江の島ねこもり食堂

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154182

作品紹介・あらすじ

江の島に「ねこもりさん」と呼ばれる女たちがいた。それは島の猫の世話をするという、とある食堂の隠れた仕事。
1912年のすみゑ、1967年の筆、1988年の溶子、そして2017年の麻布。一家の女たちが、ねこもりとして生きたそれぞれの人生は、新しい命を結び、未来を繋いでいく。あなたの血にもきっと流れている、百年の物語。

目には見えなくても、そうとは知らなくとも、私たちの中には確実に、母から、祖母から、脈々と引き継いだものが存在するのだ。それが今の自分を作っていると思うと、なんだか自分自身が愛おしくなってくる。――大矢博子(書評家)

感想・レビュー・書評

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  • 江の島で代々、島の猫たちのお世話をしている女性たちの100年に渡るお話。
    「ねこもりさん」と呼ばれる彼女たちは、先祖代々猫のお世話をしているが、猫たちの方からもきちんと認められていて、ある時は島中の猫たちに見送られ、ある時は島中の猫たちに出迎えられる。そんな先祖代々の女の血筋‥‥「魔女の宅急便」や「コーヒーが冷めないうちに」を思い出しました。中には、ねこもりなんてやってられない!江の島を出たい!というのもいたりして、これは「あまちゃん」を思い出しましたね笑。
    大正から平成まで四世代の女性たちの生き様、とても胸を打たれました。個人的には「あまちゃん」タイプの溶子の章では泣かされました。「言ってくれなきゃ、わかるわけないべ」「家族とは難しいもんだな」‥‥あ〜!泣いた!
    全編通して、潮の香りを感じました。子どもたちとよく江ノ電には乗りに行ったけど、江の島までは足を伸ばしてなかった。江の島に行ってみたくなりました。

  • 100年、の一冊。

    想像以上に良かった。

    江の島の食堂を舞台に4世代の女性達の時が、100年の時が紡がれていく物語。

    どの時代の女性達も家族を、大切な人を通じて自分を見つめていく、命の繋がりを感じる、それが時に静かに時に強く伝わってくるのが良かった。

    中でも荒々しい溶子の存在が良いスパイス。

    抱えていた苦しみを吐き出し、心通じる瞬間は涙なしでは読めない。  

    そしてこのラストの紡ぎ方。

    壮大な時、命の輝き、導きを感じた。 

    人は助け助けられ、時を繋いでいくんだね。

    猫達がこの時をずっと見守っていたかのような温もりも感じる物語。

  • 舞台は江の島。
    そこで民宿を営む「半分亭」は、代々野良猫の世話をする「ねこもりさん」の仕事を任されていた───

    江の島の食堂と猫ちゃん、
    想像していたほっこりな世界とはだいぶ違っていました。

    一番印象に残ったのは筆の章。
    からだは弱くとも、心まではそうならない筆の淡い恋物語がせつなかった。
    置かれている時代、場所で、それぞれに精一杯生きた女性たちの友情と約束。
    100年かけて返すことができたもの。
    長い長い年月を経て、繋がった奇跡。
    色々な想いがじわ~っとこみあげてくる物語でした。

    猫好きとしては、もっと猫ちゃんがでてきてほしいと思ったりもしましたが、
    逆に急所をついて現れる猫ちゃんたちの存在感がすごい。
    もうね、ベビーカーの回りに島の猫達が集まってきたシーンには胸がいっぱいで…
    守っていたつもりが、守られていたのだなぁと…
    約束、はたされました。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      初めて聞く作家さんです。まだまだ勉強不足。
      淡い恋物語いいね〜
      私は恋愛小説は読まないけど淡いものは好き...
      こんばんは(^-^)/

      初めて聞く作家さんです。まだまだ勉強不足。
      淡い恋物語いいね〜
      私は恋愛小説は読まないけど淡いものは好きだな。
      猫ちゃんも可愛いしね(⁎˃ᴗ˂⁎)
      でも評価星3という事はうさちゃんにとって普通だったのかな?

      次は何読もうか、迷っているところ。
      積んでいるのどんどん読んでいかなきゃね(^-^)/
      こてこてのミステリーもいいけど、最近の作品ってどうなんだろう。

      それでは、おやすみ。
      2018/01/25
    • 杜のうさこさん
      けいちゃん、こんばんは~♪
      今日も寒いね~(>_<)

      この本、良かったよ~♪
      恋愛ものというより、三代にわたる女性の生き様が書かれ...
      けいちゃん、こんばんは~♪
      今日も寒いね~(>_<)

      この本、良かったよ~♪
      恋愛ものというより、三代にわたる女性の生き様が書かれていてしみじみしました。

      ☆3と4迷ったんだけど、タイトルが食堂と猫ちゃんでしょう?
      だからさぞかし大好物の美味しいモノと、可愛い猫ちゃんがたくさんでてきて~なんて、
      勝手に想像しちゃったせいなのよ。
      名取佐和子さん大好きなのに、申し訳ないわ。
      この作家さん、きっとけいちゃんも好きだと思う。
      『ペンギン鉄道なくしもの係 』オススメだよ♪

      積読…心がちくっとするわ(笑)
      去年は本格を読みたい!って思ってたんだけどね。
      けいちゃんのほうが、ミステリーたくさん読んでるから教えて欲しい(*^-^*)

      では、おやすみ~^^
      2018/01/25
  • 江の島で食堂を営む母娘四代の物語。
    曾祖母の交わした約束を引き継いで伝えていくこと、いろんなご縁を蔑ろにしないことが、いつか巡って自分や誰かの励ましになると思うと、ぐっとくるものがあった。
    濃密な人付き合いには腰が引けてしまうけど、人との関わりで生きているのだと改めて感じる。
    漠然と、なんか大丈夫だ、と晴れやかな気持ちになれた。

  • タイトルから、ゆるいほんわかしたお話かと思っていたら全然違ってた。
    江の島で何代も続くねこもりさんをしている女性たちのお話。
    人に良くしてもらった恩を返す、その恩をまた次の世代に返す、他者を思いやる気持ち、皆がそうであってほしいと思った。
    猫との関係も良かった。できれば野良猫がいない世の中になれば言うことはないのだけれど。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    江の島に「ねこもりさん」と呼ばれる女たちがいた。それは島の猫の世話をするという、とある食堂の隠れた仕事。1915年のすみゑ、1963年の筆、1988年の溶子、そして2017年の麻布。一家の女たちが、ねこもりとして生きたそれぞれの人生は、新しい命を結び、未来を繋いでいく。

    江の島はデートで何度か行きましたが住むには小さな場所ですね。高尾山中腹のお土産街もそうですけど人間関係が濃厚そうです。昔はそういうのしんどかったけど、今となっては結構憧れますね。4代に渡る食堂の物語で、縛られていると思うか守られていると思うかはその人次第でしょうが、僕なら絶対に飛び出しているでしょう。そして懐かしくて寂しくて泣くんでしょう。彼女達は葛藤は有りながらも島を人を猫を愛して、いつまでもこの島での歴史をつないでいきたいと願っています。図らずも島を出なければならなかった溶子と麻布の3代目4代目はさみしいです。ほんわか温かな話になるのかと思っていたら、結構シビアな展開で胸がしくしくしました。いい話だと思います。

  • 代々繋がれてきた
    江の島の猫のお世話をする“ねこもりさん“の物語

    それぞれの時代にそれぞれの思いがあって、
    “つなぐ“という言葉の重さを感じました。
    自分たちがいま生きているのもこれまでつながれてきたからなのだと改めて思いました。
    もしだれかが欠けたら、出会わなければ
    もしかしたらここにいないかもしれない。
    そう思うと一つひとつの出会いを大切にしていきたいなと思いました。

  • 江の島に住みながら、猫のお世話と食堂を営む女性の話です。一世代に限らず、何世代にも続き、時間経過は100年ほどの壮大なスケールになっています。人との絆が次の世代にも受け継がれていく様にはとても感動します。恩を忘れない義理堅さを教えられた気持ちになりました。

  • 江ノ島にある、100年続く食堂の過去と未来が描かれる。
    それぞれの時代を生きた、すみゑ、筆、容子、現代の麻布まで。
    ねこもりという、江ノ島に暮らす猫の世話をすることが、食堂の女性に課せられた役割だった。「半分亭」という店は、最初茶店だったのが、名物ツブ貝を使った丼「江ノ島丼」を生み出し、宿泊もできるように発展してゆく。
    そこへ夜逃げしなければならない事情が生まれるのだが、それも理由があった。

    「半分亭は、猫とお客さんに助けられてつづいてきた店」

    と代々受け継がれてきた。そこにはある猫が必ず現れている。
    最後に気になっていたことがぜんぶ明かされて、気持ちの良い終わり方。続編をあれこれ想像してしまう。永遠に続いてほしいお店の話。

  • 装丁の店を確かめに江の島に行きたくなった。近くにいるのに行くことはほとんどない。たまには行ってみようかな。すみゑから麻布へと脈々と続くねこもりという血。ねこもりという役目はないけど、オイラも親父とお袋からこれでもかっていうほど良くも悪くも血を引き継いでいる。若いときはあんなふうになりたくないと思っていたけど、今となってはしっかり似ていると思うし、昔ほどの嫌悪感はない。なんでだろう?溶子が庄二郎を許し認めるのはちょっとわかるような気がする。「半分亭は猫とお客さんに助けられてつづいてきた店だ」を世代を越えて守る佐宗一家のひとりであることを誇らしく思えるようになったからこそだと思う。今日は母の日。お袋に電話をして、人一倍元気な身体に産んでくれたことを感謝した。喧嘩もするけど家族っていいよね、ってあらためて感じさせてくれる温かい物語だった。

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著者プロフィール

名取 佐和子(なとり・さわこ):兵庫県生まれ、明治大学卒業。ゲーム会社勤務の後に独立し、2010年『交番の夜』で小説家デビュー。著書に『ペンギン鉄道 なくしもの係』(第5回エキナカ書店大賞受賞)シリーズ、『金曜日の本屋さん』シリーズ、『シェアハウスかざみどり』『江の島ねこもり食堂』『逃がし屋トナカイ』『寄席わらしの晩ごはん』『七里ヶ浜の姉妹』『ひねもすなむなむ』『図書室のはこぶね』(京都府私立学校図書館協議会司書部会「中高生におすすめする司書のイチオシ本2022年度版」第6位、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2022」第8位、うつのみや大賞2023第4位)ほか多数。

「2023年 『文庫旅館で待つ本は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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