- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591168868
作品紹介・あらすじ
慢性的な人数不足に悩む離島・大島の渚台高校陸上部に、奇跡的に男子4人のスプリンターが揃った。インターハイ予選を目前に控え、100×4リレー(四継)に挑むことになるが、メンバーの人間関係はサイアク……。
天才的な兄の存在から屈折してリレーをやりたがらない1走、自信がなくスランプを抱えたエースの2走、強豪校から逃げてきた転校生の3走、リレーへの思い入れが強いばかりに保守的で頭でっかちな部長の4走アンカー。
はじめはリレーで重要なバトンの繋ぎもまったくうまくいかなかった4人だが、お互いが本音でぶつかり合ううちに、しだいにチームに変化が――。
4人のバトンが繋がるとき、感動に胸が熱くなる。最高の青春スポーツ小説!
感想・レビュー・書評
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ヨンケイ(四継)とは,陸上競技の100×4リレーのこと。
100メートル走の記録を0.1秒縮めるのは,並大抵のことではないが,ヨンケイのリレーの技術次第ではもっと大きな秒差を縮めることができる。
ヨンケイはチームワークが重要な鍵を握っているのだ。
東京都島しょ部,伊豆諸島の大島にある,渚台高等学校。
高校の規模が小さく,慢性的な人数不足であった渚台高等学校に,転入生が。
陸上部に入り,短距離走の選手が4人となったので,顧問の佐藤先生からヨンケイをやらないかという提案があった。
だが,チームワークは最悪,タイムも当然遅いものだった。
小説は4つの章で構成され,それぞれヨンケイのメンバー4人の視点で物語が進んでいく。
一走,受川星哉(うけがわ せいや)
二走,雨夜莉推(あまや りお)
三走,脊尾照(せお あきら)
四走,朝月渡(あさつき わたり)
受川は,5歳年上の天才的な100の選手であった兄への複雑な思いから,リレー,特に一走であることについて反発していた。
雨夜は,中学校時代の友人との関係からスランプに陥り,自信もなくしている。
陸上の強豪校を辞め,渚台高校に転入してきた脊尾は,放課後の本練習こそ出てくるものの,陸上へのやる気をすっかり失っていた。
朝月は,受川の兄のいたチームに憧れていたが,理想のチームと現実との違いに苛立ちを隠せず,受川や脊尾に対してきつくあたっていた。
バラバラの4人が,陸上短距離で走ることや,様々なぶつかり合いからお互いを理解していき,徐々にチームとして成長していく……。
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陸上短距離の,100×4リレーの物語です。
男子高校生が,それぞれぶつかり合い,言い合いながら成長していく物語です。
対話し,それぞれの立場を理解していくにしたがって,リレー自体も上手くいくようになってくる,信頼関係ができていくプロセスがとても良きかな~と感じます。
それぞれが背負っているものを乗り越えて,チームとしてまとまっていく様子が,読んでいて自分はとても好感が持てました。
4人が4人とも,それぞれ主人公なんだなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「陸上×青春小説」を見るとついつい読みたくなる。
リレーのバトンを繋ぐ四人それぞれの視点で描かれ展開していきます。
視点が変わることで登場人物の内面を知り、見える景色が変わるのがおもしろかった。
実力はあるけど一人一人がコンプレックスや苦悩を抱え、チームワークなんてあったもんじゃない。
それが少しずつだけど関係性が変化して、結果にも好影響を及ぼしていく。
読みながらリレーのおもしろさというか醍醐味のようなものを感じた。わたしは陸上に詳しくないので、初めて知ったことが新鮮で興味深かったです。
「手応えを感じた時の高揚感」なんていつ以来だろう…って、ちょっと羨ましくなった。
今までに読んだ陸上小説と比べると軽めな印象。爽やかな作品でした。
『何かを変えるということは、今の形を少なからず壊すということだ。一度作り上げたものを壊すのは、とても勇気のいることだ。』 -
王道青春スポーツ小説!陸上の4継を選手4人、1人1人の目線で描かれている。
一人称の書き方で読みやすい文体なので、小中学生にもおすすめできる。
さて、陸上小説が好きで色々読んでいるが今回は4人ともバラバラなチームで全くまとまりがない。しかも、それが大会当日までまとまらず試合をしてバトンを受け渡すことでまとまっていく。
だいたい部長というと、しっかりしているものだが今回の部長は頼れる所もあるが、挑戦ができない。高校最後の大会で負ける事に臆病になっていて、自分一人での練習はやるが、チームメイトのことまでみる余裕がなくなっている。頼れるはずの部長にも、悩みがあってチームのお陰で成長していく姿が良かった。 -
リレーを通して少年たちが精神的にも肉体的にも成長していく姿が、とてもきれいに描かれていた。
人は何かしらコンプレックスや悩みをもって生きている。自分自身の弱い部分、認めなくない部分と言っても過言ではないかもしれない。
そこと向き合いながら、仲間と刺激し合いながら目標に向かっていく4人の姿がかっこよかった。眩しかった。
自分自身、陸上の経験がありヨンケイも出場したので、細かい描写がとても懐かしく感じた。
陸上経験者は、ぜひ読んで欲しい1冊。 -
駅伝小説で同時期を多重視点で描くのは定番だが、リレーの第二走者はバトンパスゾーンを含めると80m地点から120m地点まで走る。つまり重複区間がありつつ前進する。これを小説でやるとは!
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東京の離島・大島の高校陸上部を舞台に4人の高校生を中心とした4✖️100mリレー(四継)にかける戦いを描いています。初めはバラバラだった関係が、次第に団結力をもっていく様子は爽やかな青春さを感じさせてくれました。
物語の構成としては、各章ごとに4人それぞれが主人公となって、進行します。バトンを渡すかのように次の章へ気持ち良く受け渡している工夫がされていて、その構成が面白かったです。同じ場面でも登場人物の視点によって、解釈が異なっていくので、奥行き感がありましたし、異なった楽しみ方を味わえました。
4人それぞれには、何かしらの悩みを持っていますが、リレーを通して、最後には迷いを断ち切るかのように芯のしっかりとした姿へと成長していきます。
リレーは単純に速いだけで勝つわけではなく、瞬発力や団結力といった様々な要素が詰まっています。その辺の高校生達がどのようにして、勝利へと導いていくのか。青春さを感じながら、良い風を浴びたように感じました。特に次の人に繋ぐ一瞬のタイミングにハラハラしました、
手に汗握るリレーの熱き戦いももちろん楽しめたのですが、離島の大島の魅力も楽しめました。大島の自然や歴史といった紹介が描かれていて、ちょっと行ってみたくなりました。 -
爽やか学生ドラマ、といった趣きで、時節柄さらっと読むならまあいいのかも。個人的には酪農を目指す中学生のくだりのほうが面白い。
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4×100mリレーを走る4人の離島の高校生。
それぞれが抱える走ることへの屈託が、バトンを繋ぐように順繰りに解けていき、チームとなっていく構成は成功している。 -
高校陸上部のリレーを舞台にバラバラだった4人が繋がっていく青春もの。
大島という少人数の学校で部員もたった5人の中で奇跡のように揃った4人のリレーメンバー、顧問のサトセンの気持ちがよく分かる。そして本当にいい教師だ。 -
アンカーもさることながら、二走がエース区間って知らなかった。胸が熱くなるところが随所にあった。