零から0へ

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 231
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591169070

作品紹介・あらすじ

1945年、父を戦争で亡くし、聡一は一家を支えるために大学をやめて、鉄道総局の研究所に入所する。そこには、戦争中に軍で戦闘機の設計や製作に関わり、多くの命を奪う結果を生んでしまったことを悔いる壮年の技術者たちがいた。
技術を、人を殺すために使いたくない。平和への想いを込め、不可能と言われながら、東京―大阪間を数時間で結ぶ高速鉄道の開発に取り組む彼らを手伝ううち、聡一もいつしか想いに共鳴し、没頭していく。
子どもたちを抱え未亡人となった母親、満州での辛い経験を胸に秘める同僚女性、様々な人が、過去を乗り越え、未来へ向かう様を描いた、希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 第33回読書感想画コンクール中学高校の部指定図書
    読書感想文じゃなく、読書感想画。
    本を読んで、印象に残った場面を絵で表現するというもので、まだあまり知られてないかも…。


    零は零戦の零。
    ゼロは新幹線ゼロ系のゼロ。

    かつて、あの戦争で零戦を開発した人々が、自分達の手によって、多くの未来ある若者を死に追いやったことへの悔恨から、平和を象徴する乗り物を創りたい、と開発に執念を燃やしたのが新幹線ゼロ系。

    そのゼロ系がこの世に送り出されるまでの、旧国鉄で開発にあたった人々の苦闘を描いた物語。

    登場人物は架空の設定であるが、多くの史実に基づいて書かれている小説。

    主人公は、視力が悪い為に戦地に行くことなく終戦を終えた若者。
    本人にはその事が悔いとなっており、敗戦後の日本で役に立つ仕事をしたいと、大学を中退して国鉄の研究職に就く。
    しかし、そこでは元日本軍で戦闘機などの開発にあたっていた技術者と、従来の国鉄職人が対立する日々があった…。

    物心ついた頃には新幹線が走っていたので、開発に元軍人の方たちの平和への願いが込められていたとは、全く知らなかった。

    主人公と結婚する事務職員の女性が、満洲からの引き揚げてきた時の話も並行して語られるが、それも残留孤児の方の高齢化に伴い、埋没しつつある話だと思う。

    子どもだけでなく、我々の世代も読むべき物語。
    2022.1.24

  • 戦時中、零戦や特攻機などの戦闘機を開発・設計していた技術者たちが、戦後、夢の超特急『新幹線』の研究開発を行い、実現させた実話を元に描かれた物語。
    「自分が持っている技術を投じてつくった飛行機で、若いパイロットたちが死んでいった。大勢の人が亡くなってしまった」という悔いる気持ちから、「戦いを生み出さない美しくて安全な乗り物を作りたい」と、戦後復興と平和のために、新幹線開発に没頭する技術者達の想いが、心に沁み込み、伝わってきました。
    その想いに共感し、一緒に「平和を運ぶ乗り物をつくりたい」と没頭する主人公・聡一の、未来に向かって前を向く姿が、なんだか胸をすっとしてくれるような、爽快で、明るい気持ちにさせてくれました。また、満州からの引き揚げの際に眼にした凄惨な光景のせいで、トラウマを抱えている同僚の寧子との恋愛も、初々しくて、二人で未来に向かっていく姿も気持ち良かったです。
    新幹線の誕生にこんな実話があったのかと、心を打たれました。
    3年前の夏、従弟の結婚式に出席するため、父親と妹家族と一緒に、新大阪から九州新幹線に乗りました。姪っ子二人が、初めての新幹線に凄く興奮していたのを思い出しました。みんなでお弁当を食べながら、そこには笑顔がいっぱいで、平和そのものでした。後悔に苛まれ、新幹線の開発に携われた方達の想いが、こうして報われています。私達はその想いを、引き継いで行かなければな・・・と思わされました。
    コロナ禍が終息し、次に新幹線に乗る時は、平和を噛みしめたいと思います。そんな気持ちにさせてくれる1冊でした。

  • だからゼロなのか!!
    読み終わった瞬間につぶやきました。まはら三桃さんが史実に即した物語を書かれるとは、驚きました。

  • 大学生のとき兵役に志願したが、視力が悪く叶わなかった聡一

    「今度こそ、国の役に立ちたい」と、戦後すぐ、鉄道技術研究所に入社する

    反目しあう二つの派閥──もともと鉄道総局で働いてきた人と旧日本軍から来た人──のもとで下働きをしながら、新しい電車づくりを夢見ている聡一

    戦争中、軍用機をつくって多くの若者を死なせたことを悔い、これからは美しく安全な乗り物をつくりたいという技術者の思いを知った聡一は胸を熱くする

    「手伝います。平和を運ぶ乗り物をつくりたいです」
    「一緒に美しい列車をつくろう」

    時速200キロで東京大阪間を四時間半で結ぶ新型列車の開発が動き出す

    《新幹線をつくったのは、かつて零戦をつくっていた技術者だった》

    この史実に出会い、作家のイマジネーションを駆使して創作した希望の物語、2021年1月刊

    《本気の人間にしか常識は破れない》

    新幹線づくりに挑戦した技術者たちの“プロジェクトX”

  • 第二次世界大戦時、戦闘機の開発に携わっていた技術者たちが、戦後の復興を支える鉄道開発にも関わっていたという事実に基いたストーリー。『プロジェクトX』(参考文献にも上がっている)的な技術屋さんを主人公としたハードな話かと思ったけれど全然そんなことはなく、どちらかと言えば気楽に読めた。♫ビュワーン ビュワーン 走る 青いひかりの 超特急 時速250キロ……まさにこの歌がBGMにピッタリの作品だった。しかしこの曲、ぼくが2歳の時のものなんだが、未だに歌えるぞ(^_^;)。

  • 理系的な話しで、文系的な深みがあると思った。(個人的な感想で、個人の表現力の域内です)

    薬学の子ども向けの本を読んで面白い!と思い、子どもに読ませようと思ったが、読み始めて文章から大人向けだと気付きました。
    書名がカッコいいと思いました。

  • <童>
    数年前に児童文学作家さんが書いた『 獣の奏者』という文芸書がベストセラーになったことを記憶している。本作もその匂いがちょっと漂う。『獣の奏者』とは全くジャンルが異なる作品だけどとても面白い。全国の一部限られた夢の超特急 もとい 超特権持ちの偉書店員さん方が選ぶ例の賞「ホンマか大賞」いやもとい『本屋大賞』にノミネートされそうな気が個人的にはする。だけど発売時期がちょっと不利なので大賞に選ばれはしないだろう。もっともはなからそう云う商業ベースにのる為の作品造りをするつもりは無い作家さんなのだろうけど。

    ー以下は僕がこの本を読んでる最中に沢山の人に読んでもらいたくてSNSに挙げた文章ですー
    ”まはら三桃という作家さんの『零からゼロへ』という本を入手して読んでいる。読みたい作家の本が無くなくなったので新たな作家さんの開拓ってわけだ。で その行為は過去ことごとく失敗に終わっているのだけど おや!今回の作品は存外に面白いぞ!!ワクワクですわ。”

  • 戦後77年を過ぎて、当時の記憶もだんだんと失われつつある。
    終戦間もない東京で、焼け野原の中、復興をしようとしている日本。

    軍用機を設計して多くの若者を死なせた後悔の設計技師が
    安全で早く美しい乗り物を作ろうと、旧国鉄の技師と対立しながらも、
    夢の超特急、新幹線ができ上がる。

    肉親を失った哀しみを抱える人、大陸からの引き上げ時の記憶等に苦しむ人、
    内なる傷を抱えながらそれぞれが懸命に生きていく姿が胸を打つ。

  • 一言でいえば、零戦を作っていた人たちが戦後ゼロ系新幹線を開発するお話なんですが、そこに戦争に行けなかった聡一や満州から引き揚げてきた寧子等々のエピソードが加わることでお話の厚みは出たのかな、と。ただ、実際の開発風景がおぼろげというか具体的に見えないというか…終盤も畳みかけるように進んでしまって、物足りない感じ。平和な乗り物を作るのだという開発者たちの思いや気概というものは十分解ったけど…なんというか、小学生向けの本を読んでる感じがした。

  • 新幹線を作る事がメインかと思いきや、登場人物の戦中戦後の生活が大きく関わりノンフィクションに近い物語となっています。戦後生まれの作者ですが、北九州出身なので引き揚げの話しを入れるのも当然だと思いました。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。講談社児童文学新人賞佳作『カラフルな闇』でデビュー。作品に、『青(ハル)がやってきた』、『鉄のしぶきがはねる』(坪田譲治文学賞、JBBY賞)、『たまごを持つように』 、『伝説のエンドーくん』、『思いはいのり、言葉はつばさ』『日向丘中学校カウンセラー室1・2』『零から0へ』『かがやき子ども病院トレジャーハンター』など。

「2023年 『つる子さんからの奨学金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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