- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784594002312
作品紹介・あらすじ
小説『モーリス』はE.M.フォースターが1914年35歳のときに書き上げた作品である。だが、内容がショッキングなために、作者自身の意向で生前は未発表にとどめられた。陽の目を見たのは1971年のことである。
感想・レビュー・書評
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良いラストでした。
本当に良いラストでした。
映画を見たのは随分前で、そちらも良かったけれど、私は小説の方が好き。
言葉の選び方の的確さと美しさが見事。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハワーズエンンドなどの他の著書と内容を異ににしているが、本書はむしろ頭に入りやすい内容であった。LGBTの問題が当時のように犯罪とされていた頃に比べれば、現代は身近なものとなっているからかもしれないが。
本書でも、階級の異なる人間同士が理解し合うことが出来るか、という他の作品と共通するテーマが描かれる。だが、著者自身が悩んでいた同性愛の人物達を登場させることによって、人と人との間の理解を差し迫った深刻な問題として描くことに成功しているのではないかと感じた。 -
もったいなくてなかなか読み進められなかった。フォースター、すさまじい。決して楽しい読書ではない。でも、最高でした。
読みながらずっと、何度も、モーリス! モーリス! モーリス! と叫んでいた。切ない。つらい。
クライブに振られてからも節度をもって接するモーリスに対して鈍いとも感じるクライブの態度は、それでモーリスのことをずっと愚鈍とみなしている彼には怒りより疑問すら感じる。社会的地位を得て結婚するって馬鹿になることなのか? と作者の皮肉を感じた。
同性愛であることの社会的な絶望的な制約、それをひた隠しにしなければならない馬鹿らしさ。でも、今は同性愛に関しては寛容な時代になったけれど、きっとどこか別の面でそういうバカみたいな制約があるんだろうな、気づかないだけで。そういうフィルターに敏感でありたい。疲れるけれど、蔑ろにしたくないと思います。
ハッピーエンドなのかこれ……でも作者がそういうならそうなんでしょう。同性愛者に希望を与える作者、好きです。〝ハッピー・エンドにするのは必至であった。そうするのでなければわざわざ書きはしなかったろう。作中の二人の人物がたがいに愛し合うようになり、作品が許すかぎり永遠に彼らの愛を存続させようと私はきめていた。〟それでウルフェンデン勧告が法制化されるまで内容を変えたり、そのように世の中に迎合させず出版しなかったんだからカッケー。
ウーラニア人=天王星人、同性愛者。覚えました。 -
素晴らしく、美しい作品だった。
この一言に尽きる。
映画をしばらく前に見て
ずっと読みたいと思っていた作品。
苦しみと、困惑と、愛が入り乱れ、
現実と、他人の視線と、自らが邪魔をする。
素晴らしい。
図書館で借りたが、これは欲しい。
翻訳前のものも読んでみたい。 -
大好きな映画の原作がフォースターだったので、読んでみました。出版社在庫切れか絶版かなんかで、入手は古本屋。映画はこの本を極めて忠実に映像化したんだなあというのがわかった。
フォースターのえがく、イギリス社会はぞっとするほど人間臭い。虚栄心とかそういったものが積み重なって、人は身動きをとれなくて、高度な文明社会たるイギリスと、そうではない地域の対比もすごい。モーリス、クライヴ、アレクという主要人物三人のキャラクターもものすごく確立されていて、物語にはアクセントが効いていて、長いのにだれることがなく、ストーリー性だけではなく、裏打ちされた真理みたいなものがあって、フォースターは優れた小説家だったんだなあとかんじる。19世紀、20世紀初頭のイギリスの空気感とかは、その国のひとじゃないとほんとうには分からない、とは思うけれども、想像することはできるかな。 -
フォースターが自身のために書いた一作。
ただのBL作品だと思ったら、大間違いですよ! -
モロッコ、マラケシュなどを舞台とした作品です。
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当時の社会背景を踏まえ死後発表されたり、映画化されたりしたことで話題になった本書だが、階級問題を暗示していることも忘れてはならない。
単独での評価ではなく他作品を読んだ上で、彼が何故この作品を書いたか、という点が重要ではないか。 -
未読。積読。