ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 529
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591161005

作品紹介・あらすじ

「34歳のときに治らないがんの告知を受けた。
後悔はない。それは、すべてを自分で選んできたからだ。

生きにくさを感じている人に、
生きやすさを感じてもらえることを願って――。」

家族、友人、仕事、お金、自分の居たい場所、そして生と死。
命を見つめ続けてきた写真家が、大切にしてきた「選ぶ」ということ。

自らが取材したがん患者や、患者の関係者たちとの対話を通して見えてきたもの。
最後に選択するという安楽死について。
生きにくさを超えるために、自ら「選びとる」ことの意味を、強くやさしいことばで綴る。

感想・レビュー・書評

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  • うーん、なんだろう。
    評価平均4.24か。
    みんな、高い評価してるんだな…。

    著書の言っていることは理解できるし、余命宣告をされて命の瀬戸際で生きることを考えている人に、こんなのうのうと暮らしている私が、偉そうに言えることなど何ひとつない。当たり前だ。
    彼を否定するつもりもないし、きっと考えに考えてたどり着いた答えなんだろう。
    私に言えることなど何ひとつない。ないんだ。
    でも、このどうしようもないくらいやりきれない感情はなんだろう。著書の考えを受け入れたくない自分がいる。何かが違う気がする。
    よくわからないけど、ちょっと自分には受け入れがたい何かがある。
    これがなんなのか、考えてみる。

  • 心が元気なときに、ぜひ読んでほしい本。

    タイトルの「…選べなかったこと…」とは、進路とか職業とかかと思いきや、親子関係のことがメインに書かれている気がしました。
    親とて他人、自分を不幸にするなら縁を切ってもいい。ショッキングだけど、今苦しんでいる何人もの人を救う新しい考え方だと思う。そうやって納得しつつも、じゃあ自分にその選択ができるかというと…自信ないな。でもせめて自分は自立した想像力のある親になりたいとは強く思った。

  • 筆者の強さと、正直さに感銘を受けた。
    これはがん患者の闘病記でも家族愛の話でもない。筆者が自分の命と向き合い、自分の人生に責任を負い、自分と、家族と、社会と本気で向き合った勇気ある告白の本だ。


    死が現実的に迫ってきたとき、本当に大切なものが見えてくるのだろう。
    家族を選ぶ、ということ。自分の人生を自分で選ぶということ。ある意味衝撃的でもあり、鬱屈とした私の心を少し晴らしてくれた。

    30代でがんがみつかるまでの8か月の苦しみ、病気が分かった時のある種の安堵。診断に難渋してきた医療者たちへ示す冷静な理解。病気が判明したとき、姉に伝えてしまった後悔、きっと取り乱すだろうという妻への思いとそれを裏切る妻の強さ。経過の描写はリアルでありながら、とても冷静に描かれている。多くを乗り越えた今だからこその冷静さである。

    余命数年の筆者に対する憐みの目は鬱陶しく、失礼であり邪魔だと明言する。自分は幸せであると声明文を出すためにブログでがんを公表したという。
    ネット上の心無い中傷に傷つくだけではなく、その裏側にあるその人自身の影や嫉妬心、自己嫌悪を「こころが蝕まれていくプロセスを知ろう」と分析する筆者はとても強く、印象的であった。

    17歳で子宮と卵巣を摘出したKさん、壮絶な家庭環境のなか14歳で母をがんで失ったMさん、表面的にしかつながりない環境で家族への復讐、自殺を意識していたTさん。
    それぞれ全く苦しみの種類は異なるが、その根底には人との付き合い方であり、究極の人間関係でもある「家族」に関する考え方があった。悩みの根源にあるのが親子関係にある、というのが筆者の出したひとつの結論である。

    親子関係が生きやすさ、生きづらさの根底に深くかかわるということには自分も心当たりがある。
    苦しいことが沢山あった。けれど幡野さんはご自身の人生をかけて多くの人たちに、私にも、勇気をくれた。
    仕事も、住むところも、パートナーも、どこでなにをするのか、だれとするのか。自分で選び、自分の生き方ができるその最期の日まで、自分の人生を選んでいくのだ。

  • 読了。すごく良かった。生きることについて書かれているけれど、私が強く受けた印象は「家族2.0」ともいうべきものだった。家族観のアップデート。
    4章のTさんの件はもう、自分のこととのようだった。
    家族全員の愚痴を聞く苦しみには覚えがある。あれは本当に良くなくて、面倒とか嫌な気分になるというレベルの話ではなく普通に人間不信になるし、謎の自責でメンタルをやられる。
    「人生についてろくに考えたこともなさそうな年長者によるどっかで聞いたことのある説教」って笑っちゃうくらい普遍的なんだな、とか。善意の押し売りあるあるとか。
    著者は優先順位や対処にブレがないのて読んでいて気分が良かった。良い本です。
    ブックデザインはグッドデザインカンパニー。きれいな本でもある。

  • 読了日 2019/06/14

    幡野さんの最新刊。
    がん告知され、余命3年と言われた写真家が、30人の「死」に関する人たちの取材を通して、考えたことを記した書。

    この本を、この本だけでなくて、苦しさの中で他者のことを考える本を読んだとき、私は、過去にやってしまったことをいくつも思い出して、死にたくなる。
    私が誰かにしたことは、誰かがしてほしかったことではなくて、私がしたかったことでしかない、という、事実。

    ほんとうにその人が大事なら、
    大事な人が、手を伸ばしてきてくれたそのときに、
    私はその手の取り方を、もう二度と間違えてはいけない。


    死生学に興味ある勢としては、学問に根ざすと言うよりフィールドワークで多くの人にふれてきた幡野さんの切り口とても興味深かったです。



    目次
    1章 そしてぼくは、旅に出た。
     異変に気づいてからの半年間
     「幡野さん、健康診断って受けてる?」
     告知を家族に告知する
     選ばなかった選択肢
     ほんとうの強さはどこにあるのか
     病気に向き合うことの意味
     治らないほうのがんになる
     何度でも思い出す息子の表情
     達観とあきらめのあいだで
     3年という余命の長さ
     不純な動機を乗り越えて
     がんをブログで公表した理由
     想定していなかった「感謝」のことば
     そしてぼくは旅に出た

    2章 ぼくたちが求めている自由 ~Kさんへの取材を通じて~
     ひとつだけあった責任感のようなもの
     病気にリベンジしたかった
     抗がん剤治療から逃げ出す
     患者の傷口をえぐる善意
     ほんとうの加害者は近くにいる

    3章 ほんとうの自立とはなにか ~Mさんへの取材を通じて~
     病気の母を引き止めた理由
     教育という名の終わらない暴力
     自分の人生を変えるために
     がんという病が明らかにするもの

    4章 逃げ場を失わないために ~Tさんへの取材を通じて~
     生きている実感を求めて
     「どんな道を選んでも、後悔するんだろうな」
     損得勘定で動いてもいい
     家族とは、選ぶもの

    5章 家族のかたちを選びなおす
     悩みの根源を断ち切るために
     NASAの考える「家族」の定義
     血のつながりよりもたいせつなもの
     あのとき、いてほしかった大人になる
     信念に従う医師と、患者に寄り添う看護師
     なぜ人は他者を攻撃してしまうのか
     家族をまもっていくために

    6章 ぼくが最後に選ぶもの
     残したいものと残したくないもの
     患者の命は誰のものなのか
     安楽死、という選択肢について
     患者と家族は永遠にわかり合えない
     理想の患者を演じないために
     セデーションというもうひとつの選択肢
     安楽死に同調圧力は働くか
     ぼくたちはなにを選ぶのか

    あとがき
    謝辞
    参考文献

  • タイトルがすべての本質を物語っており、
    それで良いのだと思った。
    前作『ぼくが子どもの頃、ほしかった親になる。』というタイトルが、
    またそのすべてを語っていて、
    内容も突き抜けて普遍的であったような感触が、
    本作で得られなかったのには、
    個人的なものとそうでないものと両方の理由がある。

    個人的ではない理由は、
    著者が内省と考察を深めるために、
    唯一無二の個人史を様々な人に丁寧に、
    そして誠実に聞き取るなかで、
    ひとつの共通点を見出し、仮説を立て、
    限りなく自らの体験と摺り合せて導き出した、
    いくつかの考えが鋭いことは、
    類まれないものだと思うが、
    どうにも他者の物語が入り込むと、
    「〇〇らしい」という表現が気にかかる。
    あれ?これまでずいぶんとリアリティがあったのに、
    どうして急に聞きかじったことになるのか?
    と、不意打ちされた。
    もちろんこれは、
    すべてを体験することはできないから仕方がない。

    個人的な理由としては、
    「○○らしい」ということで挙げられていたもののなかで、
    トラウマについて、
    カウンセリングのなかで赦すことを求められるという下り。
    確かに、そういう理念を持った心理士もいるし、
    一派もあると思うけれども、
    それはごく一部であって、
    私は決してそのような治療をしないということ。
    そして、統合失調症があたかも、
    親との問題が原因の中心であると読めてしまう表現も、
    読み手によっては、大きな誤解を生むと思う。
    ただ文面から幡野さんが、
    カウンセラーと呼ばれる人間にも話を聴いているのはわかる。

    それ以外は、私自身の公私の体験を通じて、
    とても共感し、尊敬している。
    心の専門家が偉そうに語る言葉ではなく、
    専門家ではない人が自分の物語として、
    率直に語っておられるからこそ、
    やはり多くの人の胸を打つのだと思う。

    そして、いつかそれが、
    たったひとりの愛する我が子に届くように、
    命をかけて巧妙に準備立てられていくプロセスに、
    こうして触れさせていただけることを、
    私は素敵だと思っている。

  • 多発性骨髄腫という血液の癌に罹患したことをカミングアウトしたカメラマンである著者が、癌になって考えた「生きること」について語った一冊だ。

    今までタブーとされて語られなかった思いが直截に綴られていて、素直に驚く。

    根拠のない励ましや、善意からくる言葉がどれほど癌患者の心を削り、怒りを引き出すか。むしろ近しい家族からの言動が深い傷となり、「自分より先に親が死んでくれるといい」と考えてしまうこと。家族だからといって踏み込んではいけない部分があること。

    「心配してくれている家族のことを嫌がり、いらないと考える」というのは、絆という言葉を愛し奉る日本の文化からすると、ぞっとするほど冷たく暴力的に感じられるだろう。

    多くの人は自分をよく見せたい、という思いから、もしそんな風に考えていても、あえて言わない。
    でも、この人は言う。それも何回も。
    もう、自分をよく見せようとか批判されないようにしようとかっていう気持ちとは違う次元で生きているのだろうな、と思った。

    「家族が癌になった自分が不幸」と患者ではなく近親者の自分が悲劇の「主役」になってしまう人間、というのは確かにいるだろう、と思う。それもけっこう多く
    自分だってそうなってしまう恐れがある。そして、痛みや苦しみから「死にたい」という家族に対して「生きてくれ」と言ってしまうかもしれない。

    ドラマでは美談に仕立てられる「生きてくれ」という家族の願いが、患者にとっての暴力になることがある、ということを初めて知った。

    書いてあることは難しいことではないのだけれど、はっとさせられる。見方が変わるとものごとは違って見える、ということを改めて知る一冊だった。

  • 途中、著者の幡野さんや幡野さんが取材した、生きづらさを抱えた人たちの気持ちが、苦しさが、自分の心に流れ込んでくるようで、読んでいてつらかった。でも、この本の中で何度も語られているように私たちは「選ぶ」ことができる。誰のせいにもせず、自分で後悔のない選択をしていきたいと思った。

  • これまでにも生きる価値や人生の進路を選ぶことについての本は数多く読んできたが、どれも綺麗事にしか感じられなかった。
    しかし、この本は違った。
    読み始める前は、死が迫ってきて初めて感じた命の大切さ、みたいなものをきれいに書いてあるのかと思っていた。読み進めると、そんなことを思っていた自分が恥ずかしくなった。幡野さん自身が自分のこれからについてしっかりと考え、行動し、そしてやっと得られた気持ちを丁寧に綴ってある。決して重たい内容ではなく、むしろ自分の背中を押してくれる、暖かい本だった。
    これからも何度も読み続けていこうと思う。

  • 自分で選びとること、
    自分もある時から自分の意思決定の根底にある。
    親とは距離を置くようになってから。

    読んでいてなんだか、黒澤明の「生きる」をすごい思い浮かべながら読んだ。

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著者プロフィール

幡野広志(はたの ひろし)
カメラマン、元狩猟家。2017年に血液のガン(多発性骨髄腫)を発症、医師からあと3年の余命を宣告されてから、SNSや連載で様々な情報発信を積極的に行っている。著書に『写真集』『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』、cakes連載『幡野広志のなんで僕に聞くんだろう。』 があり、2019年5月28日『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』を刊行。

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