- Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591153321
作品紹介・あらすじ
2018年本屋大賞受賞作!そして2019年6月19日発売の『ウルトラジャンプ』7月号から、武富智さん作画でコミック連載スタート!
不登校の少女が鏡の向こうの世界で出会ったのは――生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。
あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。
感想・レビュー・書評
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人間の生態ってすごくてさ。
この作品に出会って、読んで、心からぶわっと、何かがあふれ出す、その瞬間を楽しみにしていた。
やっと読めた。
特に中盤以降、物語の展開とかがみの孤城の彼らへの思いが止まらなくなってしまって。
通勤電車の中で、寝る前のベッドの中で、浮き上がってくる鳥肌を抑えることが出来ずに夢中になって読んでいた。
それなのに。
人間て、眠くなるのね。
おかげで思っていたより、読了まで時間がかかってしまいました。
疲れたら「疲れた」って、身体はサインを出してくれる。
そう、それは、かがみの孤城の彼らも同じこと。彼らもきっと、サインを出していた。大人は、彼らの発する、そのサインに気付き、一緒に向き合ってあげないといけない。
辻村さんの作品は、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」や「朝が来る」などの社会派よりの作品しか読んだことがなくて、彼女が得意とするSFやファンタジーの作品は、今まで触れてきたことがなかった。この作品は、学校に行けなくなってしまった主人公の女の子が、不思議な体験を通して現実とどう向き合っていくか、ということを描いた作品なのだけれど、その「不思議な体験」の中にSFやファンタジーといった要素が含まれていて、さらに「不登校」という現在の社会的な課題(という言い方がふさわしいかどうかはわからないけれど)に注目しているという点で、辻村作品の神髄ともいえるような作品なのかなと、そんな風に感じました。
少しばかり自分の話をすると。
以前、子どもの虐待対応の仕事をしていて、その時に学校へ行けなかった子ってたくさんいた。そこには少なからず虐待が関係していて、でも虐待が解決してじゃあその子がすぐ学校(もしくはそれに代替する場所)に行けるかと言われると、そんな簡単じゃない。そこで、学校と連携して、その子が学校へ行けるような支援を開始する。でも、虐待対応を本職としていると、それがなくなった時点で、その子とはもう関われなくなってしまう。一生懸命関係を築いても、学校へ引き継いで、わたしは新たな虐待対応をする。これは結構きつかった。関係を築いていく中で、学校へ行けなくても、「naonaonao16gとの面談は続けたい」、そんな風に言ってくれる子を、わたしは放っておけなかった。だから、転職した。虐待、とまでいかなくても、学校へ行けない、でもSOSは出している、そういう子を”継続的に”サポートするために。
今、わたしがしている仕事はざっくり言うと「不登校支援」というようなもので、全日制の高校とは違う選択をした子たちと関わっている。わたしは別に、学校は行っても行かなくてもいいと思っているけれど、彼らの居場所となるところがあればいいな、と思っている。勉強も絶対にしないといけないわけじゃないと思っているけれど、勉強はやれば力になるし、「できない」を「できる」にする、「できた」という自信をつけられるものだから、自信をつける一つの道具としてはとても有力なものだと思っている。その点で、学校の可能性ってまだまだあると思っている。
前職と、わたし自身が学校が大嫌いだったせいか、新しい子が入学してくるたびに、「この子に何があったんだろう」と思ってしまう。「何かがあったから学校へ行けない」と思ってしまう自分がいる。だけど、そうじゃない。選択の幅を広げたい子だっているし、海外の生活が長かった子もいるし、単純に「普通の高校が合わない」という子だっている。
わたしも、みんなが普通にしている「会社員」が合わなさすぎて、早くフリーランスとして自立したいものだと思っている。でもすぐにはできなくて、ずるがしこく、会社のいいとこだけつまみ食いして生きている。大人になれば、そういう選択肢を自分でとれる。でも、子どもの世界ってそうじゃない。「学校にいけない」ただそれだけで、世界からつまみ出されてしまったような感覚に陥る。ダメ人間の烙印を押されたような。でもそうじゃない。本当にそうじゃない。話を聴いて、「大丈夫」「一緒に考えよう」と伝える大人が近くにいるだけで、生きていけると思うんだ。うまくいかなくなったら戻れる居場所があること、相談できる大人がいること、たったそれだけ。それなのに、それって本当に、本っっっ当に大変なことなんだよな。だから、今目の前にいる、今関わっている子たちには、「困ったらいつでも戻ってきていいよ」「一緒に考えよう」と、伝えたい。
でも同時に。全員が何かに困っているわけじゃない。わたしの場合、それもひとつ、肝に銘じておかないと。
この作品では中学生が主人公で、その子が学校へ行けない、という視点から「生きづらさ」を描いている。でも、高校やその後の進路で、不登校とは別の形で「生きづらさ」って出てくることもあると思う。この作品全体の思いと、ちりばめられた言葉の数々を思うと、そんな時にも、助けになってくれる作品だと思います。大人も子どもも読みやすい筆致で描かれているので、主人公と同じ中学生のみならず、小学生だって読めると思う。さすが、本屋大賞受賞作品!!
生きている人みんなが、少しでも幸福な気持ちになれますように。 -
本屋で見かけても素通り、存在は知ってるけど素通り。そして古本屋でお安く見掛けたから のみの理由で手に取り、面白くなかったら友人に明け渡そう。とパラパラ〜と読み始める。気付けばあっという間に読み終えていた。「空き時間」なんてものは作ろうと思えばこんなにもある物なんだ。
500ページ越えのコチラの作品を休日を挟まず1.5日で読み終え、子供の様に夢中になっていた。
登場実物達の年齢やオオカミ少女や鏡の奥のお城の世界というファンシーな雰囲気、消してホラーではない優しいオカルトな要素は、まるで子供向けの書物かと思ってしまう設定と構築だ。
しかし、凝ったミステリの仕掛けは勿論の事、これは紛れもない「大人の為の児童書」だった。変な意味ではない。
当たり前の事だが、自分の周りの人間は文字通り他の人といった意味合いで他人だ。人生という物語の主人公は自分だろう。そして、自分がそうであるように他の人だってそうだ。
マサムネくんを借りよう、ゲームで例えるなら「自分が主人公のRPGなのに他のデータも同じフィールドに入って各々ストーリーを進めている状態」なのだと思う。これを 邪魔者や侵略者と感じるか、それとも人のストーリーを理解し、受け止め、共存して自身のストーリーをより良いものにしていくのか。
私は後者でありたいなぁ、喜多嶋先生の様に。
月並みな言葉ですが、こちらの作品に出逢った事によって心が温まり、優しい気持ちになりました。幸せです。 -
すごく、すごく良かった。
今まで読んだ辻村深月さんの作品の中で、一番好きです。
こころ、アキ、フウカ、リオン、ウレシノ、マサムネ、スバル、
そしてオオカミさま…
みんな、みんな愛おしくてたまらない。
この物語の主人公たちは中学生。
教室という小さな箱の中…
ひとりひとりはそうでもない。
ところが、グループになると言葉が通じない。
でも、たとえ大人になっても、いつの時代に生きていたとしてもそれは同じ。
どこに行っても、いいことばかりが待っているわけではない。
だけど今、自分が置かれているその場所だけが居場所ではなく、
それも長い人生の中の、たった一年なんだということ…
過ぎてしまえばわかることも、この時にはまだわからない。
闘わなくてもいいんだよ。それは逃げではないんだから。
そしてそれが容易くないことも、彼らはすでにわかっている。
”たかが学校”
そう思うことで、それを心のよりどころにして頑張っていけるのかもしれない。
もう十分頑張っている人に、軽々しく頑張ってと言ってはいけないらしい。
でもね、やっぱり言いたい。
自分をわかってくれるひとは、必ずどこかにいる。
言葉の通じるひとはいる。
だから頑張れ!
記憶は消えても、それぞれの場所で、みんな頑張っているよ。
きっとまた会えるよ!
最後に明らかになる、かがみの部屋の謎…
エラそうなオオカミさまが、どこかさみしそうで、ずっと気になっていた。
ひとりぼっちになってしまうのかな?
オオカミさまの正体が、そうだったらいいなと思っていた。
願い、かなったね…良かった。本当に。
読み終えた今、
鏡の向こうから、ひょっこり顔を出している表紙のオオカミさまが、
私にはにっこり笑っているように見える。-
初めまして、うさこさんのレビューでこの本読みたいと思いました。読んでみたら大きな感動を得ることが出来ました。まだ子供だった頃どうしても人と馴...初めまして、うさこさんのレビューでこの本読みたいと思いました。読んでみたら大きな感動を得ることが出来ました。まだ子供だった頃どうしても人と馴染めなかった自分を抱きしめてやりたいような気持になりました。ありがとうございました。2018/04/15
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こんばんは!杜のうさこさん!
本当にいつも感心してしまうレビュー。そして好みがかなり近くて、これからも近くにいたいと思うのでフォローさせて...こんばんは!杜のうさこさん!
本当にいつも感心してしまうレビュー。そして好みがかなり近くて、これからも近くにいたいと思うのでフォローさせてください!2018/06/06 -
ひとしさん、こんばんは~♪
フォロー、ありがとうございました!
私の感情の抑えがきかないレビュー(笑)に、温かいお言葉をありがとうご...ひとしさん、こんばんは~♪
フォロー、ありがとうございました!
私の感情の抑えがきかないレビュー(笑)に、温かいお言葉をありがとうございます!
木に登ってしまいます(#^^#)
私も先日、初めましての時に本棚を拝見した時に、好みが似ていて嬉しくなりました♪
これからもよろしくお願いいたします!2018/06/08
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タイトル 観たい私と観たくない私のしょうもない戦争
大好きな作品。
だから、自分の中の
この世界が崩れてほしくない。
「かがみの孤城」は
漫画化、アニメ化、映画化と
だんだん色々な人に知られていく。
もし、
自分が小説以外を手にしてしまったら、
今まであった自分の中のかがみの孤城は
崩れてしまうだろう。
でも、観たい!
凄く気になる!
観たいけどぉ…観れないよなぁ。
どうしよう。
面白い作品はこれだから困る。
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めっっちゃわかります!!
そのアニメや映画を作った人の作品の捉え方が自分と違うのもありますけど、大衆受けを狙って原作を改変しそれが失敗し...めっっちゃわかります!!
そのアニメや映画を作った人の作品の捉え方が自分と違うのもありますけど、大衆受けを狙って原作を改変しそれが失敗してたときにはもう……。怒りすら湧いてきます!!
でも別媒体になることで違う良さが見えてくることがあるのも事実なんですよね〜。BANANAFISHなんかはアニメ化成功の代表例だと自分は思ってます。原作漫画ですけど。小説だとカラフルの映画化が好きでした。
製作者が原作へ真摯に向き合ったことが伝わるような作品だったら嬉しいですね!!!2022/04/21
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「学校での居場所をなくし、閉じこもっていた主人公・こころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。」これこそまさにファンタジーで、このジャンルに慣れていないために大きく引いてしまう。
鏡の中の世界に入っていくなんて、絶対ありえない!!そんなファンタジーの設定でありながら、不登校という現代社会の問題をテーマとして組み込み読者との距離を縮めている。
また、そこには窮屈な学校生活や集団生活の煩わしさ、友達との人間関係、大人への絶望と不審…思春期の中学生の心理描写が丁寧に記されている。
このことは輝く鏡の中に別の世界があるという設定には違和感があるとしても、大人になって、自分の思春期、学生時代に感じていた感覚を思い出させる。それは学校生活という限定された世界での住み難さみたいな懐かしい感覚を回想する…自分の思春期を重ねて共感できる物語であった。
一方で、違和感を感じていた鏡の中の孤城で過ごす時間の経過は、そのリアリティない城を受け入れている自分にも気づく。
不思議な城で過ごす描写がだんだん溜っていくほどに、自分自身の思考から理解に落ちていくからであろうか?と、考える。
理解に落ちる理由…それはきっと、共感できるところが多いいからであろう。自分が子供の時に考えていた、感じていた大人の印象は、大人になって思い出す機会を逸している。子供の時にそう言えば、大人に対してこんなふうに思ったとか、そんなことを思い出させてくれたからでなないだろうか。
ストーリー的にはこのかがみの城に集まった7人が同じ中学でありながら、会えなかったことに(本当は時代が違ったのであるが)、途中、パラレルワールドの展開に向かった時は、『あまりにも安直すぎないか?』と、思ってしまった。
なので、時空ラグだったことに少しホッとしていた。
そして、最後の狼のお面を被った少女の伏線には手を叩きたくなった。狼の意味がようやく理解できる。
『ファンタジーは、苦手だ』とか言いながらも、結構面白かったかも知れない(笑) -
それぞれの事情で心に傷を負った7人の中学生。
行き場所を失くした彼女らに突如現れた鏡の中の世界。
現代と幻想の世界を行き来しながら物語は進んでいく。
少し心が痛むも温まるファンタジー。
それぞれこの不思議な世界に呼ばれた理由。それぞれ抱える痛み。
そして7人の真相。驚かされました。
終盤の物語もまた心温まりますね。
同じ年代の若い人たちはもちろん。
僕のようなおじさんと呼ばれる世代にも心打たれる作品でした。 -
5月の終わり。入学したばかりの中学校で仲間外れや嫌がらせを受け、学校に行けなくなっていた安西こころは、行こうと思ったフリースクールにさえ行けなかったことに落ち込んでいた。その夕方、自室の光る姿見に気づき、うっかりその表面に触れたところ、孤城の建つ、別の世界に入り込んでしまった。狼面にドレスを着た少女に迎えられたこころは、必死で逃げ出したが、「願いが何でも一つ叶う」という少女の言葉と冒険への憧れから、翌朝再び光りだした鏡の世界へ入っていく。そこには、彼女と同じ年頃の男女6人と自称「オオカミさま」の狼面の少女がいた。毎日9時から5時まで開いているその世界で、3月末までに、そこに隠された「鍵」を見つけ「願いの部屋」を開けると、何でも一つ願いが叶うのだと言う。もとの世界に戻った後、しばらくは城を再訪することを躊躇していたこころだが、勇気を出して鏡を潜ることに。
同年代の不登校の子ども達との触れ合いから、勇気と思いやりとを学ぶ思春期の姿を描く。
*******ここからはネタバレ*******
前評判があまりに良かったので、期待した分残念な作品。
「不登校」の子を6人も集めているが、どの子も明確に胸を張って言える理由を持っている。自分は「悪くない」と言えるので、学校へ行かない罪悪感はそこまで強くないのではないか。不登校の、これは最も解決策の考えやすい分野だろう。
7年ごと生きている年代の違う子どもたちが集められたが、衣服・話し言葉・話題等々、かなり違う筈。同じ学校なら、校長や担任、保健室の先生や生徒会長の名前でも、容易に違いに気づけるだろう。
最後の最後まで誰も気づかないこと自体が驚きである。
オオカミさまがリオンの姉だというのも無理がないか。舞台設定をして楽しんだというのはわかったとしても、彼女はリオンを含め、6人の子どもたちを食べ、その為に、こころによる救出後も彼らから恐れられることになる。もし、こころも食べられていたら、もし、こころが鍵を見つけることに失敗していたら、リオンの姉は弟の未来を消してしまったのか?それだけのリスクを冒す価値のある場だと考えたのか?理解に苦しむ。
アキが将来の喜多嶋先生というのも難しい。こころとより14歳年上としても、面影くらいはあるだろうし、声は変わりにくいものである。こころだけでなくマサムネも気づかないなんて、とても不自然。
「同じ中学校で、別々の時代を生きる不登校の子たちが孤城に集められる」という設定と、何人かがその後に再会してお互いの人生に大切な人となるという設定はおもしろいが、全体的に説明が多く、このストーリーを維持するために「作られた感」が強い。
「たかが学校」と言いながら、ラストでこころは学校へ行く。
留年したアキと進学したスバル、転校したリオン以外がどうしたかは不明だが、「たかが学校」ならば、一人くらい不登校のまま中学を終わり、社会で成功した姿を見せて欲しかった。
あくまで個人的な感想ですが、残念ながら私にはこの作品が何を描きたかったのか、わかりませんでした。
著者プロフィール
辻村深月の作品






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有意義な読書をしてますね。
また、折に触れて、拝見させてください。
また、よろしくお願いします。
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学校は学ぶところですが、感覚的には人間関係が大きいですよね。本当に話してみたい子とはなかなか話せなかったですし...
学校は学ぶところですが、感覚的には人間関係が大きいですよね。本当に話してみたい子とはなかなか話せなかったですし、グループというのがあんまり好きではなかったです。
辛さのわかるきたじま先生のような接し方までを学校の先生に求めるのは酷なのかな。。
こんにちは^^
コメントありがとうございます!
わたしも、学校での思い出といえば行事や学習ではなく、人間関係の...
こんにちは^^
コメントありがとうございます!
わたしも、学校での思い出といえば行事や学習ではなく、人間関係の苦いものの方が多いです…
グループ、わたしもあれは本当に嫌でした。時折あった「好きな人同士」みたいな区分け、死ぬほど嫌でしたね。取り残されるタイプだったので。
決して悪い先生ばかりではないんですけどね…多忙を極めて余裕がないんだろうなと、そんな風に捉えています。
そもそも一人で多くの生徒を担当する、というのがもう、社会と合っていないのかもしれないですよね。