ライフ

著者 :
  • ポプラ社
4.11
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本棚登録 : 166
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591162903

作品紹介・あらすじ

アルバイトを掛け持ちしながら独り暮らしを続けてきた井川幹太27歳。気楽なアパート暮らしのはずが、引っ越してきた「戸田さん」と望まぬ付き合いがはじまる。夫婦喧嘩から育児まで、あけっぴろげな隣人から頼りにされていく幹太。やがて幹太は自分のなかで押し殺してきたひとつの「願い」に気づいていく――。誰にも頼らず、ひとりで生きられればいいと思っていた青年が、新たな一歩を踏み出すまでを描いた胸熱くなる青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 何かを頑張っている訳でもなく、頑張りたい訳でもない。それでもライフという時間は流れ、周りの人も流れていく。
    そんな中に身を置く青年に、読んでいて何故か好感を持つ。
    特別な事はなくても普通の時間を過ごせる大切さかな。
    なんか心の癒される一冊。

  • 永井寛哉、という名の「新郎の中学時代の友人」という役で結婚式に出席中、新婦友人席から高2のクラスメートに声をかけられた。周りにバレては困るから外へ出て一応事情を話し、後で二次会なしにお茶して話す井川幹太の近況はー

    ◆仕事続かないからよほどブラックな会社に当たったか人嫌いかと思ったら井川幹太、なんて天然人たらし!明るいばかりの過去ではないけど。住み始めた時は同じ大学の気心知れた友人ばかりだったアパートも、住む人が変わり自分だけがそこにいるけれど、44歳パートの大下さんと仕事するのは楽しいし、2階の住人の足音のうるさいがさつさを1年半も耐えたかと思えばたまに来ていた子供がドアにぶつかったのをきっかけに別居の事情や子供預けられるまでに信頼されるし。時間外のゴミ出しで隣の中条さんとも知り合うし(←むしろなんで今まで知らなかった(笑))大家さんの隣の一軒家の高校生とも仲良くなっちゃう。何この人たらしスキル!

    観劇のあとの感想が刺さったな。「やりたいことが特別なことでえる必要はないんどよなぁ、そうなるわけもないよなぁって」 「それは要するに、やりたいことがないのはダメだと思ってたってことなのよね。やりたいことが何もない自分はダメだと思っちゃうっていう。で、それは要するに、人から見て特別なことをやりたいと思ってなきゃダメだってことなの」全人類は全力で生きなきゃダメって思いつめちゃうとねー…

    「いや。自分で気づいてないだけで、たぶん、もう切ってますよ」っていう郡くん。「カンちゃん、パパに雇われてんの?」って背中押された藍奈さん。最も身近にいた人たちのことを知らなかった、とまさかそこに聞きに行くとは思わなかったけど。お父さんのこと、お母さんのこと、その時のこと。結婚式で貰った男気ある言葉。マジカッコイイ。幹太くんのこれからが楽しみだな!

  • ウィンウォーン。
    小野寺さんのインターホンの音はいつも和む。
    場所は平井。子供の頃住んでいた町なので懐かしさとともに読んだ。
    なんということのない日常の出来事が綴られているのだが、その中には人に対する思いやりというか温かさがある。
    日常なのだが小さな物語が綴られていく。
    生きる希望というものが感じられる本でした。
    良かった。

  • いやぁ、いいねぇ、『ひと』もよかったけど今回もよかった。
    なんていうのかな、家族的にはあまり恵まれない主人公が、ご近所との飾らない付き合いの中で、少しずつ成長していく姿に親戚のおばちゃん目線で見守りたくなる。
    「ちょっと、あんた、もっとしっかりせにゃ!」と言いたい気持ちをぐっとこらえて「ちょっとお茶でも飲みにおいでよ、おいしいおせんべいあるしね」なんて言いつつよびよせたくなる。
    淡泊でがつがつしてなくて、周りに流されがち。でも根は素直でいい子。ついつい世話を焼きたくなるし逆にいろんなことを頼みたくなる。そんなイマドキ男子のカンちゃん。どこにでもいそうな彼の、一見平凡でつつがない毎日は、実は父の浮気と病死、という心のひっかかりから足踏み状態だったのだろう。その足踏みを、前に押し出してくれた、やんちゃっぽい戸田夫婦と可愛い子どもたちとのご近所づきあい。こういう下町っぽいやりとりは、日常のようで実は今や絶滅危惧的貴重な関係なのかも。
    はぁ…、良いモノ読んだ。じわじわと涙が流れ続けちゃう読書体験。楽しくておかしくて、なのにグッとくる。いいねぇ、小野寺小説。好きだ。

  • 2019.7.17

  • 「ひと」が良かったからこれも、と思ったけど、これはまた雰囲気が似つつもちょっと違う感じだったなぁ。
    すごく大きな出来事が起こる、というわけではなく、淡々と井川幹太の日常が進んでいく感じ。でも同じアパートの住人との距離が近くなったり、離れていったり、そういった日常のなんでもないことが少しずつ描かれていて、ゆったりとひなたぼっこしながら読みたい本だった。

  • 大学卒業後入った会社を2年で辞め、次の会社も半年で辞め、現在はコンビニと披露宴の代理出席のバイトで暮らしている井川幹太。彼の淡々とした日常が、一人称でダラダラと綴られていく。現状に満足しているわけではなさそうだが特に行動を起こすでもない。もどかしい反面、そんなものだよなと共感もする。ただ、いくら下町とはいえ現代の東京ではあり得ないでしょという強引な展開や、やたらと名前(姓名)にこだわる人達には違和感を覚えた。

  • 2019.7.8(図書館)

  • コンビニ店員や結婚式の代理出席のバイトなどをしながら,学生時代から引き続き同じアパートで暮らす井川幹太.彼ののんびりした優しさが,隣人たちともちょうど良い距離感で繋がりまた離れていく過程の中で,ふうわりと漂っている.好きなことをして働くということ,つまりは好きなことをして生きることが出来たら本当にすばらしい.この物語はそんな人達で溢れていて,柔らかい光に包まれたような読後感.

  • 井川幹太27歳、コンビニ勤務、一人暮らし。大学生のときは同じ大学の同級生がたくさん暮らしていたアパートも、今では一人ぼっち。結婚式の代理出席のバイトをしたり、ばったり高校の同級生に会ったり、アパートの上に暮らす人の騒音に悩まされたり。平凡な男による、平凡ぽいけど、非凡な生活。

    「ひと」も良かったけど、こっちも良かった。

    基本的に、いい人が何をどう感じ行動をするかを読むという、私自身にはないものを知るみたいな体験。(名探偵の内面を体感したり、サイコキラーの内面を体感するのも、読書の意味?なのかもしれない)

    なんでそんなにいい人なんだよー、ともどかしくなったり、あるいはあー良かったねー、と思ったり。気づけばドップリとハマっていた。

    【「やりたいことがあるのにやれなかった人と、やりたいこと自体を見つけられなかった人。どっちがいいんだろうね」】

    【「わたしも仕事やめちゃおうかな。井川くんみたいに。それで、『東京フルボッコ』に入る」
    自分のことは棚に上げ、言ってしまう。
    「やめないほうがいいんじゃないかな。どうしてもやりたいことがあるなら別だけど」
    人は他人には一般論を言う。
    例えばの話し、自分が飛び降り自殺をするときに同じことをする人が隣に来たら、やめなさい、と言う。そんなふうに刷りこまれているのだ。
    自殺をしてはいけないと刷りこまれるのはいいとして。やりたいことがなきゃいけないと刷りこまれるのは、どうなのだろう。】

    他人には一般論を言う。確かに。

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著者プロフィール

小野寺 史宜(おのでら ふみのり)
1968年千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」で第86回オール讀物新人賞を受賞してデビュー。2008年『ROCKER』で第3回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。2018年、『ひと』で「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」2位。
著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『カニザノビー』『牛丼愛 ビーフボウル・ラヴ』『ホケツ!』『ひりつく夜の音』『太郎とさくら』『本日も教官なり』『リカバリー』などがある。本作は『その愛の程度』『近いはずの人』に続く「夫婦三部作」のラストを飾る作品である。

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