- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591156056
作品紹介・あらすじ
今のわたしは、あの頃なりたいと望んだ自分になれているのだろうか。
遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は、寂しい境遇にあっても、屋敷の大人たちや、自分を導いてくれる言葉、小さな友情に支えられて子ども時代を生き抜いてきた。
時が経ち、時代の流れの中で凋落した遠藤家。常夏荘はもはや見る影もなくなってしまったが、耀子はそのさびれた常夏荘の女主人となり―。
ベストセラー『なでし子物語』待望の続編。
ドラマ化、映画化、舞台化など話題作続々、伊吹有喜最新刊!
感想・レビュー・書評
-
『なでし子物語』の続編。出版は『なでし子物語』『地の星』『天の花』の順だけど、時系列としては『なでし子物語』『天の花』『地の星』の順。『天の花』から読めば良かったかなぁ?とちょっとモヤモヤ。
『なでし子物語』では10歳だった耀子も今は28歳で一児の母。
高校卒業と同時に結婚、出産した耀子は社会人経験がないが、家庭の事情や色々思うところあってスーパーでパート勤めを始める。そこから起業するまでのお話。
これだけ書くと奥さんの奮闘記って感じだけど、耀子が嫁いだのは地域の名士の家。そんな家の奥さんがパートに出ていることで陰で没落したのかと噂を立てられ、起業しようとみんなに出資金を募れば、あんたんちみたいにお金はないわよ、と断られる。
しかし「守られるだけじゃない、守る力がほしい」「自分の足で立っていられる力がほしい」と思う耀子はうまくいかなくても、子どもの時に家庭教師に教えてもらったように『どうして』と思わず『どうしたら』と考えて進んでいく。
「とにかく進む。欠けているものがあるなら、満たす方法を探す」
『なでし子物語』では自分に自信を持てない女の子だった耀子が、自分で考え、自分で勉強し、自力で進んで行っている姿に胸を打たれます。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『天の花』から10年後。
常夏荘の女主人となった耀子は、子育てしながら働き始める。
『自立』と『自律』に心に止めて歩んできた耀子の頑張りにエールを送りながら読んだ。
立海のことが気になって仕方ない。
続きがあるのだろうか? -
「なでしこ物語」から18年後
28歳になった耀子は『おあんさん』となり、
そして1児の母になっていた。
先の「なでしこ物語」では、
自分は何もできない、
何をしてもグズだと、自信を持てないでいる
小さい女の子だった耀子が、
「どうして?ではなくどうしたら?」
と自分で考え、女性として、母として、
自立・自律した大人になっていく耀子の
成長していく姿が描かれていて、
とてもカッコ良くうつりました。
***ネタバレ***
しかし
龍治と結婚していたのにはビックリ!
どこがどうなってそうなったのだろう?
その辺りの事が次に出版された
「天の花 なでしこ物語」
で描かれているようなので、
引き続き、楽しみに読もうと思います。 -
出版が何故この順番だったのかが分かるような気がしました。1作目のなでしこ物語とは全く異なるトーンの話ですが、続編として素晴らしい物語りでした。最後まで一気に読まされ、読後感も良く満足でした。間をつなぐ天の花は、地の星と同時かそれ以前に構想されていたのでしょうが、他の2作との内容の落差が大きく、辻褄合わせに思えてしまいました。3作目も読む必要はあるもののおまけと考えた方が良いかもしれません。
-
皆さん高評価なのですが、わたしはちょっと。。。
没落過程とは言え膨大な資産を持つ遠藤家。母の育児放棄にあっていた少女・耀子は林業で財を成した遠藤家発祥の地・峰生に建てられた広壮な常夏荘で働く祖父の元に引き取られ、病気療養のために転地していた遠藤家の孫・立海が出会う。ちょっと『秘密の花園』等を思い出させる少年少女を主人公にした良い話『なでし子物語』の続編です。
前作から一気に18年。なんと今度は”お仕事小説”でした。
遠藤家の家長・龍治の嫁になった28歳の耀子が、何故か過疎化が進む峰生のスーパーのパートです。大手スーパーの傘下に下り、東京から来た店長が遠藤の分家の娘。閉店に追いこまれようとするスーパーを耀子たち従業員が建て直していきます。そして。。。
ただねぇ、お仕事小説としての出来は良くない。美味しくて健康的で安いお弁当、一口食べた人から直ぐに口コミで広がる可愛らしいスイーツ。確かに登場人物の中に腕っこきの料理人を配しているとはいえ、そんなものがたちどころに生まれて、しかも大量に作ることができる。そりゃ成功します。しかも、作るところは常夏荘の巨大で何故か最新設備を備えた台所。「苦難を頑張り抜いた果ての機知」がお仕事小説なら余りにご都合主義という気がします。
では人が描けているかと言うとそうでもなく。全国模試10位という頭脳明晰なはずの耀子は28歳になった今でも何故か愚図キャラですし、他の登場人物もどうもキャラが不安定な気がします。
『秘密の花園』的な話が「お仕事小説」に、資産家の嫁がスーパーのパート、そんな木に竹を継いだような無理な設定です。
いっそ別の話として切り出した方がすっきりする気がするのですが、物語のバックには遠藤家の物語が流れ続けます。娘の喘息治療の為と言いながら長く別居し、会話の無い耀子と龍治夫妻。何故か避けあうような幼馴染の立海と耀子。そのあたりの謎が最終編『天の花』で明かされるのかもしれません(どうも話は遡り耀子の結婚にまつわる物語の様です)。
とは言え、手を出すかどうか・・・・。