お探し物は図書室まで

著者 :
  • ポプラ社
4.35
  • (793)
  • (615)
  • (187)
  • (15)
  • (2)
本棚登録 : 9429
レビュー : 649
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591167984

作品紹介・あらすじ

お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?
人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。
彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。

仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。「本を探している」と申し出ると「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれます。

狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺して何かを作っている司書さん。本の相談をすると司書さんはレファレンスを始めます。不愛想なのにどうしてだか聞き上手で、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を司書さんに話してしまいます。
話を聞いた司書さんは、一風変わった選書をしてくれます。図鑑、絵本、詩集......。

そして選書が終わると、カウンターの下にたくさんある引き出しの中から、小さな毛糸玉のようなものをひとつだけ取り出します。本のリストを印刷した紙と一緒に渡されたのは、羊毛フェルト。「これはなんですか」と相談者が訊ねると、司書さんはぶっきらぼうに答えます。 「本の付録」と――。

自分が本当に「探している物」に気がつき、
明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『転職サイトに登録しようと思っているんです。今の仕事に、やりがいとか目的が見つけられなくて』
    『ふたりの子でしょう。妊娠したとき、協力し合おうって言ってたじゃない。母親だから?「…私ばっかり損してるよね」』
    『残りの人生が、意味のないものに思えてね』

    平均寿命が大きく伸びた現代の日本。突然に襲う大きな災害、事件、そして事故はあれど、基本的には極めて平和に私たちの日常は流れています。こうしてブクログに日々多くのレビューが掲載され、フォローの輪が読者を繋げていく穏やかな日常。しかし、その一方で、この場に集う皆さんの中には、今この瞬間も色々なことに思い悩み、束の間この場で気持ちを切り替える、そんな風にこの場を利用されている方も多いのではないでしょうか。大きくはなくとも少しずつ何かしら変化し続ける毎日の中で、あの時代、その時代と私たちが思い悩む内容も変化していきます。思い返せば、私自身も進路に思い悩み、歯車となって働く毎日に疑問を感じ、そして子育てに苦闘するなど色々なことに頭を悩ませてきました。どんなに切り抜けても、くぐり抜けても、次から次へと私たちを襲う悩みの数々。いつの日か、『残りの人生が、意味のないものに思えてね』などと思い悩む日も来るのでしょうか。

    一方で、そんな風にかつての私を悩ました事ごとに現在の私は悩んでいないという事実にも気づきます。今となっては笑い話となった過去の悩み。しかし、そんな過去になるまでには、その悩みを過去にする何らかの起点があったことにも気づきます。普段、意識することのない過去の悩みの解決の起点。ここにそんな起点に光を当てる物語があります。起点に浮かび上がるのは一人の司書と一冊の本。そんな司書と本は、主人公たちにちょっとしたきっかけを与えてくれます。ちょっとした視点の切り替え方を教えてくれます。そして、読者は再び前を向いた主人公たちの姿の中に、読者自身が生きていくためのヒントを見つけることができます。そんなお話が五つ詰まったこの作品。青山さんが描く、明日を生き抜くあなたのための物語です。

    『万有社という出版社』の『資料部』で勤務するのは主人公の崎谷夏美。『部署のメンバーは、私をのぞいて中老の男性ばかり』というその部署に『異動になってから二年たつというのに』しっくりこないと感じている夏美。『ここに来るまで私は「Mila」という雑誌編集部にいた』という夏美は、『入社してから十五年間、私はがむしゃらに働いた』という生活を過ごしてきました。『そんな中で妊娠したのは、突然ではあったけど予定外ではない』という三十七歳の夏美。『臨月手前のぎりぎりまで働いて』、『四カ月で復帰』した夏美。しかし『久しぶりに顔を合わせた同僚は、「おかえり」とどこかぎこちない表情で笑った』という復職の日。そして、編集長から『資料部への異動を告げられた』という展開。『大丈夫です、仕事も育児もちゃんと両立できます』と訴えるも『もう決まったことだから』と『面倒くさそうに』私の声を遮る編集長。『とらえどころのない疑問と怒りが、あふれて止まらなかった』夏美。『絶望という感情を本当に知ったのは、これが初めてだった』という夏美。『おまえはもう用済みだと言われている気がして、真っ暗な穴に落ちていきそうだった』という夏美。一方で『夫との連携はぜんぜんスムーズにいかないし、育児は想定外のことばかりが起きた』という毎日の苦悩。『密室育児の閉塞感』に苦しみ、『育児、向いてないのかなとため息が出る。もうちょっとうまくやれると思っていた』と愕然とする夏美。そんな夏美は『コミハの図書室にキッズスペースがある』と保育園で聞いたのを思い出します。そして、おすすめの絵本を教えてもらいに図書室のレファレンスカウンターへと赴いた夏美。『白くて大きな女の人』、『ディズニーアニメの「ベイマックス」みたい』な司書の小町さゆりと出会います。『「あ、すみませ…」謝るところではないのだが、なんだか萎縮して後ずさり』しそうになった夏美に、『何をお探し?』と声をかける小町。『不思議な声だった。親切でもなく明るくもない、フラットな低音』というその声。なのに、『身も心もゆだねたくなるような、懐の深さを感じられる』そのひとこと。語りやすい雰囲気の中で『…私、子どもが生まれてから行きづまってばかりで…』と『愚痴がするりと口からこぼれ』、いろんな思いを吐き出す夏美。キーボードを『ぱぱぱぱぱぱぱっとものすごい速さで』打つ小町。出力された紙を受け取る夏美。『あきらかに絵本だろう』という三冊の下に一冊、目を引く本の名前がありました。『「月のとびら」。著者は石井ゆかり』というその本。さらに『どうぞ。あなたには、これ』と羊毛フェルトで作った地球を手渡された夏美。そのことをきっかけとして、『私の起こした点が、予想もできない場所につながった』と、苦悩を経て歓喜に至る夏美の新しい人生が描かれていきます。

    五つの短編が連作短編の形式で繋がるこの作品。その五編を印象的に繋げていくのが図書室のレファレンスカウンターに座る司書・小町さゆりでした。一方でそれぞれの短編の主人公は五編で全く異なり、21歳の婦人服販売員であったり、30歳のニートであったり、そして65歳で定年退職したという人物まで年齢、性別、職業ともに多彩です。思えば図書室という場所は、無料で誰もが利用でき多彩な人が集う場でもあります。そんな多彩な人物が図書室で接するのは同じ人物、司書の小町さゆりですが、多彩な人物視点で見ると、その印象がそれぞれに異なります。まず五人に共通する小町の印象は『大きな女の人だった』というもの。それを『「ゴーストバスターズ」に出てくるマシュマロマンみたい』、『早乙女玄馬のパンダみたい』、そして『正月に神社で飾られる巨大な鏡餅のよう』とそれぞれの個性が感じられる小町さゆりの見た目に対する表現の違い。このそれぞれの表現の積み重ねによって小町さゆりのイメージが読者の中に出来上がっていくのみならず、その表現をする側の主人公それぞれの個性が逆に印象付いていく、とても上手い構成だと思いました。その一方で、見た目ではなく彼女が発する最初のひと言である『何かお探し?』という言葉からそれぞれの主人公が受ける印象は共通したものでした。『抑揚のない言い方なのに、くるむような温かみ』、『身も心もゆだねたくなるような、懐の深さを感じられる』、そして『穏やかで凛としていて、体の奥まで響いてきた』というように同じ人物の感想といっていいくらいにその説明は似通ったものです。そんな小町の言葉の説得力にそれぞれの主人公は心を落ち着けて、今の自身が置かれている立場と心の内を正直に語ります。それを踏まえて、小町がその人に相応しい”本”と”付録”を選んでいくという五編に共通した物語の展開は、こういった構成の工夫もあって妙に説得力を感じさせるものでした。

    今の人生に思い悩み、何かしらの起点を必要としていた主人公たち。たまたま図書室の小町のもとを訪れたことで、結果として起点を掴み前へと進んでいく彼らの人生のそれまでとそれからが描かれていくこの作品。このレビューを読んでくださっている皆さんも色々な職業の方がいらっしゃると思います。そんな皆さんは自分の職業をどのように捉えていらっしゃるでしょうか。この作品の主人公の一人である朋香は、司書の小町にその仕事内容を問われ『たいした仕事じゃないです。総合スーパーで婦人服売ってるだけ』と答えます。それに対して『スーパーの販売員がたいした仕事じゃないって、ほんとうに、そう思う?』と返す小町。自分の仕事が肯定されたことを喜ぶ朋香ですが、『単に私が「大した仕事をしていない」だけだ』ということには、その会話からではなく、後日、実際の仕事の現場で彼女自身が自覚することになりました。また、育児に行き詰まる夏美は『やりたいことがやれないもどかしさに、こんなはずじゃなかった』と小町に語ります。しかし、小町が直接そのことに対して道を切り開いてくれるわけではありません。その後、彼女の人生が『見ていてくれた、認めてくれていた人がちゃんと近くにいたんだ』と切り開かれていく展開を作ったのは、やはり彼女自身の力によるものでした。

    『どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ』と語る司書の小町。作り物などではない私たちの人生に、絶対的なスーパーヒーローがやってきてくれることなどありません。水戸黄門の印籠ひとつで全てが上手くいくことなどありえません。それは皆さん自身が日々感じていることだと思います。人間生きている限り、色々な場面で思い悩み、立ち止まり、そして葛藤を繰り返すということは避けて通ることはできません。しかし、一方で色々な困難を乗り越えた先に、ふと後ろを、今までの人生を振り返って見た時に、そこに、あの時、あのことがあったからと、何かしら転機となった起点を感じることがあると思います。全ての物事は何かしらの起点をきっかけに始まっていく、長く暗いトンネルから抜け出し、光差すその先の未来へと進んでいく、そんな私たちの人生に起点はなくてはならないものです。この作品で描かれた司書・小町さゆりとはそんな起点の象徴的存在だったのだと思いました。

    長い人生の色んな場面を象徴する五人の主人公それぞれが、今の自身の立ち位置に悩み、出口を求めて苦闘する姿が描かれるこの作品。その中で出口へと進む起点を作ってくれたのが司書・小町さゆりでした。しかし、きっかけはどこまでいってもきっかけに過ぎません。それはその人の人生の答えなどではなく、また進むべき道を指し示してくれるようなものでもありません。『作り手の狙いとは関係のないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです』と小町が語る通り、例え同じ本を読んでもそこから受け取るモノは人によって千差万別です。それは、このブクログのレビュー群が証明していることでもあります。同じものから無限の可能性が広がる本というものが持つ力。

    私は小説ばかり読んできましたが、そこには架空ではあっても、さまざまな人物の生き様が描かれています。リアルだけではなく、小説の世界であってもそこに生きる人たちの人生からは何かしら学べるものがあると思っています。この作品の様々な境遇に置かれた主人公たちも、小町さゆりによって提示されたそれぞれの本を起点に『そうだ、今の自分にできることを今やる。それでいい』と、『いつかを待たないで…これから動いてみようって気持ちになりました』と、そして『わたしはわたしを退いたりしない』とそれぞれがそれぞれの気づきを得ていきました。

    短編と短編の間に張り巡らされた伏線の数々が五つの短編を一つに編み上げていく絶妙な構成が光るこの作品。誰だって気づきを得ることができる。誰だってやり直すことができる。そして、誰だって無限の可能性に向かって進んでいくことができると気づかせてくれたこの作品。前を向いていく主人公たちの姿に、熱いものが何度もこみあげてくる絶品でした。

    青山さん、力いっぱいの勇気と希望をありがとうございました!

  • 読み始めてまず思ったこと‥‥小町さゆりさんって紅子さんと同一人物ではないですか〜?
    小学生に大人気の廣島玲子さんの『ふしぎ駄菓子屋  銭天堂』の紅子さんとしか思えないんですけど!
    「顎と首の境がなく色白で」「ひっつめられた髪の頭の上には、小さなおだんご。そこにはかんざし」って!どう考えても紅子さんじゃないですか〜!誰かとこの気持ちを共有したい〜!
    紅子さんも悩める人に不思議な駄菓子をあげて解決するし(解決しないこともある‥‥)
    『銭天堂』の方はバッチリ紅子さんの姿が表紙に描かれているので、ずーっと紅子さんの顔でイメージして読んでしまいました(笑)
    それにしても青山美智子さんは何を読んでも胸に響くなぁ。
    小町さゆりさんは図書室の司書なので、悩める人に小町さんセレクトの本を薦める。
    でもそこから何を受け取るかはその人次第。
    「どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ」
    これは本に限らず全てに当てはまると思います。
    同じ出来事でも受け取り方はその人次第。
    「役に立つか、モノになるか。これまでのわたしを邪魔していたのはそんな価値基準だったのかもしれない。でも、心が動くこと自体が大切なのだ」
    楽しいと思ったこと、目にとまったことを自分のタイミングで始めてみる、それだけで自分に自信が持てるし人生が豊かになるんだなぁ、と思いました。

  • 「そう、そう!」と共感する言葉が沢山でてきました。
    若い時なら「そうか!」と感じたであろう言葉の数々。
    過去に戻ってやり直したいことは沢山有れど、その時は今とは違う考えで判断・行動をしてきたなと思います。
    若い時にこのような小説をもう少し読むだけの(心の)余裕がなかったことが残念です。
    現実の生活で経験できることには限りがあります。
    疑似体験としていろんな人の生き様や考え方に接して、自分を成長させることができるのが小説ですね。

    同じ社会で生きていく上で、「そう、そう!」と多くの人と共有していたい言葉をいくつか。

    ・婦人服販売員

    「何が起きるかわからない世の中で、今の自分にできることを今やってるんだ」
    「続けているうちにわかることってあると思う」

    ・家具メーカー経理部

    「組織に属している限り煩わしい人間関係がちゃんとある」
    「無計画な夢を抱くのも悪いことじゃない。日々を楽しくしてくれるからね」
    「やることはたくさんあるけど、時間がないなんて言い訳はもうよそうと思った。ある時間でできることを考えていく」
    「世界を回しているのは信用」

    ・元雑誌編集者

    「私たちは大きなことから小さなことまで「どんなに努力しても、思いどおりにはできないこと」に囲まれて生きています」

    ・ニート

    「絶対大丈夫なことなんかないかわりに、絶対ダメって言いきれることもたぶんないんだ」

    ・停年退職

    「社会って、なんでしょうね。会社が社会ですか」
    「人と人が関わるのならそれはすべて社会だと思うんです」
    「前ばっかり見てると、視野が狭くなる」

    これ以外にも、心に染みる言葉で埋め尽くされている作品でした。

  • 最近お気に入りの作家さん。
    行き詰まっている人々を意外な方法で再生させてきたこれまでの作品と比べて、あれ、本? 普通…と思っていたら、やはり一捻りあった。

    ヒントをくれる場所が「図書館」ではなくコミュニティハウス(略してコミハ)にある「図書室」というのが良い。
    本を借りるだけでなく様々な教室もあって、そこに通う人、教える人、働く人と様々な人たちとの交流もある。

    今の仕事がつまらない、いつか叶えたい夢がある、出産と育児でキャリアアップが出来なくなった、自分を認めてくれる場所がない、定年退職後に何をすれば良いのか分からない…そんな老若男女五人に「図書室」の司書・小町さゆりが薦めるのは、一見彼らが求めるものとは関係なさそうな本。
    例えば転職したい総合スーパーの婦人服販売員には絵本の「ぐりとぐら」、アンティークショップを開く夢はあるが仕事を辞めることに躊躇している家具メーカー経理部社員には植物の本といった具合。
    更に小町さゆりが趣味で作っている羊毛フェルトの作品も一緒に渡されるのだが、「ぐりとぐら」にはフライパン、植物の本には猫と、これまた意味深な組み合わせ。

    しかしここから彼らの気持ちに変化が生まれる。それまで見向きもしなかった部分を丁寧にやる、自分は苦手だと思って尻込みしていたことを一歩踏み出す、ずっと我慢していたことをぶつけてみる…など今までとちょっと見方や行動を変えるだけで自分を取り巻く環境や人や仕事が全く違って見える。
    結果的に転職する人もいれば今いる場所でやり直す人もいる。また別のやり方で新たな一歩を踏み出す人もいる。

    だが環境が変わっても変わらなくても本人の気持ちや取り組み方が変われば新世界。
    箱入りお菓子の中身がどれほど減っても、残ったお菓子は『残りもの』ではなく最初に食べたお菓子と同じ。
    最終話でリタイアした男性と小町さゆりが交わす会話になるほどと納得。
    小町さゆりが選んだ本とプレゼントした羊毛フェルト作品に疑問を持ちつつも行動した彼らは、すでに再生のための一歩を踏み出していたのだ。

    個人的には出産と育児でキャリアを断たれた出版社社員の話に感情移入しながら読んだ。途中ハラハラするところもあったが良い話だった。
    連作なので話がゆるく繋がっているのも良い。前の話の登場人物のその後が分かったり、意外な人間関係を知るのも楽しい。
    小町さゆりが出てくる作品があるようなので、そちらも読んでみたい。

  • この雰囲気、この設定、何かに似ている。何だったっけ⁇と考えて、思い出しました。
    これは、『マカンマラン』に似ている!

    それぞれに悩みや行き詰まりを抱えた人たちが、街のコミュニティセンターにある図書室をふらりと訪れ、そこのレファレンスにいる風変わりな司書さんにおすすめされた本をきっかけに、何かに気づいたり、背中を押されたり。

    と言うことで、マカンマランがお好きなら、この本も好きだと思います。

    私は最初、何だかいい話のためのよくできた話、という感じがして、うーん、と思いながらの読書でしたが、途中から思わず泣きました。
    いいお話だと思います。

  • 「くまのプーさんを可愛いと思うのと、実際に熊と暮らすのとではぜんぜん違う」
    ほんと、その通り。
    想像していた夢のような未来と、容赦なく叩きつけられる現実。
    自分の考えの甘さ加減を思い知り、ただただそのギャップに戸惑うばかり。
    そんな人生の迷い人に救いの手、ならぬ救いの一冊を差し出してくれるのは、コミュニティハウスの図書室の司書・小町さゆり。

    今の自分にできる精一杯のことを、今、ひたむきに取り組む。
    やってみてだめだったらリベンジすればいいだけ。
    失敗してやり方を覚えてまたやってみる。
    そうやって一歩一歩確実に進んでいけばいい。
    さゆりちゃんの大きくておおらかな手。
    ハイスピードでキーボードを連打し器用に羊毛フェルトを創るその手は、図書室に迷い込んだ人達の背中をそっと押してくれる温もりのあるものだった。

    「どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ」
    「作り手の狙いとは関係ないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです」

    さゆりちゃんの言葉には私も何度も励まされ、本のありがたさも教えられた。

    青山さんの作品には、毎回生きるヒントをもらえる。
    特に今回は本にまつわる連作短編で、紹介された本を読む楽しみももらえた。
    本好きにはとても嬉しい一冊だった。

    さゆりちゃんって、『猫のお告げは樹の下で』の『マンナカ』に出てきた養護の姫野さゆり先生だったんだー!びっくり!
    姫野先生が小町さんと結婚されのね。。
    あの時も好きなキャラだったので、さゆり先生の再登場はとても嬉しい。
    また、さゆりちゃんには再々登場してほしい。

    • たけさん
      こんばんは!

      えっ、すごい!
      小町さゆりさんにそんな過去があるわけですね。これは読まないと。
      奥が深いなぁ…
      こんばんは!

      えっ、すごい!
      小町さゆりさんにそんな過去があるわけですね。これは読まないと。
      奥が深いなぁ…
      2021/02/07
    • mofuさん
      たけさん、こんばんは。

      そうなんですよ!
      私も他の方のレビューを読んで知って、びっくりしました。
      慌てて『猫のお告げは…』を読み直すと、確...
      たけさん、こんばんは。

      そうなんですよ!
      私も他の方のレビューを読んで知って、びっくりしました。
      慌てて『猫のお告げは…』を読み直すと、確かに若き日のさゆりちゃんが…。
      この時もいい先生だな、と思っていたので、再登場はとても嬉しいです。
      さゆりちゃんにはまた他の作品にも登場してほしいです(*^^*)
      2021/02/07
  • 言葉一つ一つが愛おしい一冊。

    辿ってきた、辿るかもしれない道。

    自分をシンクロするたびに心がピンポイントに涙腺がピンポイントに刺激された。

    誰か一人でも見ていて認めてくれる、それだけでどんなことも無駄じゃないって報われるその喜びを大切に。
    そしてその喜びもいつだって自分次第。

    小町さんの何気ない言葉と本と付録にのせられたメッセージはもちろん、キャッチして前を見つめ出す誰もの姿、心の言葉の一つ一つが愛おしい。

    ワクワクへ一歩、そんな前向きチャージをしてくれる、枕元に置きたい明日への心のお守り本がまた一つ増えた。

    • kanegon69 さん
      こんにちは。この本は気になっていますので、いずれ読もうと思っています。

      色々ありまして、読書感想はこちらに絞りました。よろしければこちらで...
      こんにちは。この本は気になっていますので、いずれ読もうと思っています。

      色々ありまして、読書感想はこちらに絞りました。よろしければこちらで引き続きお付き合いください。
      2020/12/30
    • くるたんさん
      kanegonさん♪お久しぶりです。

      あちらで心配しておりました。
      いろいろありますよね。

      こちらこそよろしくお願いします。

      この作品...
      kanegonさん♪お久しぶりです。

      あちらで心配しておりました。
      いろいろありますよね。

      こちらこそよろしくお願いします。

      この作品ももちろん良かったです!

      良いお年わお迎え下さい。
      2020/12/30
    • kanegon69 さん
      心配して頂いたようで申し訳ないです。

      あの場所で、色々ありましたが、結局は自分で決断しました。年齢も年齢ですしね。自分のかけられる時間と精...
      心配して頂いたようで申し訳ないです。

      あの場所で、色々ありましたが、結局は自分で決断しました。年齢も年齢ですしね。自分のかけられる時間と精神的余裕を別の場所で使う事にしました。

      皆様にどうぞよろしくお伝え下さい。皆様の素敵な読書ライフを来年も送れますようにと。それから、一年半仲良くして頂いた感謝を。

      くるたんさんも、どうぞ良いお年をお迎えください。
      2020/12/30
  • タイトルそのまんま。レファレンス・サービスの話。

    レファレンス・サービスとは、図書館員が利用者の調べ物を手伝うサービス。
    都内の羽鳥区にある羽鳥コミュニティハウス図書室の小町さん(とてもチャーミングな女性)は、スーパー司書。利用者の調べたいことに役立つヒントをものすごいスピードで検索して教えてくれる。そのものズバリの本数冊と調べ物に脈絡のなさそうな本1冊のリスト、付録に羊毛フェルトの小物をくれる。

    だが、利用者の解には、そのものズバリの本にあるわけではなく、実は一見脈略のない書籍の方が近づける。

    利用者の日常の見方を少しだけ変え、人生を受け入れ、主体的に切り拓いていくことの手助けをする本を教えてくれるわけですよ。

    選書サービスのある本屋に近いのかもしれない。僕も小町さんにいろいろと相談してみたい、と思った。

    青山さんの本は「鎌倉うずまき案内所」に次いで2冊目。
    「鎌倉」同じくパターン化された連作短編集である。
    パターン化された安心感と、次は出てくるのかな?というワクワク感。まるで、「ドラえもん」のようだな、と思った。

    人生の生き方のヒントをくれる本。
    くさくさしている人におすすめ!

    • aoihitoさん
      私はあまりパターン化された短編が好きではなかったのですが、この作品は本当に面白かったです!
      私はあまりパターン化された短編が好きではなかったのですが、この作品は本当に面白かったです!
      2021/02/22
    • たけさん
      aoihitoさん、こんばんは!
      コメントありがとうございます。

      青山さんの本はこの本と「鎌倉うずまき案内所」しか読んだことないですが、「...
      aoihitoさん、こんばんは!
      コメントありがとうございます。

      青山さんの本はこの本と「鎌倉うずまき案内所」しか読んだことないですが、「鎌倉」の方もパターン化されてるけど面白かったですよ。ぜひ。おすすめします。
      2021/02/22
    • aoihitoさん
      ありがとうございます!ぜひ読んでみます!
      ありがとうございます!ぜひ読んでみます!
      2021/02/22
  • 毎日の生活に行き詰まって途方に暮れているあなた
    生きていくのがつらくてため息ばかりついているあなた

    そんな人は、ぜひ小学校のお隣のコミュニティハウスの図書室を訪ねてみてください

    「何をお探し?」
    真っ白なトトロが頭の上にお団子を載せたような司書の小町さゆりさんに尋ねられた来館者

    はたと迷う
    私は一体何を探しているのだろう?

    仕事をする目的とか、自分に何ができるのかとか

    もてあましている夢の置き場?

    これからの私の生きる道は?このモヤモヤの解決手段は?
    育児に必要な「余裕」とやらは?どこにありますか?

    これからの・・・人生の在り方を?

    みんないろいろ悩み迷い、救いを求めているんだなと、つい自分のことのように思えて、目頭が熱くなる

    そして、小町さんの一見ぶっきらぼうだけど、何でも受け入れくれる深い懐に飛び込んでいくのだ
    小町さんが紹介してくれた本を開き、自らの力で扉を開き、一歩前進していく姿によかったとホッとし、またまた涙が出てくる

    私も小町さんに本を紹介してほしいな。羊毛フェルトのおまけもほしいな
    心のモヤモヤ聞いてほしいな

    青山美智子さんの本は、独特のふんわりした空気感があって大好きだ
    心の中のわだかまり、モヤモヤが解けていく気がする

    心に残った一節を書き留めておこう

    *「でも私、思うんだよ。お母さんも大変だったろうけど、私だって生まれてくるときに、相当な苦しみを耐え抜いて持ちうるだけの力をすべて尽くしたんじゃないかって。十月十日、お母さんのおなかで教わることもなく人間の形に育って、全く環境の違う世界に飛び出してきたんだから。この世界の空気に触れたとき、さぞびっくりしただろうね。だから、嬉しいとか幸せとか感じるたびに、ああわたし、がんばって生まれてきたかいがあったって、噛みしめてる」

    「あなたもそうだよ。たぶん、人生で一番がんばったのは生まれたとき。その後のことは、きっとあの時ほどつらくない。あんなすごいことに耐えたんだから、ちゃんと乗り越えられる」

    *「独身の人が結婚している人をいいなあって思って、結婚してる人が子供のいる人をいいなあって思って。そして、子供のいる人が、独身の人をいいなあって思うの。ぐるぐる回るメリーゴーランド。おもしろいわよね、それぞれが目の前にいる人のおしりだけ追いかけて、先頭もビリもないの。つまり、幸せに優劣も完成形もないってことよ」

    *人生なんて、いつも大狂いよ。どんな境遇にいたって、思い通りにいかないわよ。でも逆に、思いつきもしない嬉しいサプライズが待っていたりもするでしょう。結果的に、希望通りじゃなくてよかった、セーフ!ってことなんかいっぱいあるんだから。計画や予定が狂うことを、不運とか失敗って思わなくていいの。そうやって変わっていくのよ、自分も、人生も」


  • 本書を手にしたのは、気分は上々とは真逆の時だった。あまり気の進まないままに読み出したのだが、あっという間に引き込まれ、気がつくと読み終わっていた。この話がもっと読みたい、そう思った。

    本書のテーマは「仕事」だろう。それぞれに悩みを抱えた老若男女が、地域のコミュニティハウスに足を踏み入れ、たまたま入った図書室で、一風変わった司書・小町さんから薦められるまま、まるで自分とは関係ないような本を、首をひねりながらも借りていく。たまたま、というのも、図書館ではなく図書室、というのも実にいい。本と読者の出会いは用意されるものではなく、常にたまたまなのだ。 

    彼らは借りてきた本から何かしらの回答を導き出し、次の一歩を踏み出すきっかけをつかんでいく。小町さんは言う。書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたという、そこに価値があるんだよ。

    本書は連作短編集で、登場人物は皆どこかでつながっているか、世界を共有している。そしてどの話も幸せなハッピーエンドが訪れる。自分の中の力を信じたい。こういう話が今求められている。

全649件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。同作と2作目『猫のお告げは樹の下で』が未来屋小説大賞入賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
『お探し物は図書室まで』より

青山美智子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
瀬尾 まいこ
辻村 深月
原田 マハ
瀬尾まいこ
小野寺 史宜
伊吹 有喜
有効な右矢印 無効な右矢印

お探し物は図書室までを本棚に登録しているひと

ツイートする
×