世界の終わりの物語

  • 扶桑社
3.18
  • (1)
  • (3)
  • (5)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 38
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594030605

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • パトリシア・ハイスミス(1921-1995)の最後の短編集。氏の66才時、1987年の出版。「世界の終わりの物語」とあるように、発展した社会の極端ともいえる姿を提示している。ぞっとするような終着点を描き、ハイスミス自身は陰で、・・ふふっ、と投げ捨てているような気配も感じる。

    スリーマイル島の原発事故が1979年、その後始末の一端を描いた「ホウセンカ作戦」、鯨の目線に立って、爆弾を着装された鯨の人間との戦いと漂流を描いた「白鯨Ⅱ」、代理母を許容するか否かを描いた「子宮貸します、対、強い正義」、癌細胞の増殖実験を描いた「奇妙な墓地」、アフリカの独立国のトンデモな政局を描いた「ナブチ、国連委員会を歓迎す」などがおもしろかった。

    ◇空恐ろしい、超超長寿のナオミの物語
    「見えない最期 」
    190才、いや210才ともいわれる、ナオミ、の来歴と今の日常。2度の離婚、80あたりからボケが始まり、独身の一人息子は施設に入れた。だが金はちゃんと出したし手紙も書いた。でも返事は「こんな施設にいれて」と文句ばかりなのだった。で義弟からの遺産もあり施設料は賄えていた。が今やその金もつきているが、こんなに生きられる、という施設の宣伝にもなるので、生かされて? 生きて? いるのだ。本人は自力ではもうなにもできないが、生命力だけは旺盛なのだった。


    原題:Tales of natural and unnatural catastrophes

    奇妙な墓地
    白鯨 2 あるいはミサイル・ホェール
    ホウセンカ作戦
    ナブチ、国連委員会を歓迎す
    自由万歳!ホワイトハウスでピクニック
    <翡翠の塔>始末記
    <子宮貸します>対<強い正義>
    見えない最期
    ローマ教皇シクストゥス6世の赤い靴
    バック・ジョーンズ大統領の愛国心

    1987に出版
    2001.1.30第1刷 図書館

  • ハイスミス最晩年の作品集。
    現実の世界や事件を彷彿させる、さまざまな崩壊や終焉、終わりや救いのない凄惨な状況。意地悪やブラックユーモアなんていうものではない、最高に悪意に満ちた作品群でした。

    とはいえ、解説で若島正氏が述べているほどに一線を越えたものとは感じなかったのですが…もう少し読者を信頼してくれてもいいのではないでしょうか。

    80年代で制作が終わりを迎えてしまったことは、とても残念に思います。
    もっともっと読みたかった。

  • 晩年のハイスミスが、自然界と人間のさまざまな崩壊の物語を綴った
    生体実験の遺体を埋めたオーストリアの墓地に、異常繁殖する巨大キノコの謎。放射性廃棄物の処理に困ったアメリカ政府が打った秘策と、そのかげで起きた恐るべき事故。高級高層マンションを突然襲う、巨大ゴキブリの恐怖。おそろしく、おぞましく、そしてとびきり面白い、愚かな人間たちの物語。

著者プロフィール

1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。

「2022年 『水の墓碑銘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

パトリシア・ハイスミスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×