スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)

著者 :
  • 白泉社
4.06
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本棚登録 : 3708
レビュー : 361
  • Amazon.co.jp ・マンガ (99ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592192329

感想・レビュー・書評

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  • 羽海野先生の作品の魅力のひとつは、ギャップだと思う。
    柔らかな優しく可愛い絵だけれど、登場人物たちは否応無しにリアルで、世界や人に巣食う闇を知っている。
    それはやはり先生自身が、この世の中が美しかったり優しかったりそんな素敵なものだけで
    出来ている訳では無いことを知っているからではないのかと思う。
    だからこそ、時折出会う光輝くものは、儚くそこはかとなく優しく美しい。

    このスピカも、美しく可愛い絵だけれど、それだけではない人の強さや弱さが描かれている。
    ハチクロやライオンでも感じ取れることではあるが、短編だからこそその深さが
    波のように押し寄せて揺蕩うように感じられる。

    以下、一作品ごとに少しずつ感想。


    <冬のキリン>
    初めて私が動物園でキリンを見たとき、生身の迫力にとても驚いた覚えがある。
    だからこそ、ハチクロで真山が言っていた台詞にはとても共感して印象深いシーンだった。
    あのシーンと同じモチーフのものが、こうした短編であるとは知らなかった。
    短い中なのに胸が痛くなる、優しく包んで抱きしめたくなる作品。

    <スピカ>
    表題作でもある作品。個人的にはこれが一番好きだ。
    優香ちゃんにとても感情移入してしまう。
    親という立場として、子供には”安定”した”幸せ”な生活を送って欲しいと思う。
    それは当然の愛情なのだと思う。
    だが、安定した平凡な生活、好きなことをただの趣味で終わらせて
    片手間にやるだけの人生を、幸せだと思えない人間というのもいるのだ。
    高崎くんの言う、泣いてもやめられないものがある人間。
    そういう人間にとって、好きなものというのは趣味の範囲でおさまるものではなく
    山があるから山に登る、というような、呼吸をするのと同じくらい当たり前のことで
    それがなくては死んでしまう。生きている意味などない。それくらいのものだと思う。
    好きなことをしていることは楽しいが、楽ではない。寧ろ辛くて苦しい。
    その最中にあって、一番理解してほしい人に話せない、応援してもらえないことは
    本当に辛くて、こんな思いをしてまで続ける必要があるのだろうかと悩み、
    一体自分はなんの為に生きているのか、という人生論にまで発展する。

    優香ちゃんのお母さんの、
    「もしダメだったらどうするの!? みんなに笑われるのよ!?」
    「バレエは趣味ていどにしといたほうがいいんじゃないかしら」
    という言葉にはとても傷ついた。自分に重なるものがあったせいもある。
    だからこそ、「舞台をみにきて」と伝えることができる優香ちゃんの真っ直ぐさが
    眩しすぎて苦しいほどに感じられた。
    しかし彼女の背中を押したのは、そんな台詞を声に出して伝えさせたのは
    高崎くんなのかもしれないと思う。
    彼の態度から、そんな過去を抱えているとは予想できなかった。
    とても驚いたし、彼の辛さを考えると本当に涙が出そうになる。
    試合に出るかわりに自分ができることを探そう、と決意し実行して
    部員たちにここまで頼られるようになるまでに、
    いや今でも、どれだけ悔しく辛い思いを抱いているか知れない。
    それでも、やめられないのだ。
    そこにいるだけで、息を吸い込むのと同じように。

    優香ちゃんのお母さんが、ただ”嫌なお母さん”で終わらなくて
    理解してくれたことが本当に嬉しかった。
    もう、優香ちゃんは大丈夫だと思えた。わかってくれる人がいる。
    それだけで、人は救われることがある。

    <ミドリの仔犬>
    キオの探偵ごっこの冒険はとても微笑ましく勇ましいのだが
    ヤスダさんが犬の話をするところから明らかに怪しい態度とはいえ
    まさかそんな理由で犬を飼っていたとは。
    動物愛護のボランティア活動に携わっている自分としては、フィクションとして笑えない。
    こんな可愛い話にこんなひどいエピソードがつまっているとは思わなくてとても驚いた。
    ピーターラビットや101匹わんちゃんなどでも、動物を毛皮にするために捕まえる
    というエピソードは出てきて、それは酷いこととして描かれるのに
    実際に毛皮のコードや襟巻や手袋が、この世の中からなくならないことの不思議。
    毛『皮』なのに毛を刈り取っているだけだと思っている人までいる始末。
    毛皮がどうやって作られているのか知らない。知っていても毛皮を求める人は
    自分で動物を飼ったり捕まえたりという労力すらはらわず買ってすませる分
    ヤスダさんのような人間よりもさらにたちが悪いとすら思う。
    犬がマフにされる行程を知っている自分としては本当に恐ろしく
    キオが折角逃げたものを連れ戻してしまったと言うシーンがとても辛く
    タミヤさんや部長たちの采配と心意気にはとても感謝だ。
    ラストシーンで写真立てでこの後の明るい未来をたった一コマで描いてしまうところが
    羽海野先生のすごさだと思った。

    <はなのゆりかご>
    犬がマフではなく、クルタンという名前をもらったことにまず安堵。(笑)
    トゲ谷博士が奥さんと作った、という話はあながち嘘でもなくて
    眼鏡にそんな機能があるとは思わなかったのでかなり衝撃だった。
    ちょっと切なく、とてもやわらかくてふんわりと泣ける作品。

    <夕陽キャンディー>
    まず、タイトルと冒頭のモノローグに惹かれた。
    素敵な言い回しだと思った。
    兎に角田中先生がカッコよすぎる。
    冬のキリンと同じくこれもとても短いが、深い印象を与える。
    え?と思わせるラストも好き。

    <イノセンスを待ちながら>
    当時これを読みたいがために雑誌を買ったので、再収録が嬉しいような悔しいような。(苦笑)
    私はパトレイバーも少しかじっただけ、
    攻殻機動隊も興味がありながら中々機会が持てず今まで見たことない。
    しかしながらこれを読んでとても優しく深い気持ちになれた。
    パトレイバーを見ているときの説明のコマで、先生の形の器にちょっとずつ溜まっていく描写と
    ”光を絵で描くとき絵描きはカゲを描きます”という言葉にはっとさせられた。
    人間らしさとは一番カッコワルイ所に宿っているという表現もとても納得。
    恰好悪いけれど一生懸命。だからこそ恰好良く見えるのだと思う。
    改めて攻殻機動隊.シリーズを見たいな、と思わされた。


    あとがきと帯裏に書かれているが、
    この本の印税は東日本大震災による被災者、被災地への義援金とされるそうだ。
    知らなかった。もっと大々的にそう言ってもよいのでは、とも思ったが
    控えめなところが羽海野先生らしいとも言える。
    ツイッターでファンからの意見を聞いたり、帯に『ディガンズ』って書いちゃったり(笑)
    いつまでもファンに寄り添ってくださる優しく素敵な作家さんだから
    周囲のスタッフさんや本屋さんも素敵な人が集まるのだろうなぁと思った。

    初期短編集というと通常結構もっと痛いものになることもある気がするのだけれど
    先生ご本人は拙いと思っていらっしゃるようだが私は全くそんな印象がなかった。
    絵も美しく、表紙や冬のキリンのカラーも綺麗で
    そしてストーリーがどれもこれも素晴らしい。
    買って損はない。羽海野先生の作品を今まで読んだことがないという人にもお勧め。

  • 号泣しました。羽海野チカさんの魅力は、心の弱い部分を優しく包んでくれるところだと思います。
    バレエの話は、私も共感できる部分が多くて、励まされました。
    博士の話も共感できる部分があり、ラストシーンでぼろぼろ泣きました。
    是非とも多くの人に見てもらいたいです。

  • 羽海野チカは「ありふれた」幸せばかりを描かない。どんな立場の人間にも愚かさがあり、葛藤があることを教えてくれる。
    短編の一つに登場する、『攻殻機動隊』のバトーよりも何よりも羽海野チカが描くキャラ一人一人が、そして羽海野チカ自身がとても人間くさい。だからこそ、魅力的。
    薄い本なのに、泣いてしまった。一つ一つの話が、濃厚すぎるんだ。

    期待通りの作品だった。

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  • もう、この人の作品は!!

    原画展行きたい。


  • 2011-7-23

  • もっとこの人の作品を読みたいな。

    物語作家には、
    自分の書く(描く)物語との向き合い方に、
    いくつかタイプがあるように思う。

    A 「降りてくる/浮かんでくる」型 
    B 「取りに行く/探し当てる」型
    C 「書かされる/突き動かされる」型

    今まで読んできた作家の発言から勝手に当てはめると、

    A 上橋菜穂子
    B 羽海野チカ、グウィン
    C J・K・ローリング

    云々

  • キラキラした宝石を集めたような短編集。攻殻機動隊イノセンスに寄せたエッセイマンガ収録。不意打ちの嬉しさ!!

  • 博士と奥さんの話が好き。

  • バリエーションに富んだ初期短編集。引き出しの多さを感じさせる。個人的には「ミドリの子犬」からなる少年キオシリーズみたいなコッテコテのファンタジーが好き。

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