予兆とインテリジェンス

著者 :
  • 扶桑社
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本棚登録 : 62
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594064471

作品紹介・あらすじ

日常的に入手できる情報を基に国家と社会の行く末を見定める技術。インテリジェンス最前線にいた知の巨人は今回の危機をどう捉えていたのか?-。

感想・レビュー・書評

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  • 「知の巨人」とも称される佐藤優さんが、2005年から2011年にかけて、
    あちらこちらに寄稿されたモノをあつめた一冊です。

    それぞれ独立した記事として見れば、ふむふむと流してしまいますが、
    集約して俯瞰すると、、唸るくらいに今の国難を「予兆」しています。

    フロー情報がストック情報として転化された、ともいえましょうか。
    2011年6月に出された一冊で、東日本大震災から3ヶ月後になります。

    震災という有事に対する対応が不十分であった背景には、、
    それだけの原因がある、そんなことを痛感させてくれた内容でした。

    民主党やその系譜の党(生活、社民、みどりなど)は、
    そんな原因となった膿の集合体でもあるのだろうな、とも。

    情報を集めて、活かすとはこういうことなのかと、あらためて。
    今回の参議院選後に、今の実情を追加して文庫に落としてほしいな、なんて。

  • この本は菅直人前首相が辞任直前に購入した本のうちの一冊だということで話題になりましたね。外交や政治だけではなく、筆者の個人的な部分に関する考察も読むべき価値があると、個人的には考えております。

    この本はたしか菅直人氏が総理大臣をやめる前に購入した本の一つとして有名になりましたね。ここに収録されているものは著者が過去に未公開とされてきたものを中心に収録されてあるのだそうです。

    僕が個人的に読んで面白かったのは政治や外交について書かれた事ではなくて第三章に収録されてある『自らと社会について』というところで、自分の過去のことや母校である同志社大学の恩師たちの回想。筆者が職業作家になるきっかけを作ったエッセイストで通訳の米原万里さんの『上からの介入』については日頃、国際情勢や外務省に対する痛烈な批判を展開している彼とはまた別の姿が垣間見えたような気がしてなりませんでした。

    特に佐藤優さんと米原麻里さんとの交流は僕にとってのこの本のハイライトで、佐藤優さんが『小菅ヒルズ』に『512日泊513日間拘留』される直前に交わされた電話の
    『外務省はあなたを切っている』
    『組織が人を切るときの怖さを話しておきたいの』
    という遣り取りはやはり、当事者同士にしかわからない緊迫感があって、非常に面白く読めました。

    そして、彼が外務官僚として『どこでどう間違えて』『国家の罠』に自らがはまってしまったのか?それに関する『懺悔』とも取れる酒器も読み応えがございました。詳細は本書に譲るとして、現在、霞ヶ関や永田町で一体何が起こっているのか?国際情勢の最もディープなところはいかにして動いているのか?その一端をするためにも好著であると考えます。しかし、菅さんが減益の総理のときにこれを読んでいたら、そんなことをあるときにふっと考えてしまうのは僕だけでしょうか…。

  • まえがきとあとがきだけで十分面白い。現下の日本のパワーエリートは適切な対応能力を欠いている。だが日本は民主主義国家である以上、彼らの能力が平均的な日本人の水準から大きく乖離することない。つまり、パワーエリートたちの情けない姿とは我々国民の情けない姿そのものなのである。
    自分のことは棚に上げて政治を批判するのではなく、一人ひとりが、社会の問題を自分の問題として考えなければならない。

  • "政治と外交を著者である佐藤優さんの経験を踏まえた深い洞察力とともに語っている。
    ある時代の一コマの出来事を切り出した、コラム集。
    現実の世界の出来事へのコメントなのだが、上質なスパイ小説の如く読者を飽きさせない語り口が魅力のひとつ。"

  • ウィキリークスは21世紀に形を変えて現れたアナーキズム。
    インテリジェンスの世界で本気で怒っている国家は理性を最大の武器にする。感情的にならず理詰めで中国、北朝鮮と向かい合う。

    全世界に同情されながら死に絶えるよりも全世界を敵に回しても生き残るという日露戦争、大東亜戦争で我々の祖先がもった信念を持たずして、核兵器保有の議論は出来ない。

    食事を一緒にすることが大切。人間関係を深めることになる。

  • 永田町と外務省の間を生きてきた筆者が、インテリジェンスの目を通して世の中を分析する。中国とのぶつかり方、北朝鮮を生かすか潰すか、核武装するとは、利己的に生きるなど。

  • 最近の論壇でも有名になっている佐藤優の新刊書。

    1章が新聞のコラムをまとめであり、2章が外交としてオピニオン誌などの論文のまとめである。

    あと書きにかいてあるが、東日本大震災後に突然、危機が生まれたのではなく、構造的な欠陥のためであると看破している。

    総理大臣の質は国民の質、内部の閉ざされた価値観に縛られてしまった外務省の質の低さから来る、国益を損なった外交の数々。

    それらすべては、全部別個におこっているわけではない、すべてが関連している日本の問題点であるとしている。戦略的思考が弱いと言われる日本人だが、ここの指摘を受けて問題点を個々にあてるだけではなく、日本全体の問題として共有したい。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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