i(アイ)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 3225
レビュー : 363
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153093

感想・レビュー・書評

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  • 両親が出来過ぎなくらいいい人たちだと、子供が窮屈かもなぁ。本当の両親のことを考えてもいいのよ、と言われてもどうしていいのか悩んでしまいそう。
    小さい頃から、隠すことなく色々なことを教えてもらえるのは理想だと思う。最終的な判断は自分がすること、というのがよくわかりそう。

  • アイは存在しません。愛、私(I)、アイデンティティー、色々な意味を込めたアイ。
    インナースペース、胡蝶の夢。古今東西あらゆる人が自分の存在を定義する為に頭を振り絞ってきましたが、追えば追うほど逃げていくような気がします。
    複雑な出自の人が求める自我の拠り所がどれだけ重要なのかは、頭では理解しても心の中では他人事です。でも大概の人はそうではないでしょうか。
    本書は世間で恵まれないと言われている人から見れば、金持ちの暇に飽かせた戯言であると一刀両断する事も出来る。でもそういう余裕が有るからこその足元の不安定感が有るのではないかと思いました。
    自己で確立した以外の物は本来不当であると羞恥を覚えるというのは、考えとしては分かるし共感は難しくとも、そうなのかな?と想像する事は出来る。

    アイちゃんがシリアという戦乱の地から、図らずも救い出され優しい両親の元で何不自由なく成長していく。選ばれなかったシリアの子供たちと自分、一体何がその明暗を分けたのか。何かが違っていたら彼らは自分だったかもしれないと考える心。それは前に読んだいとうせいこうさんの「国境なき医師団を見に行く」で彼が至った結論と酷似しています。それが純粋な共感から発生することか、自らの出自によって否応なしに開かれてしまう扉だったのかで、苦しみと共感に分かれてしまうと言うのが皮肉といえば皮肉です。

    何のために生まれてきたのか悩み中の人にはクリティカルヒットするかもしれません。僕は悩んでいないので純粋に応援しながら読みました。

  • 自分の居場所を作るために色んな自分を演じる。
    そして自分自身が曖昧になる。
    だから自分がなりたい自分になる。

    作中で主人公のアイに親友のミナが綴ったメール。
    この言葉が印象的。

    この時自分だったらどんな言葉をかけるだろう。と思う場面がたくさんあり、読みながら自問自答する作品だった。
    ドラマチックで一気読みする作品が好きだけど、たまにはこういう作品もいい。

  • 起承転結の転結の部分が最後の5%の部分で起こる。
    主人公アイのリアルな設定と人物描写に読んでて、始終苦しかった。
    苦しいところが多い割に救われる部分が多くない物語だったけど、設定がすごいし話の展開も想像を超えてて、西加奈子はその点が本当に飽きないなって思うし、小説書くための人間の深みをすでに持っている人だなと感じた。

  • 遠い先の他人の身に起きた悲しい出来事に心を痛めて何になるのか。何にもならないと思います。けれど天災で命を落とした何十万という命にも、戦争で死に絶えた何百万という命にも、明日無くなるかもしれない誰かにも。各々の日常が、感情が、生き方が確かにあったことを改めて考えさせられました。悼むことをやめないアイに、人の生の重さを教えてもらった気がします。

  • 存在の肯定の物語 生きていく出会いや経験を通して
    人は、自分を受け入れていく。当たり前だけど、当たり前
    ではない。

  • アイ(I)はユウ(you)から人を愛することを学び、ミナ(all)からどんな自分でも受け入れることを学んだのかな、と思う。

    それにしても本筋とは違うけど、親が子どもに「○○と比べてあなたは幸せ」と言いすぎるのはよくないのかもしれない。
    親の方は、世界の中には戦争や貧困に苦しんでいる国も少なくなく、日々の生活を平和に営むことができている自分の置かれた状況をありがたく思いなさい、というつもりで子どもに説明しているのだと思うけど、子どもはそうは受け取らないということか。
    自己肯定感を下げてしまうのかもしれない。

  • シリアで生まれ、養子としてニューヨークの恵まれた家庭で育ったアイ。
    アイは世界の片隅で命を落としていく人々のことを知っては、いつでも心の中で、自分だけ幸せになるなんて…と悲痛を抱えていた。

    アイが自己肯定できなかったらどうしよう…となんだかハラハラしながら一気に読んだ。
    アイは存在する。

    西加奈子さんの本は、オリジナリティあふれる主人公だから、一見感情移入できないか、と思うけど、なぜか気づけばハマってしまってる。。

  • シリアで生まれて、アメリカ人の父と日本人の母に養子となったアイ。自分の存在を肯定していく物語。
    なぜ自分が選ばれてしまったのか、他の人が選ばれたのではないか…賢すぎて繊細なアイはずっと悩み続ける。
    ミナの登場により、アイの考えていることもだんだん分かりやすくなった。
    時事問題、国際情勢、性、災害…さまざまなテーマが盛り込まれていた1冊でした。

  • 何か賞を獲らなかっただろうか?~アイはシリア生まれでニューヨークに住むダニエル・ワイルドと綾子の養子としてアメリカ国籍を持って育ち、日本に移住した。両親は何事も秘密にしない。日本の私立中学では個性を持つことを強要されず居心地が良いが、自分が存在して良いのかは考え続ける。自分は何故、選ばれたのか。選ばれなかったら、どうしているのか。進学校として知られる大学付属の高校に入り、最初の授業で数学の教師は「アイは存在しない」と虚数の説明をし、その言葉が耳に残る。入学早々近づいてきたのはレズビアンのセクシャリティを持つ権田ミナだった。互いを評価しない二人は親友となった。数学に興味を持ったアイは成績をどんどん上げて学年トップとなり、国立大学の数学科に入学するが、一番の注目を集めたのはウッドベースでプロ・ジャズプレイヤーになるという内海義也だった。気になるアイにとっては初恋だったかもしれない。受験勉強を進める中で菓子を食べ過ぎて太ったアイだったが、数学科では気にとめる人間もいない。黒い服ばかりを着てノートには世界各地で起きた事故や事件、災害での死者数を書き綴る。父が仕事をリタイアし、シリアの悲惨な状況を気にする余り、NGOに加わり本部のあるニューヨークに移っても世界に没頭できる数学に浸り、当然のように院に進む。一人で暮らす日本で地震が起こり、汚染されている怖れのある食品を口に出来ず痩せていって街で声を掛けられたのは原発反対のデモへの参加だった。何となく参加している内にカメラを向けてきたのは、中年に差し掛かるカメラマンの佐伯祐だった。肌を合わせて結婚を意識し、自分が存在しても良い証しとして子どもを持つことを希望し、結婚・休学を選んだが妊娠はせず、PCOS・多嚢胞性卵巣症候群という診断を受け、人工授精で妊娠したが間もなく小さな命は心拍を止め、掻爬手術を受けざるを得なかった。ニューヨークからロサンジェルスへ帰ってきたミナは妊娠しミラという恋人と別れたが、内海と再会して避妊せずに性交して妊娠したが、堕胎すると言う。アイは流産したことを言い出せず、ミナの中絶は許せない。両親が日本に来てアイのルーツのあるシリアの情勢をダニエルとユウは議論し、綾子もシリアや実の両親の事を知りたくないかと聞いてくる。ミナに遭いたくて飛行機に乗ってるとシリア難民の男の子が密航船の沈没で死んだニュースに接し、再会したミナと抱き合って泣く。遠く繋がっている未明の海で花束を捧げ、出産を決意したミナが見守る中、裸で波で揉まれるアイは存在することを強く意識する~まぁね…設定は面白いのだけど、テーマが絞り込まれていない気がするなぁ。ま、存在して良いのだという結論で良かったけど、困難に直面している子供たちを養子として育てるアメリカ人セレブの事は変だなぁと確かに思う。子どもに気を遣い、一人前の人間として扱う態度も不自然。容姿が異なる人に対する日本人的な気遣いも理解できるし恥ずかしいし。不妊に悩むカップルがいる一方で、妊娠を避ける人間も沢山いる理不尽。LGBT・セクシャリティ…。どれも現代的な話題ではあったが…どうもモヤモヤが残る

著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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