子どもの自分に会う魔法 大人になってから読む児童文学 (MOE BOOKS)

著者 :
  • 白泉社
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本棚登録 : 161
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592732853

作品紹介・あらすじ

「12星座シリーズ」など心に響く星占いやエッセイが人気のライター・石井ゆかりさんが、クマのプーさん、あおくんときいろちゃんなど大人になったからこそ改めて読みたい児童文学の魅力に迫ります。
2016年6月刊。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルといい酒井駒子さんの表紙絵といい何とも素敵で、読後何度も眺めてしまう。
    雑誌MOEに2013年から2015年にかけて連載されたエッセイをまとめたのが本書。
    書評集などという括りではとても表現しきれない、児童文学に寄せる著者の深い思いに、思わず頭を垂れてしまう。

    その丹念で優しい筆致。
    記憶の扉をそおっとノックされるような言葉たちの力で、大人になって忘れかけていた、子ども時代の思いがありありとよみがえる。
    憧れや畏怖、怒りや劣等感、寂しさや喜び。
    なんだ、自分はほとんど成長してないのね。。と気づかされたり。

    紹介された作品はどれもみな、石井さんにとって思い入れのある作品たち。
    「新しい本はいつも、見知らぬひとのように怖かった」という著者は、大人になっても「読んだ本ばかり読み続ける」と言う。
    そのせいか、ひとつのお話への考察は驚くほど深く、もしや私は読み方が間違っていたのかと何度も自身を疑う羽目になった。
    いや、たぶんその通りなのだろう。
    多読などむしろ恥ずかしいことかもしれない。
    一冊の本でさえ、そこに込められた意味を読み解けないのだから。

    そしてまたこうも言う。
    「絵本が私たちの『根』でありうるのなら、大人になって苦悩したとき、またその根っこに立ち返り、不足した水と養分とを吸い上げて、再び飛び立つための力をえることも出来るかもしれません」…どんな絵本に出会いどんな根っこを育んできたのか、私は。戻って確かめたい。
    そして、この本を読んだからではなく何度でも立ち返ろう、根っこの部分に。
    生活の中で矮小化した価値観を解き放ち、自分の本来の心にふれるために。

    表紙をめくると現れる口絵のページにも、表紙と同じ絵が描かれている贅沢さ。
    作者さんへの限りないリスペクトを込めて紹介された、絵本と児童書は全部で30作。
    皆さんはどのページで立ち止まるだろうか。

  • 今年はつらい年で、亡くなったと聞かされていて
    実は生き別れていた実の父と、遠方に住んでいた
    義理の父(と私が思っていた方)とをふたり
    見送った年になった。

    そんなのは小説だけだと思っていたのに。
    まさに、義理の父が亡くなった、翌日にこれを
    書いている。

    先日『十歳までに読んだ本』のレビューで
    今、おとなになった私が児童書を読んでいいかと
    投げかけたところ、背中を押して下さった
    フォロワー様がいらして、この本を手にした。

    葬儀を待つ、寂しいはずの夜に、
    この本があってよかった。
    静かで、興奮したところのない、
    でも親しげな語り口。

    おとなになって、自分の中の子供と出会って
    本を通して幸せになっていけるのは、その子を
    癒せる自分だけであること…。

    子供の本を味わうことは、何の飾りもない
    根っこの、本音の自分と一緒に、こころをほどく
    ことで…楽しんだり、傷に包帯を巻いたりしていい
    ということだと、やっぱり思った。

    そう言えばうちには、『はてしない物語』がある。
    あの本の装丁の美しさ、活字と紙の好もしさ。
    読んでいないくせに、こっそりと古本処分の山の
    中から、私が抜いていたものだった。

    昔、私が占い師の方に、一度だけ、雨宿りがてら
    占ってもらった時に

    「あなたは身体が弱いけれど、そのぶん幸運で
    人には恵まれる。自分を支える力もある。
    ただ、他人に恵まれる代わりに、肉親には縁がうすい。
    無条件に守ってくれるひとに縁が薄い」

    と言われたことがあった。

    その時は、ふうん…と聞いていたが
    こんなふうに、父とほとんど過ごせずに生きて
    最後の時だけ二人ながら見送ることになると、
    その言葉が実感になってやってきた。

    もう私に、お父さんと呼んで、慕えるひとは
    どこにもいなくなった。可愛がってもらうことを
    夢想することも、できなくなった。

    お父さん、と言う言葉が、急に質感のない
    儚い言葉になった。

    そんな夜。

    この本を読み終えた時、なぜか悲しみも
    少し、棘を減らしてくれた気がする。

    箱無しでうちにやってきた、『はてしない物語」を
    今夜は抱えて横になろう。

    収録されていた『手袋を買いに』も
    私が大好きで買い求めたものだった。

    『小公女』もアン・ブックスも、
    幼い頃読んだものだった。

    私はやっぱり、幼い頃から本に包まれ、それを
    守護天使の羽根にして、毎日を
    どうにか幸せな子供として生き抜いていたのだ。

    今ようやく、あの頃、父の腕や母の手に
    甘えて包まれ、安らげなかった分、本を通して
    私が私に再会して、笑いかけられるところに来た。

    目次の『児童文学は大人になってから』

    のとおり、私の、失った子供の時間は
    今から始まる。

    それは、私にとって、遅くも早くもなく

    「今がいちばんぴったりだよ」

    と何かに囁かれている気がする。

    出会いが、子供の時でも良い。
    おとなになってからだって良い。

    それぞれ、一人ずつ、最良の船出の時があり
    再会のタイミングがあるらしい。

    あたたかなミルクティーを差し出されたように
    石井さんのことばが、胸を暖めてくれた。

    • nejidonさん
      瑠璃花さん、なんということでしょう。
      今おかれている底知れぬ寂しさを思い、読みながら思わず涙しました。
      おふたりのご冥福をお祈りします。...
      瑠璃花さん、なんということでしょう。
      今おかれている底知れぬ寂しさを思い、読みながら思わず涙しました。
      おふたりのご冥福をお祈りします。
      当分は、何を見ても何をしていても、心がそこに戻ってしまうかもしれません。
      でもそれはそういうものと受け止めるしかないのですよね。
      ひとが亡くなるというのは、やはりそれは大きなことなのですから。

      私は、同年代のひとに比べたらだいぶ早く両親を亡くしました。
      読書のたびに眼に浮かぶのは、机の前に端座して本を開いていた父の姿です。
      読み終えると真っ先に、父に小声で報告しに行きます。
      「お父さん、読み終わったよ、これ、面白かったよ。」
      すると、父が私を見つめて微笑むような気がします。
      それが、私の「喪の仕事」です。
      読みたかった本を読むことが、瑠璃花さんのとっての「喪の仕事」になるのなら、
      その時間が少しでも優しい時間であるようにと願っています。
      お身体大切にお過ごしください。
      2018/05/30
    • 夜型読書人さん
      瑠璃花さん、こんにちは。
      はじめまして。
      なんということでしょうか…心からお悔やみ申し上げます。

      世知辛い大人の世界にとって、子供...
      瑠璃花さん、こんにちは。
      はじめまして。
      なんということでしょうか…心からお悔やみ申し上げます。

      世知辛い大人の世界にとって、子供たちに向けたメッセージの花束は、やさしく包み込んでくれますね。
      どうかご自愛ください。
      ではでは。
      2018/05/30
    • 瑠璃花さん
      お二人とも、お優しいコメントをありがとうございます。
      思いに任せ綴った言葉が、同じような悲しい気持ちをお持ちの方を
      つらくさせていなかったら...
      お二人とも、お優しいコメントをありがとうございます。
      思いに任せ綴った言葉が、同じような悲しい気持ちをお持ちの方を
      つらくさせていなかったらいいが…と、自分の言葉に今更、はっとします。

      実の父とは、記憶に残らないほど幼い赤ちゃんの時に別れ、先日
      亡くなったと役所から連絡を受けて、いろいろな手続きが済み、
      荼毘に付された後だったので、最近の写真を手にすることが出来た
      ばかりでした。

      義理の父も、私と縁ができてから、すぐに病を得て、今回
      旅立つことになりました。

      実の父が、名を呼んでくれた声を知らないままだったこと。
      義理の父ともほとんど話せないで闘病を気にかけるしかなく
      病が篤くなってからは、覚悟していたとは言え、もう一度
      会いたかったと悔やむのが、どうにも心残りです。

      私は幼い頃から病院と自宅を行ったり来たり、入院の多い
      生活で、本と音楽と飾られた花と、窓からの四季が友達でした。

      境遇自体は、それだけ書けば出来の悪い少女小説のようですが
      母は私を可愛がり、美しいクラシックや童謡をきかせ
      とても良い読書の時間を、早くから過ごさせて。

      病室のベッドの上も、自宅に戻れた時の、こざっぱりと
      片付いたカーペットの上で、ひだまりを追うのも。

      祖父母の家の縁側も、別荘のリビングも…。
      電車やバスの中でさえ…心惹かれる本があれば、そこは
      私の読書スペースでした。

      今回のことがなければ、実の父のことで、

      「長女です。」

      とか

      「娘です。」

      と名乗り、

      「お父様のお名前をここに」

      と促されることは、一生なかったでしょうし、義理の父のことも

      「墓参に向かう心づもりを、ぜひ」

      といたわられることもなかったはずです。

      それを思えば。

      娘です、と名乗れるしあわせを、ふたりの父は
      私に遺して、旅立ってくれました。

      遅い親孝行だ、と思い、行き届かぬ自分に悔しくなりますが
      読みたい本を傍らの伴奏者に、ふたりに話したかったことを
      ほろほろと口にして、素直になってみようかと思います。

      nejidonさんのお父様も、今もきっと、本を開く時
      閉じる時…愛娘はこんな本を楽しんでいるのか…と
      微笑みを向けてくださっていることでしょう。
      素敵な思い出をお持ちですね。

      本は私達の鏡ですから、読み終わったよと
      これからも、ないしょで話しかけて差し上げてください。
      きっと、聞いてくださっているはずです。

      kamizakiさんの、暖かくてまなざしのするどいレビューもきっと
      良いつながりをお持ちの中から生まれていると思います。
      こんな私に寄り添う言葉を、本当にありがとうございました。

      長文、乱文、お目汚しのほど、どうかお許しくださいね。
      2018/05/30
  • 石井ゆかりさんは読者と「好きな本の話で盛り上がる」ような気持ちで書かれたようですが、わたしにとっては静かな湖の畔で爽やかな風に吹かれている、そんな癒やされ感でいっぱいになる本となりました。どの本の紹介からも幼き日の石井さんが同じ本を何度も繰り返し読まれている姿が浮かび上がり、それは表紙の酒井さんが描かれた何とも言えない可愛らしい表情の女の子と被ります。石井さんのご自分の体験から綴られる言葉には絵本や児童文学への愛や、読者への想いがまっすぐ伝わってきました。

  •  どうしても同じ本ばかり何度も読んでしまうという著者。
     おっしゃるとおり、子どもも「お気に入りを繰り返し」が基本ですね。大人だって好きな曲は繰り返し聴いてしまうのと同じ感覚かな?
     児童文学は大人になってから。で紹介されている本を読んでみたくなりました。
     生活の中で矮小化した価値観を解き放ち、自分の本当の心に触れたいときには児童文学を読むに限る。なんて言われて、思わずその気になってしまいました。
     最後に、この本の酒井駒子さんの表紙、とても好きだなぁ。読み終わって改めて眺めて見るとこの本の内容を良く表している。

  • 著名人が好きな絵本を紹介する本は
    いくつか読んだけれど、
    散文になりがちなものが多かったように思う。

    でも、さすが石井ゆかりさん。
    個人的なのに普遍的、
    人の集合意識まで届く
    言葉のひとつひとつにノックアウト。

    私もこんな文章をかける女性になりたい。

  • 父を亡くした私にとって、以下の文章はとても心に響きました。
    石井ゆかりさんの文章を読み、実際に「悲しい本」を手に取りました。いい出会いとなりました。

    「悲しい本」
    悲しみは、愛情の深さや心の清らかさから生まれます。
    悲しみを忘れずに、ずっと悲しんでいたいのです。
    悲しみという感情が、愛する人そのものと、ほとんど等価なのだと思います。
    この本の中で、悲しみは悪者あつかいされていないのです。
    悲しみを生きることが、私たちの人生においてどんなに貴重で重要かを、この本は私たちに確かめさせてくれます。

  • 雑誌MOEで、筆者が2013年〜2015年まで連載話していたものまとめたもの。

    絵本や、児童文学って、こんなにも奥深く、学びのあるものだったのですね。。
    子供の世界を広げ、子供の考え方を成長させ、人としての「根っこ」を育てる本たち。
    大人になって、それを読み直すと、今の自分の生活、性格、クセ、それらにもドンピシャで当てはまる。
    大人になっても、大切なものたちなんですね。

    ただ単に、絵本や児童文学の感想を共有するたけではなく、時に自分に照らし合わせ、そのストーリーの奥底にある意味を優しく表現できる筆者をさすがだなーと思いました。

    私自身は、子を育てたことはありませんし、これからもできるかどうかは不明ですが、いま、子育てをしていらっしゃる方には、ぜひこの本を読んでいただき、子供と一緒にその本の素晴らしさに気づいてもらいたいなーと思いました。
    子供とともに大人も成長する。そんなチャンスが巡ってくると思うから。
    2017/1/9

  • ◆きっかけ
    MOEインスタ 2016/11/19

  • 子どもの頃に読んだ本をもう一度読んでみると
    子どもの頃に思っていた内容と全然違っていたりして
    なかなかに面白い♪

    作者は、昔読んだ本を今度は大人目線で読み返し、
    子ども頃にはわからなかった魅力を
    あれこれ解説してくれています。

    子どもの頃に読んだ本を
    忘れた頃に読み返す一番の楽しみは、
    とっくに忘れていたはずの、家の匂いや母との会話
    好きだったおもちゃのことまで
    あっという間に記憶が押し寄せてくること。
    こんな風に、改めて本の魅力を語るのも楽しいけれど
    子どもの頃に感じた、本を読み終わった時の感動や
    物語の中に日常がすっぽりと入り込んでしまったような感覚をずっと忘れないでいたいと改めて思ったのでした。

  • 児童文学って、いくつになっても楽しめるんだなぁと
    実感した。

    紹介されている本は、読んだことがある本が多かった
    けれども、読んでいないものは、読んでみたいと
    思いました。

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著者プロフィール

ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。2010年刊行の「12星座シリーズ」(WAVE出版)は120万部を超えるベストセラーになった。『12星座』『星をさがす』(WAVE出版)、「3年の星占いシリーズ」(文響社)、『禅語』『青い鳥の本』(パイインターナショナル)、『新装版 月のとびら』(CCCメディアハウス)、『星ダイアリー』(幻冬舎コミックス)ほか著書多数。
Webサイト「筋トレ」http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/

「2019年 『月で読む あしたの星占い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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