蛍と月の真ん中で

著者 :
  • ポプラ社
4.13
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本棚登録 : 151
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591171707

作品紹介・あらすじ

息苦しい日常から逃げ出した
僕が出会ったのは
亡き父の愛した景色と、君だった。


『流星コーリング』で広島本大賞を受賞した著者による、
自分の居場所を求める若者たちの葛藤と足掻き、その先にある確かな一歩を描いた、
瑞々しい傑作青春小説。



あらすじ

何者にもなれていない自分を、恥ずかしがらなくていい。


小さな地方都市で写真店を営んでいた父の影響で、カメラマンを目指すようになった匠海。父の死後、母との関係性が悪くなった匠海は、逃げるように東京の写真専門学校に入学する。しかし、待っていたのは、学費と生活費を稼ぐだけで精一杯の毎日。これを乗り越えれば、きっと夢に近づける――。そう信じ込み、なんとか自分を奮い立たせていた匠海だが、ある出来事をきっかけに、大学を1年休学することを決める。
実家にも帰れず、衝動的に向かった先は長野県・辰野市――かつて父が蛍の写真を撮影した場所だった。なんの計画もなく訪れた匠海を出迎えてくれたのは、父が愛した美しい景色。そして、それぞれの事情で辰野に移住してきた人、訳あって辰野を離れらない人との出会いが、彼の心を変えていく――。

感想・レビュー・書評

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  • 【読んだきっかけ】
    河邉徹さんの小説5作目

    【心に残った要素】
    タイトル『蛍と月の真ん中で』と、カメラマンを目指す主人公·匠海の撮る写真。
    自然の刹那と一瞬の人の心を捉える。
    瞬間という儚さに温度を与えてゆく。じんわりする。温かい後味がたまらない。

    実在する地名を用いたり、辰野の人たちの細やかな描写があったりする今作は、これまでの作品と同じく人生の苦楽に揺らぐ人の心を描きながら、これまでになかった要素・視覚的な色彩がはっきりと描かれていてフィクション小説なのにドキュメンタリー映画を見ているかのようなリアリティがある。

    やりたいことよりも、やっておかしくないもの、たしかに。そうやって取捨選択している自分がいる気がした。

    大学生が東京から突然地方に移住?そんな作り話みたいな、と思うかもしれないけれど移りゆく季節の中に描かれる暮らしのグラデーションには違和感がない。
    特に印象的だった言葉は「灯」。

    【ここが好き!】
    夏の色、夏の光。冬の温度、冬の光。
    写真家としても活動する小説家だからこそ、ファインダーから見える世界、カメラで切り取った世界を文字に起こしたときの言葉に美しさがあると思う。

    明里ちゃんの宿いってみたいな~

    今作は音の描写が多くはなかったけれど〇〇のような声ってところが私好みでよかった!


    ──著者紹介──
    河邊徹(かわべ・とおる)
    1988年兵庫県生まれ。3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして、2009年メジャーデビュー。バンドでは作詞を担当し、2018年に小説家デビュー。『流星コーリング』で第十回広島本大賞を受賞。その他の著書は『夢工場ラムレス』『アルヒのシンギュラリティ』『僕らは風に吹かれて』。

  • 父の影響により、写真家の道を志した匠海。写真専門の大学に進むのだが、友人の影響や自身の環境に飲み込まれ、毎日が辛くなっていった。そして1年間休学することになった。
    母とはあまり仲良くなく、実家にも帰れないので、父がかつて撮影した印象的な写真の舞台である長野県の辰野へ向かった。お金も少ししかなく、特に何も考えていなかったが、そこで出会った女性に導かれ、辰野で住むようになった。
    辰野で暮らす人々との出会いを通じて、匠海の心は段々と変化していく。


    作家の河邉さんは音楽バンド「WEAVER」のドラマーとしても活躍されているだけでなく、作詞家としての顔もあります。

    その影響なのか、河邉さんの書く表現が、短い文なのに奥行き感があって、歌詞を読んでいる感覚がありました。
    一つの文で多くの文を語っているので、ちょっとした充実感がありました。全体の雰囲気は、青春ならではの瑞々しさがあって、綺麗でした。

    物語の舞台は、長野県の辰野でしたが、そこでの自然や出会った人との温かみが伝わってきて、自分も行ってみたいなと思わせてくれました。

    何かを目指そうとは思うものの、理想と現実に阻まれます。誰しもが通る道ですが、匠海の心理描写が丁寧に描かれていて、共感する部分もありました。

    辰野との出会いによって、心の変化が垣間見られる匠海。突然行ったところで急に移住⁉︎という展開は、小説ならではでしたが、人との出会いで運命が変わるかもしれません。
    ネットとは違う「生」の体験があるからこそ、感じるものも大きく変わります。

    匠海の体験は、この先の色濃い人生にさせてくれるものばかりで、羨ましくも感じました。
    自分も若かりし頃に戻って、色んな体験をしてみたかったなと思いました。

    過去には戻れませんが、「これから」として、「写真」のために頑張る主人公の姿に何か頑張ってみようかなと思いました。

    全てがハッピーに描かれていましたが、個人的に匠海の大学の友人は、ちょっと不幸要素が欲しかったなと感じてしまいました。何となくイラつかせてくれる部分もあって、最後は出会った団体が怪しげなところだった!といったオチがあったら、何となくスッキリがより際立って面白かったのですが・・・。
    そんな黒い気持ちをクリアにするために、どこか旅してみようと思いたくなりました。

  • 読みながら、情景が思い描かれる綺麗な小説だった。

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著者プロフィール

1988年6月28日、兵庫県生まれ。ピアノ、ドラム、ベースの3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして2009年10月にメジャーデビュー。バンドでは作詞を担当。2018年5月に小説家デビュー作となる『夢工場ラムレス』を刊行。2作目の『流星コーリング』が、第10回広島本大賞(小説部門)を受賞。2020年8月に3作目『アルヒのシンギュラリティ』を刊行。

「2021年 『僕らは風に吹かれて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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