お探し物は図書室まで (ポプラ文庫 あ 14-1)

著者 :
  • ポプラ社
4.49
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本棚登録 : 2517
感想 : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591176016

作品紹介・あらすじ

2021年本屋大賞第2位!!
「お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?」
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

感想・レビュー・書評

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  • 【読もうと思った理由】
    直近の本屋大賞で2年連続2位を取っていた青山美智子氏は、もちろん注目していた作家だった。知人の友人で、過去に一度も本を最後まで読了したことがない人がいたんだそうだ。その人がここ数年で、初めて読了出来た作家さんが、「青山美智子氏」なんだとか。ただ読了しただけでなく、どっぷり青山氏の作品に魅せられ、発売している青山氏の作品は、全て読了済みなんだとか!今まで何十年も「苦手だったもの」を、「好き」に変えてしまえる能力と魅力を持った青山氏の作品を、読んでみたくなった。

    【作品の内容】
    5章からなる連続短編集。
    各章ごとに主人公は別々で、それぞれの主人公が人生における重要な岐路に立ち、各々悩みを抱えている。そんな折、ふと立ち寄った区が運営しているコミュニティハウスの中の図書室。そこには、ビックリするぐらい大きな体躯の司書の小町さんがいる。愛想も全くないが、「何をお探し?」という、くるむような温かみのある言葉。そこから探している本を伝えるが、必ず一冊全く違うジャンルの本が混じっている。その本から各々の主人公が、人生における大切な「気づき」を得て、新たな人生のステップを進んでいくという、明日への活力と希望が満ちていく物語だ。

    【感想】
    僕が読書で大切にしている、「読了後にポジティブになれる作品」というコンセプトに、これほど当てはまる作品も滅多にないであろうというのが、最初に持った感想だ。五人の主人公は、それぞれ転職・起業・出産、育児・就職・定年後という人生の大事な岐路に立っている。
    たまたま訪れた、図書室の司書からオススメされた本に各々が「気づき」を得て、その後の人生を前向きに生きていく。
    こういう構成の本は、過去に何度か読んだなぁと思いつつ、途中で気づいた。あっ、そうか!これは水野敬也氏の「夢をかなえるゾウ」シリーズや、森沢明夫氏の「大事なことほど小声でささやく」の構成に似ているんだ。ガネーシャやゴンママが、人生を生きていく上で本当に大切なことを、それぞれの方法で教えてくれる。そして主人公が成長し、今後の人生を前向きに生きていく。

    上記に上げた作品と大筋は似ている。
    だが、青山氏の作品の独自性も明確にある。それは重要なことは、誰かから教えてもらうのではなく、あくまでも本人が「気づく」ということだ。どんなに大切な事でも、誰かから説得されたとしたら、なかなか人間素直に受け入れられない。あくまでも本人が、自分で気づかないと、納得感が得られずに腑に落ちることは、まずない。
    よくよく考えると、普段の生活で同じことを経験しても、一人の人は何も感じず、もう一人の人は、素晴らしい気づきを得て、その後の人生がガラッと変わることなど多々あるなぁと。
    毎日前向きに楽しく生きている人もいれば、なかなかネガティブから脱出できない人もいる。その違いは、まさしく本書が示唆している「気づき」だと思った。

    今までの人生において、「気づき」を得て自分が変われた時は、どちらかと言うと順風満帆に生きている時ではなく、逆境やピンチで大変な時だった。そう思うと、逆境やピンチの時もそんなに悪くはないと思えてくる。
    本書から得た気づきは、「ピンチは自分を変える最大のチャンスである」だ。
    なかなか人間、自分の考えや行動・習慣を変えることは出来ない。そう思うと今後、逆境やピンチに陥っても、自分を変えるチャンスだと認識を変えるだけで、そこまで逆境やピンチも怖く無くなった。
    こんな大切な気づきを得られた本書との出会いは、素晴らしい体験だった。
    人生の岐路で悩んでいる方がいれば、自信を持ってオススメ出来る書籍です!

    • 松子さん
      ユウダイさん、はじめまして(^^)
      ユウダイのレビューからこの本の素晴らしさがとっても伝わってきます。
      色々な方がこの本のレビューを書かれて...
      ユウダイさん、はじめまして(^^)
      ユウダイのレビューからこの本の素晴らしさがとっても伝わってきます。
      色々な方がこの本のレビューを書かれていますが、ユウダイさんのレビューを読んでますます読みたいなと思いました。
      フォローありがとうございます。色々な本の情報交換ができたら嬉しいです。どうぞお願いいたします♪
      2023/03/04
    • ユウダイさん
      松子さん、嬉しいコメントを下さり、ありがとうございます!この本、本当にオススメです!
      レビューには載せきれませんでしたが、感動して瞳が潤むシ...
      松子さん、嬉しいコメントを下さり、ありがとうございます!この本、本当にオススメです!
      レビューには載せきれませんでしたが、感動して瞳が潤むシーンも幾つかあります。仰って頂いてる様に、オススメの書籍の情報交換など出来れば凄く有り難く思います。感想を書き始めたばかりなので、文章力は拙く恥ずかしいですが、今後も少しずつ読み終わった本の感想をアップしていきたく思っています。今後とも宜しくお願い致します。
      2023/03/04
  • 「何をお探し?」

    区民なら誰でも本を借りられる小学校に併設されたコミュニティハウスの図書室。そこには司書を目指すために実務経験を積んでいる『森永のぞみ』さんと湯婆婆……、ではなく司書の『小町さゆり』さんがレファレンスコーナーに控える。

    本作は5人の性別も年齢も境遇も異なる人が、湯婆婆……、ではなく司書の『小町さゆり』さんの選書と『付録』によって、それまでの日常から一歩だけ歩みを進め、世界と自分の見方を変えていく。

    青山美智子さんの作品は伏線ではないが、別の章に別の登場人物が見え隠れするのが特徴的であり、本作も様々な場面で人々が交錯する。いずれも心穏やかな気持ちにさせる作品でした。

    と言った所で少し脱線です。文庫本の帯にデカデカと『本屋大賞 第2位!』と飾られている本作ですが、皆さんは『2位』と『ノミネート作』と、どちらの表現が印象良いと感じますか?
    本作をふと手に取る際に感じたのですが、作家さんから見て『2位』と順位付けられた自分の作品に「1位を獲れなくて、ごめんね。」とか「悔しい」といった気持ちを抱くこともあるのでは?と思うと、『ノミネート作』と書かれる方が、まだ気持ち穏やかにいられたのでは?と思いました。

    素晴らしい作品であることは変わりないのに誰かの物差しで測られ、格付けされるという現実に、ちょっとだけ生き辛さを感じますよね。そんな気持ちでいる私に、湯婆婆……『小町さゆり』さんはどんな『付録』と本を選書してくれるのだろう。

  • ☆5

    悩みや不安を抱えた人たちが、コミュニティハウス内にある図書室を訪れ、そこで司書をしている小町さんに選書をしてもらい…人生が好転していくという心温まる物語でした❁⃘*.゚

    小町さんがオススメの選書と一緒に渡してくれる「付録」がとっても素敵で印象的でした。
    本作を読んだらきっと、小町さんとのぞみちゃんの居る図書室に通いたくなります!

    呉宮堂のハニードーム…美味しいんだろうなぁ(*´˘`*)




  • やっぱり青山美智子さん大好きです!!
    長い人生で道に迷った時に読みたい本ですね!

    小町さんのキャラクターも良い!
    (勝手に銭天堂の紅子さんをイメージしてしまいました。)
    今回の内容は自分にもすごく覚えがあったり、まさに今それ!の状態だったり。
    少しのきっかけをもらって、自分で選択して道を切り開いていく。
    素直な心や勇気や強い意思がないと難しいものなのではないでしょうか。
    逆に言うと、実は心の奥底にそれだけの気持ちを持っていたからこそ小町さんに巡り会えた気がします。

    少し見方を変えるだけで、違う景色が見える。
    考え方も同じかなと思います。
    またしても心が洗われるような素敵な世界に呼んでもらえて嬉しかったです。

    • あじょ子さん
      Manideさん

      コメントありがとうございます!
      これからよろしくお願いします★

      私も青山美智子さんにハマっている一人です!笑
      読むと心...
      Manideさん

      コメントありがとうございます!
      これからよろしくお願いします★

      私も青山美智子さんにハマっている一人です!笑
      読むと心が綺麗になっていく気がします。
      そうですね、文庫になるのを待ち望んでます♪
      2023/03/13
    • こっとんさん
      あじょ子さん、はじめまして♪
      フォローありがとうございます。
      私も銭天堂の紅子さんに一票!
      絶対同一人物ですよね笑
      これからもよろしくお願い...
      あじょ子さん、はじめまして♪
      フォローありがとうございます。
      私も銭天堂の紅子さんに一票!
      絶対同一人物ですよね笑
      これからもよろしくお願いします♪
      2023/03/13
    • あじょ子さん
      こっとんさん

      こちらこそありがとうございます★
      紅子さんの副業ですかね?笑
      また違う作品でもお会いしたい素敵な方でしたね!
      よろしくお願い...
      こっとんさん

      こちらこそありがとうございます★
      紅子さんの副業ですかね?笑
      また違う作品でもお会いしたい素敵な方でしたね!
      よろしくお願いしまーす♪
      2023/03/13
  • 読むことで救われることがある、とずっと忘れいた言葉を思い出した。

    私はなりたいものになれないまま、人生のほとんどを生きてきたと思う。
    でも、まだ間に合うのかもしれないと思わせたくれた。

    救われた。まだまだこれから、できることをやっていこう。

  • 精神状態が著しく下降していた私は、スリルある物語より優しい世界を求めて本屋を訪れました。
    そこで、文庫化されたばかりの本書が「こっちにおいで」と呼んでくれたんです。
    直前まで買うつもりはなかったのに。

    すぐに買って読みました。
    とっても優しくて、強くて、包み込んでくれる物語でした。
    まさに今、私が読むべき本だったし、今だから響いた言葉もたくさんありました。
    心をすくい上げてくれる言葉の数々に泣きそうになり、何度でも読み返したいと思える素敵な出会いができたと思いました。
    キャラクターの言葉は青山美智子さんの言葉でもあると思っているので、青山さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

    そして単純ながら、羊毛フェルトで何か作ってみたくなりました(笑)

  • どんどん読める小説でした。一章から五章まで、全て違う話かと思いきや、どこかで繋がっている。
    第三章のみづえ先生の言葉一つ一つ、いま子育てしているわたしにとても沁みました。
    読み終わった後、心があったかくなり元気が出ます。とてもおすすめです!

  • 相変わらずほっこり優しい本。
    それぞれ主人公の立場は違っても繋がっていく。
    司書か…いいなあ…笑

    • マメムさん
      初コメです。
      選書される側もする側もワクワクしますよね♪
      初コメです。
      選書される側もする側もワクワクしますよね♪
      2023/03/23
    • みたらし娘さん
      マメムさん☆

      初めまして!コメントありがとうございます(*´ω`*)
      素敵な本ですよね!
      全体的にほっこりなのに、本を選ぶシーンではクスッ...
      マメムさん☆

      初めまして!コメントありがとうございます(*´ω`*)
      素敵な本ですよね!
      全体的にほっこりなのに、本を選ぶシーンではクスッとするところもあって気に入ってます♪
      2023/03/24
  • 文庫本で再読。
    小町さんの「お探し物は何?」と問いかけで出会う本と人のつながり。
    付録と相まって、前向きにさせてもらえる短編集。
    やっぱり好き。

  • 花を見るのに季節があるように、本を読むにも適した時期ってあると思う。海の話なら夏に読みたいし、クリスマスの話なら12月に読みたいとか・・・
    この本を読むなら春かな。何か始めたいけど戸惑うような三寒四温のこの時期が読み頃かなって感じましたww

    小学校に併設されたコミュニティハウスに習い事の教室があり奥の1室に図書室もある。
    そこには50代ぐらいの小町さんとゆう女性司書がいる。ぱッと見、雪だるまとかベイマックスとかマシュマロマンとかパンダとか鏡餅とか散々な言われようの人みたいだけど図体に似合わず、羊毛フェルトを作っているから手先は器用そう!?てか暇そうww
    ぶっきらぼうだけど数冊お勧めする中に1冊は見当違いな本を勧めるのが得意技。それと付録と称して手作りの羊毛フェルトを渡してる。とりあえずサービスの一環で作ってるとこがお茶目かなw

    5人の登場人物が人生の分岐点に差し掛かり訪れる中、背中を押すでもなく、そっと本を勧める。
    1歩を踏みだすための答えはすでに自分の中に芽生えていることに気づいてゆく人たち。
    妖精にしては無茶大柄な小町さんだけど、そっと妖精の粉をふりかけてくれるような爽やかな仕事ぶりが素敵なお話でした。特に4話~5話になると今までの登場人物達もチラホラ顔を出して賑やかでウキウキ愉しめましたっw

    気になるのは、作中にでてきた呉宮堂のハニードームとゆうクッキー。6角形の飾り枠と白い花の描かれた菓子箱、小町さんは道具入れに使ってるのだが何処に売ってるんだろう?
    それと、グリとグラのカステラ。これはレシピ載ってたし作ってみたい。それに、羊毛フェルト。制作キット買って猫を作ってみたくなりましたww
    春は何かと新しい事にチャレンジしたくなりますねww

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著者プロフィール

1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28 回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1 回宮崎本大賞を受賞。『お探し物は図書室まで』が2021年本屋大賞2位に、『赤と青とエスキース』が2022年本屋大賞2位に選ばれる。他の著書に『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』『マイ・プレゼント』(U-ku氏との共著)『月の立つ林で』など。

「2022年 『ユア・プレゼント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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