故郷の味は海をこえて 「難民」として日本に生きる (ポプラ社ノンフィクション 37)
- ポプラ社 (2019年11月15日発売)


- 本 ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591164204
作品紹介・あらすじ
なぜ国を離れなくてはならなかったのか。どうやって日本にたどりついたのか。本書は、日本に暮らす「難民」とよばれる人たちがたどってきた道のりを、故郷の料理に宿された記憶からひもとくノンフィクションです。「難民」とは、紛争や人権侵害などから自分の命を守るためにやむを得ず母国を追われ、逃げざるを得ない人たちのこと。テレビやネットなどで「難民」という言葉はよく見聞きしますが、海をへだてたどこか遠くの国に存在している人たち、と思いがちです。でも現実に、2018年に日本で難民申請をした人びとは1万493人もいます。それに対して、同じ年に難民認定を受けたのは、わずか42人です。なぜこのようなことになるのでしょうか。何らかの事情で国を追われ、命からがら日本に逃れてきた人びとは、先が見えない不安の中、尊厳と希望をもって生きていかなくてはなりません。それには、日本の社会のなかで受け入れられることが必要です。まずは私たちが難民について「知る」こと、無関心でいないことが大切なのです。
<目次>
1章.シリア・穏やかな「日常」の香り / 2章.ミャンマー・キッチンから笑顔を運ぶ / 3章.ロヒンギャ・ロヒンギャと日本のかけ橋に / 4章.ネパール・拷問から逃れて日本へ / 5章.バングラデシュ・家族との再会を夢見て / 6章.カメルーン・引き裂かれた母と娘 / 7章.カンボジア・内戦を生きぬいた味
感想・レビュー・書評
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安田菜津紀さんによる、迫害を逃れて日本に暮らす難民の人々と、彼らの故郷の味に関するインタビュー。
表紙のお二人は満面の笑みを浮かべているが、その笑顔にたどり着くまでどれだけの困難があったことだろう。
殆どの日本人は、彼らのことを知らない。
彼らがどんな思いを抱えて日本にたどり着いたか。
やっと安寧の地にたどり着いたと思ったのに、日本で難民と認められるには、幾多の壁があり、並大抵のことでは超えられない。
それは、日本人である私が簡単に言葉にできるものではない。
彼らが日本で作る故郷の味には、どんな思いが込められているのだろうか。
一皿一皿に物語がある。
是非読んで、味わってもらいたい。
今この時だからこそ、彼らの声に耳を傾けたいと思う。
2022.2.20詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
様々な国から難民となって日本に来て、暮らしている方達に、祖国の料理と共に話を聞く。
祖国を出るまでの壮絶ないきさつも胸が痛むが、日本に来てからも長く辛い時間が続いている方ばかり。
日本の難民認定の不透明さ、あまりの狭さについては、聞いてはいるものの実体験を読むと思っていた以上に理不尽。
子ども向けにやさしい言葉で書かれているけれど、内容は決して軽くされていない。
子どものうちから自国の問題なのだから、自分のこととして考えていってほしいという著者の強い願いを感じる。
大人の私はもっとだよ…。
入管についてもわかりやすく説明してある上で、現状のこういうところが問題なのではとしっかり書かれていたのも良かった。 -
日本に暮らす難民の人達について、丁寧に書かれた本。料理の描写はどれも美味しそうで、食べてみたくなる物ばかりでした。それぞれの人々が大切にしている故郷の味や思い出の話よりも、日本に来た事情、来てからの暮らし、現状、これからの希望についてのお話の方が心に残ります。日本では難民の受け入れがとても少ないことは知っていましたが、そのことがどんな事につながっているのかを考えていなかったと自分の無知を感じました。様々な問題をきちんと取り上げて、子供にもわかる言葉で丁寧に説明されていて、大人にもおすすめです。
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オールカラーで写真が豊富。難民として日本に逃れてきた方の状況を「食」を通して知るというノンフィクション。しかし安田菜津紀さん。若いのにすごい。文化を守ること尊重し合うことの大切さを感じる。日本の良い面と悪い面も描かれている。 -
“難民”は遠い存在ではなく、家族がいて生活がある自分と同じ人。そんな人びとがどんな理由でどんな目に遭い日本に来たのか、そして逃げてたどり着いた日本でどんな暮らしをしているのか(そこにどんな困難があるのか)。
そんなことが分かりやすく伝わるように書かれている。
特に写真がいい。美味しそうな料理、彼らの笑顔(時に厳しい顔)、故郷の風景。
彼らの故郷に行ってみたいな、という気持ちになるが、それが叶わない場所も多い。
生活が見えると一気に身近に感じられ、そこで初めて自分ごととして考えられる、ということがあると思う。
もう少し自分でも考えていきたい問題だと思った。 -
日本にいる難民の方々たちに焦点を当てた一冊。
やむを得ず母国を離れることになったのはなぜか、日本で難民認定されるまでの辛い日々、そして、故郷の味、母の味がどれだけ彼らの支えとなったかについて、小学生(高学年)にもわかりやすく書かれている。
掲載されているのはネパール、ロヒンギャ、ミャンマー、シリア、バングラデシュ、カメルーン、カンボジアから来た方たちの話です。
故郷から遠く日本に来て、同じ食材が手に入りにくい中でも、毎日、故郷の食事を作り・食べ、元気をもらう。
誰でも旅行や留学で外国に行き、現地の食べ物に飽きて日本食を懐かしく思うものだ。
しかし、彼らの故郷の味への想いは、それとは全く別の意味を持つのだと思う。
帰りたくても帰れない故郷への想い。残してきた身内に会いたいという想い。これから日本で強く生きていこうという決意。食事をしながらいろいろな気持ちを噛み締めているのだろう。
いろいろな国の歴史や社会状況、料理がわかるのはもちろん、日本の難民政策、外国人政策についても考える糸口を与えてくれる。
日本がアニメ、歴史的建造物、和食などで人気を得るだけでなく、本当の意味で、社会的に素晴らしい国として、外国に開かれた、外国人から選ばれる国になってほしいと思う。 -
◇日本で暮らす難民の人々が、どのような理由で故郷を離れたのか、日本の難民受け入れがどのような問題を抱えているのか、について、小学生高学年くらいから読めるような易しさで書かれている。
◇出てくる食べ物が、どれもおいしそう!国際交流の入口として「食べ物」は安易かもしれないが、やはりとても良い入口だと思う。
◇女性の話し言葉を訳す時の「翻訳っぽい女言葉」が気になった。
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