ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 1372
レビュー : 122
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591161005

作品紹介・あらすじ

「34歳のときに治らないがんの告知を受けた。
後悔はない。それは、すべてを自分で選んできたからだ。

生きにくさを感じている人に、
生きやすさを感じてもらえることを願って――。」

家族、友人、仕事、お金、自分の居たい場所、そして生と死。
命を見つめ続けてきた写真家が、大切にしてきた「選ぶ」ということ。

自らが取材したがん患者や、患者の関係者たちとの対話を通して見えてきたもの。
最後に選択するという安楽死について。
生きにくさを超えるために、自ら「選びとる」ことの意味を、強くやさしいことばで綴る。

感想・レビュー・書評

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  • 同情を誘うわけでもなく、病気にかかったことへの後悔を訥々と語るわけでもなく、「死ぬこと」から「生きること」を考えた筆者がとても素敵だった。

    本の内容から、癌の話、余命宣告を受けた人の話、まあそうではあるんだけど、この本に書かれていることは、どんな人にも届く部分があると思う。

    人知れずつらい思いをしている人、とくに家族の問題に思い悩む人にはとても励みになる内容だった。

    いま、新しい局面に立たされていることもあって、「生きる」こと「選びなおす」ということが、私にとっても胸に響く内容だった。

    感覚的にドライなところも感じる筆者が、心ではなく頭で自分自身の残りの人生と、残された家族がその後の人生をどう歩むかを考える姿は新鮮だった。

    つらいこと、しんどいこと、重いことに向き合うとき、ほとんどの人は頭よりも感情が先に動く。
    「家族のためにも頑張らなきゃ」という一言が患者たちの心を冷やしていく。

    けれども、その軽い言葉そのものが相手を深く傷つける。
    「これ以上どうがんばれっていうんだ」と。


    この本の中には、癌患者だけではなく、虐待にあった人、自殺を考えている人などの話も出てくる。
    私自身も「がんばって」「負けないで」と励ましの言葉を安易に掛けることがある。
    不幸な目にあった人に向き合うのが怖くて、安易な励ましの言葉を放ってしまう、そういうところが自分にもあるのかもしれない。

    辛辣な言葉が綴られることもあるが、とても冷静な目で周囲の人たちの言動を考えていて、自分にとっても相手と向き合うことについて考えさせられた。
    言葉をかけるとき、相手を思いやっているようでも自分本位な言葉がけをしているのかもしれない。

    本の題にあるように「選べなかったことを選びなおす」というのが、この本のテーマというか、最終的にたどり着く「生きる」ということの答えになっている。

    「選ぶ」ということのなかで「家族」が上がっているのがとても胸に響いた。
    とくに日本は親を大切にするという風習が根強くのこっていると思う。
    「親御さんを安心させてあげなさい」とか「親孝行しなさい」とか、何気ない会話でもあるけれど、この一言が重たく感じる人も多いと思う。
    どんな親でも「親だから」すばらしいわけではない。
    親であっても「選ぶ」ことができる、家族は「選ぶ」ことができるそういったメッセージ性はとても励みになった。
    私自身、親ではないが、いろんなことに対して「○○だから」という理由で選べなかったことがあるが、それを「選びなおす」ことができるようになるのではないかと。

    筆者の幡野さんは、おそらくとても誠実な人なのだろうと思う。
    自分の人生や、家族の人生に対して、一人一人の言葉がけに対する分析的な部分も含めて、物事の受け止め方に誠意を感じた。

  • 30代のカメラマンで、妻と幼い息子がいる筆者は、難治性のガンになり、余命3年と言われる。

    残された人生をどう生きるか?

    後悔しないで死ぬということは、自分で選択して生きることと考えた筆者は、人間関係を整理し、死に方も苦しんで死なないでいいように安楽死を選ぶことにする。そして、残された人生で、できるだけ多くの生きた記録を残すことに決める。ブログを書いたり、人生相談に乗ったり、写真を撮ったり。
    息子が大きくなったときに、亡き父はどういう人だったか知ることができるために。

    自分がもし、同じような宣告を受けたら、どうするだろうかを考えさせられた。私もきっと同じように自ら選択して生きるだろうなと思った。満員電車に揺られて通勤することをやめ、自分の好きなことにしか時間を使いたくないだろう。
    今はどうだろうか?自分で選択して人生を生きているだろうか?
    病気じゃなくても、いつどうなるかわからない。後悔しないように生きたい。

  •  34歳で「治らないがん」(多発性骨髄腫)になり「社会(医療費の控除制度等)に対する恩返し」をしたい、という著者の想いは叶うだろうなと思ったし、なるほどと感じる内容もあった。
     トラウマの克服は原因(虐待した親、いじめっ子、弱かった自分等)を「赦す」ことから始める。でも常に近くにいる親を赦すことは難しい。難しいなら切ればいい。家族は、選ぶことができる。
    「妬み」とは誰かを憎む感情ではなく、自分への苛立ち。「妬み」の感情を抱いて他者を攻撃している人たちも、家族を選ぶことはできる。
     ぼくはあの世に行ったあとも、決して息子を見守ったりせず、自分の好きなことをやっているだろうと、いまのうちに断っておく。だからきみも、自分の好きなことをやりなさい(そんなことしたらお父さんが悲しむぞ、といったアドバイスは無視しなさい)と。

  • うつ病になって、より強く「生きること」「死ぬこと」について考えるようになりました。
    生死について書かれた本も、たくさん読みました。

    その中で、いちばん私に「しっくりきた」本がこの本でした。

    私も弱い人間です。
    仕事も家事も育児も年々きつくなる中で、私ががんばれば何とかなる!と、やってきました。
    職場では「できる自分」でありたかったから、見栄もはりました。
    助けもあまり求めず、後輩のミスも全力でかばいました。

    我慢して耐えていける人が強い人なんだ、と思い込んでいました。
    それが自立だと思っていました。
    親からちゃんと自立したかったのです。

    「それは強さでもなんでもなく、身近な誰かを信じることができず、自分のことさえ信じることができていない人間の態度だ。」

    この一文が、いちばん心に残りました。
    うつ病になったからこそ、よりその言葉が本当なんだと実感しています。

    父親からは「妹みたいに楽観的に考えられないからなあ、お前は」と言われました。
    いまでもつらくなる、言葉です。

    母親からはせめて「あんたはがんばってるよ」と言ってもらいたくて送ったメールも、返信は「みんなそれぞれに頑張ってるんだから、あんたも頑張らないと」でした。
    もう頑張れないと思いました。

    それ以後、父母とはあたりさわりのない距離をとっています。
    自宅と実家が実際に離れていてよかったと思いました。

    著者の出した「生きるとは、」のこたえが、どんな本よりも心にささります。

    私はわたしとして生きていいし、
    やりたいことをやっていい。
    誰かと比べる必要はまったくない。

    やりたいくないことは断っていいし、
    一緒にいたい人と一緒にいていい。

    いま、欲しかった言葉を、この本からもらえました。
    ありがとうございました。

  • うーん、なんだろう。
    評価平均4.24か。
    みんな、高い評価してるんだな…。

    著者の言っていることは理解できるし、余命宣告をされて命の瀬戸際で生きることを考えている人に、こんなのうのうと暮らしている私が、偉そうに言えることなど何ひとつない。当たり前だ。
    彼を否定するつもりもないし、きっと考えに考えてたどり着いた答えなんだろう。
    私に言えることなど何ひとつない。ないんだ。
    でも、このどうしようもないくらいやりきれない感情はなんだろう。著書の考えを受け入れたくない自分がいる。何かが違う気がする。
    よくわからないけど、ちょっと自分には受け入れがたい何かがある。
    これがなんなのか、考えてみる。

  • 死から生を見つめていくこと。

    安楽死とセデーション、幡野さんの意見を知ることができてよかったです。私は安楽死に対して否定的な考えを持っていましたが、この本を読んで、本人が選べることも大切だと考えるようになりました。

    家族は選ぶことができる。

    本当に、そうですよね。
    選びたいことを選べるように。
    自分が大切にされる選択肢を選べるように。

    幡野さんの他の未読本も読みたくなりました。

  • なぜか、これは妻にも薦めたいと思った。
    そして、また数年後に再読しようとも思う。
    どこまで行っても人間関係は良くも悪くも続いていくもんだなぁと感じた。特に近しいほどに。
    癌などで余命宣告を受ける方の気持ちは、私には薄くしかわからない。ここでわかるとは言えない。
    読んでいて、死にたいほどという感情も何となくだが理解できる。
    あと、親、兄弟、親戚の関係の概念や思いも、この本を読んで考えるようになった。
    単純な言葉だけど、この本を読んでよかった。

  • がん患者である幡野広志さんが書かれたエッセイ。命について、家族について、人生について、丁寧に描かれる。

    余命数年の状態でありながら、ここまでオープンにそして軽やかに振る舞えるのかと、著者の人格の高さに息を呑む。

    読み進めていくうちに彼の文章が一枚のピクチャのように読める瞬間があった。人生の瞬間を切り取って描写するのが上手い。

    なるほど、これが写真家の書く文章なのか。

    本書の内容としては、1章ではがんを宣告された彼自身の体験と心情が語られる。2章〜4章では一般の方へのインタビューの様子が収録される。そして5章ではNASAの「直系家族」の定義が紹介され、非常に面白く読んだ。6章では、安楽死というものについて専門的な知識を交えて幡野さんの人生観が描かれる。

    自分はだいぶ「選びなお」してきた人生だった。自分の選んだものに囲まれて生きている。

    でも1つだけ。まだ選びなおしていないものがあった。それは家族だ。

    ゲイとして未来について考える。やはり自分は結婚がしたくて、子どもも欲しいのだと思った。そんなことに気づかせてくれる本だった。

    人生の再構築を望む全ての人に読んで欲しい。

    (各章の詳しいメモは長くなってしまうので割愛。書評ブログに書いたので、そちらでどうぞ)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%8C%E9%81%B8%E3%81%B9%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E3%80%81%E9%81%B8%E3%81%B3%E3%81%AA%E3%81%8A%E3%81%99%E3%81%9F%E3%82%81

  • 心が元気なときに、ぜひ読んでほしい本。

    タイトルの「…選べなかったこと…」とは、進路とか職業とかかと思いきや、親子関係のことがメインに書かれている気がしました。
    親とて他人、自分を不幸にするなら縁を切ってもいい。ショッキングだけど、今苦しんでいる何人もの人を救う新しい考え方だと思う。そうやって納得しつつも、じゃあ自分にその選択ができるかというと…自信ないな。でもせめて自分は自立した想像力のある親になりたいとは強く思った。

  • 読了。すごく良かった。生きることについて書かれているけれど、私が強く受けた印象は「家族2.0」ともいうべきものだった。家族観のアップデート。
    4章のTさんの件はもう、自分のこととのようだった。
    家族全員の愚痴を聞く苦しみには覚えがある。あれは本当に良くなくて、面倒とか嫌な気分になるというレベルの話ではなく普通に人間不信になるし、謎の自責でメンタルをやられる。
    「人生についてろくに考えたこともなさそうな年長者によるどっかで聞いたことのある説教」って笑っちゃうくらい普遍的なんだな、とか。善意の押し売りあるあるとか。
    著者は優先順位や対処にブレがないのて読んでいて気分が良かった。良い本です。
    ブックデザインはグッドデザインカンパニー。きれいな本でもある。

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著者プロフィール

幡野広志(はたの ひろし)
カメラマン、元狩猟家。2017年に血液のガン(多発性骨髄腫)を発症、医師からあと3年の余命を宣告されてから、SNSや連載で様々な情報発信を積極的に行っている。著書に『写真集』『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』、cakes連載『幡野広志のなんで僕に聞くんだろう。』 があり、2019年5月28日『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』を刊行。

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