二木先生 (ポプラ文庫 な 17-1)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 2060
感想 : 115
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591174869

作品紹介・あらすじ

どうしたら普通に見えるんだろう。どうしたら普通に話せるんだろう――。いつもまわりから「変」と言われ続けてきた高校生の田井中は、自分を異星人のように感じていた。友だちが欲しいなんて贅沢なことは言わない。クラスのなかで普通に息さえできたなら。そのためならば、とむかしから好きでもない流行りの歌を覚え、「子供らしくない」と言われれば見よう見まねで「子供らしく」振舞ってもみた。でも、ダメだった。何をやっても浮き上がり、笑われてしまう。そんな田井中にとって唯一の希望は、担任の美術教師・二木の存在だった。生徒から好かれる人気教師の二木だったが、田井中はこの教師の重大な秘密を知っていたのだ。生きづらさに苦しむ田井中は二木に近づき、崖っぷちの「取引」を持ち掛ける――。社会から白眼視される「性質」をもった人間は、どう生きればよいのか。その倫理とは何か。現代の抜き差しならぬテーマと向き合いつつ予想外の結末へと突き抜けていく、驚愕のエンタテインメント。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • いやー、すっごく面白かった!!!
    これがデビュー作ですか?!と驚いた。
    ………………………………………………

    幼い頃から「変わってる」と、言われつづけ、誰からも馬鹿にされつづけてきた男子高校生・田井中。
    彼は自分をまるで宇宙人のようだと感じていた。
    だが、ある日のこと、学校の人気美術教師・二木の絶対知られたくないであろう秘密を偶然知ってしまう。
    そんな中、田井中も二木に弱みを握られてしまった。
    田井中は、自分を守るため、二木にギリギリの取引を持ちかける。
    ―――かくして、普通じゃないもの同士の、手に汗握る心理戦が始まった!

    …………………………………………………

    終始緊迫した展開でページをめくる手が止まらない。
    大抵の人が覚えがある、この年代特有のスカイツリー並の自意識の高さにヒリヒリしながら読んだ。
    田井中の劣等感の裏返しである自分は特別かもしれない、というかすかな、それでいて切実な期待。
    二木先生への複雑な思いも相まって、すべてが、青い。
    でも、自分も、いまだにそこから這い出していないのかもしれない、と改めて気づかされた。

    ラストの一文も小粋で気に入った。
    覚えておこう、夏木志朋(なつき・しほ)さん。

    注意としては、少し暴力シーンがあります。
    でも、中高生くらいから読んでほしいな。
    もっとヒリヒリするかも。

  • ある日、担任である二木の”秘密”を知った田井中は二木に強請りをかけるが・・・
    どんな展開になっていくのだろうかと読んでいたら、中盤から思ってもいなかった方向へ進みラストは・・・
    「普通」とはなんだろう「~らしく」とはなんだろう…
    一見して“普通っぽい人”は果たして本当に普通なのか、普通の皮を被って何かを必死に隠して生きているのではないか。

    上手く生きていく=本当の自分(一部もしくは全部)を隠して生きる

    田井中は上手く(普通の人間として)生きたいけど、その反面自分は特別だと思いたい狭間で苦しみ、周りの人間と壁を作ってしまう。
    きっと昔の自分も田井中と同じような苦しみをどこかで感じていた気がします。
    いつから上手く生きるようになったのかを考えさせられる一冊でした。
    そしてラストのページ、終わり方に鳥肌が立ちました。

    • ほん3さん
      もりひろさん、こんにちは。

      この本読まれたんですね。
      図書館に予約をしているのですが、順番待ちでわたしは50番目。
      読めるのはまだまだ先に...
      もりひろさん、こんにちは。

      この本読まれたんですね。
      図書館に予約をしているのですが、順番待ちでわたしは50番目。
      読めるのはまだまだ先になりそうです。
      なので、うらやましいです。
      早くラストのページを読んで、鳥肌を立てたい!(´∀`)
      2022/10/17
    • もりひろさん
      ほん3さん、こんにちは!!

      50番待ち!!人気作品なんですね!!(^^)
      ラストのページは思わず「おおぉ・・・・!!!」声に出してま...
      ほん3さん、こんにちは!!

      50番待ち!!人気作品なんですね!!(^^)
      ラストのページは思わず「おおぉ・・・・!!!」声に出してました!笑
      ほん3さん、の感想も楽しみにしております(´▽`)
      2022/10/17
  • すごい展開!

    ここまで先を読めない展開は無かったかに
    思う。
    途中これは何を読んでいるんだ?と思ってしまうくらい。それでも読み続けたいと思えた。

    人と違うとはなんなのか?
    人と一緒が偉いのか?
    相手を想える人が幸せなのか?

    色々と考えさせられました。

    著者の作品をもっと読んでみたいです。

  • 「ちょっと変」な主人公・田井中は、みんなから馬鹿にされている。ある日、田井中は担任の二木が自分以上に「普通の人」から軽蔑される秘密をかかえていることを知る。【異常】は【個性】なのか。社会の除け者になってしまう人間はどう生きればいいのか。

    「普通でいたい」、でも、「自分はまわりとは違う‶特別な何者”かでありたい」みたいな、自意識。そんな葛藤がリアルに、くりかえし描かれている。

    田井中の子どものころのエピソードは読んでいてきつかった。「ふざけあい」の加減がわからなかったり、夢中になりすぎて体に異常をきたしてしまったり。
    そんな自分を殺そうとして、無理やり流行りの音楽を聴いて自分の好みを封印する姿もつらい。「普通」のふりをしようとしていた幼いころの田井中。

    二木先生もやっぱり「普通の人」の皮をかぶって生きているわけだけど。
    しかし、二木先生は良くない気がする・・・「秘密」をかかえていることに関してではなく、指導の仕方?が。田井中をけしかけるためとはいえ、みんなの前で許可なしに田井中が小説を賞に出そうとしていることを言っちゃうのは流石にダメでしょ・・・(まぁ二木先生は田井中に散々なことをされているけれど)
    ラストも、先生それでいいの?となってしまった。。。

    それでも、面白かったから一気にほぼ1日で読んでしまった。


    「自分にもし、大多数の人とは違う部分があって、それでも生きて行かないといけないとしたら、どうする?カミングアウトという言葉があるけれど、多数派の人のふりをする選択だってあるだろう。いくら世間から許されないような性でも、当人にとっては大事な心の一部なんだ。殺す必要なんてないし、そもそも無理な話だ」

  • 少し現代的な価値観を表したような学園ものだったように感じました。変わっていること、人と違うことを肯定する作品であったと思いますが、現実ではやっぱり生きづらさがあるのだろうなあと思いました。

    本作の良かったポイントはキャラクターで、人と違う価値観を持つ高校生と少し変わった秘密を持つ教師がメインキャラクター。教師にはあるまじき秘密を抱えながらも、教師然として主人公を教え諭すのが個人的には良かったポイントです。

    しかし、最後の結末が色々賛否両論ある作品かなと思いました。

  • 予備知識なしで読み始めた。
    やたらメンヘラ的な主人公が、見た目そつなし、爽やかな担任を脅し始めた時は犯罪小説かなと思ったが全然違う展開に驚いた。

    むしろ美しい青春小説。
    とても美しいと思った。担任は性癖こそ世間的にはアウトだが、1人の人間としては完全に平均以上の出来であり、教職が天職なのではないか。
    主人公の成長の仕方、ただ単に集団生活の送り方だとか対人関係だとか、進路についてだとか、についても、それが不器用であればあるほど、先生の人生の授業が際立ち、そこには性癖だのなんだのは一切関係ないように思えた。
    ほんと、関係ないよね?
    ただただ、先生はいい先生だし、そうである前に人間が出来ている。だけど、自身の性癖から周りとは深く関わろうとはしていなかった。そんな先生とこれだけの対話ができて尚且つ自分も成長されてもらったのは、主人公、ほんと君、良かったねと。

    ひとつだけ気になったのは、表紙はあまり良くない気がします。文字は必要でしょうか?それがあることによって安っぽい印象になっているような。

  • ブク友さんらのレビューに触発され、すぐに図書館に予約。
    手にして意外性のある表紙に期待外れを疑ったが、読み終えた時は直球で胸に飛び込んできた本となった。しばらく結末の爽やかな興奮がおさまらず、夕方だというのに外へ飛び出し1時間ぐらい歩いて心を沈めたぐらい。夜になって時間をおいてもなかなか興奮は醒めやらなかった。
    著者・夏木さんは本作でポプラ小説新人賞を受賞している。主人公・高校生の田井中も小説新人賞に応募することで、強烈な個性を持つ自分と社会との折り合いをつけていくこととなるのだが、本作でデビュー作となる夏木さんと田井中君がだぶってしまうほどに、痛い心情が細やかに書き込まれていて熱く伝わってきた。
    どうしたら普通に見えるんだろう。どうしたら普通に話せるんだろう――。いつもまわりから「変」と言われ続けてきた高校生の田井中は、自分を異星人のように感じていた。そのためならば、と昔から好きでもない流行りの歌を覚え、「子供らしくない」と言われれば見よう見まねで「子供らしく」振舞ってもみた。でも、ダメだった。何をやっても浮き上がり、笑われてしまう。
    そんな時に担任の美術教師・二木先生の重大な秘密を知る。二木は生徒から好かれる人気教師だ。演じて融けこんでいる二木先生を観察して、田井中は変わっている自分を”普通の人”に見せる術を探ろうとする。教師としては白眼視される秘密を抱えている二木先生と、生徒である田井中とかわされる会話は面白くドキドキとさせられ、合点がいく処世術も勉強になる。どこまでがふたりの本当の心情なのかと思わせる奇妙な駆け引きが続く。
    綱渡りのような危うい展開の末に極上のカタルシスが待っていた。心洗われる本作には夏木さんの胸中が吐露されていたようで応援したい。

    • こっとんさん
      しずくさん、こんにちは。
      しずくさんのレビューを読んで、また読み終わった時の気持ちが蘇ってきました。
      私も読み終わった後、だいぶ引きずりまし...
      しずくさん、こんにちは。
      しずくさんのレビューを読んで、また読み終わった時の気持ちが蘇ってきました。
      私も読み終わった後、だいぶ引きずりましたよ。
      なかなか次の本にいけませんでした。
      こんな本に巡り会えると、やっぱり読書っていいよなぁと思いますよね!
      2022/11/28
    • しずくさん
      レビューを読んで下さってありがとうございました❗
      素敵な本は読者を幸せにしてくれる青い鳥のよう。出会った時のタイミングもあるのでしょうが、...
      レビューを読んで下さってありがとうございました❗
      素敵な本は読者を幸せにしてくれる青い鳥のよう。出会った時のタイミングもあるのでしょうが、良い本は良いのです。友人にもラインで教えましたよ。
      こっとんさん、5552さんに心より感謝します。
      2022/11/28
  • 丸善でオススメされてたので購入。
    おー、なんだか予想していた物と違って重いというか、心を削られるとも違うんだけど、なんとも言えない気持ちになる。
    広一の捻くれた感情に辟易しながらも、ちょっとわかるなという部分もあり、淡々と相手をする二木先生も読めなくて続きが気になり、読み進めると後半怒涛の展開。
    広一なんて可愛いじゃないと思うほどの吉田の残虐な性格の悪さにびっくり。
    寂しい奴だ。
    広一の何かを掴みたくて、ものにしたくて自信をつけたくて必死になってる姿は良かったのに、あれ?結果出ないの?
    なんだか何も解決してないんだけど、きっとこーゆー性癖なものに解決などないのだろう。
    とても中途半端な終わり方なのに、なぜか胸がスッとした。不思議な本だった。

  • 読み終えてしまう事がこれ程悲しいと思える事ってそう無いので、とても凄い本をジャケ買いしてしまったんだなと思った。絶対読んで欲しいし、繰り返し読みたい作品です。本当におすすめ。
    小説を読んでいると言う感覚にさせないと言うか、夢中になれます。

  • 途中まで何の話にもっていきたいのか分からなかった。普通って言われるのいやだけど、変って言われるのも嫌ってこと?
    感情移入できないのは私が普通の人間だからなのか。

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