- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591162743
作品紹介・あらすじ
奇跡が起きなくても、人生は続いていくから。
『大人は泣かないと思っていた』で話題沸騰の著者が贈る感動作!
大阪市近郊にある暁町。閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。いったいなぜ――? さまざまな葛藤を抱えながら今日も頑張る人たちに寄りそう、心にやさしい明かりをともす13の物語。
感想・レビュー・書評
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人生のどの場面でも主役ばかりという人はいません。長い人生、ならせばなだらかな大地のようなものだとも思います。ある場面で主役を務めれば、違う場面では主役をサポートする側に回る。自分のことは見えなくても人のことは他人だからこそよく見える。自分が経験してきた失敗、過ち、そこからくる悲しみを知っているからこそ、他人には自分と同じ過ちを繰り返させぬよう励まし、応援したくなる気持ちも湧き上がる。その一方で『自分の翅で飛び立った空から見下ろす景色はきっと美しい』そう、その景色を見たいという気持ちもよくわかる。
黄昏色の感じられる街で長年親しまれてきた『あかつきマーケット』、閉店を前にマスコット・あかつきんが失踪し、街の人々の生活のあの場面、この場面に出没するという設定。この作品では、まさしくそんな街に暮らす色んな人々の人生が思いがけないことで交錯し伏線のように繋がって行く様が丁寧に描かれていきます。やや薄暗い色調で描かれる人々、街並み。老若男女、色んな価値観、幅広い考え方の人々が登場する分、この人の気持ちわかる、この人誰かに似てる、こういうことってあるよねと自らの人生に重ね合わせてしまいます。
『たくさんの人がここで生きているんだと知った。多くの人が見えない着ぐるみを着て生きているのかもしれない。弱さやあさましい気持ちや泣きごとや嫉妬を内側に隠して、他人には笑顔を見せている。』そう、数多くの登場人物が、角度を変えながら色んな形で登場、再登場する度にぼんやりしていた世界がどんどん色濃くなってはっきりと見えていきます。どこにでもあるような街の光景が輝いて見えていきます。だからこそ最終章で描かれる登場人物大団円の瞬間がたまらなく愛おしく感じられました。
全編に渡って散りばめられた寺地さんのハッとするような言葉の数々がメモし切れないほどに次から次へと登場するなんとも贅沢な時間を過ごさせていただいたこの作品。駆け足で駆け抜けるのばもったいない、登場する人物一人ひとりの生き様、もがきながらも前を向くそんな人たちの声に耳を傾けながら一緒に歩きたい。「大人は泣かないと思っていた」と双璧に感じた寺地さんの絶品でした。
読書中、そして読後のじわっとわきあがってくる幸せ、とても素晴らしい作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
知らない作家さんだったのですが、ブクログでのレビューに惹かれて読んでみました。
よかった。凄くよかったです。
小説には「面白かった」と言いたいものと「よかった」と言いたいものとがあると思いますが、これは本当に凄くよかったです。
子育てと夫の無理解に悩むお母さんも、自分に自信を無くした人も、大切な人をなくした人も、繰り返す朝と夜をなんとか凌いで、生きていく。
小さくも大きくもない街で生きる色んな人のお話、どれも心に刺さって、何度も泣きそうになりました。
木皿泉さんの『さざなみの夜』という小説が、今、私の一番好きな小説なのですが、『バビルサの船出』は、それと少し味わいが似ていました。
『グラニュー糖はきらきらひかる』に出てくる〈すごろく〉の話は、私も以前から考えていたことで、本当に女の人生は、どんな選択をしてもなんやかんやジャッジされてしまうんだなとうんざりしていたのです。
『はこぶね』の千ちゃんが一番好きです。
「自分にとってどういうのが素晴らしい人生か、その判断を他人に委ねたらあかんねん」というセリフは、全ての若い人に誰かが言ってあげて欲しい。
好きなフレーズがたくさんあって、これも図書館で借りた本ですが、購入決定です。
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こんにちは!
寺地はるなさんいいですよね!
僕は「わたしの良い子」という本を読んで、知りました。
この本は、書店でもチラチラ見かけましたが、...こんにちは!
寺地はるなさんいいですよね!
僕は「わたしの良い子」という本を読んで、知りました。
この本は、書店でもチラチラ見かけましたが、感想を読んで気になったので、買ってみようと思います!2020/03/14 -
〉旅する本好きさん
寺地はるなさん、この一冊でファンになりました。「わたしいい子」も読んでみます!
コメントありがとうございます〉旅する本好きさん
寺地はるなさん、この一冊でファンになりました。「わたしいい子」も読んでみます!
コメントありがとうございます2020/03/15
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フォローしてる方のレビューを読んで、読みたいと思っていた本。初めての作家さん。
どなたかもレビューに書かれていたけれど、表紙の印象から受けるようなほのぼのとしたお話ではなかった。
表紙に描かれている「あかつきん」は、閉店が決まっている暁マーケット(戦後の闇市から続く小さな商店が集まった市場)のゆるキャラ。
ある日、あかつきんがマーケットから失踪してしまうのだが、その後町のあちこちで目撃され、町の住人がその様子をSNSに上げる。「あかつきん」には何か意図があるのだろうか…?
どこにでもあるような町に住む人々の心模様が、丁寧に描かれている。前章の主人公が次章にもチラリと出てくるリレー形式の短編集。そして、必ずどこかに「あかつきん」も登場する。
終盤に近づいて、「あ、この名前、前の方に出てきた!だれだっけ?」みたいな感じでページを行ったり来たりして、見つけてスッキリ!てなことも楽しめた。
それだけ入り組んだ構成を、作者は考えられているんだなぁ…と驚嘆。
どんなに幸せそうに見える人、恵まれて見える人にも心の中に重石のようなモノはある。その大きさ重さは、人それぞれ、重石で抑えているモノも人それぞれだと思うけれど。
格差が広がる世界で、人は他の人の重石には目がいかない。自分の重石ばかりが気になって人を羨み、人を軽んじ…大人の世界がそんなだからスクールカーストもうまれるのだろうな…などと考えてしまった。どうも考えが学校に行き着いてしまうこの頃である。
どなたかも書いていたが、私も「グラニュー糖はキラキラひかる」がとても心に響いた。2019.12.27 -
この読後感をどんな言葉で表現したらいいのだろう?
難しい! 私のボキャブラリーでは、表現できない
しみじみ? かな? ちょっと違うような
身体の隅々にまで何かが行き渡り、染み込んでいくような・・・
身体の底から何かがふつふつと湧き上がっていくような・・・
大阪の暁町あかつきマーケットを中心としたその界隈に住む人々の何気ない日常の物語
しかし、それは暁町だけではなく、私が住むこの町、近所の物語でもある
人の心は、悪気のない何気ない言葉で簡単に傷つく
言った言葉は水に刻まれ、言われた言葉は岩に刻みつけられるとかいう格言があるが、確かに言った本人は、言ったことすら覚えていないのに、言われた本人は、心に棘が刺さったようにいつまでも痛めつけられる
でも、反面、人はまた、言葉で慰められ、癒され、微かな希望の光を見出し、立ち上がる勇気を与えられることもある
人を傷つけるのではなく、人に僅かでも温かさを届けられるような言葉を発する人間になりたい
いつまでも心にとどめておきたい言葉がいくつもあった
☆運動会ってなんで万国旗なんだろうね
世界にいろんな国があるみたいにいろんな子がいますってことなんじゃない
☆ねえ、君もあんなふうに、生まれてきたんだろ。君が生まれてきたことに震えるほどの幸福を感じた誰かが、どこかにちゃんといるはずなんだよ。もし実際に居なくったって関係ない。
生まれてきた、それだけでもう君はそう思われるに値する存在なんだから
☆みれの未来も、心も身体も時間も全部、自分のもの。他人の期待に応えるために生まれてきたわけやない。他人に渡したらあかん
☆二十歳を過ぎたら、早く結婚しなきゃね。結婚したら早く子供を産まなきゃね。産んだら、二人目はまだ? 男の子を産んだのなら、次は女の子ね。一人っ子はかわいそうだもん。
すごろくに似ている、と思っていた。この世に生まれでたら最後、さいころを振り続けて前に進まなくてはならない。だけど、このすごろくにはあがりがない。いつまでも、いつまでも誰かに何かを言われ続けることには、終わりがない
すごろくなんてくそくらえや
☆「ずっと」は、はじめからそこに存在するわけじゃない。一瞬一瞬を積み重ねて作っていくものなのだ
☆死んだ人間は、天国にもどこにも行かん。死んだら小さい、たくさんのかけらになって散らばって、たくさんの人間に吸収される。生きてる人間の一部になる。とどまり続ける
☆雨と一緒に音がふってくる。まさしく、ふってくる、という感じで聞こえてくる。音は目に見えないけれども、隣家のピアノの音を聞くとわたしはいつも色とりどりののドロップを連想する。レモンにいちご、メロンに薄荷。ドロップを集めて、細かく砕いて高いところからふりまいたら、きっときらきら光る。
高いところからふってくるきらきらしたおと。あのピアノの音は、舐めたらきっと甘くて、おいしい
たくさんの野菜をグツグツ煮込んだあったかいスープが飲みたくなった -
言葉は魔法だ。
寺地さんはどうして人の心の細部の細部までを掬い出し、それを言葉にのせて響かせるのが上手いのだろう。
誰もが悩み苦しみもがきながらも必死に生きている。
そんな日々の中で時に誰かの言葉に傷ついたり縛り付けられたり。でも言葉によってグンと救われたり背中を押されたり、包んでもらえたり。
読みながら所々自分に重ね合わせ何度も共感し涙し、肯定され認められた気分にもなった。
ふわっと優しく自分も包まれたような気分になった。
ずっと心のどこかで感じていた言葉、欲しかった言葉があふれていた。
まさに寺地さんの言葉の魔法を感じた。-
こんにちは(^-^)/
寺地さんはミナトホテル…のみだなぁ。
ミナトホテルも悪くなかったけど、心に残るまではなくて。
これ心に響...こんにちは(^-^)/
寺地さんはミナトホテル…のみだなぁ。
ミナトホテルも悪くなかったけど、心に残るまではなくて。
これ心に響きそうだね。
表紙もいいし、暗い自分に合ってる気がする(*≧艸≦)
新刊?結構チェックしてるんだけど気がつかなかったなぁ。2019/05/31 -
2019/05/31
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けいたん♪(●'∇')ハロー♪
おー、予約完了(⸝⸝⸝˃̵◡˂̵ノノ"☆パチパチパチ
うん、私もミナトホテル、ハチミツ…大人は泣か...けいたん♪(●'∇')ハロー♪
おー、予約完了(⸝⸝⸝˃̵◡˂̵ノノ"☆パチパチパチ
うん、私もミナトホテル、ハチミツ…大人は泣かない…を読んできたけどこれが一番かな。
新刊出るたびにパワーアップしてる気がする♡(って、何様だろ)
あ、今ごろパフェ、実は私も立ち読みしたことあるよ(*≧∀≦)ゞ
手にした娘さんの気持ち、すごくわかる(o^^o)2019/05/31
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『一色で塗りつぶせるような単純な人間なんかいない。澄んだ色、濁った色、やさしい色、きっぱりとした色。あらゆる色が、ひとりの人間のなかに存在しているのだ。』
フォローしている方の書評を見て、読みました。
あかつきマーケットと呼ばれる商店街のゆるキャラ、「あかつきん」が急にいなくなるところから物語は始まります。
あかつきんは失踪した後も、再び現れては、人助けをしてまた消える…。そんなことを繰り返しているうちに、「あかつきんのしっぽをひっぱったら幸せになれる」という噂も流れて。
あかつきんが主人公でもなくて、いや、この本に出てくる誰もが、主人公であり脇役なのです。
そんな、全員が平等なこの物語を読んでいると、「世の中」って感じがして、ホッとします。
誰もが悩んでいるし、悩んでいる自分が嫌いだし、でも、そんな自分を、側から見て羨ましく思っている人もいて。そうして、人間って繋がっていくんだと思います。
物語の途中に、人に色が見えるという、女の子が登場します。
子供のうちに、人を見る目が優れていること。ものすごく羨ましく思いました。
が、冒頭の引用のように、人は単純なんかじゃないんですよね。いろんな色が混じり合ってできていて、見ている僕らは、そんな外側の色だけを見つめて、無意識のうちに色分けしている…。
だから大切なのは、その人の違う色を探すことだと思います。目に見えるものばかりなんかじゃなくて。
もしかしたら、色でなくても、あらゆるものに何らかの意味合いを見ようとしているのかもしれません。
今日とか、明日とかは、特に意味なんかなくて、でも、やってくる明日に意味づけして、明日が不安になる。
不安になるなら、いっそ考えなければいい。正解なんてないのですから。そうすると心はフッと軽くなると思います。 -
『夜が暗いとはかぎらない』うーん、深い!『明けない夜はない』とか『やまない雨はない』とかは言いますが、『夜が暗いとはかぎらない』ですよ。
この物語を読むとそのタイトルの意味することがよくわかります。ここでその解説を述べるのはちょっと違うと思うので、そこはスルーしておきますが。
さて、私ごとですが、かなり久しぶりに小説を読みました。久しぶりに読むと、この連作短編集にちょっとビックリしたりします。この人がこうで、えっ!?この人はなんの人だっけ?っていう風に頭がこんがらがったりします。
でも、新しい発見がありました。連作短編集って、今までは当たり前のように読んでましたが、これって、物語のリレーみたいですね。各章でそれぞれ違う登場人物がいて、それぞれの登場人物がその章では主役になって頑張っています。そして、この寺地さんが描く登場人物はみんなが魅力的で、その各章が終わるたびに凄く寂しい気持ちになります。
いやぁ、本当にどの章も面白かったし、優しかった。寺地さんが描く物語で共通しているのは、優しさでしょうか。嫌な奴だなと思っていた人も、他の章でその人のいい部分が見えたりします。
どの章も面白かったんですが、最後は誰が主役になるのかなぁ?と思って読んでいくと、やっぱりこの人ですよね!そして、各章で活躍した人たちもみんな出てきて凄い贅沢な最終章。
『夜が暗いとはかぎらない』。どの章にもその意味が隠されていると思います。久しぶりに読んだ本がこれで良かった。
著者プロフィール
寺地はるなの作品






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