月の立つ林で (一般書)

著者 :
  • ポプラ社
4.46
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本棚登録 : 2342
感想 : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591175354

作品紹介・あらすじ

似ているようでまったく違う、
新しい一日を懸命に生きるあなたへ。

最後に仕掛けられた驚きの事実と
読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ、
『木曜日にはココアを』『お探し物は図書室まで』
『赤と青とエスキース』の青山美智子、最高傑作。

長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。

つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。

感想・レビュー・書評

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  • 月の光を感じながら 夢中にさせられる 美しい作品。
    題名も、カバーも、カバーの中の後ろ表紙に描かれたデザインも。
    そしてなにより、語られる人と人との繋がりが美しい。

    青山美智子さんの作品って
    ひとつの物語から次の物語へと 緩やかに繋がって
    最後に、すべてが 大きな絆の円 で綴じられる感じ。
    期待を裏切ることのない 優しさに満ちていました。

    物語は5つ。
    登場する人物たちはみんな『ツキない話』という
    ポッドキャストに惹きつけられていきます。
    朝7時から10分間、毎日更新される無料のコンテンツ。
    《竹林からお送りしております。
    タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな》
    しっとりと深みのある男性の声で始まるこの番組に心が癒されます。
    「ジェットストリーム」みたいな感じかな?

    《月は年に3.8センチずつ地球から遠ざかっていて
    その時のお互いに一番合った状態で関わり続けてくれているんだって
    僕は思うわけです》
    この語りは、退職して暗い心でひきこもる女性の心に寄り添います。

    《今日は満月です。月がお盆のように見えるのは、
    レゴリスという月の砂のお陰なんです》
    月面上の砂が太陽の光を四方八方に跳ね返して輝きを増すのだとか。
    「月は自分が光っているなんて知らないんじゃないかと思う」
    お笑い芸人を目指す主人公が こう漏らす感想は、ちょっと哲学的。

    《今日は新月ですね。新月がなぜ見えないかというと、
    月と太陽が同じ方向にいるタイミングだから。太陽が明るすぎるんです》
    第五話の妻と夫の物語で語られるのは、
    明る過ぎる場所で、そこにあるのに見えない大切なものについて。

    新月については、いくつかの物語で度々語られます。
    《旧暦では新月が一か月の始まりとされていました。
    月が始まる。月が立つ…つきたち。
    そこから、ついたちになったそうです。
    新月を月が立つという表現、すごく素敵だな、いいなあって、僕は思います》

    月にまつわる話のポッドキャストが人と人とを優しく繋いでいきます。
    そして最後に、いつもとは違う時間に 突然更新された『ツキない話』。
    そこで語られる衝撃の内容は…。

    そういえば、11月8日は442年ぶりの皆既月食プラス惑星食で
    見る見るうちに変化していく赤い月に日本中が魅了されました。
    442年前は1580年で、その2年後に起こったのが本能寺の変。
    (木村拓哉さんが、岐阜で信長公として行列に参加した
    というニュースが同時期だったのは偶然? あっ、話がそれた!!)
    戦乱の時代から豊臣体制を経て、徳川の安定した世へと変遷し始めた時期。

    新月ではないけれど、世にもまれなこの天体ショー。
    何かが始まるのかな?
    そうならば、どうか良い変化でありますように。

  • やっぱり本作もとても良かったです。青山美智子さんの短編集は間違いないですね。最近この作家さんの本を読むときはどこでどう繋がるんだろうと思いながら読み進めるので、とても読みやすくなりました。(読み方が上手になった。)
    内容としては、それぞれ異なる年齢・職種の登場人物の"日常"を切り抜いて書き出している、ただそれだけです。大きな事件は起きないですし、天才や超人がいるわけでもないです。ただただ、そういうこともあるよね、というシーンが続きます。
    でもそんなありふれた生活を読んでいると、自分自身の日常への憂い、諦念、期待、希望等あらゆる感情が心の中でふつふつと沸騰してきます。現実的であるからこそ、気持ちの解像度が高く、心を揺さぶられる幅がとても大きい感覚がありました。
    今の自分をなんとなく退屈に思っている方に特にオススメです。

    最後に、、ページ数が少なめなのが少し物足りなくて残念でした。もっと先も読みたかった、、!

  •  あぁ、この読後感…、やっぱり青山美智子さんですね。本書も連作短編形式で、五つの物語が少しずつ重なり合い、やわらかい筆致で心に染みる、とても魅力的な作品でした。
     人の優しさやつながりが丁寧に描かれ、読後の癒され感が今回も大きかったです。

     本書のテーマは「見えないつながり」でしょうか。「ポッドキャスト」から聴こえてくる『ツキない話』。この月に関する語りは、読み手にも様々考えさせます。遠いから見えないこともあるけれど、近くても見えていないことも確かにある気がします。とりわけ人間関係には…。「新月は目に見えないけれども存在する」という言葉はとても意味深いですね。
     少しスピリチュアルですが、「新月」は「朔」とも言うそうで、この新月のタイミングは、身の回り・心の浄化によいとのこと。人にはリセットの機会も大事だという発想には啓発されます(ホントかよ!)。
     悩める人々と佑樹、この月と太陽のような対比、『ツキない話』を軸にするつながり等、設定や構成も見事です。また、エンボス加工の表紙もとても素敵で、手触り感と共にオシャレでカワイイ!
     また青山美智子さんの新たな代表作が誕生した、と言っても過言ではないと思えました。本書はきっと、また本屋大賞を賑わすことになる予感がしますが、どうでしょう?

  • 青山美智子さん最新刊。相変わらず優しくて温かい物語が紡がれていた。

    今回も連作短編集。年齢も職業も境遇もばらばらで、思うように現実がうまくいっていない人、何かに不満を抱いている人などが主人公として出てくるが、ふとした出来事をきっかけに見えないところで自分を支え思い続けてくれていた相手の思いやりに気づいたり、自分の気持ちに素直に従うことが大切だということに気づいたりする。青山さんの小説は自分がちゃんと頑張っていることをまず自分が認めること、自分を応援してくれている人がいることへの感謝の気持ちを持つこと、自分を大事にすることがいかに大切かということを再認識させてくれる。人は他人と比べたり、できないこと・うまくいかないことばかりに焦点を当てがちだが、そこに存在しているだけで尊いもの、誰かの思いの対象になっているのだ、ということを改めて教えられた。私ももっと自分自身を大切にしようと思った。

    作中、ポッドキャストでタケトリ・オキナの『ツキない話』という番組が出てくるが、フィクションで実在しないのにもかかわらず、聴いてみたくなりつい検索してしまった。

  • 本屋大賞2年連続第2位!青山美智子、一年ぶりの書き下ろし『月の立つ林で』を刊行|株式会社ポプラ社のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000525.000031579.html

    月の立つ林で|一般書|小説・文芸|本を探す|ポプラ社
    https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008405.html

  • 本作も青山美智子さんワールド全開で、包まれるような優しさで満たされました。

    本作はポッドキャストとそれを聞いた人々の物語で、構成としては連作短編集。本作も充分良作であったと思いますが個人的にはエスキースの方が好みだったように思います。どちらも結末の迎え方は素晴らしかったのですが、結び方に少し差異があるので、そこはまぁ好みは分かれるかなぁとは思います。

    再就職や、夢と現実の葛藤、結婚、親からの自立と題材はどれも現代人が抱えてそうな項目の目白押しで、どの短編でも、主人公に優しい手が差し伸べられており、少しずつ勇気を分けて貰える感覚は素晴らしかったです。

  • 美しい月を見ながらの読書にふさわしい本。自分を大切にしていいんだよっていうメッセージがよく伝わってきて温かい気持ちになります。頑張りすぎず休んでいる自分も大事にしてあげようと思えます。登場人物のつながりも素敵です。タケトリ•オキナ、最後がもう感動でした。

  • 一章「誰かの朔」では、看護師を辞めた女性が登場する。

    看護師だから、しっかり者と言われることにひっかかる怜花。
    辞めた理由に、自分が良かれと思ってした言動が、結果的に見立てたこととは逆だったこと。
    当人なりに一生懸命しようとしていた、その気持ちを蔑ろにしたのではないかという後悔と、人を見る目のない自分への落胆が混じっていた。

    でも、その後悔と落胆が、既に怜花の労りを表しているとも思う。
    関わることの怖さから、一歩を踏み出すこと。
    この一章が、いちばん印象的だった。

    各章の登場人物たちが、お互い関わっているのも楽しいのだけど。
    そこでBGMのように、タケトリ・オキナがポッドキャストで送る、かぐや姫への「ツキない話」が流れるのも魅力なのだ。

    クライマックスでは、ボロボロ涙が出てきた。

    下を向いていると、自分の影しか見えないものなんだろうな。
    耳を澄まして、人の気配を感じてみる。
    思い切って、顔を上げて、他人の表情を見てみる。

    誰もがどこかで「あう」ことに思いを馳せている。

  • ☆4.5

    装丁がとても綺麗で、思わず購入した作品です。

    「月」をテーマにした連作短編集☾
    出てくる登場人物がそれぞれ悩みを抱えながらも、前に進んで成長していく素敵な物語でした。
    物語が繋がっていく構成もとても良かったです❁⃘*.゚

  • やっぱり泣ける〜。苦悩する看護師、売れない芸人、娘の結婚を素直に喜べない父親、離婚を考える妻。みんなそれぞれ悩みながら生きている。そんな人々を知らない間に励まし気づかせて再生して行く物語かな。顔は知らなくても繋がってる。なんかイイ。月の話も素敵。これから新月を見る目が変わる。青山美智子さん得意の短編連作。

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著者プロフィール

1970年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。同作と2作目『猫のお告げは樹の下で』が未来屋小説大賞入賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
『お探し物は図書室まで』より

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