百貨の魔法 (ポプラ文庫 む 3-1)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591170052

作品紹介・あらすじ

時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で街の人びとに愛されてきたデパートを守ろうと、今日も売り場に立ちつづける――。百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される猫が織りなす、魔法のような物語! 2018年本屋大賞ノミネート作品。

感想・レビュー・書評

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  • 明るく幸せな気持ちにしてくれる作品です。
    百貨店には確かに何か魔法使いが住んでいそうで、タイトルも表紙の絵もとても素敵です。

    このお話アニメ映画にしたらとっても上品で、お洒落で可愛くてエスプリの効いた作品になりそうだと思いました。

    同じ作者の『桜風堂ものがたり』に出てくる銀河堂書店が6Fに入っている風早の街の星野百貨店に働く人とお客様のお話しです。


    作者あとがきより引用
    (前略)
    ある意味、百貨店のいちばん華やかな時代が記憶にある世代かも知れません。
    日曜日には家族でそこにお買い物に行って、屋上の遊園地で遊び、レストランでお子様ランチを食べ、地下のお菓子売り場でキャンデイを買ってもらって帰った、そんな子どものひとりでした。
    おとなになってからは、コスメや香水に凝って、季節ごとにお気に入りのブランドのカウンターに通ったりしました。美味しいものが食べたいときに、いわゆるデパ地下で、ちょっと高級なお惣菜を買ったりもしました。老舗のお菓子屋さんのお菓子をお世話になった方に贈る手続きをすることもありました。それから物産展。百貨店のちらしでチェックして、遠い街から来た珍しい品々をうきうきと買いにいったものです。
    クリスマスの時期には、友人や自分のためにアクセサリーを選んだり。綺麗な箱に入れて、リボンをかけて丁寧に包装してもらえるのが嬉しくて。
    そこは日々の暮らしの中に、当たり前に存在するお店。少しだけ背伸びして訪ねる、ちょっとだけ特別な美しい空間でした。(中略)
    好きだという思いがたぶん言霊を呼んでくれました。私の中でそのとき、この物語の卵が生まれたのだと思います。(後略)


    作者の村山さんとは私は年齢も近く、あとがきのこの部分は読んでいてとても共感を覚えました。
    私は書店も好きですが百貨店も大好きです。
    (ただし、私の住んでいる県は百貨店が一昨年倒産してしまい、日本唯一、県庁所在地に百貨店のない県になってしまいましたが)


    伝説の金目銀目の白い猫が本館のステンドグラスの中に住んでいて、願い事を叶えてくれるという百貨店。
    そこで働くコンシェルジェ、フロアマネージャー、エレベーターガール、靴屋の店長、コスメアドバイザー他の社員たちとお客様の物語。

    その中の誰かの言った言葉で、
    「わたしたちは、幸せを売る、魔法使い」
    というのが印象的で、泣けるお話もありますが、読むととってもハッピーになれる魔法の百貨店のお話です。


    読んでよかったです。
    作者の村山さんありがとうございました。

  • 金目銀目の白い子猫が『魔法を使う猫』。
    表紙の絵を見直してみると、確かにいました。

    町の小さなお店には猫がいたりするけど、普通は百貨店に猫はいない。

    願い事を叶えてくれる魔法の子猫。
    でも、本人の努力で何とかなることは願っちゃいけない。

    (願えば叶うというのなら、わたしは何を願うのかしら?)
    「だめだ。何も思いつかないや。だって、わたし、いま十分幸せに生きてるもの」
    「もし誰か、心からの願い事がある人がいたら、そのひとの願いが叶いますように」

    小さなころに見た魔法の子猫は、優しい幻覚だったのかも知れない。
    (それでもいい、それなら魔法は自分でかければいい。夢は自分で叶えればいいんだ。)

    品物は大切に選ばれ買われ、贈られることで、いつか誰かの思い出になるんだ。
    物の形をした記憶になる。
    それは見えない魔法のようなものかも知れない。

    魔法の意味を調べてみた。[人間の力ではなしえない不思議なことを行う術のこと。]

    たしかに、猫は人間ではないので魔法を使っていそうです。

    # 2018年本屋大賞の受賞作。読みたいと思ってから3年も経ってしまいました。
    # 文庫本では単行本から少し書き換えているのですね。

  • 桜の花びらが風に流れる季節から、この物語は始まります。
    やはり、先に読んだ「桜風堂ものがたり」を思い出しました。

    風早の街。平和西商店街の中心に核となるように建設され、今や50周年の節目を迎え、後継者問題や閉店が噂されている星野百貨店。
    百貨店の天井のステンドグラスや、正面玄関の上のからくり時計や、シースルーの手動式エレベーターはまるでおとぎの世界のように私たちを誘ってくれます。
    百貨店オリジナルのテディベアのお話は、とても素敵でした。
    エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー等々、百貨店で働く人たちのそれぞれに物語があって、その描写がとても細やかで、気持ちが真っ直ぐに伝わってきて胸が熱くなりました。
    金目銀目の魔法の白い子猫が住むという、子どもの頃の夢のような場所は、時代の流れに逆らえず、静かに閉店していくのでしょうか。

    お伽話みたいな話だけれど、奇跡は起きるかもしれない。
    人との温かい縁で繋がれている星野百貨店が、いつまでもそこにあり続けてほしいです。

  • 戦後、焼け野になったところに生き残った子供たちで建て直された平和西商店街、星野百貨店が舞台の優しい物語。
    本の表紙のようにキラキラとずっと輝いていました。
    そして作品の終わりの辺りに星野百貨店のイニシャル『H』の頭文字について、
    真心でお客様と相対し、この場所で明日への希望と、ささやかな癒しの時間を、あたたかな家庭のように提供する店であろうとする想いの象徴である
    とあった。
    この作品がまさにこんな感じがしました。
    優しくて優しくて、読み終わったときは手の中で本がキラキラと輝いているようでした。
    素敵な作品でした。

    • Manideさん
      しまにしひろこさん

      「読み終わったとは手の中で本がキラキラと輝いているようでした」
      ↑これ、とてもいいですね。
      私も、もっと、本と向き合っ...
      しまにしひろこさん

      「読み終わったとは手の中で本がキラキラと輝いているようでした」
      ↑これ、とてもいいですね。
      私も、もっと、本と向き合っていけると、楽しそうだな、と感じるとともに、もっと世界観が広がりそうだな、と感じました✨
      2022/07/06
  • 百貨店の歴史と今が、ファンタジーを交えながら描かれている。読んでいて夢の世界にいるような気持ちになり、百貨店の気づかない魅力を感じられる。店員さんの人生と百貨店の繋がりが素敵で、ほっこりした。後半は少し間延び感があり、斜め読みしてしまったので、星3つ。たくさん本に触れていると、ついつい刺激を求めたくなる…。

  • 百貨店を舞台にした、不思議で暖かい物語。

    始めは読みにくいというか、読みながらそのままポロポロこぼれ落ちていくように感じた。
    沢山のブクログさんが人のあたたかみについて感想を書いていたので、あれ?そんな感じしないけど...楽しいと思えず読むのやめようかなと思った。

    第二章に入ってから俄然面白くなり、読むスピードも上がり半日で読了。
    第一章との違いは、語り手が若いということくらいかな。
    舞台も登場人物も同じなのに、この違いは不思議。

    百貨店で働く人も、お客もみんな善人で、
    どの話もじーんとしたり、じわーっと暖かい風が自分の周りを吹いたかのようだった。

    子供ができてから星野百貨店のような、接客も品質も高度なお店に足を踏み入れたことがない。量販店やモールは普段着で気軽に行けるところだけど、たまにはおしゃれしてヒール履いて百貨店に行くのもいいかも。
    どんどん姿を消してしまうのが寂しくもある。

  • 村山早紀さんの小説の舞台になっている風早の街、海沿いで、ゆったりと時が流れていく感じが、とてもいいです。今回は、その街のシンボル的存在、星野百貨店のお話。

    令和の時代になり、人それぞれ買い物に対する選択肢が広がって、なかなか地方のデパートは、生き残ることが難しくなりました。星野百貨店もそんなデパートの一つ。店員さんもこの街の人々も、このデパートを愛していて、後の世まで残したいと思っているのに、現実は厳しい。この本は、人生の節目や、自分の生き方の選択をしなければならなかった時に、星野百貨店に背中を押してもらった、あるいは、魔法をかけてもらった人達の、愛にあふれた、思いの詰まった物語です。昔ながらの経営理念を守り、人員整理もせずに続けていくのは、正直、難しいと思うけれど、街の人々に寄り添った、あたたかい思いのあふれるデパートは続いて欲しいなと思いました。

  • 小さい頃に大好きだった祖父が連れて行ってくれたデパートを思い出しました。玩具売り場、地下にはお菓子が回っている機械があってそれをすくったり。今百貨店は大変な時代だけどお客様の事を大事に思う百貨店はぜひこれからも夢と希望を与えてくれる場所であってほしい。

  • 大切に読みたい、そう思って少しずつ読んでいた本がようやく読み終わりました。

    好きな作家さん、『桜風堂ものがたり』の姉妹作ということで村山さんの作品を読むならこれ!と決めてました。
    風早の街にある百貨店従業員が語り部となり、紡いでいく、百貨店とそこに集う人々の物語。
    量販店とは違う百貨店ならではの温かさ、思い遣り、などの息づかいが感じられます。
    日常を生きていると忘れてしまう、見落としてしまう、でも人との繋がりでは大切で、、、魔法のような出来事が起こるかどうかも人の行動次第なのかなと。
    『桜風堂ものがたり』に脇役で出てくる人が、今回は主役で登場します。
    どの人もすごく素敵な人たちばかり。
    素敵な人たちが働く素敵な百貨店だからこそ、『四月の魚』の奇跡が起こせたのかなと、思いました。

  • 『桜風堂ものがたり』を先に読んだ自分としては、あぁ、星野百貨店に帰ってきたー!という感じ。

    百貨店に入るお店の店員さんや、スタッフさんにスポットを当てながら、場所と記憶のつながりを丁寧にあたたかく描いていくお話。

    そして、その感じを求めていたはずなのだけど。
    バランスが良くて。きれいにまとまっていて。
    そのことが、ある意味もったいないようにも思う。
    あくまで、個人の感想です……。

    私が知っている百貨店は、こんなにアットホームではないけれど。
    でも、待ち合わせをしたり、特徴的な作りになっていたり、やっぱり街の象徴的な場所なのだと思う。
    そしてお店が、文化を生み出していくというか、育てていくような、そんな役割まで担っている。

    安さや種類に特化した、色んな形態のショッピングセンターが出来る中で、品格を保ちながら廃れずに生き残っていくことは難しいんだろう。

    だからこそ、もう一度訪れたくなる物語を生む場所としての星野百貨店の在り方は、心に響くものがある。

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著者プロフィール

1963年長崎県生まれ。『ちいさいえりちゃん』で毎日童話新人賞最優秀賞、第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。著書に『シェーラ姫の冒険』(童心社)、『コンビニたそがれ堂』『百貨の魔法』(以上、ポプラ社)、『アカネヒメ物語』『花咲家の人々』『竜宮ホテル』(以上、徳間書店)、『桜風堂ものがたり』『星をつなぐ手』『かなりや荘浪漫』(以上、PHP研究所)、げみ氏との共著に『春の旅人』『トロイメライ』(以上、立東舎)、エッセイ『心にいつも猫をかかえて』(エクスナレッジ)などがある。

「2022年 『魔女たちは眠りを守る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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