3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

著者 :
  • 白泉社
4.32
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本棚登録 : 9167
感想 : 370
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592145134

感想・レビュー・書評

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  • 周りの人たちの優しさに、新たな気づきを得て着実に新しいステージに進んでいる零。名言の多い巻だった気がします。
    どのキャラクターも全員漏らさず魅力的に描き上げる作者の力量には恐れ入る。あのクソ野郎の後藤ですら、瞬間、人間的な部分をきちんと見せて、多少なりとも人間味を感じさせるように描いているのは、羽海野さんというひとのもつ深みなのでしょう。
    孤独だったり生きづらさだったりが描かれていますが、全く軽薄な仕上がりになっていないのは、それゆえなのだと思います。

  • 島田との対局が素晴らしかった。
    「やれやれ…やっとこっちを見たな」
    零が後藤との私怨に気を取られ、自分をなめていたことすら見透かした上で、勝負の席で静かに座っている懐の深さよ。羽海野先生が描く大人は底知れない深さも、人間臭さもあって好きだな。

    「桐山のアタマをかち割ってやって欲しいのです」
    二海堂が島田へ伝えた言葉。そしてそれは、
    「桐山こそが僕の頭をカチ割って泥の中から出してくれたと思うからです」
    という理由も好き。自分の言葉などではなく、兄弟子に対局で打ち破ってくれることをお願いするという思い。二海堂が島田をどれだけ信頼しているかが伝わってくる。

    「ああ オレより強いヤツがいる オレより努力した人間がいる 『オレは独りぼっちじゃないんだ』って」
    負けることで救われること、気づくこともある。
    相米二の「どんなヤツでも一線でやってる人間で恥をかいた事無いヤツなんていねぇってコトにな」って言葉にも繋がるよね。

    「無傷では決して辿り着けるわけもない世界」
    傷だらけになっても独り、両足を踏みしめて世界の果てを往く。それを間近で実感できたことで、この敗北は零にとって大きな一歩になったのかなと感じた。

    あと、林田先生の「一人じゃどうにもならなくなったら誰かに頼れ でないと実は誰もお前にも頼れないんだ」って言葉も好き。こんな声をかけてあげられる大人になりたかった。

  • 将棋人生の深さを感じさせた松永との対局、将棋も人生も諦めてしまう安井との対局を経た零は寝込んでしまったようで
    彼の性格上、一人暮らしでありながら体調崩して来なかったのが驚きでは有るんだけど、この場合これまで体調を崩していなかったのってあまり褒められたことではない
    だって、人に頼りにならず負担にならずと一人暮らしを始めてしまった彼は誰かに頼るという行為が非常に不得手。だからあの場面で川本三姉妹がドアをこじ開けなかったら零は一人で寝込んだままだったんじゃなかろうか
    そして、零の看病をするに留まらず幸田にも電話させたあかりの手際は褒められて然るべき

    かと言って零は川本家にただ助けられただけに留まっていないのも本作の上手い点
    川本家の助力がなければ零は一人だったように、零を助けるなんて強引なことをしなければあかりは一人だったかもしれない
    誰かを助けた者はきっと誰かに助けられている。そんな事を感じさせたシーンだった

    ただ、明るい暖かさを持つ家庭はそういったものを失った零にとって暗い泥の中へ引きずり込むような落とし穴であるのは辛いな…
    結局、零は居場所を手に入れ続けるために冷たい将棋の世界に再び没入するしか無いのか……

    そして、このタイミングで現れる後藤の恐ろしさですよ!ただでさえ静謐さを持つ将棋会館の空気をさらに冷たいものに変えてしまうね
    零のせいで家庭のぬくもりを失ってしまった香子がそれでも縋るのが今の後藤で、でも後藤は香子を邪険に言って……
    自分の居場所を手に入れ続けるため、香子の居場所を守るため。ここまで闘志を顕にした零って本当に珍しい
    それだけの想いを込めるということか

    ただ、それによって見えなくなってしまうものがあって……
    後藤に目を向けるばかり、目の前の島田に全然目を向けなかった零。だというのにそんな零に晴信も島田も目をかけてくれて……
    うん、これは恥ずかしい!第二巻ラストとは別の意味で走り出した零になんと言うか若者特有の青臭さを見た気がしたよ!

    こういう経験をして少年は大人になっていくんだろうなぁ……、なんて思っていたら!転職マガジン読むプロ棋士の衝撃!迷走が酷い(笑)

    人の温もりに迷い、棋士としての在り方に迷い。そんな少年を導いてくれるのが「先生」である林田だったのは良いなぁ
    川本家の温もりや島田の態度は零を盛大に迷わせたけど、そこにこそ零が選ぶべき答えがある。
    一歩踏み出して島田を「頼った」零の姿には大きな成長を感じられたよ

  • 今まで孤独に将棋をやっていた零くんが兄弟子というか、
    師匠筋の棋士、島田八段に巡り会います。

    ベテラン棋士たちは皆、泥臭く、重厚感のある人生を持っていますが
    皆、小奇麗ではないのに非常に格好いいです。

    何かを真剣にやって結果を出してきた大人っていうのは
    底力がありますし、良いものですね。

    プロというのは、底の深い長い時間をくぐり抜けるものだと
    零くんは知っていきます。

    そして、義姉の香子さんが侮辱されると、真剣にかかっていこうと
    する零くんを見てると、

    「なんだ、この義姉弟は、ちゃんと姉弟じゃないか。」

    と、きつい場面なのにホッとします。実はそこが一番印象的だったの。
    二人共口にしたり、器用に伝えたりは出来ないでいるけれど
    お互い傷つけ合ったことを越えて、やっぱり繋がってる気がします。

    それに後藤さんも、彼女に応えきれないから
    殊更ひどく突き放そうとしているのかもしれません。
    寄りかかりたくなる自分の弱さを知っているからこそ。

    それと、

    「自分で家を出て、家賃を払ってご飯が食べられるようになれば~」

    の述懐は、私もそう考えていました。そしてそれは、7割正しいと思うので
    完全に否定はしたくないです。後の3割はそれだけじゃ埋まらないけど
    7割の部分を自分でどう責任取るかが、人生の始まりだと思います。

    早く彼が胸を張れたらいいのに。

  • 頼れ頼れたよりまくれ。じゃないと、いざというとき、お前を頼れなくなる。ってとこ凄まじい。

  • 島田さん登場。島田さん大好き。実は、ちょっとルックスが、好きだった人に似てる。

    ファン投票でも意外に(!?)上位で、私だけじゃないんだと思うとうれしい限り。この後も、準主役、脇役として登場機会が多いのも、うれしい。

    真面目な話、島田さんの登場までの回は、登場人物やとりまくあれこれを紹介する序章だったのかも、と思わせるぐらい、島田さんの存在って、大きい。主人公が島田さんとの出会いから得る物、そして、そこから、読者が感じ取る物も。

    ここから、いきなり物語が動き出すって感じ。うん、大好き!

    ※少々、頭が沸いておりますので、お許しください。

  • こたつのように暖かくて、一度入ったらでれないような、温かい空間。
    家族がいて、仲良くご飯食べて、満たされてるように見えるのに、何か足りない川本家。
    その隙間にれい君が入って、みんなで暖めあえて生きていけたらいいのに。


    先生の言葉がとても印象に残っています。
     -あったかいものをとれ!!
     -「でも」が100個揃えば開く扉があればいーがはっきり言ってねーよ そんなドア!!

    れいくんは将棋に関係する人たちには、やたらもてるなぁ。

  • 3巻。葛藤、そして一歩踏み出す巻でしょうか。
    前巻で、香子との再会、後味の悪い試合で走り出し、叫んだ零。年末寝込んでいたところを三姉妹に助け出されるところから始まります。
    「あの家はなんか コタツみたいなんだ… 中にいると とろけるようにあったかくて 心地よくって 外に出ると 今まで平気だった日常が すっごい寒いところなんだって 気づかされてしまうんだ」

    そして臨んだ島田八段との試合で、自分が相手の型を決めつけ、島田を見て試合をしていなかったことに気づかされ、羞恥心を味わいます。
    「やれやれ…やっとこっちを見たな」と言った島田八段と、はっと気づいた表情の零のカットがとても綺麗でした。

    実は二階堂ぎ兄弟子である島田八段に「桐山の頭をかち割ってやってほしいのです。」と頼み込んでいたのも感じ入りました。

  • 上位者との対局や交流シーンが描かれ、将棋の世界にも奥行きが出てきました。でも、この作者は私生活に相当重点を置いてくるので、これからも多感で繊細な描写がメインになるんでしょうね。なんだか切なくて、読み進めるのが辛い気持ちになります。

  • なるほど。
    普通と思っていましたが、ジワジワ来るなぁ。
    何がどうって説明出来ませんが、ジワジワくる。

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著者プロフィール

東京都出身の漫画家。デビュー作品、 美術大学を舞台にした青春漫画『ハチミツとクローバー』が大ヒットとなり、アニメ化・映画化された。 2007年より『3月のライオン』の連載を開始。 同作はマンガ大賞や講談社漫画賞、手塚治虫文化賞などを受賞した。

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