([ほ]4-3)活版印刷三日月堂 庭のアルバム (ポプラ文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591156865

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第3弾
    どんどん 面白くなってくる。

    「紫陽花のひとつひとつの花びらがもう会えないと言っているよう」

    「ここにいるどの人にもその人の暮らしがあり、たくさんの過去といまを抱かえて生きている。少しずついろいろなものを失っていくけれど、世界は続いていく。だから、できることをしなくてはいけない。ひとつひとつ、自分の仕事を。」

    これまではこれからの物語の展開があまり見えてこなかったけれど、この巻は次への展開が待ち遠しく感じさせるものになっていました。

    八木重吉さんの詩集が欲しくなりました。

    さて、第4弾が楽しみです。

  • 「あれ?活版印刷のお話だったっけ?」と一瞬忘れるほど、各々の話がとってもよい。

    シリーズが進んでも、自然な形で前シリーズの人達と繋がりつつ、未来に展開していく。
    ほろ苦くて、でも温かく人間味の溢れるお話。
    涙がじんわり浮かぶ。
    そして併走するように活版印刷が時々出てきて、最後綺麗にお話をまとめる。お見事!!

    またしばらく経ってから再読したい!と思うシリーズに出会えました。

  • シリーズ3作目。このシリーズは本当に、前勤めていた印刷会社の人たちにお勧めしたい本だなぁ。今印刷業界は、斜陽産業とか結局は捨てられてしまう物を作っているとか酷い言われようだけど、この本を読むと「思いを文字にして世に出す」ことの特別さが自然と感じられてスッとする。
    今回は「カナコの歌」「川の合流する場所で」が好きだった。弓子さんの母親についても本作で知ることができた。何だか弓子さんと一緒に働いている気分になってきたな。自分も活版印刷で何か作ってみたくなった。今年の年賀状は活版印刷で作ろうかな。

  • シリーズ第三弾。

    今回も各話、ええ話でじんわりと心に染み入ってきます。
    第二話「カナコの歌」の扉が、活版で印刷された短歌の写真なのですが、その味わい深さにやっぱり“紙に印刷”っていいよねー・・と、このペーパーレスといわれているご時世に逆行の思いを抱いた次第です。
    その短歌がこちら(作中に出てきます)
    <あの夏は愛するものもまだなくてひこうき雲に憧れていた>
    BGMにユーミンの「ひこうき雲」を流すと、歌詞の“あの子の命はひこうき雲・・・”と、第二話の話の内容とリンクしてジワるを通り越して泣けてきます。
    人の想いの温かさや切なさ。それを表現する言葉(ことの葉)の美しさを活字を通して実感できるって素敵だなぁ、としみじみ。
    そして話は、三日月堂に置かれているものの、動かすことができなかった“平台”と呼ばれる機械が、盛岡の老舗印刷会社の方の協力を得て、いよいよ動くかも・・という展開になってきています。
    三日月堂の今後の経営がどういう方向にいくのか、次巻が楽しみです。

  • シリーズ3作目。
    前作のラストで作成した大作「ウエスタン」がお披露目となり、たまたま街ブラの雑誌編集者が取材したことにより、自分の仕事が他の同級生に比べ、レベルが低いと感じていた彼が活版印刷と出会うことで、自分の仕事の価値を見直す「チケットと昆布巻き」。その雑誌をたまたま手に取った弓子の母の同級生の三日月堂への再訪から始まる、弓子の母の遺した短歌を綴ったカードを作ることになる「カナコの歌」そのカードを受け取った弓子の母の同級生の娘が目にすることで、夏休みのワークショップを受けることになる「庭のアルバム」
    その「庭のアルバム」で作成したポストカードを展示会で出店したことにより、出会う盛岡の大きな印刷会社の人々。
    弓子が一人一人に対して誠実に対応しているように見えるが、実はその誠実さの恩返しとして、様々なアイデアを得て、弓子が成長する過程が描かれる。
    動かせなかった大きな印刷機を動かせる機会も訪れ、今後、弓子の三日月堂がどう成長していくのか?
    そして、これまでにかかわった人物たちの成長の様子も多分描かれると思うと、今後も楽しみな作品。
    人間、完璧じゃなくても、やれることをやっていれば、いつか報われる日が来る。苦しい日々ばかりではない。
    そんなことを教えてくれる作品。
    今、こんな世の中だからこそ、物語だとは分かっていても、救いを求めずにいられない。
    「カナコの歌」「庭のアルバム」は心に残る。

  • 丁寧に、少しずつ確かに進んで行くストーリィが、
    まるで組版をしているようだな、なんて。

    こうして、丁寧に丁寧に言葉を組み上げられた物語は本当に、読ませるなぁ、と素直に感じました。

  • 小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い。しかし三日月堂を続けていく中で、弓子自身も考えるところがあり…。転機を迎える、大好評シリーズ第三弾!

  • いくら活版が流行りとは言え、
    このモチーフでは
    シリーズも長くは続かないだろうと
    決めつけていました。

    弓子が手探りで印刷所を再開したのと
    同じように 頼りなく細々と繋がり始めていた
    人の縁が ここに来て網の目のように広がって

    弓子を生み 弓子を育んだすべてのものが
    目の詰まった手編みのセーターのように
    あったかい形を整え始めましたね。

    そうしてまだ この物語は終わらない。
    新しく始まろうとしているのを感じます。

    ことのはを組み 人の思いを誰かに伝える…

    なにげないことで 意味のあることは
    私の日常にも必ずあるのだと思えてきました。

  • 三日月堂で働く人が増えそうな予感✨
    小さな印刷物がメインの印刷屋から、次のステップへ。本が印刷できる平台が動く日もすぐそこ。
    ①人生に焦り、人と比べて落ち込むなんて、若い時期は日常茶飯事。本当にやりたい事は見つけれますか。
    ②弓子さんのお母さんが生前作った短歌を印刷する。バンドを組んでたメンバーとの確執や、仲直り、成長。
    ③不登校の高校生の子が、活版印刷に興味を覚え、バイトに入る。自分に自信を持って生きるのは難しい。でも、まずは、目の前の興味ある事を追い求めよう。人生の成功はひとつじゃない。
    ④活版印刷のイベントで、同じ平台を持つ盛岡の印刷会社の方と知り合い、平台の練習をさせてもらったり、修理してもらえる事になったり。
    未来への一歩が開けた話。

  •  各登場人物たちのどこかに必ず共感できる部分があり、各話に泣ける部分がある。関わる人たちの心を動かし、弓子の世界も広がっていく、前2作よりもっと大きな波を感じる。
     お母さんに繋がる依頼や盛岡散策、大型印刷機のこと、どんどん惹き込まれていく。「死」が常に語られているようで、静けさがあるけれどどこか力強い。続きに期待。

著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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