赤めだか

著者 :
  • 扶桑社
4.16
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感想 : 368
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594056155

作品紹介・あらすじ

サラリーマンより楽だと思った。とんでもない、誤算だった。落語家前座生活を綴った破天荒な名随筆。

感想・レビュー・書評

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  • 今更ながらドラマ「タイガー&ドラゴン」を見て、落語の世界をもう少し覗いてみたくなりこの本に行き着いた。
    俳優としても活躍している立川談春の入門~真打昇進までが主なストーリーではあるが、話のメインは"イエモト"こと立川談志である。
    側で見続けていたからこそわかる立川談志の姿、人物像が丁寧に描かれており、なかなかに読み応えがあるものだった。また、落語という世界、特に前座、下積み時代の壮絶さを想像を絶するもので、かなり興味深く読ませてもらった。先日歌舞伎を題材にして小説「国宝」を読んでも感じたことだが、落語や歌舞伎などの歴史ある芸事の世界は本当に独特だと思う。一般的な常識に照らし合わせればほとんどが非常識になるのではないだろうか。
    落語好きな人にはもちろんのこと、落語を知らない方にでもおもしろく読める本だと思う。そしてこれを読むと落語を聞きたくなること間違いなし。また一つ新しい世界を知ることができたことに感謝。

  • [談の噺]落語家になると決めて親元から離れた談春(オレ)は、伝説の噺家である立川談志の弟子となる。矛盾に耐えろという師からの言葉を実践するかのような毎日が続くなかで、何度も先の不安に打ちのめされそうになるオレであったが、憧れや負けん気、そして嫉妬や師匠への愛が入り混じった感情が彼を落語の世界に引き止め、ついに師匠の面前で二ツ目の昇進試験を行う日がやってくる......。著者は、今は亡き立川談志の愛弟子であった立川談春。


    本からむんむんと情のにおいが漂ってきました。その情の一つひとつに笑わされ、ほろっとさせられ、考えさせられる。著者が落語家だからというつもりはまったくないのですが、なにか上質でくつろぎのある口上を聞いているかのごとき気持ちになりました。どこか人の弱さを代わりにぐっと呑み込んでくれるかのような文章の運びにも、なんとも言えない優しさとあたたかみを感じることができました。


    落語の世界の中でのそのまた立川談志の世界という中で繰り広げられる人間関係は濃密そのもの。それ故に師から弟子への言葉の中には、師のみが語ることを許されるであろう至玉が散りばめられています。それに応える弟子の側の粋もなかなか読み応えがあり、涙を眼にためながら「師匠よりオレの方が上手い!!」とのっぴきならない様子で言い切った弟子のエピソードには本当に泣かされました。

    〜落語家は伝統を語っていかなければいけません。当人の段階に応じた伝統を、落語を語ってゆく。そしてウケる根田を作ってゆく、それをこれからやってゆくのです。そして、最後には己の人生と己の語る作品がどこでフィットするか、この問題にぶつかってくると思います。〜

    立川談志って本当に桁違いの男だったんだなぁ☆5つ

  • 17歳で天才落語家・立川談志に入門。
    両親の反対により新聞配達をしながら、「上の者が白いと云えば黒いもんでも白い」世界での落語家前座修業が始まる。
    三日遅れの弟弟子は半年で廃業。なぜか築地市場で修業を命じられ、一門の新年会では兄弟子たちがトランプ博打を開帳し、談志のお供でハワイに行けばオネーサンに追いかけられる……。様々なドタバタ、試練を乗り越え、談春は仲間とともに二ツ目昇進を目指す!

    テレビドラマ『下町ロケット』(TBS系)などで俳優としても活躍、「今、最もチケットの取れない落語家」の異名を持つ立川談春のオリジンがここに!
    立川流の修行は、談志師匠に大量の用事を言いつけられるところから始まる。
    立川談志師匠の落語の稽古は、「浮世根問」という初心者向けの噺で落語のリズムとメロディーを叩き込むところから始まる。
    談志師匠の稽古は丁寧で、お辞儀の仕方や扇子や目線の置き方や声の張り方まできっちり教えてくれる。チェックするところはちゃんと指摘するが、褒め上手だし相手の進歩に合わせて教える。
    談志師匠に礼儀作法や気遣いなど修行するために築地市場で桂文字助師匠から手ほどきを受ける時の数々のエピソード(仕事を通じてコミュニケーションや気遣いが自然に出来るようになった。
    「スパイシー事件」は大爆笑エピソード)、談春と弟弟子・志らくのライバル関係(覚えるスピードが早い志らくに追い付くために友人になり切磋琢磨するエピソードの数々)、談志師匠と弟子の馴れ合わない壮絶な関係(談志師匠を批判した真打ちと談志師匠の芸人のプライドを懸けた喧嘩のエピソードなど)、前座時代の空腹と戦った爆笑エピソード(談志師匠が寝た後に家の隣のスーパーで一日分の食事を食べているところを見つかり怒られるエピソードや立川流一の大食い談之進のエピソードなど)、落語家としてスタートを切れる二ツ目になるためのハラハラドキドキの試験、談春が真打ちになる時の事情、談志師匠の名言の数々「落語とは業の肯定」「嫉妬とは、己が努力行動をせず相手の弱味を口であげつらって自分のレベルまで下げる行為」「現実は事実だ。現状を理解分析しろ。そして原因を見つけ処理しろ」、落語という芸人の世界で立川談志という天才に憧れた弟子たちの一流の芸人を目指す苦闘奮闘を描いた傑作青春物語。

  • 立川談春師匠の修業時代のエッセイ。
    対談番組に出演されていたのをお見かけしたので、およそ10年ぶりに読みました。

    師匠の談志は、柳屋小さんの弟子。若くしてその才を謳われ、天才と言われた方です。(この点で、敬愛する小三治師匠とは対照的です)

    入門してからの談志師匠と弟子たちのやり取りが軽妙な筆づかいのうちに語られますが、まさに落語そのもの。抱腹絶倒しながら、ほのぼのとさせられ、ちょっぴり涙させられます。

    談春師匠の第一作とのことですが、当時から世評高く、講談社エッセイ賞をとられたのも納得です。

    再読して今回印象的だったのは巻末近くで語られる歌手のさだまさしさんとのやり取り。弟弟子の志らくさんに真打ち昇進で先を越され、自分の境遇を嘆く場面でした。

    さだ) 談春、一体自分を何様だと思っているんだ。立川談志は天才だ。俺たちの世界でたとえるなら作詞、作曲、編曲、歌に演奏どれをとっても超一流。そんな凄い芸人が五十年の間に二人も三人も現れるわけないだろう。憧れるのは勝手だがつらいだけだよ。談春は談志にはなれない。でも談春にしかできないことはきっとある。そのために談志の一部を切り取って近づこうとするのは恥ずかしいことでも逃げでもない。自分にしかできないことを本気で命がけで探してみろ。

    談春) でもオレもう少しなんとかなりたい、オールマイティーに近づきたい。

    さだ) あのな、誰も自分のフィールドに自信なんて持てない。自分の長所を伸ばすことだけ考えろ。長所がマラソンならマラソンで金メダルとるための練習をすればいいんだ。マラソンと100メートルどっちが価値があるかはお前が死んだあとで誰かが決めてくれるさ。お前、スタートラインに立つ覚悟もないのか。

    談春) あります。

    さだ) それなら早く真打ちになれ。そこがスタートラインだろう。

    年明け早々、背筋を伸ばしてもらえた心持ちにしていただきました。

  • 面白かった。
    どの世界でも残っていくのはわずか!

    真打になることの大変さ!
    立川流は好きだわ。

  • 身長制限で閉ざされた競艇選手への道。
    立川談志の落語に出会い、弟子入り。
    家を出て、高校を辞めて、住み込みで新聞配達をしながらの前座時代。
    二ツ目昇進と真打ち昇進の試験。
    落語家を志してからスタートラインに立つ(真打ち昇進)までがとても正直に、時に滑稽に語られている。

    語りに引き込まれて、一緒に笑ったり泣いたりしているうちに談志師匠も兄弟子、弟弟子もみんな好きになってしまう。
    全編通して感じるのは談志師匠に対する絶対的な想い。
    小さん師匠の仰るとおり、「談春は談志に惚れ切っております」。
    ただただ、この人に認められたい。そんな一途さに感動した。

    自分のことを考えると、尊敬する先輩に認められたいという思いはある。
    お役に立ちたいとも思う。
    談春さん程のモチベーションではないとしても、その気持ちを大切にしようと思った。

  • プロの落語家って、普通の感覚の人ではできないのかも知れない…。とこれを読んで、そう信じ込んでしまうほど、本人も含め、登場する人たちが個性豊か過ぎ!
    立川談志は、生存していたころは、ただただ破天荒な落語家…というイメージを持っていましたが、これを読んで、私が思っていた談志の人物像が変わりました。真剣に落語のことを考えていたんですね。憎めない人柄。
    でも、ここに弟子入りした人たちは大変だったんですね。
    それにしても、面白エピソードが満載で、本当に笑いながら一気に読み進んでしまいました。
    師弟愛もすごい!半端ではない師弟愛を感じました。
    うん、面白い!落語聞いてみたくなりました!
    この本も皆さんにお勧めしたい!

  • 談春師匠は私と同学年。私がお気楽な高校生活を満喫していたのと同じ時期に、談志師匠のもとに弟子入りして厳しい修行に耐えていた、というわけだから驚くほかない。厳しいながらも愛情を持って真摯に弟子に接する談志師匠と、師匠に強烈に憧れている弟子たち。その師弟の強い結びつき、あり方には嫉妬すら感じてしまう。人材育成に関わるすべての人に読んで欲しい一冊。

  • 浅草キッドを思い出しながら読み進めたが最後に涙腺崩壊。厳しくも愛情あふれる修行の描写の数々。教育ってこうありたい。

  • 太田上田で太田さんが紹介していたので読んでみた。
    対志らくの分量は思っていたよりも少なかったが、色々な思いは感じ取れた。
    そして、二つ目昇進時の戸田競艇での勝負論がやはり興味深い。博打の才能とはいくら儲けたかではなく、いくら買えたかだ、というのは非常に面白い指摘。

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