに。愛ってなに。

    色んな事を考えさせられました、でもこの時間はとても有意義でした。

  • シリアで生まれ、養子としてニューヨークの恵まれた家庭で育ったアイ。
    アイは世界の片隅で命を落としていく人々のことを知っては、いつでも心の中で、自分だけ幸せになるなんて…と悲痛を抱えていた。

    アイが自己肯定できなかったらどうしよう…となんだかハラハラしながら一気に読んだ。
    アイは存在する。

    西加奈子さんの本は、オリジナリティあふれる主人公だから、一見感情移入できないか、と思うけど、なぜか気づけばハマってしまってる。。

  • 私の中で、西加奈子が人間の本質について初めて鋭く突く作品となったのが、この作品ではないかとの認識をまず初めに持ったことをここに記しておきたい。

    自伝的小説ともいえる『サラバ』が、西加奈子作品の完成形だと思っていたが、それをさらに進化させ発展させたといっても過言ではないと思う。

    人間としての深みをこの作品で体現しているようで、私と同い年ということもあって、ほんと心強いというか、こういった人がいてくれるだけで、さらには、こうやって小説という形で表現し続けてくれているという事実が、私自身を大きくエンパワーしてくれているし、きっと、多くの同世代の心ある人たちをもエンパワーしていると確信している。

    これからの作品も楽しみに、私自身も自分の人生を重ねていきたいと思う。

  • シリアで生まれて、アメリカ人の父と日本人の母に養子となったアイ。自分の存在を肯定していく物語。
    なぜ自分が選ばれてしまったのか、他の人が選ばれたのではないか…賢すぎて繊細なアイはずっと悩み続ける。
    ミナの登場により、アイの考えていることもだんだん分かりやすくなった。
    時事問題、国際情勢、性、災害…さまざまなテーマが盛り込まれていた1冊でした。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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