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Amazon.co.jp ・本 (239ページ) / ISBN・EAN: 9784591185193
作品紹介・あらすじ
小学生五年生の晶と高校生の達は、仲良しな兄弟。
物知りで絵が上手く、面白いことを沢山教えてくれる達は、
晶にとって誰よりも尊敬できる最高の兄ちゃんだ。
でもそんな兄ちゃんは、他の人から見ると「普通じゃない」らしい。
晶以外の人とのコミュニケーションが苦手で不登校だし、
集中すると全力で走り出してしまう癖があるから。
同級生や大家さんとの会話を通じて、
初めて意識する世間に戸惑い葛藤する晶だが、
兄と交わした言葉を胸に日々を懸命に生きていく。
第11回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作。
読んだ後にきっと誰かを大切にできる、
兄弟・家族の絆を描く傑作小説。
■著者プロフィール
川上 佐都(かわかみ・さと)
今作で第11回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞しデビュー。他の著作に『今日のかたすみ』がある。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
家族の絆と個々の成長を描いた物語は、コミュニケーションが苦手で不登校の兄と、彼を心から尊敬する弟の視点を通じて展開されます。小学生の晶は、世間の「普通」とは何かに戸惑いながらも、兄の達との関係を通じて...
感想・レビュー・書評
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単行本発売当初に気になっていた作品。
なかなか、色んなことを思いました。
作品の帯には
「世間という箱の中で懸命に生きる兄弟を描く傑作小説」とあります。
本当にその通りで、世間という箱、世の中の普通からちょっぴり出た人たちの心情が、弟の晶と母親の朝子の視点で描かれていて、世間の普通からちょっぴり出ている我が家には、それらの気持ちがとてもよく解ったし、少ししんどくもあった。
本当に「世間」というものは、なかなかのクセモノだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
コミュニケーションが苦手で不登校の兄・達と、達が大好きな小学生の弟・晶の物語。
晶が、お兄ちゃんが大好きで大好きで仕方がないというのがすごく伝わってきました。
でも、純粋に兄が好きで自慢に思う気持ちと、周りの人たちから見えている兄の姿に対してのギャップに悩んだり、自己嫌悪に陥ったり……。
この年頃って、いろいろな見方が出来るようにもなり始めてて「正しいこと」に縛られたりもする。
それでも、子どもって考えが柔軟だなと思う。大人の常識にとらわれず、頭で考えるよりも良い意味で感情優位で動けてしまうのを尊く感じました。
モヤモヤした気持ちを打ち明けた弟に、愛情とねぎらいのこもった言葉をかけた兄。
無口だけど、きっと心の中はたくさんの感情や言葉で溢れているんだろうなぁ。
さまざまなな家族、人生、考え方がある。
ひとりひとりが自分らしく、楽に息をして生きて行けたらいいのにな。
兄の静かな弟への愛情と、兄を慕う素直な弟。
お互いを優しく思い合う二人の関係が素敵でした。 -
小学生の晶の目線で兄の達を中心に、マムカ、お父さんや回りのひとたちを描きながら、確かにそうだよね、と思わせる考えがいくつも綴られていた。
自分が当たり前にできることは、皆ができると思い込んでいること、
人の凄さを伝えるのに数字や賞に頼っていること、
やたらとコミュニケーション能力を求められること、
他にも沢山のことを晶の目線で気付かされた。
晶は達を通してその事に気付き成長している。
達は確かに世間のいう「普通」ではない、
でもしっかり晶の兄として目の前に立っている。晶に色んなことを教えて大事にしていた。
私たちが求める「普通」はこんなにもハードルが高いのか?それともしらないうちにどんどん高くされていったのか?
考えさせられ気づかされる話だった。
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小学5年生の晶の視点で、大好きで尊敬しているが、晶以外の人とのコミュニケーションが苦手で不登校となっている高校2年生の兄・達との関係を描く。母親の朝子視点の第二章もある。
物知りで絵が上手くやさしい兄を大好きで尊敬しているが、同級生の兄に対する心ない言動にもやもやしたり、兄に「ふつう」になってほしいと思ってしまったことに自己嫌悪したりといった晶の繊細な心の動きがよく表現されていて、心を打った。母親視点の第二章も、親子のコミュニケーションなどについて考えさせられた。達の気持ちはいずれの章でもはっきりは書かれていないが、もどかしさを抱えた複雑な心境であることはよく伝わってきた。
家族が発達障害(?)だったり、不登校になってしまった場合の対応って、正解があるわけではなく、本当に難しいなということを感じた。
ただ、話全体としては、情報が足りていない感があり、あまりすっきりしない読後感ではあった。 -
書くことで正直になれる、いい意味で小学5年生が書いた作文らしさがすんなり入ってきて読みやすい。人それぞれの普通があるのは当たり前なのに他人のことになるとその普通を当たり前に受け入れるのは不思議と難しい。生きづらさと温かさを両立した現代らしい作品だった。
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俗に言う、「普通」って何だろうと考え直すきっかけになった。
「普通」って頻繁に耳に入るし使いがちな言葉だけど、よくよく考えてみたら人間を縛り付ける言葉でもあるのかなー。
大衆と違うことは間違ってないし、「普通」にくくりつけない人でありたい。
ストーリーとして、何回か涙が込み上げた。
親って凄い。 -
晶と達が、もがきながらも兄弟の絆を深めていく。「世間は、たくさんの人でできているが、人とは違う。血が通っていない」「自分が簡単にできること、人もできると思っちゃだめだ」達は大切なことを教えてくれる。世間が何と言おうと達を大切に思う晶が愛おしい。 -
例え、普通でなくても、なにかの疾患がある人でも素晴しい才能を兼ね備えてる事がある。そこを評価される「せけん」になればみんなが認めあって幸せな社会を創る事ができるのにな、と思った。物語のほとんどが弟視点なのも良かった
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表紙絵を描いているみなはむさんの画集を持っていて、表紙絵で衝動買いした一冊。中身も何も知らず積読されていたのを読んだら、とても刺さる物語だった。
その人の良さは、本当に出会った人にしか分からない。そういう人と出会ったことがある人、そういう大好きな、尊敬する人がいたら、共感できると思う。
小学5年生の晶(あき)は、絵がうまくて、頭がよくて、いろんなことを教えてくれる兄ちゃん、達(とおる)のことが、とにかく大好きだった。兄ちゃんが「せけん」に認めてもらえない出来事に出会うたびに傷ついて、兄ちゃんを認めてくれる人と出会うたびに嬉しくなる。とにかく、兄ちゃんが好きなのだ。
「ぼくはぼうっと絵を見る。内容は難しかったけど、ぼくは「せけん」にならないようにしようと思った。もう一度湖のカギをなぞる。なんだか絵が少し変に見える。でも何が変なのかはわからない。考えるのをあきらめて部屋を出ると、兄ちゃんはべちゃべちゃの洗濯物をベランダに干していた。」(p58)
晶は、大好きな兄ちゃんのいいところを知ってもらい、みんなに認めてもらいたいと思う。しかし、みんなに認めてもらおうと思えば思うほどに、自分が兄ちゃんに対して求めているものが、「せけん」と同じになっていってしまう。
「兄ちゃんの絵を見てない人たちに、いろいろ言われるの、悔しいじゃん。ぼくは、もっと兄ちゃんはすごいこと、みんな知れば何も言わないと思う、兄ちゃんもそれをもっと、みんなに言えばいいと思う」(p126)
「そうだよ。あとはさ、加賀美さんとはたくさんしゃべれるんだから、一緒に特訓すればいいじゃん。そうだよ、じゃあさ、追い出されないために直そうよ。まずぼくの目を見る練習からしてさ、ぼく、手伝うよ。それでそれができたらさ、もう一回あのCDショップのバイト、受けようよ。」(p127)
晶の兄ちゃんは、おそらくADHD(注意欠陥多動性障害)なのだろう。無意識のうちに手や指を動かしてしまい、狭い家の中を走りまわってしまい、限られた相手としかコミュニケーションが取れない。
そんな兄ちゃんに、晶は「直そうよ」と言ってしまい、後悔する。兄ちゃんに普通のコミュニケーションをとれるようになってもらいたい。普通のバイトをしてもらいたい。そういう風に「普通」になってほしいという気持ちは、まさに晶がなりたくなかった「せけん」そのものだった。
「ぼくは今もカギの絵だけは押し入れから出せずにいた。その絵を見ると、なんだか苦しくなるからだ。なんだか、といってもほんとうの理由はわかっている。ぼくが兄ちゃんに向かって「目をみる練習をしよう」と言ったことを思い出すからだ。」(p154)
しかし、兄ちゃんの方は、きっとそんなことを気にしてなかったのではないかと思う。兄ちゃんは兄ちゃんで、晶のことが大好きだったからである。
物語の最後、晶と兄ちゃんが交わす会話を何度も読んでしまった。兄ちゃんの話は、言葉足らずで、大事なところで、言いたいことを言えない。それでも、十分に晶には伝わるのである。
兄弟でなくとも、こういう関係が、自分にもあるだろうかと考える。あったらいいなと思う物語だった。 -
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