i(アイ)

著者 :
  • ポプラ社
3.62
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153093

感想・レビュー・書評

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  • ★4.5
    アメリカ人の父親と日本人の母親を持つ、シリア人のワイルド曽田アイ。裕福な生活に罪悪感を抱くほど繊細で、何て生き辛い人なんだろう、と思った。そんなアイの成長と共に綴られるのは、世界で起こる様々な悲劇と命を落とした人々の数。9.11同時多発テロ、スマトラ沖地震、東日本大震災、世界は悲しい出来事で溢れている。が、悲しい出来事に心を痛めることと、アイが幸せに満たされることは全くの別問題。暗示をかけて自身を拒否していたアイが、やっと自身の肯定に辿り着いた姿に自然と笑みが漏れた。この世界にアイは、存在する。

  • 図書館にて。書店で文庫がよく平積みされていて装丁が目立つので気になっていたけど、西加奈子さん自身の装画とのこと。テヘラン生まれ、カイロ・大阪育ちということでこの作品の執筆の背景等興味を持った。

    西加奈子さん、昔あまり合わない印象だったけど、これは読んで良かったかな。

    最近小説を読む時に、取材は勿論下敷きにあるにせよ、結局は作者の想像だよな…と思ってしまう。が、それはそれで良いのだなと。

    震災から9年経ち、3.11は他の小説にもたくさん書かれていると思う。それぞれの作家がどのように表現しているのか気になる。

    そしてこの作品の中でアイがノートに書き留めている災害・事件と死者の数、どれも記憶にあるし衝撃を受けたできごとなのに、いかにそれらを普段忘れて生活していることよ。忘れてていいんだけど。そしてその悲しい犠牲の多さ。

  • 自分の知識の無さを痛感した

  • 『子どものことで、私がアイに謝ることはない。社会に対しても、不妊で苦しむ人に対して、謝る必要はないと思ってる。私の決意と、みんなのからだのことは別のことだから。私のからだは、私のものだから。』

    『渦中の人しか苦しみを語ってはいけないなんてことはないと思う。もちろん、興味本位や冷やかしで彼らの気持ちを踏みにじるべきではない。絶対に。でも、渦中にいなくても、その人たちのことを思って苦しんでいいと思う。その苦しみが広がって、知らなかった誰かが想像する余地になるんだと思う。渦中の苦しみを。それがどういうことなのか、想像でしかないけれど、それに実際の力はないかもしれないけれど、想像するってことは心を、想いを寄せることだと思う。』

    アイ=i
    ミナ=みんな、all、社会
    ユウ=you

    名前にはそんな意味がある。あとがきに書いてあった言葉。
    ミナの言葉が、社会の言葉が、心にグサッと刺さる。

    私の知らなかった世界の話だった。
    シリアの話、養子の話、LGBTの話。恵まれた環境にいるのに、それを受け止められないアイの考えが私にはまだ苦しかった。何度も本を閉じて読めなくなった。

    きっとそれはまだ私が子供だから。知識がないからだと思う。
    また数年後、もっと大人になった時に再読したい本です。

  • 「シリアの養子の話」ぐらいの前情報しかなかった。あと、若林や又吉、いわゆる読書芸人が推してる作家だということぐらいしか。
    作中に誰一人として自分に似た境遇の登場人物はいない。戦争や震災をフックにしながら、恵まれた環境に罪悪感を覚えるアイの感情は想像できないでもないけど、理解できない感じ。ニューヨーク、シリア、東京、LGBT、デモ、IS、パーティーの花…まあ、こんな世界もあるんだろう。
    アイとiをかけた作者自身が数学科出身なのかな。
    平野啓一郎ほど表現が難解でなく、東野圭吾みたいに軽薄でなく、江國香織みたいにエロに走らず、湊かなえよりは広い世界観で文章は読みやすいんだけど、何をどう感じれば良いのかわからなかった。
    女性が読んだらひしひしと感じることが多いのかな。
    どうなんだろう。

  • それでも「i」はある

    読む人によって感想が変わってくる小説だと思います。
    わたしはどちらかというと苦手なタイプの本で(笑)、ものすごく考え「させられたり」、自分の境遇について振り返ら「されたり」するのが嫌なんです、、、。
    というのも、わたしは本に「非日常」を求めているので、自分の心の奥で普段表に出てこない感情が表面化されると、疲れるというか……苦しくなります。
    星4つの評価なのは、それでもやはり現実を見なければならないこと、自分の中で優先したい感情だけを大切にすることはできないということを、久しぶりに衝撃的に叩きつけられた感覚になったからです。
    何度でもアイがあるか自問自答する主人公に、それでもアイはあるし、わたしたちは生きていくのだ、と静かに強く感じる作品でした。

    2回目を読むのはしばらく後になりそうです。 

  • 多様性や差別などについて、知っていたようで全然知らなかったことを思い知らされる本だった。全然考えたこともなかったことを考えた。

    相手の立場で考えることは大切だけど、考えすぎて相手に合わせて自分を殺すことになるのは辛い。
    大事な友達っていうのはそういうののウマが合う人なんだろうなと感じた。

    もう1回読みたいなと思う。

  • 友人からオススメされて購入、読了。
    西加奈子さんは「サラバ」、「ふくわらい」、「漁港の肉子ちゃん」に続く4作品目。

    作品を読んで感じたのは、自身の「共生」に対する意識レベルの圧倒的な低さです。

    主人公のアイ、とても心優しい人物だと思います。
    世界の厳しい環境に置かれた人々を憂い、自身の恵まれた環境を恥ずかしく思う。
    そして、それが自分にとっての「本気」の悩みになってしまう程に。

    これがやっぱり自分の感覚としては理解できなかった。

    作品中には「逃れてきた」、「他者の幸せを奪った」といったような、主人公の心情を表す苦しいワードが出てきます。

    でも、「他者のことでここまで気に病む人間がいるんだろうか?」という疑念が頭の片隅にずっと残っていました。

    テレビのニュースなんか見ていても、世界は自分の近場ではないと、遠くの話だと。
    やはり、それを人ごととして見ている自分がいました。

    恥ずかしながら、それが今の正直な自分の感覚なんだと思いました。

    まずは関心を持つこと、それが第一歩なのかと。
    どれ程の役に立つかは分からないけれど、まずはそこから始めてみようと思いました。

    「人間」として自分はまだまだだなぁ…と、つくづく感じされられた一冊でした。

    あとがき中の西加奈子さんのメッセージ「自分の幸せを願う気持ちとこの世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない」はとても優しい、背中を押してくれる愛に溢れた言葉だと思いました。

    <印象に残った言葉>
    ・時々自分が、無意識に菓子を手にしながら画面を見ていることにはっとした。そのときだけは吐きだしそうになった。深夜、静まり返った部屋で見るパソコンの映像は青くアイの顔を照らし、アイをこのうえなく不安な気持ちにさせたが、それでも菓子は甘く、魅力的だった。菓子が甘いことが、魅力的なことが恥ずかしかった。(P124、アイ)

    ・誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを、大切にすべきだって。(P165、ミナ)

    ・子どものことで、私がアイに謝ることはない。(P254、ミナ)

    ・自分の幸せを願う気持ちとこの世界の誰かを思いやる気持ちは矛盾しない(P316、西加奈子さん)

    <内容(「Amazon」より)>
    「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!

  • たくさんの愛と哀しみの中で、あやふやだった自分を心から愛せるようになる、聡明でまっすぐな女性の話。

  • ん〜。楽しめなかったですね。
    人間描写が薄っぺらかな。
    シリア産まれの養子には、分からない悩み物語だ。
    ん〜、やはり、つまらなかった。

  • こうこう、こうだった、と、事実を書き連ねるような書き方は、小説としては面白くないと思う。

  • 苦しんではいけない 苦しんでいない と世間的には思われるような恵まれた環境の人でも苦しんでいいし、悩んでいい、悲惨な環境の方々に対して自分は恵まれているんだと悔しい想いだけでなく、悲しんだり、見たことはなくても生きてほしいという願いをしてもいい。あらゆる人への愛や優しさを感じる作品でした。

  • アイちゃんはたしかに恵まれている。でもそういう人を守ってくれる表現て意外と少ない、。虐げられている人は、もちろんしんどいけど、恵まれている人は悩んだらダメみたいな風潮もある。「お前くらいで文句言うなよ」って永遠に言い続けられるような。人それぞれ痛みや苦しみは数値化して比べられない。この小説では、そんな人たちを包むことが出てくる。

  • 人との繋がりがあってこそ
    生きていけるのだと改めて感じさせられる作品でした。

    誰もが幼いときから〝自分のなかの基準〟があって、そこから抜け出せないものだと思います。主人公アイのように、時にそれが自分自身を苦しめたり、愛する人に裏切られたような気持ちになったりすることもある。

    それでも沢山の経験を通して
    ちゃんと成長していくもので、
    ちゃんと大人になるってこうゆうことかなぁと
    じんわり感じました。

    人生での経験が、人とのつながりの中で愛のあるものであればあるほど、いい成長につながる気がします。自分を苦しめていた何かから解放されていくような感覚は、愛する人達と過ごす中で生まれていくのかもしれません。

    この作品に出てくる、世界での悲しい出来事の数々に
    悲しいと一言で言ってはいけないよう気持ちになる時がありました。
    でも、身近なことから愛を持って生きれたらと、
    改めて考えさせられました。

    相手の気持ちに寄り添って考えることや
    思いをはせること、当たり前のことが
    ちゃんと出来る大人が増えたらいいなぁとおもいます。

    悲しいとか辛いとか、
    そういう感情も大切なのだと受け入れてこそ
    周りにいる人達の愛をもっと強く感じられるようになるのかもしれません。

  • 人間の存在意義について考えさせられる素晴らしい小説だと思った。装丁の明るさと対象的な内容。

    愛とIの由来から名付けられたアイという名。
    自分はなぜ生まれてなぜ裕福で恵まれた生活を送れているのか?地球上では悲惨な事件、自然災害、政治迫害などにより数えきれないほどの命が奪われている。
    自分だけが幸せ側にいる申し訳なさ、居心地の悪さ。なぜ逃れられたのか?なぜあちら側ではないのか?

    新たな命を得て最高の幸福を得た11 週後、死産で奈落に落とされる。そこを這い回り、何度もなぜ?と問い直す事で生きること、思う事に彼女なりの答えが見つかる。自分の存在を肯定するって、本当に難しい。
    血、性別、命。変えられないものに翻弄される不安な気持ちが深く伝わる。


    あなたはこれから起こるすべての出来事を選ぶ権利がある。と広い荒野に送り出されるより、何もかも決められた道を速やかに歩いてゆく方が心安いのではないか。自ら選び決定しなくて良い人生とはなんと穏やかなのだろう。

    血。アイは残したかった。自身の血を分けた生命を、この世界に。自分が生まれてきたのはこのためだったのだ。自分の体の中に命が宿る、この奇跡を経験するために自分はこの世に生を受け、生きてきたのだ。
    誰かの幸せを踏みにじり、おしのけてまで自分が生まれた理由を知りたかった。その理由がここにある。たった数センチにも満たない命の始まりが、私がこの世界にいるための証なのだ。

  • iとは、アイとは、Iとは、愛とは。

    シリア出身、アメリカ人の父と日本人の母を持つアイという女性のアイデンティティの話であり、この世に存在するありとあらゆる苦しみの話であり、個人と社会、また自分と他の人の関係性の話でもある。深い。

    日々起こっている世界中の悲劇にどれだけ想いを馳せても、当事者にはなれない。それでも、祈ることは、苦しむことは、許されたい。想像することで、遠く離れた世界とほんの少しでも繋がることができるし、人を思いやることができると思う。

    これからもずっと読まれていってほしい物語。

  • 世界の不幸を一身に背負ってきた少女の物語。繊細で感受性が強く、人一倍ナイーブな女の子を、こんな不幸にさせるなんて何とサディスティックな著者。人間って社会的な生き物で、環境に左右されやすいと言われますが、その意味が分かった気がしました。要は自分を取り囲む環境をどう見るか、どう感じるかなんですね。アイは存在します。そして私も存在します(I'm here!)。今まさに必要な物語です。

  • 自分とは何かを考えさせられる内容だった。
    自分には関係ないうちは、まったく興味を持たず、いざ自分に関わってくると批判したりする。
    狭い世界に住んでんな。と言われてる気がした。

  • 2020.1.22-2.2(読書記録)

  • #残酷が多幸感へと変わるとき色とりどりの想像の束

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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