月のぶどう

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 170
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591153345

作品紹介・あらすじ

実家である天瀬ワイナリーを営み発展させてきた母が、突然倒れ、かえらぬ人となった。
優秀で美しい母を目指して生きてきた双子の姉・光実(みつみ)と、二十六歳になっても逃げることばかり考えている弟・歩(あゆむ)は、自分たちを支えてくれていた母を失い、家業を継ぐ決意をする。
デビュー作『ビオレタ』で高い評価を集めた期待の新鋭による、優しい涙がこみあげる感動作。

感想・レビュー・書評

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  • ワイン醸造所で育った双子の姉弟。切り盛りしていた母親が突然に亡くなってしまう。葬儀のシーンから始まる。

    寺地さんの著作に描かれる人々はだいたいが不器用だ。自分を表現することが苦手だったり、端からみればつまらないことで悩み立ち止まる。だけど、手をさしのべる何かに出会い、気付き、前を向いて歩き出す。そんな作品が多い。

    人間は面倒くさい。ワインを作るための工程に手間と時間をかけ、細心の注意を払う。それでも天候や害虫でぶどうがだめになれば翌年に一からやりなおし。その、ままならない感じは人生にも似ている。

    二人の「月のぶどう」がどうぞ亡くなった母親に届きますように。

  • タイトルに惹かれて手にとった。

    月にぶどうができるわけがないから、どういうことでこのタイトルなのか?

    双子がゆえに思いっきり比べられて年数を経たできが悪いと言われてきた弟。

    その弟を守っている気がしてきた姉。

    それだけじゃない。

    お互いそれだけじゃない。

    器用に生きられない。当たり前だと思う。

    話の進みかたもいいと思う。

    本屋大賞のノミネート作品になりそうな本。ていうか、本屋大賞が好きそうな本。

  • 初読みの作家さん。

    母亡き後、ワイナリーを引き継ぐ双子の姉弟。
    いっけん、よくできて、ハキハキとしていて すぐに会得するタイプと
    ぐずぐずしていて要領が悪くてなかなか会得できないタイプ。
    二つのタイプを絵に描いたような双子。

    意外と、前者は頭打ちしてしまうのが早くて、
    後者のタイプは伸びたときの伸び方が大きかったりする。

    どっちがいいということでなくて、
    どっちにもいいところがあるってこと。

    二人で美味しいワインを作ってほしいなぁ。

    希望のある優しい読後感でした。感謝。

  • 隙のないと思われる人でも心に痛みを抱えているし、悪そうなやつにも理由がある。完璧な人などいない。寺地さんの描く人々は、ヒーローもヒロインもいない。

    主人公の歩にしてから、できの悪い弟というレッテルを背負っている。亡くなった姉の光実は母親の理想を追い続けるしっかり者。揺るぎない、ワイナリーを受け継ぐ者。かと思いきや。
    物語は二人の一人称で交互に綴られていく。なぜか歩に冷たいワイン職人の日野さん。あからさまに歩を嫌う年下の森園くん。いたずら好きの祖父。母の妹である和葉おばさん。歩の親友広田くん。ちょっと気になる女の子が二人、出てくるが、歩の関わり方が面白いと思った。

    たくさんの人たちに囲まれながら、ワインを作るという仕事を通じて、歩も、光実も少しずつ変化していく。
    そのあたりの心理描写が、寺地さんの持ち味だと思う。
    人生、こういうことかもしれない。寺地さんの物語は、そんな、ちょっと楽観的だけれど、生きていくのに辛くなった時必要な楽観さではないかと思う。

  • 寺地さんの世界観が好きなんだなと思う。

    双子の光実と歩、それぞれの視点で交互に物語が紡がれる。
    地道な作業に明け暮れる毎日。何かを見て、感じて、育てていく。国産のワインが飲みたくなった。いいなぁ。何かを産み出せる人は。

    歩とおじいさんの光実への言葉がとても素敵だ。
    そして、お父さんも。いいな、こんな人たちになりたいな。

  • 関西のとあるワイナリーのおはなし。

    寺地さんの本は2冊目だけど、ひとつの家族を長期的に書くのが好きなのかな。
    つとつとと、3年間くらいの話が書かれているので、途中、ちょっと長いな…と思ったところもあり。

    じーんとくるいくつかのシーンがあったな。

  • 大きな展開やうねりのようなものがあるわけではない静かな作品。ずっと、いつもワイナリーの仕事優先の母が急死した双子。姉は母に憧れ、頑張り屋でしっかり者。甘えを許さず、人に弱みも見せられない。弟は出来のいい姉に比較される日常。自分に自信が持てぬまま。2人とも母から、葡萄やワインより自分を大切にされたかった本音を受け入れないまま、生きづらさを重ねる。2人の震えるような繊細な心の動きに私自身も重なる。これから自分にもう少し優しくなれ、世の中も違う光景から見えるかもしれないと温かな光を寺地さんの言葉から貰った。

  • 大阪のワイナリーを営む家族の話。
    理想に邁進する母の姿を追う立派な姉。
    その姉に比較され続けた双子の弟。
    軸はこの双子なんだけれど、父や叔父や叔母や友人や、ひとりの人間が死んだあとから始まる物語。

    みんな我慢したり勝手したりして見なかったこととか無かったこととかにすればそれでよかったのだろうけど、ひとつ歯車がはずされるとガタガタと脆くも崩れ去るって感じ。
    20才半ばにして人間関係再構築っていうか、知ってるつもりでいた近しい人の新しい面を知るって。

    まあ、家族ドラマ、人間ドラマ。

    しかし立派な姉が眩しすぎて後ろ向きになっていた弟。
    なんかダメなネガティブな思考になって「自分を正当化」しようとしてるけど、結局は家持ち土地持ち、そして最後には才能持ちって描かれて、へえーそうなんだー…って気持ちになったわ。
    いや、悪いってワケではないんだけど。
    物語だし。

    こうした点は作中、弟くんに嫌がらせをするキャラも言ってるんだけど、自分は正直そうだよなあ…て同意してしまったわ。

    ドラマ、ドラマ、ドラマ、
    何かを越えることが、何かを変えることがドラマ。
    分かっては居るんだけど、じゃあ初めから…って考えてしまったわ。

  • 2018/11/12

  • 母の死をきっかけに二十六歳の双子の姉弟が古参スタッフに助けられながら実家のワイナリーを継ぐ。叔母のカフェでアルバイトをして日々を過ごしていた、姉に劣等感を持った弟と、以前より家業を手伝っていた、弟を密かに羨む姉の、繊細に寄り添う家族模様、夢のように余計な濁りが一切ない各恋愛模様。透明感に満ちていた。

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著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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