- Amazon.co.jp ・本
- / ISBN・EAN: 9784593094745
感想・レビュー・書評
-
中には絵がうまいということで、生き延びた人もいた。肖像画の上手な人のもとには、同じ収容所で暮らす仲間ばかりでなく、労働を監督するカポや、時にはドイツ兵までが、自分の顔を描いてくれと頼みにきた。大切に持っていた家族の写真すら奪われてしまった人にとっては、自分の最後の姿をせめて家族に残しておきたいという切なる願いだったろう。そしてこのような環境の中で、初めて権力を握った人にとっては、得意満面の顔で絵を描いてもらうことが、自分の力を確認できるうれしい瞬間だったに違いない。ドイツ兵は新しい画用紙と絵具を持ち込んでくれ、カポは自分がくすねたパンやソーセージを分け与えてくれた。そして何よりありがたいのは、暴力を振るわれず、比較的軽い労働に回されることで、生き延びることに繋がった 。
詳細をみるコメント0件をすべて表示
全1件中 1 - 1件を表示
著者プロフィール
野村路子の作品





