- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591179802
作品紹介・あらすじ
『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞!3年連続、本屋大賞ノミネート!!自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。地方都市の寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……。 死を見つめることで、自分らしく生きることの葛藤と決意を力強く描き出す、『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこ、新たな代表作!
感想・レビュー・書評
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本書の主な舞台は、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。ここに何らかの形で関わる人たちが、一章ごとに主人公となる物語です。
第一章の主人公は、「芥子実庵」の葬祭ディレクター・佐久間真奈31歳。葬祭の仕事に対する恋人の無理解、母親の同調、親友の自死等、旧態然の慣習、風潮、根強い偏見等、ままならない状況下でもがき苦しんでいます。
この真奈のエピソードが、とてもキツく重い内容です。さらに第二章〜第四章と、主人公(視点)を変えながら、濃密な内容が次々と展開されます。
第五章で再び真奈の視点に戻り、全体を通じて、真奈の人生の決断の物語となっているようです。
真奈を中心とした登場人物は、それぞれ事情を抱え、価値観のはざま、人生のはざまでもがきながらも、自分の意志で次のステップへ動き出します。タイトルの通り、はざまから「夜明け」に向かって、暗から明へ歩み始め、心が軽くなる思いでした。
人はみんな、それぞれが何かを背負って生きているし、「死」も、貴賤なく残された者全てに対して平等であるのですね。
〝自分らしく生きる〟ことは、年齢を重ねても簡単ではないです。人は皆何かを背負って生きているでしょうから‥。苦しいこと、人はいつかは死ぬことに対して、自分なりの折り合いをつけて暮らしていくことが肝要なのでしょう。
「死」があるから「生」が輝くことを示し、町田そのこさんらしい、人の心の痛みに寄り添ってくれる物語だと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
家族葬専門葬儀社・芥子実庵で働く人や家族についての事情。
芥子実庵で葬祭ディレクターとして働く佐久間真奈が、友人の結婚式に出席する場面から始まった第一章の見送る背中では、突然の友人の自死に愕然としながらも彼女のことを想い祭壇の供花を千日紅にした。自分は、彼女のことをすべてわかった気になっていたが、何も知らなかったと…。
友人の葬儀を逃げ出さずにやり遂げたことで、これからのことがわかったのかもしれない。
第二章 私が愛した男〜元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった牟田が、その恋人が牟田に依頼した理由を知ると元夫のことをよく理解していると感じた。自分じゃ無理だったこと。
第三章 芥子の実〜芥子実庵に入社して三ヶ月の須田は、一番会いたくなかった同級生に再会し、会社を辞めることになるのだが…。
芥川から聞いた井原の過去のこと。
大事なひとの『死』は、誰にでも訪れる。
その苦しみ、哀しみ、惑い、恐怖こそが、平等に受け入れなければならないもの。そこに豊かさも、貧しさも存在していない。哀しみをいまも抱え続ける者がいて、受け止めきれずに迷走する者がいる。
第四章 あなたのための椅子〜夫との関係に悩んでいる中、元恋人の訃報を受け取った良子。
子どもがいるのに男友だちの葬儀に行くことに反対な夫に弟が実家に集まることで、上手く話を合わせてくれた。
葬儀で元恋人だった今を知ることで、自分は彼のことを何も理解しようとせず親の言いなりになっていたことに気づく。
そして弟もまた自分と同じようだと…。
誰かの意見に左右されたくない。そのひとと向き合って、話を聞いて、理解する努力をしたい。誰かの常識や言い訳で逃げたりしない。
自分の中の『それくらい』を相手に押し付けちゃだめだ。
第五章 一握の砂〜佐久間真奈と純也との出会いからプロポーズ、そして…。
親しい人の死を見送れない芥川の事情。
『大丈夫だと信じてたものを掴もうとすれば、何かが落ちていく』と言った楓子の言葉を思い出す。
真奈の真摯に仕事に向き合う姿を見て、続けたいという思いを尊重してあげるのは…。
難しい選択だけど、選択しなくちゃいけないってこともなんだか…ね
深く頷くことばも多くて、これは自分のことなのか…とか思ったり。
昭和の時代に田舎で育ったものとしては、親の言うことが正しいと、間違いない、と思っていた。
昔からの風習もあって、堅苦しく感じたからこそ早く結婚して親から離れたかったというのもあるかもしれない。
逃げたことになるのだろうか…と。
自分を振り返って思ってしまう。
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自身の弱さを肯定し、自分らしく強く生きることの素晴らしさを教えてくれるような作品でした。最近、良い本読み過ぎてる+町田さんの作品だから期待値高めだったということもあり若干ハードル上がってたので、少し評価は抑えめです。
本作は葬儀屋さんである「芥子実庵」で働く人々と、そこに葬儀を依頼することになった人々の5つの物語を書いた連作短編集。5つの短編集に出てくる主人公たちは、悩みやトラウマを抱えており、そんな中、葬儀に参加したり、葬儀を手配したりすることになるというお話。
やはり町田そのこさんの作品らしく、本作も女性主人公が多いうえ、その苦境や悩みがしっかり書かれております。特に、女性が抱える結婚生活と仕事の両立、シングルマザーの問題など今回は女性の社会的あり方が全体として問われていた印象を受けました。
絶対に順風満帆なことなどあり得ないということがわかっているからこそ、悩んだり、もがいたり、一喜一憂したりすることの大切さを読者に教えてくれる作品だったのかなと思います。ただ個人的には、町田さんの作品は長編の方が社会問題が深く描かれていて好みです。-
ヒボさん、こんにちは〜
僕も町田そのこさんだったので、読んでる本後回しにして、先に本作を読了した感じです。
良い読書体験が待ってること願って...ヒボさん、こんにちは〜
僕も町田そのこさんだったので、読んでる本後回しにして、先に本作を読了した感じです。
良い読書体験が待ってること願ってます!2023/11/12 -
運良くサイン本が手に入ったので、楽しみにしているんですが、借りてる本の返却に負いまくられています^^;運良くサイン本が手に入ったので、楽しみにしているんですが、借りてる本の返却に負いまくられています^^;2023/11/12
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2023/11/12
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「ぼくたちはあまりにも、明日に任せすぎている」
いやー、どういう感情で読めばいいんだ?
ちょっと情けない男が出すぎじゃないかね?そのこさん!
反省か!反省を促されているのか?自分の半生に(そういうとこ)
いやなんか、現状は同じラインな気がするんだが、最初に気付くのは女性ばっかりやな
大事なことに気付くのはいつだって女性が先
贔屓しすぎやろって思っちゃいました
なんかズルい
なんかズルいよそのこさん
男だってたまには(たまにかよ)-
2023/12/08
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2023/12/09
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2023/12/09
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友人の結婚式でポップな会話の始まりに「町田作品?」と一瞬戸惑う。
しかし、だ…。
やはり町田作品。
一筋縄ではいかない。
急転直下。
そこからは、穏やかな展開に少しでも気を抜くと、水面下でうごめく心理描写にジェットコースターの如く何度も感情を揺さぶられてしまいます…
普段、侵入を許さない感情境界線を越えて奥深くまで入ってくるのは町田作品だけです。
大切にしたいと思う言葉が沢山登場するから丁寧に読もうと心がけてはいるのですが、怒涛のの展開にあっという間に読了してしまいました。
町田先生、すぐさま新作お待ちしています。 -
家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」を舞台とした連作短編集。
大切な人の死と向き合う時、自ずと自分自身とも向き合うことになるんだと思う。
主人公それぞれが「死」を見つめて新たな気付きを得ているところに心動かされた。
そんな最後のいい時間を過ごさせてくれる芥子実庵。未来の自分の葬儀は、こんな所でお願いしたいなぁ。 -
こんなにも大切な人が突然亡くなるなんて信じたくない、嘘だと言ってほしい、もう一度会って話したい、そう絶望しながら思ったあの時の私がふと蘇ってきた。
読んでいて辛かったけれど、救われる場面も多々あり!!グッと心にきた言葉を。
三章 芥子の実
死は残された者、生きている者にとっては平等。大切な人の死は誰にでも訪れる。
芥子の実は、どこの家にもない
四章 あなたのための椅子
昔好きだった人が亡くなってしまうこの章がいちばん泣いた。
亡くなってしまったらこれから先二度と会えない。関係や重なりを厚くすることもできない。でも、これまでの関わりや繋がり、思い出は決してなくならない。
五章 一握りの砂
必死になったって意味がないこともある。言葉を重ねても動かせない心がある。譲り合えないことがある。
一緒に生きていくために大切なのは、幸せな時間だけではなくて、相手のしあわせを考える時間も大切。 -
町田そのこさんの
夜明けのはざまを読み終えた。
1章
一章めでもう、
またもや、泣いてしまった。
いつもそうだけど、
ある単語を見た瞬間に
胸がきゅうっとなって涙が突然出でくる。
町田さんの言葉が
私のツボにハマり過ぎなんだな。笑
2章
また泣いてしまった。
天音さんはすごく優しい子で。
牟田さんはずっと1人で頑張っていて。
野崎さんはどうかなー
でも、牟田さんと出会った時の野崎さんは
最高に素敵でカッコいい。
3章
死は誰にでも訪れて平等で。
芥子の実は、どこの家にもない。
それは分かるような気がするけど、
親が笑われたり、
この単語は軽いから使いたくないけど、
いじめられたり、
お腹が痛くなるくらい、
辛くて寂しくなる話だった。
そしてやっぱり、泣いてしまった。
あと、
佐久間さんのこれからがすごく気になるなー
4章
結婚はどうしても自分事だと思えないけど
相手を思っているつもりでも
それぞれの生き方の中で偏見を持つようになって
それを本人は気付かない。
お互いを理解する事ってすごく難しくて
根気のいる事なんだなと思った。
自分にとってのそれくらいで
相手の大切なものを傷つけないようにしたい。
まぁ、相手がいればの話だけど。。笑
そして、
やっぱり佐久間さん素敵でカッコいい。
5章
やっと芥川さんの事が分かって、
普通の人でなんか安心した。
自分ではどうしようもない事って
人それぞれあって、
頑張ってもそれが人並みもならなくて
頑張り方が違ってたりもするのかもしれない。
それが無駄じゃないんだとしたら、
なんか生きていける気がするなーと思った。
できれば自分で幸せに繋いで、
それがだめなら疲れ切ってしまう前に
誰かに繋いでもらって。
今の自分にはほんの微かでも
何か残るような物はあるんだろうか。
これを書いてる今もなんだか不安で寂しくて、
泣けてきた。
読み終えた今は寂しい気持ちが多いけど
きっとこれから辛い事があった時に
残るものがあると信じて
繋がる事があると信じて
いけそうな気がした。
またいい言葉に出会えた。
町田そのこさん、
いつもいつもありがとう。
#読書 #夜明けのはざま #町田そのこ -
「ぎょらん」と併せて読むと町田さんの死生観が理解出来る様な気がします。
喪失と再生。
囚われたままでも乗り越えれなくてもほんの少しでも誰かに繋げることが出来たならそれはそれで良いのだなと思えました。
芥子の実はどこの家にもない。
死は普遍的ではあるけれどもそれぞれに極めて個人的なもので誰の上にも起こることだからと言って受け止め切れるものではないだろうがだからと言って囚われ続けることを喪った大切な人が望む筈もなく。
自分が晴れ晴れと青空を仰ぐのはもう少し先なのでしょう。 -
できれば生きづらい現実から目を背けていたいと思う。
女の意志を軽んじられる腹立たしさ、噛み合わない恋愛関係、過去の傷、未来の不安…
見て見ぬ振りができるならその方がいいに決まってる。
せめて物語を読む時くらいそんなものから解放されたいと思うはずなのに、そう思わなくなったのはいつの頃だったっけ。
わざわざ自分の傷に粗塩を刷り込むような真似しなくてもいいのに、なぜかそんな物語に惹かれてしまうのは、自分だけじゃないのだと安心したいからだろう。
痛みをだれかと共有したい。わたしの傷はこうで、こんな時に痛むのだと、ほんとうはだれかに打ち明けて楽になってしまいたい。
でも目の前の人にそれができないから、物語の中に打ち明ける相手を探している。
本作はまさにそれにうってつけで、芥子実庵に登場するすべての人と話をしたいと思ったし(中にはぶん殴りたいやつもいる)、話を聞いて欲しいと思う。
そのこちゃんの描く世界は優しくはない。ヒリヒリするしトゲトゲしてるし、多かれ少なかれハートから血が流れる。
自分らしく生きる、それはとても美しい響きだけれど、実践してみれば苦しいしストレスしかない。
佐久間も楓子も、生傷だらけの心と身体でこの先も生きていくんだとおもうと、なんだか自分の抱える痛みも悪くないなと思えた。
(私的には清衣くんの残酷な愛し方がツボでした)
ぎょらんよりももっともっと人間臭くて強さを感じる作品でした。
著者プロフィール
町田そのこの作品






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