私にふさわしいホテル

著者 :
  • 扶桑社
3.61
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本棚登録 : 1295
感想 : 245
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594066833

作品紹介・あらすじ

「元アイドルと同時受賞」という、史上最悪のデビューを飾った新人作家・中島加代子。さらに「単行本出版を阻止される」「有名作家と大喧嘩する」「編集者に裏切られる」etc.絶体絶命のトラブルに次々と襲われる羽目に。しかし、あふれんばかりの野心と、奇想天外なアイデアで加代子は自分の道を切り拓いていく-。何があってもあきらめない不屈の主人公・加代子。これぞ、今こそ読みたい新世代の女子下剋上物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「輝ける人と輝けない人、その差は一体なんなのだろう。ずっとそのことばかり考えていた私でしたが、この小説を書くうちに、気持ちが吹っ切れたのです。

    そう、誰かに選んでもらうのが人生ではない。
    光を浴びたければ、自らがスポットライトの前に走っていけば良いのです。」と…、
    ステージの上で、無数のフラッシュを浴びて悠然と微笑みながら話すのは、
    小説バルス新人賞授賞式の、有森樹李。
    この作品の主人公です。

    この主人公がすごく面白いのです。
    この主人公の突き抜けたキャラクターに、やられました。

    人気と実力のある作家さん、柚木麻子さんが、
    身も蓋もなく作家と本の世界の暗黒面を描いた作品。
    格調高い出版界と、一見優雅そうな作家の生活の裏側を、覗きみたい人には、格好のお奨め。
    馬力ある作家が本気で
    ふざけるとこんな快作(怪作?)が、出来上がるという、見本のような一冊である…
    と石田衣良さんが、巻末で解説されていました傑作です。

    朝井リョウさんはじめ実在する作家さんも、登場人物で登場し、なんだか、読みながらニヤニヤしてしまいました。

    なんといっても、主人公が他人を蹴落とすとか、妬み嫉みで、復讐するとかの気持ちを、学生時代に培った演劇部の腕を生かし「執念とハッタリ」で、行動するところは、ただ、ただ楽しいところでした。
    決して実際には良い人だとは言えないやりすぎなクセがスゴい人だとは思いましたが、
    なぜか、憎めないキャラクターで、描かれていています。
    悪い感情である妬みとか嫉みとかも、あけすけに正直にしゃべり、とんでもない行動をしているところも、びっくりさせられました。

    実際にこの本を、映画化したとしたら、主人公はおもいっきり演技出来て、やっていても楽しいだろうなあと思います。映画化されたら、どの女優さんが合うかしら…。

    最後に、なってしまいましたが、
    この本はアールグレイさんからのおすすめ本でした。
    図書館で、予約待ちをしてやっと手に取ることができました。
    ここのところ重いテーマの、眉根を寄せての読書が多かったのですが、
    明るく、興味深く、テンポよく爽快な作品でした。

    ありがとうございました。


    • アールグレイさん
      チーニャさん( ^o^)ノこんばんは★

      楽しめたようですね!
      わざわざ私の名を出すことないのに、元はさてさてさんのお薦めナンですよね。
      さ...
      チーニャさん( ^o^)ノこんばんは★

      楽しめたようですね!
      わざわざ私の名を出すことないのに、元はさてさてさんのお薦めナンですよね。
      さてさてさん、私が皆に薦めていること、わかっていると思いますが。
      チーニャさんもこの本を拡散しませんか?フォローバックの時がいいですよ!
      これからも良い本に出会いたいものです!
      (^.^/)))~~~bye!!
      2022/09/09
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      アールグレイさん、
      こんばんは~(^o^)!!
      は~い、拡散了解で~す
      また、よろしくお願いしま―す
      アールグレイさん、
      こんばんは~(^o^)!!
      は~い、拡散了解で~す
      また、よろしくお願いしま―す
      2022/09/09
  • 文学界ドタバタ系作家物語。クスッと笑える話。映像化してほしい。

    不遇な新人作家・加代子の因縁の対決が痛快!
    vs 売れっ子大御所作家(男尊女卑の団塊クソジジイめ…)
    vs 編集者(自分は何も生み出さず、こちらが紡いだ作品を王様のような態度でジャッジする…許せん)
    vs 最後に挑む相手は……内緒

    登場人物それぞれの目線で話が展開する書き方が自然でうまい。軸は新人作家・加代子の、
    「ここは小説家のためのホテル。このホテルの力を借りて長編小説を書き始めなくては。今度こそ世間にこの輝く才能を見せつけてやる」…なのだろう。

    この加代子がなんともハチャメチャな人で、好感は持てなかった。しかしその執念深さ、厚かましさ、貪欲でエネルギーに満ち溢れた姿は痛快。
    こうでないと物語は書けないのかもしれない。
    もっと暴れて文学界を荒らしてやれ〜!と物足りなくも感じてしまった。

    ラストに美内すずえの演劇漫画「ガラスの仮面」の作中劇「吸血鬼カーミラ」の話が出て来たのには嬉しい驚き!
    ヒロインであるはずの新人女優が、ベテラン女優に主役を取って代わられるエピソードを引き出して来た。
    「読解力がない人間が読むと、ヒロインは自分だと(その演者本人が)勘違いする」…ってことで、ラストのちょっとしたどんでん返しは加代子による計算ずくのシナリオだった。
    「作家も女優も奇妙な仕事。私達(作家)の方がはるかに役者。作り話は得意よ!」…にも繋がった感じ。ぜーんぶ加代子が仕掛けたシナリオだったってこと?
    うまいな、柚木さん。面白い!
    ラストの展開が良かったのと、私が好きな「ガラスの仮面」が出てきたので★4!

    • 川野隆昭さん
      僕も『ガラスの仮面』は、妹が揃えているのを追いかけているファンの一人です。

      (『ガラスの仮面』ちゃんと完結するんでしょうか?)(笑)

      文...
      僕も『ガラスの仮面』は、妹が揃えているのを追いかけているファンの一人です。

      (『ガラスの仮面』ちゃんと完結するんでしょうか?)(笑)

      文学ドタバタものとしては、古いですが、日本における嚆矢の一冊として筒井康隆の『大いなる助走』を、おすすめしたいですね。

      佐藤浩市主演で、映画化されています。

      (タイトルは、確か『文学賞殺人事件』)

      かなり古いんですが、「ここまで書いちゃって、大丈夫か?」

      と思わせる、問題作です。

      本書も、とてもバタバタしていて、楽しそうですね。
      2023/10/17
    • なおなおさん
      川野さん、おはようございます。
      いいねをたくさんありがとうございます。

      『ガラスの仮面』仲間がいて嬉しいです。完結してほしいような、してほ...
      川野さん、おはようございます。
      いいねをたくさんありがとうございます。

      『ガラスの仮面』仲間がいて嬉しいです。完結してほしいような、してほしくないような…こうなったら読者任せなのでしょうか!?
      本書は「たまには笑える話を読みたい」とネット調べで出てきました。
      筒井康隆の『大いなる助走』!チェックしてみます。筒井さんとなると、ひとひねりあり面白そうです。ご紹介をありがとうございます。
      2023/10/17
  • この本は、さてさてさんのお薦め本です。私の本棚に嬉しそうに並んでいます。 ありがとうございました。

    本名、中島加代子。三十才。作家。
    ペンネーム、相田大樹。なかなか売れず
    改名して、有森樹李になる。

    加代子は自分のことを、史上最もついていない作家だと思っている。
    歴史の浅い、中堅出版社主催での新人賞を獲ったが、それは二名同時受賞でもう一人は元アイドル、加代子は引き立て役だった。作家デビューはしたものの、出版社はいつになっても本を出してくれなかった。
    ・・・・女は恐い。加代子は10年後、引き立て役にさせられた、この復讐を果たす。

    作家になりたい人、この指止~まれ。
    そんなことを言ったら、指が何本あっても足りないだろう。
    作家が本を出すには、出版社、編集
    担当者、書店、そして読者が必要だ。
    圧倒的なエネルギーと貪欲さ、物語を生み出す力。貪欲さはいつも持ち続けて
    いるべきではないかと思う。
    その時の自分の状態に、甘んじていると
    向上は目指せない。作家でなくとも、誰でもが同じではないかと、思う。

    この本は、本当に面白い。
    電車の中で読んでいて、もし面白さに
    ニヤついてしまったら、恥ずかしいこと
    このうえない。それというのも加代子の性格が何とも言えないからだ。あんなに凄い土壇場で、いい案を思いつき演じきり、窮地を切り抜ける。
    この本には、ベストセラー作家の60代
    (オヤジ野郎、個人的な感想)の存在が
    欠かせない。二人は、何度にも及ぶ
    バトルを巻き起こす。この本の見どころ
    いや、読みどころだ。

    二人は、歳は親子のようだがきっと
    いいライバルであり、お互いを高め
    合えるいい関係でいるのではないかと
    思う。

    2021,6,6 読了

    • アールグレイさん
      マメムさん(^_^)/
      あけましておめでとう
      ございます
      初コメント、嬉しく思います!
      「同士少女・・・」と「私にふさわしい・・・」に共通点...
      マメムさん(^_^)/
      あけましておめでとう
      ございます
      初コメント、嬉しく思います!
      「同士少女・・・」と「私にふさわしい・・・」に共通点はあるのでしょうか?本を選ぶ時、題名、表紙などで選んでしまいます。
      先日珍しく、方舟、読みました。ん~たまにはあのような本も読むといいのかな?と思いました。次はどんな本を読もう?と考えています。
      (*^。^*)
      2023/01/03
    • マメムさん
      アールグレイさん、お返事ありがとうございます&今年もよろしくお願いします。

      「同志少女……」は単に文壇を戦場と見立てて、そこに負けじと立ち...
      アールグレイさん、お返事ありがとうございます&今年もよろしくお願いします。

      「同志少女……」は単に文壇を戦場と見立てて、そこに負けじと立ち向かう中島加代子を比喩しただけなので、作品の共通点とかはないですよ。方舟も読まれたのですね、あれは最後にゾワッとしました。

      今日、本屋で気になったのは綾崎隼さんの『死にたがりの君に贈る物語』ですね。積読多いので順番回ってくるのは、いつになることやら(笑)
      2023/01/03
    • 銀拓さん
      アールグレイさん、お勧めありがとうございました。早速図書館で借りて読みました!とても面白かったです。ホテルの話かと思いきや、作家さんのお話で...
      アールグレイさん、お勧めありがとうございました。早速図書館で借りて読みました!とても面白かったです。ホテルの話かと思いきや、作家さんのお話でまさかの復讐劇!1日で読んでしまいました。登場人物がどれもキャラが濃くてドタバタ楽しくてページをめくる手が止まりませんでした!
      2023/05/13
  • 主人公、中島加代子がとにかく素晴らしい。
    小説家を目指している彼女は、良く言えば機転がきく、悪く言えば悪知恵が働く。ピンチをチャンスに変える力は感服する。学生時代演劇サークルに所属していたという事で、演技、アドリブ、はったりでピンチを毎回切り抜ける。小説家になりたいと言っているけど、どう考えても舞台女優になるべき。彼女は不運続きで可哀想と思うけど、そんな同情は彼女には必要なし。とにかく彼女のハングリー精神は素晴らしい。

    私が読んでて好きだったのが、落ち目の大物作家、東十条宗典とのバトル。大物作家VS新人作家がとても面白い。新人が大物に食ってかかっていいのか?大物が新人のやる事なんか無視してドンと構えてればいいのに…。今回はどんなバトルがあるんだろうか?連作短編集なんだけど毎回そんな事を思いながら読んでた。歪みあってるけど、なんだかんだでこの二人は仲がいいんだと思う。最後の話『私にふさわしいダンス』でダンスをするシーンはなかなか良い。

    以前、柚木麻子さんの作品『本屋さんのダイアナ』を読んだ事がある。二人の女子が色んな問題に直面しながら運命を切り開いていく内容で、読了後はジーンとして癒された覚えがある。今回読んだ『私にふさわしいホテル』は読了後はジーンとする事はなかった。でも気分爽快になり、ある意味癒された。主人公、中島加代子から元気を貰えた。

  • 痛快!と思いながら読んでいたけど、それだけじゃなかった。
    主人公が自分の人生を取り戻すまでのお話。
    そこに大御所東十条さんと担当編集者の遠藤先輩の視点と3つの視点で物語が進んでいく。
    絡み合ってもつれ合って良いコンビになって解散して…いやいや面白い!としか言いようがない。

    • 翠さん
      マメムさん
      いつもありがとうございます(^^)
      本当、主人公の執念深さといったら!
      最後の最後まで、まだ根に持ってたのか!と突っ込んじゃいま...
      マメムさん
      いつもありがとうございます(^^)
      本当、主人公の執念深さといったら!
      最後の最後まで、まだ根に持ってたのか!と突っ込んじゃいました笑
      2023/10/27
    • マメムさん
      翠さん、お返事ありがとうございます。
      ライバルであり、目標であり、戦友でもある関係性が妙に印象深ったです(^_^;)
      翠さん、お返事ありがとうございます。
      ライバルであり、目標であり、戦友でもある関係性が妙に印象深ったです(^_^;)
      2023/10/28
    • 翠さん
      限られた人数であれだけの複雑な人間関係を入れ込めるって凄いですよね。
      変幻自在の魅力的な主人公だったからこそでしょうか(^^)
      限られた人数であれだけの複雑な人間関係を入れ込めるって凄いですよね。
      変幻自在の魅力的な主人公だったからこそでしょうか(^^)
      2023/10/28
  • 文学新人賞を受賞した加代子、本格的に小説家の道を歩もうと思うのだが、何故かこの賞に人気アイドルもW受賞で加代子は全く目立てず。加代子の受賞は全く蚊帳の外。これに怒った加代子は大物の男性作家である東十条宗典を出し抜いて彼の執筆枠を横取りする。この東十条も熱いお爺ちゃん。加代子との対決を楽しむようになる。この2人の対決がとてもコミカルだけど作家の苦悩を考えると他人ごとではいられない。作家の世界は厳しい。それだけ個性の強い、批評に負けない図々しさを有する人が、本屋の陳列棚に作家のスペースがあるんだと尊敬と感動

  • 文学新人賞を受賞したものの、同時受賞は元アイドルだったため注目をさらわれ不遇な道を辿る加代子。それから加代子の激闘ぶりがはじまる。この強烈なキャラは本性なのか。夢を叶えるにはこれくらい打たれ強く、執念深くってことか。
    コメディと捉えればいいのだろうが、やりすぎ感が否めず笑えないところもあった。そして、復讐に燃える加代子は好きではない。
    なのになんでだろうラストの場面はとても美しく感じた。最後なんとかきれいにまとまってゆくでもない、これからも何が起こるか分からない加代子の作家人生の荒波の幕開けのようでもあり。
    最初は宿敵だった東十条。妨害し合った東十条の心まで澄みわたらせ、かけがえのない友人になってゆく。東十条を奪い立たせることができるのは、編集者でも読者でも美女でもなく、もはや有森樹季(加代子)ただ一人。樹季が目障りだからこそ彼は東十条らしくいられる。そういう関係ってあったんだ、そうかもしれない、と気づいた。
    こうあって欲しくないという出版業界の事情。編集者の本音もわかったし、一冊の単行本が発売されるのにどれだけ作家の魂が込められてるか、より伝わってきた。
    テンポがよく頭の中で映像が動き出す感じ。個人的には加代子はイメージ的にあやせはるかさん。
    ナイルパーチの女子会をテレビドラマで見て、怖い、これを小説で読んだらどれだけ怖いだろう、と柚木さん、なんとなく遠ざけていた。こちらも、面白さの中に、人の内面を抉った怖さや、重さを感じた。

    • アールグレイさん
      こんにちは♪
      私にふさわしいホテル、私も読みました!
      加代子の持つあの性格、土壇場を切り抜ける場面、本当に痛快でした。私にとってきっと今年の...
      こんにちは♪
      私にふさわしいホテル、私も読みました!
      加代子の持つあの性格、土壇場を切り抜ける場面、本当に痛快でした。私にとってきっと今年のベスト5に入るのではと思っています。
      綾瀬はるかですか、ふーん、石原さとみなんてどうでしょう?笑
      私は雷神が終わったばかり。大どんでん返しでした。
      (*^_^*)
      2021/09/19
    • kazekaoru21さん
      こんばんは♪
      この本はゆうママさんのレビューで印象があり、読みたいと思っていました。ありがとうございます。そうですよね!夢に向かって本気を...
      こんばんは♪
      この本はゆうママさんのレビューで印象があり、読みたいと思っていました。ありがとうございます。そうですよね!夢に向かって本気を出すところは見習いたいです。☆が辛めなのは復讐劇がキツかったからかな。私も、石原さとみさんもイメージしてました(*^-^*)
      雷神、いいですね!これも復讐がテーマですか。ぜひ読んでみたいです!
      2021/09/19
  • 新人賞は獲ったがその先になかなか進めない新人作家、中島佳代子がパワーとハッタリ、成功に対する執念で文壇の海を貪欲に泳いでいく。最初は無理して泊まった「山の上ホテル」で階上で缶詰になっている大物作家東十条の執筆の邪魔をして原稿を落として自分の短編を捻じ込むためにさてどうするか?から始まるのだがその解決法が可愛らしく思える程次々出てくるピンチに対する対処が大学の先輩編集者遠藤他を巻き込んでどんどん豪快になっていく。これが痛快かつ表現者の闇の深さをびりびり感じてページをめくる手が止まらない。東十条初め嫌な奴!なのに後半は掌返してしまう。実際の作家達や読書メーターまで出てきてにやり。最終章こうきたか!と単なるサクセスで終わらないのがいい。姫川亜弓のカーミラって嫌味過ぎる。表現者はこうできゃ。

  • 主人公・中島加代子がハングリーすぎる…
    ちなみにホテル業界の話ではなく、新人賞は取ったが単行本デビューできない中島加代子の、スーパーハングリーコメディです。

    主人公は中島加代子ですが、語り手は大物小説家・東十条宗典(ひがしじゅうじょう むねのり)60代や、加代子の大学サークルの先輩で今は小説「ばるす」の編集者・遠藤などに、一人称が変わります。
    特に東十条とは最初から最後まで好敵手であり、ときには利害の一致から手を組みもしますが、まあ持ちつ持たれつな感じが最後まで続きます。

    小説「ばるす」という名前からして、なかなか攻めてるこちらの物語ですが、他にも「直林賞」やら「早生田大学」などなど、あちらこちらに攻めたパロディが詰まっています。
    しかも主人公・中島加代子は、逆境にありながらそれでもなんとか小説家デビューして書いていく!!!!という意志が強く、「どこかに『木』が入ると売れる。」(30ページ)というジンクスの1つに乗っ取り、「相田大樹」というペンネームをつけます。
    そのくだりを見て、何気なく本書の著者名をみたところ、「柚木麻子」と木が4本も生えていたのには思わず笑ってしまいました。

    かとおもうと、現実の小説家の名前もバンバン挙がっており、朝井リョウ氏に関してはしっかり出てきてしっかりしゃべっております。わお。
    朝井リョウ氏と著者の柚木麻子氏の関係性に疑問を持たれた方はぜひ、朝井リョウ氏のエッセイ「風と共にゆとりぬ」「そして誰もゆとらなくなった」をお読みいただきたいです。めっちゃおもろエッセイです。このエッセイを読んでから本作を読むと、エッセイと本作における朝井リョウ氏のキャラクターにぷぷっと笑っちゃって仕方なかったです。

    いやしかしそれでも☆2なのは、強いて言えばあまりにもドタバタコメディだったから、でしょうか(苦笑)(つまり好みの問題)
    あとは、一人称が章のなかでも結構コロコロ入れ替わるので、主人公は確かに中島加代子なんだけど、ちょっと応援しにくかったのでした。

  • 若い女性作家があの手この手で世に出て行く話。
    奇想天外な成り行きに笑えます。

    中島加代子は小説家がよく泊まるという山の上ホテルに、締め切り目前の小説家然として、今年も自腹で宿泊する。
    賞はとったものの、元アイドルとの同時受賞という不運で注目されず、本が出版されないままなのだった。
    担当編集者の遠藤は、大学時代の文芸サークルの先輩でもある。
    遠藤のほのめかしを受けて、文壇の大御所作家・東十条のもとに入り込み、奇策を弄して‥?

    大御所で女好きというと、普通はモデルを一人しか思いつかないと思うけど、こんな無茶苦茶な役でいいんでしょうか(笑)
    意外な縁が続いて、老大家がいい味出してきます。
    実名で宮木あや子や朝井リョウが出てきて、いかにも内幕物風。
    でも宮木あや子は何もしないし、確か後輩?の朝井リョウも他で書いてることを言ってるだけ?のような気も。

    ことあるごとに、とんでもないことを思いつく加代子の才覚に大笑い。
    次々に危機を乗り越えて、予想外に早く出世することとなる展開ですが、最後はそんなに幸せそうでもないという。
    毒を含んだ展開。
    作家の業のようなものを自覚しているからでしょうか。

    柚木さん自身、最初の賞をとった後、すぐには単行本化されなかったよう。
    その間に妄想が膨らんだ‥?
    生意気盛りの若さを感じさせる筆運びで、面白おかしく、勢いよく書かれていて、何となく元気が出ます☆

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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