血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)

制作 : 黒原 敏行 
  • 扶桑社
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本棚登録 : 447
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594054618

作品紹介・あらすじ

ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、撃たれた車両と男たちを発見する。麻薬密売人の銃撃戦があったのだ。車には莫大な現金が残されていた。モスは覚悟を迫られる。金を持ち出せば、すべてが変わるだろう…モスを追って、危険な殺人者が動きだす。彼のあとには無残な死体が転がる。この非情な殺戮を追う老保安官ベル。突然の血と暴力に染まるフロンティアに、ベルは、そしてモスは、何を見るのか-"国境三部作"以来の沈黙を破り、新ピューリッツァー賞作家が放つ、鮮烈な犯罪小説。

感想・レビュー・書評

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  • 私達は普段、法律や道徳、倫理、良心といった「規範」を、(無意識のうちに)信頼しています。もちろん、自分や相手がそれを常に守り、破ったことがないとは言えないかもしれませんが、それでも最後には自分も相手もそれを守ることになり、それが私達を守ってくれるのだと、信じている面があります。

    しかし、もしそれを信じていない人がいたら? 規範というものに欺瞞性を見出して、それを破ることに何の罪悪感も抱かない人がいたら?
    私達はその人を理解することができませんし、同時にその人も私達を理解しないでしょう。
    そして、私達はその人の前では無力です。なぜなら、規範を持たない人間は何でもすることができるのですから。

    本書では、そういった私達の理解を超えた「不条理」と遭遇してしまった人々の運命が交差する様が描かれています。
    また、本書のテーマは、著者の次作『ザ・ロード』にも受け継がれています。気になったらそちらも読むべきです。

  • 血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)

  • no country for old menというタイトルだが、老人の回顧録というよりはもっと普遍的な話、運命論として読めた。殺人鬼シュガーの存在感はハンニバル・レクターを思わせる。巨大な何かの前に人はひれ伏すしかないというテーマは、コーマック・マッカーシーが繰り返し語っているものだが、本作ではその何かを生身の人間が体現しているのがユニーク。シュガーが延々と追いかけ回しているモスを殺すシーンではなく、ほとんど無関係なカーラ・ジーンと向き合うシーンが本作の白眉。ラストで唐突に新しいエピソードを投げ込んで幕を下ろす手法も決まってる。

  • ノワール小説みたいな味わいだったけどたぶんそうではないんだと思う

    主人公はモス だと思う
    にもかかわらず最初から最後までをベルの独白とし、シュガーのバックグラウンドすら一切説明しないのは、そのモスの死すら無情で荒んだ世界のたった一片でしかないと思わせる…

    シュガーはただひたすらに自分の道理にしたがって人を殺す恐怖として描かれているけど、
    モスすら殺していない ベルとも言葉すら交わしていない
    シュガーに追われつつ、あるいは対決の意志を密かにいだきつつも、別の要因に死に、対決できずに敗北する

  • (欲しい!/文庫)

  • たまたま線が交りあったから殺される。
    納得できないが、
    不条理ってそういうものなんだろうな。

  • 保安官の回想で終わるとは予測ができなかった。ベトナム戦争は背景ではあるが、主題ではなく、撃ち合いが主に印象に残るが、あっさりと殺されすぎる。

  • 所謂、ピューリッツァ賞作家が描いた犯罪小説。翻訳者のあとがきにあるように、本作には様々な解釈が可能だろう。まるで全てが幻影であるかのように、輪郭をぼかしたままに物語は進み、前後の流れをぶつ切りにして、屍の山だけが築かれていく。純粋悪を象徴するという正体不明の殺人者の罪と罰に触れることもなく、無為なる殺戮を朧な文体でひたすらに描写するのみ。救済という概念すらない。
    読後に残る虚無感の理由は、娯楽小説に徹することができない作者自身が絡め取られた文学という楔であろう。
    これがノワールかと問われれば、否と言わざるを得ない。そもそも作者にその意図があったようには感じない。さらにいえば、哲学的な含みも浅い。あからさまな不条理は、なにものをも指し示すことはない。コインの裏表で命運を決める殺し屋は凡庸であり、人生を語る保安官の独白に心に沁む訓戒がある訳でもない。つまりは、格好付けたスタイルだけの小説という結論になる。最大の欠点は、血塗られた大国の有り様を嘆きつつも、遂に純粋悪と対峙することの無かった保安官の極めて薄い存在感である。

    どんな文学でもいえることだが、作者はあれこれと説明を加える必要はない。理解できない部分は、如何様にも読者が脳内で補完するからだ。この作品に対する高評価は、それを表している。

  • 映画とは所々異なっていたが、共通していたのは面白いということ。

    訳者があとがきで触れていたが、会話と描写に全く区別がないため多少の読みにくさは感じさせられるが、話の面白さで読まされてしまった。

    他の作品が気になります。

  •  アメリカの犯罪小説。偶然、銃撃戦のあった現場から大金を見つけた主人公が殺人者に追われ、事件に巻き込まれていく。読点を極力省き、鉤括弧を使わない文体。
     独特の文体ではあるが、人物の行動に焦点をあてる描写と相まって、違和感はない。いかにもアメリカらしい乾いた狂気といった感じ。おそらく、これが湿っぽい描写だったら、雰囲気に合わず、単に読みにくいだけだっただろう。鉤括弧のないセリフに関しても、各セリフが短いことでそんなに混乱しないし、サラッとしているが印象深い。映画になっているようだが、確かに向いている気がする。
     話の展開としては、主人公モスが死ぬシーンの描写がうまいと感じた。保安官の話に移ったと思ったら、何の前触れもなしにモスが死んでいる。あたかも、今までに死んだ他の人間と大差がないように。非常にやるせない気分になる。だが、これが殺されるということなのだろう。
     最後の夢のシーンはとても印象深かった。生き延びる運命、死ぬ運命。それは誰が決めるのか。殺人者シュガーはその運命の執行人なのか。保安官ベルは最後、運命に引き寄せられたと感じたようだが、どうなのだろう。個人的には、それは本人が決める問題だと思う。ベルがそう思うのなら、やはりそれは運命なのだ。

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