崩壊する世界 繁栄する日本

著者 :
  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594059019

作品紹介・あらすじ

『ドル崩壊!』『本当はヤバイ!韓国経済』の著者、"マクロ経済"診断士が緊急提言。国家のモデルとは、その国の経済がいかに「付加価値」を稼いで成長し、「輸入」(輸出ではない)を可能にするか、ということである。マスメディアはGDPなど単体の経済指標を取り上げて「日本はもうダメだ」と言うが、それはそもそも大きな間違いなのだ。「GDP/GNI」「国際収支」「対外債権・債務」「為替相場の推移」など多面的かつ連結的に分析することで初めて、国家のモデルは見えてくる-。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年のデータの本なのでちょっと古いというか、答え合わせとして読んでると面白いのが経済本。
    アイスランドとかあったなー、と思い出しながら、その後の世界の変貌ぶりにこのころはまだ比較的平和だったと思い知る感じ。
    でもあまり変わってないところとかもあるなぁ、という印象。

  • 多くの経済学者・政治家が、GDP成長率・金利・物価指数・国債残高・為替レートを経済指標としてあげる。たとえば、現在の日本はデフレで円高であることを問題としている。

    しかし、本書ではGDPのみならず、GNI(GDP+海外からの所得の純受取額)、GDPの構成、国際収支・経常収支・貿易額にも着目しており、より複合的な観点から見れば、円高は望ましく、国債残高も問題ないとしている。

    GDP=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫品変動+純輸出

    国際収支=経常収支+資本収支ー外貨準備高+誤差脱漏

    経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支

    ★5つをあげたいところだが、経済非専門家には、国際収支・経常収支の説明は、分かりづらいのではないだろうか?少なくとも、インターネット上でどこで調べればそれら指標が入手できるか、明記してほしかった。ということで★1つ減点した。

    <hr>
    第二章から第九章では、アイスランド・韓国・ロシア・イギリス・ドイツ・スペイン・中国・アメリカの8ヶ国のGDP構成・国際収支・経常収支を明らかに、その問題点を指摘する。アメリカのマッチポンプ金融詐欺はほぼ想定どおりで、ロシア・スペインも粗方予想通りの内容だったのだが、イギリス・アイスランドの分析は目新しかった。イギリスはGDPの4倍、アイスランドに至ってはGDPの17倍もの対外債務を抱えている。

    よく、日本政府の借金がGDPの1.8倍から1.9倍と先進国で最大であることが問題視される。しかし、日本政府の借金は、全て日本国内でまかなっている。対外債務はほぼ無視できる。一方、イギリスとアイスランドは、政府ではなく国全体で、GDPの4倍、17倍もの借金を抱えている。

    イギリスのエコノミスト誌は、Japainと日本経済の警鐘を鳴らすが、どうやら自国の問題を封印することが目的のようだ。イギリスのマスコミは、ユダヤ金融資本と一体なので、イギリスのマスコミの言うことは鵜呑みにしないほうが賢明である。

    本書が指摘する日本についての誤解は、日本が外需依存の国であるということである。GDPに対する輸出額・輸入額の占める割合は、アイスランド・スペインを除き日本を含めた7ヶ国で比較すると、輸出入ともドイツ・中国・韓国が圧倒的に高く(30〜40%)、日本は輸出についてはアメリカに次いで2番目に低く(15.5%)、輸入については最下位である(13.1%)つまり、日本は外需依存国ではなく、内需依存国である。

    また、経常収支について、日本は世界最大の債権国でもあり、輸出が好調だった2006年ー2007年でさえも、貿易収支よりも所得収支が既に上回っていた。世界経済の冷込み、円高により、貿易黒字額が減少あるいは赤字に転落する可能性があるが、大幅な所得黒字により、経常収支の黒字は保たれる。つまり、日本は、イギリスやアイスランドのような、対外債務国に陥る可能性は少ない。

    よって、本書では、日本は内需依存国であり所得収支黒字であることから、輸出産業の視点で円高を恐れるのではなく、消費者視点で円高は歓迎すべきであるとしている。

    日本について現状整理(本書p237より引用)
    ・継続的な円高
    ・貿易黒字縮小あるいは赤字化
    ・所得収支黒字拡大・経常収支黒字維持
    ・巨額な家計の金融資産、特に現預金資産
    本書の執筆は2008年12月〜2009年1月ごろであるが、2009年11月においても、これら条件は変わっていない。

    本書による提言
    1)円高を是認、輸出企業中心から個人消費拡大に重点を置いた政策へ転換、GDPに占める民間最終消費支出割合を6割超へ
    2)公共投資を実施(環境対策や人口減対策)し、総固定資本形成を高め、GDPを嵩上げ
    3)所得収支黒字最大化、GDPの低成長を補い、GNIをアップ
    4)成長率評価基準の見直し、GDP&GNIへ

    2009年11月時点の実行状況をベースに、採点すると次のとおりになる。
    1)△麻生政権時の給付金・エコポイントであり、民主党も、未実施であるが子育て支援でばらまきを公約している。
    2)×環境対策・人口減対策のための公共投資、という戦略は提示されていない。
    3)△民間主導で海外企業買収が行われている。世界的な株安&円高である今が海外企業・海外資産を買収するチャンスである。本書では触れていないが、イギリスの資産を買い占めるチャンスではないだろうか?
    4)×残念ながら、マスコミの論調は相変わらずGDPである。

    必要な提言をあらためると、次のようになる。
    1)民主党政権下で、子育て手当て・エコポイント継続など、確実な消費喚起策の実施
    2)環境対策・人口減対策といった公共投資戦略の策定
    3)官民合わせて積極的な海外資産・海外企業の買収
    4)GNIのアピール、マスコミ教育

    <hr>
    目次
    第一章 「国家のモデル」とは?
    第二章 アイスランド「自壊した“ヘッジ・ファンド国家”」
    第三章 韓国「失敗したモデルを引きずる“自称・貿易国家”」
    第四章 ロシア「原油安で崩壊寸前“オイル至上主義国家”」
    第五章 イギリス「フェイクマネーに溺れた“金融国家”」
    第六章 ドイツ「欧州を代表する“外需依存国家”」
    第七章 スペイン「不動産バブル崩壊と共に沈む“建設業国家”」
    第八章 中国「輸出減と輸入激減が進む“縮小成長国家”」
    第九章 アメリカ「マッチポンプが崩壊した“金融詐欺国家”」
    終 章 日本「繁栄する“新国家モデル”」

  • まだ少数派とは思いますが日本経済の強さを記した本が増えてきたように思います、今までそれらを主張してきたのは私の知る限りでは、日下公人氏、増田悦佐氏、長谷川慶太郎氏あたりでしょうか。

    そのグループにこの本の著者である三橋氏も加えることができるでしょう。更に、彼は中小企業診断士の資格を持っていて、実際に中小企業の診断も行っているようです。中小企業を経営指導するにあたっては、弱点の指摘よりも長所を伸ばすことが重要です、その考え方からこの本も書かれていて彼の波長を捉えることができたのかもしれません。

    世界の主要な国家モデルを解説した上で、それらの国に最近発生した事件を解説してあったので理解が深まりました。

    以下はためになったポイントです。

    ・国家のモデルとは、その国の経済がいかに「付加価値:GDP」を稼いで成長し、「輸入(輸出ではない)」を可能にするかの概念である、米投資銀行は借金を膨らませてROEを高めていただけ、国民の幸福を考えた場合、対外債務を増やして国民に消費させる米国モデルは間違っていない(p19、22、47)

    ・GDPとは、1)国の年間フローを示しており、ストック(資産・負債)は意味しない、2)GDP=民間最終消費支出(56.6)+総固定資本形成(23.2)+政府最終消費支出(18.1)+在庫変動(0.6)+純輸出(1.6)、である(p25)

    ・輸出をどれだけ拡大しても、それ以上に輸入が拡大すればGDPは増加せず、むしろ減少する、韓国が良い例(p28)

    ・国際収支=経常収支+資本収支+外貨準備高増減+誤差(p40)

    ・日本政府の巨額債務も95%が自国通貨建てなので、円を刷って返済することが可能であり、財政破綻はない(p46)

    ・最近の日本は6年以上の景気拡大が続いたが、国家モデルが円安・海外へのマネー流出に基盤があったため、中小企業・一般国民にはその恩恵は享受されなかった(p56)

    ・1397年に成立したカルマル同盟(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)はデンマークを盟主にしたもので、その範囲はフィンランド・アイスランド・グリーンランドにも及んだ、ス・フィがバルト帝国で分離したが残りは19世紀初頭までデンマーク海上帝国で存続、アイスランドがデ・ス・ノから融資を受けられた理由もここにある(p68)

    ・アイスランドが預金口座凍結したことに対して、イギリスは反テロ法を持ち出して、英国内のアイスランドの銀行資産を凍結した(p64)

    ・アイスランドの経常収支は、4項目(貿易・サービス・所得・経常移転収支)のすべてが赤字、アメリカは貿易赤字は大きいが、サービス・所得収支は黒字である(p69)

    ・韓国の成長モデルは、アイスランド(金融立国)と異なって、貿易立国を採用(ウォン安、資源安、米需要大、円安の時は順調)していたが、2007年10月末までのウォン高は貿易黒字拡大でなく投機マネー流入による(p83、96)

    ・ロシアは現在も人口減少が毎年50万人を超えているが、2001年から2007年まで毎年5%成長をしている、これは国民所得が1万ドル未満の成長途上にあるからで、人口増加は絶対条件ではない(p110)

    ・世界の為替取引は全体の34%がイギリス、アメリカ:16%、スイス・日本・シンガポール:各々6%と比較して群を抜いている(p126)

    ・日本の対外債務対GDP比は、50%(2008年2月)に対して、米国:100%、イギリス:400%、EU各国:100~200%、アイスランド:900%である、イギリスが大きい(p131)

    ・中国は輸出が減少しているにもかかわらず、輸入の減少額が輸出よりも上回っているので、純輸出が増加してGDPは増加する統計となる(p168)

    ・米国ドルが基軸通貨であり理由として、1)米国債の格付けがトリプルA、2)原油取引が米ドル、である(p190)

    ・新自由主義を高らかに唱えていたアメリカ、イギリスが金融機関の国有化をしている、FRBの窓口融資は、護送船団方式時代の日本さえもしなかった証券会社への融資も含んでいる(p210)

    ・日本の家計が保有する現預金の総額(約800兆円)は、アメリカのそれ(500兆円)を上回っている、人口比を考えると驚異的(p237)

    ・日本政府の債務の95%以上は日本の民間から借り入れているので、日本国民から見れば「債権」、これを「国民一人当たりの借金」と言い換えるのはおかしい(p248)

    ・日本政府の債務はGDPを超えるので破綻という論理は、GDPというフロー(利益)と債務というストック(借金)を比較していることになる(p249)

  • この人の作品は題名が過激だけど中身は数字を根拠に
    丹念に調べていてしっかりしているよね。

    最近、よく雑誌に取り上げられてきたし。

    内容納得。でもいい意味でほかの本と趣旨が
    同じ=一貫しているので★は2つということで。
    (驚きなしなので)

  • 相変わらず経済指標等数値データに基づいているので説得力があるのと、文章自体は平易に書いてくれているのでわかりやすいです。GDPや国際収支等から日本、アイスランド、韓国、ロシア、イギリス、ドイツ、スペイン、中国、アメリカの国家モデルを解説されています。
    ちなみに三橋さんの著作を読むのは5~6冊目ぐらいでしょうか。著者の書籍を読むまで、新聞やテレビの情報から漠然としたイメージのみで(実際の経済指標等数値データを確認することなく)誤解していた事項が、恥ずかしながら結構ありました。
    日本という国は最大の対外純債権国であり、また主要国の中ではアメリカに次いで輸出依存度(輸出GDP比率)が低い内需依存国家。GDPの約6割を個人消費が占める国だったりします。

  • 2009/7/3 
    各国の国家モデルってのは良い理​解の切り口だな”

  • 本当なのか? と思うところも多いが、経済の指標をどのように分析するのか、やAspectを増やすという意味では、読んで面白かった。

  • いやはや重厚な内容のマクロ経済書です。各国のバランスシートを一つ一つ検証しながら経済実態を丸裸にしています。そもそもバランスシートやGDPや輸入輸出、為替変動とは何なのか?という所から出発し見事に各国の実態を論証している。マクロ経済を勉強する上では、これだけ内容の充実した本はないと思います。

    改めて日本の底力を垣間見ることができる一書。

    この本で知識付けて統計局のホームページとか見て理解できたら十分な経済通です。

  • <本の紹介>
    『ドル崩壊!』『本当はヤバイ!韓国経済』の著者、“マクロ経済”診断士が緊急提言。国家のモデルとは、その国の経済がいかに「付加価値」を稼いで成長し、「輸入」(輸出ではない)を可能にするか、ということである。マスメディアはGDPなど単体の経済指標を取り上げて「日本はもうダメだ」と言うが、それはそもそも大きな間違いなのだ。「GDP/GNI」「国際収支」「対外債権・債務」「為替相場の推移」など多面的かつ連結的に分析することで初めて、国家のモデルは見えてくる─。
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    ここ数年、日本の中でもいろんなことが起きた。
    ライブドアショック、村上ショック、サブプライムを発端とする世界同時不況、、、そして政権交代。
    その間、同じように世界の通貨にも韓国ウォンがデフォルト寸前にまで追い込まれたり、石油の取引通貨がドルからユーロに変わるって話が出てきてたり、イギリスのポンドの価値が半分になったりしてる。
    日本の株式市場が安定しなかったこともあって、自分は外貨債権や外国株式に手ぇ出したりしてるんで手持ちの通貨はドル、ユーロ、元、ウォン、リラ、ランド、、、といろんな通貨になってて、一見リスク分散されているようにも見える。「こんだけやっとけば例え日本円がどうにかなっても、その分上がった通貨があるはずだし大丈夫だろな」とか思ってたけど、この本を読んで実際のとこはリスクの考え方を見直した方がいいのかなって思いました。

    この本はおもしろかったです。
    アイスランド、韓国、ロシア、イギリス、ドイツ、スペイン、中国、アメリカ、そして日本。
    世界の各国の国家の経済モデルを解き明かして、メリットデメリットを比較しながら今後どうなっていくって予想を立ててる。確かになーとか、あんときホントやばかったもんなーとか、自分の経験も相俟ってしっくりくることがたくさんありました。で、思った感想が、「日本に生まれてきて良かったな」でした。これは、本を読めばわかると思います。
    世界で一番安定している国、逆にそれで反感買ってるくらいの優等生な国ですわ。日本が借金で崩壊するなんて、この先世界が全部敵にでもならない限りあり得ない。日本の国債の95%は日本人への貸し出しだし。日本の借金が何千兆円あろうが、あくまで国民にとってはそれは借金でなく、債権だ。日本が円の通貨発行権を持っている限り、つぶれることはまずあり得ない。そして、近い将来につぶれそうな国もちらほら、、、多分、モデルを変えてくるとは思うけど。そのときは自分たちもそれに合わせて変えればいいんだしね。
    他国の通貨の価値が下がっていくリスクがあるのに、他国の通貨にリスク分散してることってそんなにいいことではない気がしました。でも、じゃー円だけ持ってりゃいいのかっつーと、それもちょっとな。。。

    一冊で世界の経済を広く見渡せるいい本だと思います。
    やっぱり、「今何にお金を使うのか」は「あとに何を残せるのか」を考えながらバランス取って振り分けていかないといかんなぁ。。。

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著者プロフィール

東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業、NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立、09年に株式会社三橋貴明事務所を設立した。
2007年、インターネット上の公表データから韓国経済の実態を分析し、内容をまとめた『本当はヤバい!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。その後も意欲的に新著を発表している。単行本執筆と同時に、雑誌への連載・寄稿、テレビ・ラジオ番組への出演、全国各地での講演などに活躍している。また、 当人のブログ「新世紀のビッグブラザーへ」の1日のアクセスユーザー数は7万人、推定ユーザー数は21万人に達している。2012年1月現在、人気ブログランキングの「政治部門」1位、総合ランキング2位(参加ブログ総数は約90万件)である。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/
主な著書に『国民の教養』(扶桑社)、『疑惑の報道』(飛鳥新社)、『2012年大恐慌に沈む世界 蘇る日本』(徳間書店)、『増税のウソ』(青春出版社)、
『三橋貴明の「日本経済」の真実がよく分かる本』(PHP研究所)などがある。

「2012年 『ユーロ崩壊!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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