- 本 ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591167182
作品紹介・あらすじ
<story>
駒込うらら商店街に佇む、昔ながらのパン屋さん「ベーカリー・コテン」。
あんぱん、クリームパン、チョココロネ。気取っていない顔が並んでいて、見ているだけでほっとするような、そんなお店。
一家で経営してきたコテンの未来を背負うのは、悩める三代目・和久。
商店街が寂れる中で、コテンを継ぐべきか。「自分なりのパン」を見つけないといけないのではないか。創業者のじいちゃんが亡くなって、店名の「コテン」の由来もわからない。
日々迷いながらパン生地をこねる和久のもとには、愉快なお客たちがやってくる。
ヒョウ柄のコートを着込む占い師に、就活に落ち続ける学生、肉バカの肉屋の息子。
人の悩みに寄り添うパンを焼こうと奮闘する和久が、やがて見つけた答えとは――
しぼんだ心を幸せでふっくらさせる、とびきりあったかな“縁”の物語。
<プロフィール>
冬森灯(ふゆもり・とも)
第1回おいしい文学賞にて最終候補。本作がデビュー作となる
感想・レビュー・書評
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<うらら商店街>の真ん中にある、昔ながらのパン屋<ベーカリー・コテン>を舞台にした、悩める人たちの再生の物語四編。
ドーナツにカレーパンにコロネにカツサンド。
カバーのイラストにあるような、シンプルなパンたち。ドーナツと言えばこれ、カレーパンと言えばこれ、というような大抵の人たちが想像する通りのパンが並んでいる。
だが中身はちょっと工夫が凝らしてある。
結婚式を間近に控えながらすれ違うカップル、やりたいことはあってもその場所に自分が求められないことに追い詰められる青年、中学受験を前にどうしても会いたい人がいる女の子、そして<ベーカリー・コテン>の悩める三代目。
一捻りしてあるところとしては、単にお店のパンとの出会いで悩める人たちが何かきっかけを掴むという話ではなく、パン屋の三代目も彼らと一緒に考えながら新たなパンを生み出し、その過程で彼らもきっかけを掴んでいくこと。
登場人物が猪突猛進型で自分には合わない人が多くて感情移入出来なかったのが残念。どうしてそうなる?どうしてそうする?どうしてそう思う?みたいな。
上手く入っていけたのは最終話の三代目の話くらいだろうか。
亡き祖父が店名に付けた『コテン』の意味も、一度パンの世界を離れた自分がどう三代目を引き継ぎ自分らしくも祖父の心も引き継いだパンを作れば良いのかも分からない彼が、ついに自分なりの答えを出す。
強烈な見た目と口調の占い師は完全な脇役かと思ったら意外な繋がりがあった。ここはちょっとやり過ぎかなと思った。自分の父親をそう呼ぶなんて、反則じゃないか?
途中、全国チェーンのパン屋からフランチャイズ契約打診の話がある。敵対関係にしなくても良いのでは?と思っていたが、良い感じで落ち着いたので良かった。
それぞれに良い点があるし、それぞれの長所や特徴を活かした店作りやパン作りで互いに盛り上げていければ良いのではないかと思う。
現代では都市部の商店街すらシャッター通りが多いので、この<うらら商店街>は様々なお店が元気に営業しているのが新鮮だ。お肉屋さんのコロッケなんて久しく食べていない。やはり美味しそう。 -
表紙のカツサンドに惹かれて手に取った本書。
(最近“食べ物系”ばかり読んでいる気がするかも・・飢えているのか?私・・色んな意味でw)
東京・駒込の商店街にある、昔ながらのパン屋さん〈ベーカリー・コテン〉を中心とした悲喜こもごもなストーリー、連作四話が収録されております。
・婚約者とのすれ違いに悩む理央(第一話「まごころドーナツ」)
・就活がうまくいかず、落ち込む大和(第二話「楽書きカレーパン」)
・行方がわからなくなってしまった、大好きな“ミユキちゃん”に会いたい、中学受験を控えた花(第三話「花咲くコロネ」)
・〈コテン〉を引き継ぐことにしたものの、“自分らしいパン”への道を試行錯誤する、三代目・和久(第四話&表題作「縁結びカツサンド」)
・・と、いった様々な悩める人々が〈コテン〉のパンを食べて元気になったり、お客同士のふれあいの中で気付きを得て前向きになっていく、安定の“食べ物系鉄板ストーリー”です。
一応〈コテン〉が、登場人物達の交流のハブ的な場所にはなるのですが、〈コテン〉の三代目・和久自身が店の今後について絶賛お悩み中なので、各話ごとに和久が〈コテン〉の昔ながらの良さを残しつつ、新しさもある新作パンを考案して、それを食べた悩めるお客さんの抜け出すきっかけになると同時に、和久自身も一歩前進していくという、いわば“お客さんの悩みによって三代目も成長”していく・・みたいな感じですかね。
印象的なのは、第三話で小学生の花ちゃんと〈コテン〉の初代・喜八(通称:鬼八)お祖父ちゃん(の幽霊?)との会話シーンで、特に喜八祖父ちゃんが語る、
“誰にだって冬って季節はめぐってくる、辛いことがあっても、運命にノーと言わない強さが人を育ててくれる(簡略)”
“いいことも悪いことも、すべてが縁の結び目ってやつだ”
という台詞が、心に染みました。
この喜八祖父ちゃんの冒頭のお手紙がまたいい味出ているんですよね~。
一時は、新しくできたお洒落なベーカリーカフェに客を持っていかれてしまう〈コテン〉ですが、第四話の夏祭りの屋台出店で、思わぬアクシデントから作り出された「縁結びカツサンド」が大好評でお店もええ感じに上向いて、ハッピーな着地で良かったです。
と、いうことで、やっぱり、パンって幸せな気持ちにしてくれる食べ物だなぁ・・と思える作品でございました♪
どのパンも美味しそうでしたが、個人的にはカレーパン(色んな味があって楽しそう)と、カツサンド(最強でしょ)が食べたくなりました。
あ、結局作れなかった、“黒船ドッグ”も気になりますけどね~。 -
ほっこりするお話。ちょっとヘコんでいる時に元気をもらえそうな...。おいしいパンとコーヒーが飲みたくなってしまいそう。
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冬森灯さん初読み。東京の駒込にある商店街の昔ながらのパン屋さん「コテン」の3代目の青年和久が主人公。まず出てくる食べ物の描写が美味しそうで、タイトルにもなっているカツサンドも久々に食べたいなぁと思わされた。地元密着のパン屋であることを大切にしたいという意思を貫く和久には常連客や幼馴染、商店街の人などの温かい支援がある。どんな窮地も行動と心意気でいくらでも変えられるのだなと改めて実感した。文庫に収録された、本編以前に書かれたという番外編では、本編の和久のイメージと少し違い、イケメン風に描かれていたが笑、どちらも終始ほっこりした気持ちになるお話だった。
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読み終わったあと、すごく満たされた私がいた。幸福な気分だった。皆が気が付かないけど、繋がってて、その繋がりがわかったとき、みんなの力が合わさって、課題を乗り越えていく。
喜八じいちゃん、さいこーにかっこいい。
おすすめの一冊です-
フォローありがとうございます。私はこの本を読み終わった後、空港のレストランでカツサンドを食べました。おいしかったです。私もひまわりさんをフォ...フォローありがとうございます。私はこの本を読み終わった後、空港のレストランでカツサンドを食べました。おいしかったです。私もひまわりさんをフォローさせていただきました。2023/01/08
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商店街にある昔ながらのパン屋さんに行きたくなります。
どのパンも美味しそう! -
優しい気持ちになれた。タイトルの「縁結びカツサンド」が上手い!それぞれのパンの名前も良かったが、このパンの名前は特にいい。読み終えたときに、「縁」を感じられた。手作りの丁寧さって良いなあ...。パン食べたい。
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ハーブの魔女さん、こんにちは。いいね、ありがとうございます。私はパンが大好きなのでカレーパンが食べたくなって読み終わってカレーパンを買いに行...ハーブの魔女さん、こんにちは。いいね、ありがとうございます。私はパンが大好きなのでカレーパンが食べたくなって読み終わってカレーパンを買いに行きました。
これもこの本が結んでくださったご縁。フォローさせてください。2023/01/04
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ドーナツにカレーパンにコロネにカツサンドって!パン好きのアタクシにとってもうどうにもたまらないおいしい物語たち!
つぶれそうなパン屋、さえない三代目、そこに現れる訳ありな客たち。訳ありな客たちの「訳」を解決するおいしいパン。あぁ、もう、最高ですやん!
人と人がつながっていく。その縁の真ん中においしいパン。そうだよ、おいしいものを食べて不機嫌になる人なんていないもんね。読み終わった後の、この温かい満腹感を、誰かと共有したくなる!!
冬森灯の作品






装丁も楽しいなあ。
装丁も楽しいなあ。
コメントありがとうございます。誰もがイメージするシンプルなパンたちが美味しそうでした。
コメントありがとうございます。誰もがイメージするシンプルなパンたちが美味しそうでした。