あずかりやさん 満天の星

著者 :
  • ポプラ社
4.11
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本棚登録 : 579
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591172407

作品紹介・あらすじ

一日百円で何でも預かります。東京の下町でひっそりと営業する「あずかりや」。ママは、あんなに可愛がっていた愛犬ルイを「ある事情」からあずかりやへ預けることに(「ルイの涙」)。累計25万部突破、ほっこり切ない人気シリーズ第5弾。

感想・レビュー・書評

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  • 『点字はまるで五線譜の音符のように美しく浮き上がっている。音楽を奏でそうだ。
    あるいは満天の星のようにも見える。光り輝いて人の心を打つ星たち。
    ほんとうに綺麗だ』

    読み終えて気付いたが、表紙に点字のようなボコボコした点がある。調べたらやはり点字でタイトルが印字されているらしい。凝っている。

    大山さんの作品は猫弁シリーズとこのあずかりやさんシリーズを追いかけているが、両方の主人公とも辛い境遇にありながら何故これほど人に優しく寄り添えるのか毎度感心する。いや、逆なのか。辛い境遇だからこそお人好し過ぎるほど人を信じて人に優しく出来るのか。

    盲目の青年・桐島透が営む『あずかりや』ではどんなものでも一日百円で預けることが出来る。
    だが今回最初にやって来たのは客ではなく強盗。それも荒んだ人生を送ってきた荒んだ男だ。だが桐島くん(そう呼ばれているので私もそう書く)は怯むどころか丁寧で落ち着いた佇まいを崩さない。逆に男にハーブティを振る舞い、男が桐島くんに突き付けたナイフを研いであげている。

    他にも二度も流産し、三度目の妊娠でナーバスになったために飼い犬につらく当たる女性や都会に振り回されて人を傷付け傷付いた女性など、追い詰められた客がやって来る。
    彼らが預けるのは物ではあるのだが、同時にそれだけではなかった。彼らの心を追い詰めたネガティブなモノ、そのものを預けて行った。おかげで彼らは新たな一歩を進めるのだが、一方の桐島くんは様々なネガティブなモノを抱えてしまって大丈夫なのか心配になるのだが、彼の空気は常に澄んで凪いでいて、ネガティブなモノも浄化されていくようだ。
    毎日お店を丁寧に掃除しているようだが、その時に空気までキレイになっていくのだろう。

    今回も様々なモノ目線で語られる。ナイフ、焼きそばパン、犬、そして桐島くんのお祖父さんの霊。それぞれの視点が面白い。だが犬のルイが健気で痛々しくて、大山さんだから酷いことにはならないだろうと思っていても途中ハラハラした。そしてお祖父さんの厳しくも優しい目線も良い。

    今回は読者の『あずかりやさんに預けてみよう!キャンペーン』に応募されたモノがいくつか使われているらしい。次回作も応募を受け付けるらしい。一体どんなモノが取り上げられるだろうか。

    ※シリーズ作品一覧
    (★はレビュー登録あり)
    ①「あずかりやさん」
    ②「あずかりやさん 桐島くんの青春」★
    ③「あずかりやさん 彼女の青い鳥」★
    ④「あずかりやさん まぼろしチャーハン」★
    ⑤ 本作 ★

  • 心温まるお仕事小説「あずかりやさん」のシリーズ五作目ですね。
    今回は四編、心に傷を持つ「あずかりやさん」の訪問者と主人の透との交わりがいつも通り優しく語られています。
    透の真っ直ぐで繕わず柔らかく慈愛に満ちた応対が訪問者の心を解きほぐす物語は、今回も胸を打つものでした。
    透のおじいちゃんも出てくるので、透の家族の話も語られています。
    読者に応募して「あずかりやさん」に預けたいものを選考して大山さんが作品に盛り込まれたとの事でした。あとがきで、次回もキャンペーン募集の品物を登場させたいとの事。「あずかりやさん」の物語はまだまだ続きそうですね。

  • 1日100円で何でも預かるあずかりやを舞台にした、連作短編集。

    シリーズ第5作。

    「金魚」がよかった。
    煮えたぎり、ささくれ立っていた男の心が、少しずつ変わっていく。
    あずかりやの店主らしさが光る。

    「ルイの涙」は、愛犬の健気さにぐっとくる。

    「シンデレラ」では、祖父の霊による、菓子処桐島や透の母親の話など、透の背景が深まる話も。

    変わらずどの話もハートウォーミング。

  • 大好きなシリーズの最新作。
    この本に出会えて良かったなと改めて思う。
    今回は泣けてしまうほど悲しくて結末が優しく終わって更に泣けてしまった。
    許せないような過去をもつ人達を優しく包んであげる店主。何故そんな事をしてしまったのかそんな思いも話が出来る相手になってくれる店主。店主にみな色々な品を預けるけれどもみなどうにも出来ない過去も預けてまた新しい人生をそれぞれが送っていく。
    物たちから見た人間の世界観も良い。
    とても素敵な本。

  • 【収録作品】プロローグ/金魚/太郎パン/ルイの涙/シンデレラ

    1日100円で何でもあずかる「あずかりや」。
    語り手は、ナイフ、焼きそばパン、犬、そして店主の祖父。
    静かな時間が流れていて読み心地がいい。

  • 「あずかりやさん」シリーズ第5作。
    盲目の店主・桐島が営むあずかりやは、1日100円でなんでもあずかってくれるというお店。
    料金は前払いで、料金分の日数を越えても受け取りに来なかった場合、そのものはあずかりやの持ち物となる。
    こう聞くと、体の良いゴミ捨て場として悪用されそうなにおいがプンプンするのだが、そうなりかけたものも確かにあるけれど紹介されるエピソードはそれをギリギリすり抜けた、人情物語ばかりだ。
    …いや、すこしだけ、ふんわりと香る「花」が、せつなそうな縁を感じさせた。
    (「プロローグ」と「太郎パン」と「シンデレラ」のあたりです)

    収録作品の紹介
    ・プロローグ→花の香りがする手紙
    ・金魚→人生の不遇に嫌気がさした男が、強盗目的にあずかりやに忍び込む話。男は「金魚」を憎んでいて、そのせいで自分の人生がうまくいかなったと思いこんでいる。しかし全盲の店主には、「金魚」が見えない…

    ・太郎パン→主人公はなんとパン。それも他の「兄弟」とはちょっと違うふうに生まれてしまった「不遇な」パン。(どう違うのかは、本編にて!)そのパンが、ひょんなことからあずかりやに預けられ…

    ・ルイの涙→主人公はあずかりやのお客となる女性が飼っている犬。ルイにとって飼い主の女性は優しいママであったが、ママに起こったある出来事を境に、ママはルイのことをみなくなっていく。それでもルイは、ひたすらママを慕っていくのだが…
    こう書くと、ママはひどいやつなのだが、ママの事情も読むと、う〜んとなってしまう。いやでもだからといって、ママがルイにしたことはひどいんだけども…

    ・シンデレラ→ガラスの靴を預けた女性のお話。意地を張らないことの大切さをしみじみと感じた。

    ・あとがき→著者登場。今回のお話では、キャンペーンで募集した「あずけたいもの」が複数登場していたとのこと。そんなキャンペーンがあったんですね…

    字も大きくて文章も読みやすいので、児童書を卒業したけれど何を読んだらいいかわからない子、読書慣れしていないけど本を読んでみたい読書入門者には、とてもオススメのシリーズである。

  • あずかりやさんシリーズでは、猫だの自転車だのオルゴールだの、いろんなものが主人公になるけど、ついに今回は『焼きそばパン』(笑)!
    大山さんは、ほんとに旨い。結構重い内容でも、軽すぎず重すぎず、ちょうど良い感じですう~っと読ませる。
    読み終わった後になってから、ふと思い返してしまうような不思議な文章です。

  • 何でも預かる預かり屋さん。人々が預けるものはとても複雑で見るのも辛い物が多い。
    けれども預かったものは当時一生懸命生きた勲章。次のステージに行くときに思い出は壊さなくていい、一緒に持って進めばいい。
    あずかりやさんの優しさに心いっぱいです。

  • あずかりやさん第5弾。
    いつもよりも一編少ない気がする。

    プロローグのお手紙の送り手「花」さんが、今までに出てきた、すでに出会った誰かなのか気になってしまって、今までの読書メモをざっと読み返した。
    ・・・分かりませんでした。
    このシリーズ、時代の流れどおりではなく、描かれる店主の年齢はいろいろです。
    ほのかな恋心が気になって、店主にも幸せになってほしい、と思ったり感想に書いたりすることもあるのだけれど、店主は今のままで、しん・・・と静謐に、幸福であるのだ、他人が勝手に、その人が幸か不幸か推し量るのはおこがましいのだと気づいた。
    おじいちゃんも多分、そうですよね?

    レ・ミゼラブルのようだと思ったお話があった。
    あれを受け取っていたら、男の人生は違ったものになっていただろうか?
    この男のような人生を送っている若者は少なからずいると思う。胸が痛む。

    健気なマルチーズのお話がとても良かったです。
    今回珍しく消え物の語りもあり。
    あら?誰かに食べられることによって消えていく人生は、金魚の若者と通じるのかしら?

    『金魚』『太郎パン』『ルイの涙』『シンデレラ』

  • 今回は、どんな"モノ"が主人公なんだろう?って楽しみにしていたら、モノと言うよりは食べ物、焼きそばパンだなんて!想像以上でした!しかも、この焼きそばパンを語り手にした章の最後の一文、「最期にぼくが見たのはふたりの笑顔だった」って、感動すらしてしまいました。食べ物の気持ちになって描かれているところに、あらためて尊敬します。うまいは無理かもしれないが、せめて残さずに食べてもらえたらって、ほんとにその通りだと、あらためて食べ物へのありがたさが見にしみるお話でした。是非とも、好き嫌いの多い大人に読んでもらいたいなとも感じました(笑)。
    その他に形のないモノ、怒りや不安を預けるところが、私もどこかに預けようという気持ちになって、読んでるこちらがスッと心が軽くなりました。
    今回も凄くいいお話でした!

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著者プロフィール

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。著書に『赤い靴』、『通夜女』などがあり、「猫弁」「あずかりやさん」など発行部数が数十万部を超える人気シリーズを持つ。

「2022年 『犬小屋アットホーム!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大山淳子の作品

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