キングとジョーカー (扶桑社ミステリー テ 9-1)

  • 扶桑社
3.50
  • (3)
  • (5)
  • (11)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 79
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594052591

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 舞台は一九七〇年代の英国。宮殿で暮らす王室一家の人間関係を中心に、“ジョーカー”と呼ばれる謎の人物が引き起こすイタズラが殺人へと発展していくさまを描いたミステリー。著者ピーター・ディキンスンは『ガラス箱の蟻』および『英雄の誇り』で二年連続でダガー賞を受賞している(未読)。

    この作品の魅力は、なんといっても王室の描写だろう。
    本作で描かれる英国は平行世界であり、ジョージ5世が即位せずヴィクター(クラレンス公)が病死を逃れて王位を継承するという架空の歴史を辿っている。当然、あちらにも王室自体は存在しているが、家系図は現実のものと異なっている。冒頭でも触れられるが、作中の英国自体は王室を除けば正史とさして違いはない。WWⅡにも参戦しており、チャーチルやヒトラーなど実在の人物名がちらほら挙げられるので、特に我々日本人には虚構と現実の区分が曖昧になりそうなほどだ。

    ジョーカーの正体は誰か? 殺人の動機は?
    そういった謎が解明されていくにつれ、語り手の出生が事件に大きく関与していることが明かされる。巧妙なトリックや意外な犯人こそ登場しないが、ファンタジー作家でもあり特殊な舞台設定を得意とする著者が緻密に構築した世界に圧倒されること請け合いである。

  •  「現実とは異なる家系をたどった英国王室」の王女ルイーズを主人公とする架空歴史物。一応ミステリですが、小説として普通におもしろい。王室の人間が「よそゆき」と「内輪」を厳密に使い分けているところなどいかにもそれらしいなーと思います。こんな小説を嬉々として書いて読むイギリス人て実際どうかしているよね、というところを含めて楽しめる一冊。

  • 早世したクラレンス公がもし生き延びていたら…? から枝分かれしたパラレル英国王室を舞台にしたミステリ。
    この「パラレル英国王室」が、とてつもなくよく書けている。「カッコー時計をいじったホーコン王」なんて名前が唐突に出てくるのだが、これは史実においてもクラレンス公の妹婿であるノルウェー国王を踏まえたものだろう。こんな感じの「くすぐり」が随所にあって、王室好きにはたまらない。不敬罪に引っかからずに王室を書くには、この手があったか! という感じ。
    メインのネタは比較的小粒なのだが(それでもちゃんと? 人死には出る)、ミステリ的な「謎(と伏線)の提示」と「解決」はパラレル王室関連にもふんだんにあり、飽きさせない。突飛だが緻密な舞台立てに、青春小説としても読めるほどに充実したキャラクター。傑作である。
    願わくは、近代英国王室に関して最低限の知識を仕入れた上で…とまでは言わずとも、wikipediaのページを開きながら読んでいただけたなら、面白さは二乗三乗となるはずだ。

    2013/12/16〜12/18読了

  • -

  • パラレル英国の王室を舞台にしたミステリ。謎のいたずら者=ジョーカーの正体という謎を軸に”王室”という特殊な場での人間関係の歪みが描かれる。事件を通じた主人公・ルイーズの成長も微笑ましい。

  • 数々の賞を受賞しているピーター・ディキンスンの代表作の一つ、復刊されました。現実とは異なる系図になっている架空の英国王室が舞台。ビクトリア女王などは同じなのですが、70年代とおぼしき時代に王はビクター2世。ヒロインはその娘で12歳のルイーズ。朝食の席で父王(キング)の秘密に突然気づくルイーズ。一方、ハムの入っているはずの盆の蓋を取るとそこにはがまガエルが…!?ジョーカーのいたずらは次第に悪質になっていき、ついに殺人まで起こります。ルイーズは次第に核心へと迫ります。癖のある登場人物達、特に王家の赤ちゃんを11人も面倒見た(今は高齢で寝たきりなのですが)乳母は宮殿の主のようで印象的です。細部までリアルで妙に生々しい架空王室…実在の王家はもちろんこんな風には書けませんね。葛藤しつつ現実を受け入れる少女の心意気は感動的でした。こんな作品を読むと、生きていて良かったかもと思える〜勇気を分けて貰えます。読み応えのある作品でした!

  • 「このミステリがすごい」みたいな企画があると挙がっていることが多い作品。読む前から楽しみだった。
    現実の歴史では若死にしたビクター王を生かしておいたパラレル英国が舞台となる。序盤から繰り返される「ジョーカー」のいたずら、そしてそれが次第にエスカレートしてきて……という内容。
    がちがちの本格を期待していたら肩透かしされた感じはするけど、それ以外の部分が面白すぎて、ミステリ部分への不満はほぼ無い。謎解きのときにちょっと感じるくらい。「内」と「外」を絶えず意識しなければならないロイヤルファミリーの歪みなんかは面白かった。 
    個人的には、王女ルイーズの冒険と成長の物語のように思えた。いろいろな出来事を乗り越えて、次第に成長していくルイーズに感情移入してしまい、最後まで楽しく読んだ。

  • わたしのサンリオSF文庫版を返して!

  • 1/6読了

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

Peter Dickinson

「2006年 『封印の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ピーター・ディキンスンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×