百貨の魔法 (ポプラ文庫 む 3-1)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 811
感想 : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591170052

作品紹介・あらすじ

時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で街の人びとに愛されてきたデパートを守ろうと、今日も売り場に立ちつづける――。百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される猫が織りなす、魔法のような物語! 2018年本屋大賞ノミネート作品。

感想・レビュー・書評

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  • 明るく幸せな気持ちにしてくれる作品です。
    百貨店には確かに何か魔法使いが住んでいそうで、タイトルも表紙の絵もとても素敵です。

    このお話アニメ映画にしたらとっても上品で、お洒落で可愛くてエスプリの効いた作品になりそうだと思いました。

    同じ作者の『桜風堂ものがたり』に出てくる銀河堂書店が6Fに入っている風早の街の星野百貨店に働く人とお客様のお話しです。


    作者あとがきより引用
    (前略)
    ある意味、百貨店のいちばん華やかな時代が記憶にある世代かも知れません。
    日曜日には家族でそこにお買い物に行って、屋上の遊園地で遊び、レストランでお子様ランチを食べ、地下のお菓子売り場でキャンデイを買ってもらって帰った、そんな子どものひとりでした。
    おとなになってからは、コスメや香水に凝って、季節ごとにお気に入りのブランドのカウンターに通ったりしました。美味しいものが食べたいときに、いわゆるデパ地下で、ちょっと高級なお惣菜を買ったりもしました。老舗のお菓子屋さんのお菓子をお世話になった方に贈る手続きをすることもありました。それから物産展。百貨店のちらしでチェックして、遠い街から来た珍しい品々をうきうきと買いにいったものです。
    クリスマスの時期には、友人や自分のためにアクセサリーを選んだり。綺麗な箱に入れて、リボンをかけて丁寧に包装してもらえるのが嬉しくて。
    そこは日々の暮らしの中に、当たり前に存在するお店。少しだけ背伸びして訪ねる、ちょっとだけ特別な美しい空間でした。(中略)
    好きだという思いがたぶん言霊を呼んでくれました。私の中でそのとき、この物語の卵が生まれたのだと思います。(後略)


    作者の村山さんとは私は年齢も近く、あとがきのこの部分は読んでいてとても共感を覚えました。
    私は書店も好きですが百貨店も大好きです。
    (ただし、私の住んでいる県は百貨店が一昨年倒産してしまい、日本唯一、県庁所在地に百貨店のない県になってしまいましたが)


    伝説の金目銀目の白い猫が本館のステンドグラスの中に住んでいて、願い事を叶えてくれるという百貨店。
    そこで働くコンシェルジェ、フロアマネージャー、エレベーターガール、靴屋の店長、コスメアドバイザー他の社員たちとお客様の物語。

    その中の誰かの言った言葉で、
    「わたしたちは、幸せを売る、魔法使い」
    というのが印象的で、泣けるお話もありますが、読むととってもハッピーになれる魔法の百貨店のお話です。


    読んでよかったです。
    作者の村山さんありがとうございました。

  • 桜の花びらが風に流れる季節から、この物語は始まります。
    やはり、先に読んだ「桜風堂ものがたり」を思い出しました。

    風早の街。平和西商店街の中心に核となるように建設され、今や50周年の節目を迎え、後継者問題や閉店が噂されている星野百貨店。
    百貨店の天井のステンドグラスや、正面玄関の上のからくり時計や、シースルーの手動式エレベーターはまるでおとぎの世界のように私たちを誘ってくれます。
    百貨店オリジナルのテディベアのお話は、とても素敵でした。
    エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー等々、百貨店で働く人たちのそれぞれに物語があって、その描写がとても細やかで、気持ちが真っ直ぐに伝わってきて胸が熱くなりました。
    金目銀目の魔法の白い子猫が住むという、子どもの頃の夢のような場所は、時代の流れに逆らえず、静かに閉店していくのでしょうか。

    お伽話みたいな話だけれど、奇跡は起きるかもしれない。
    人との温かい縁で繋がれている星野百貨店が、いつまでもそこにあり続けてほしいです。

  • 金目銀目の白い子猫が『魔法を使う猫』。
    表紙の絵を見直してみると、確かにいました。

    町の小さなお店には猫がいたりするけど、普通は百貨店に猫はいない。

    願い事を叶えてくれる魔法の子猫。
    でも、本人の努力で何とかなることは願っちゃいけない。

    (願えば叶うというのなら、わたしは何を願うのかしら?)
    「だめだ。何も思いつかないや。だって、わたし、いま十分幸せに生きてるもの」
    「もし誰か、心からの願い事がある人がいたら、そのひとの願いが叶いますように」

    小さなころに見た魔法の子猫は、優しい幻覚だったのかも知れない。
    (それでもいい、それなら魔法は自分でかければいい。夢は自分で叶えればいいんだ。)

    品物は大切に選ばれ買われ、贈られることで、いつか誰かの思い出になるんだ。
    物の形をした記憶になる。
    それは見えない魔法のようなものかも知れない。

    魔法の意味を調べてみた。[人間の力ではなしえない不思議なことを行う術のこと。]

    たしかに、猫は人間ではないので魔法を使っていそうです。

    # 2018年本屋大賞の受賞作。読みたいと思ってから3年も経ってしまいました。
    # 文庫本では単行本から少し書き換えているのですね。

  • 戦後、焼け野になったところに生き残った子供たちで建て直された平和西商店街、星野百貨店が舞台の優しい物語。
    本の表紙のようにキラキラとずっと輝いていました。
    そして作品の終わりの辺りに星野百貨店のイニシャル『H』の頭文字について、
    真心でお客様と相対し、この場所で明日への希望と、ささやかな癒しの時間を、あたたかな家庭のように提供する店であろうとする想いの象徴である
    とあった。
    この作品がまさにこんな感じがしました。
    優しくて優しくて、読み終わったときは手の中で本がキラキラと輝いているようでした。
    素敵な作品でした。

    • Manideさん
      しまにしひろこさん

      「読み終わったとは手の中で本がキラキラと輝いているようでした」
      ↑これ、とてもいいですね。
      私も、もっと、本と向き合っ...
      しまにしひろこさん

      「読み終わったとは手の中で本がキラキラと輝いているようでした」
      ↑これ、とてもいいですね。
      私も、もっと、本と向き合っていけると、楽しそうだな、と感じるとともに、もっと世界観が広がりそうだな、と感じました✨
      2022/07/06
  • 小さい頃に大好きだった祖父が連れて行ってくれたデパートを思い出しました。玩具売り場、地下にはお菓子が回っている機械があってそれをすくったり。今百貨店は大変な時代だけどお客様の事を大事に思う百貨店はぜひこれからも夢と希望を与えてくれる場所であってほしい。

  • 『桜風堂ものがたり』を先に読んだ自分としては、あぁ、星野百貨店に帰ってきたー!という感じ。

    百貨店に入るお店の店員さんや、スタッフさんにスポットを当てながら、場所と記憶のつながりを丁寧にあたたかく描いていくお話。

    そして、その感じを求めていたはずなのだけど。
    バランスが良くて。きれいにまとまっていて。
    そのことが、ある意味もったいないようにも思う。
    あくまで、個人の感想です……。

    私が知っている百貨店は、こんなにアットホームではないけれど。
    でも、待ち合わせをしたり、特徴的な作りになっていたり、やっぱり街の象徴的な場所なのだと思う。
    そしてお店が、文化を生み出していくというか、育てていくような、そんな役割まで担っている。

    安さや種類に特化した、色んな形態のショッピングセンターが出来る中で、品格を保ちながら廃れずに生き残っていくことは難しいんだろう。

    だからこそ、もう一度訪れたくなる物語を生む場所としての星野百貨店の在り方は、心に響くものがある。

  • 閉店も囁かれる風早の街のシンボル「星野百貨店」を舞台とした百貨店で働く人や、百貨店を訪れる人々の物語。
    「桜風堂ものがたり」で作者のファンになった者にとっては、久しぶりの再会と言った感じで、懐かしさも感じる作品。
    コンシェルジュの結子を中心に、エレベーターガール、宝飾品売り場のフロアマネージャーなど、視点を変えて、星野百貨店にまつわる思い出などが描かれる。
    子供の頃は当たり前にあった百貨店も、地方から姿を消して久しい。
    長引く不況の中、どこの百貨店も経営が厳しいのかもしれないが、様々な人の思い出や夢や希望の詰まったデパートがこれ以上なくならなければいいなぁ、と単純にそう思った。
    自分自身も最近足を運んでいないデパートに、行ってみようと思う。
    今回も心が優しくなれるお話をありがとうございます。
    銀河堂書店の続編も読みたいけど、以前「これで終わる」と書いていたので、この作品で名前だけでも出て来たのはちょっと嬉しい。

  • 接客業に携わるものとして、読んでおこう…と思って手にとった本。

    夢を実現させる場所として、キラキラした…けれど土台がある素晴らしい百貨店が描かれていたところはとても良かったし、読後感も良かった。何度か泣きそうになったし。

    たぶん、現実の百貨店もここまで美しく?ないにしても同じ感じはあり、それが実は斜陽の原因かなとも感じた。

    商売って、もっと泥臭いものだっていうことを日々感じているので。

    でも、金目銀目の白猫に会ってみたい。
    何を願おうか…

  • 星野百貨店を愛するひとたちの、さまざまな想いが浮いたり沈んだりしている建物の中を泳ぐ・・・、そんなイメージがうかんだ。
    キラキラした夢ばかりじゃなく、かなしさや、さみしさもある。それが、ちょっとした偶然やほかのひとの手助けによって、消化・昇華されていく感じ。

    魔法の子猫が、そのとき一瞬、走り抜ける――

    賑やかでかわいらしい装画の力もあって、イメージがゆたかに湧いてくる物語。偶然なのか、魔法なのか、どちらでもすてきだな、と思いながら読む。
    魔法や夢見ることに憧れつつも、思い切れずにいるいさなの姿が印象的。
    「『夢を信じる力』を与えて欲しいと願いたいな」

    自分にとっての百貨店をみんな思い返しながら読むんじゃないかな。それから、働く場所への思い入れについても考えてしまう。もちろんこんな、愛さずにはいられないお店なら最高だけど、ハコが美しくなくても、魔法の伝説がなくても・・・共に働く人と気持ちを通わせ、同じ目標を持っているなら、この星野百貨店の人々のように職場を愛して誇りに思うことができるだろうな。夢ものがたりかもしれなくても、そんな理想は心の中に持っていたいな、と思った。

  • 銀河堂書店が入っているデパート・星野百貨店を舞台にしたお話。

    もう百貨店で物を買うことなどほとんどないが、幼い頃に百貨店で何かを買ってもらったり大食堂でお子様ランチを食べたり屋上の遊園地で遊んだりした記憶が刷り込まれていて、百貨店には“特別な場所”というイメージがある。
    作者は私より年下だが、その生年からすると同じような経験や感情を持たれているものと推測するが、どうかな?

    長くても100頁弱のお話が6つ。
    最初の2つのお話には、色々背景の説明や伏線を張るところもあるのだろうが、話が輻輳していささか冗長な感じを受けたのだが、3話目の別館6階フロアマネージャー・佐藤健吾の母に対する思い出話になってから、百貨店への愛と人に対する温かい思いが次から次へと溢れ出す話になった。
    百貨店が街の中心にあって何でも揃っていてそこで物を買う安心感とかそこの包装紙で包まれた物を持っている小さな優越感などがあった、そういう古き百貨店にとって良き時代のイメージが横溢し、『規模は小さく設備は古く、けれどみんなの懐かしい思い出の中で輝いているような百貨店』とか『品物を通して、お客様の思い出のひとかけらになり、静かに存在し続けていく場所』という表現に思いを一にする。
    佐藤親子の思い出は多くの親子の思い出と重なると思う一方で、現下の百貨店に対する厳しい現状も語られるのが切ないなぁ。
    4話目の、別館2階の資料室に勤める早乙女一花とTorinekoさんのお話は、ちょっと出来過ぎのお話だけど「醜いアヒルの子」や「シンデレラ」のような昔の童話を読んでいるよう。
    最後の話の、鷹城さん夫婦とそれを長年見守ってき続けた従業員の話には、いや、もう、ウルウル来て朝の通勤電車の中で困った。これもまた出来過ぎな話なのだけど、店で働く人々と客との間の理想的な姿に触れて、温かい気持ちになれた。

    コロナ禍の中で商売をする人たちはとりわけ大変な思いをされていると思うが、それでも街の人々に愛されてきたお店を守るために売り場に立ち続ける人たちに、密やかに感謝の気持ちを送ります。

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著者プロフィール

1963年長崎県生まれ。『ちいさいえりちゃん』で毎日童話新人賞最優秀賞、第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。『シェーラひめのぼうけん』、『砂漠の歌姫』、『はるかな空の東』、『コンビニたそがれ堂』、『ルリユール』、『カフェかもめ亭』、『海馬亭通信』、『花咲家の人々』、『竜宮ホテル』、『かなりや荘浪漫』、『星をつなぐ手』、『魔女たちは眠りを守る』、『心にいつも猫をかかえて』、本屋大賞にノミネートされ話題となった『桜風堂ものがたり』、『百貨の魔法』など、著書多数。

「2022年 『100年後も読み継がれる 児童文学の書き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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